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【特別企画】Steamの新機能「Big Picture」をさっそく試す!

新世代インターフェイスで、激安PCゲームをリビングで楽しもう

12月4日提供開始(現地時間)

 米Valveは12月4日、PCゲームのオンライン配信プラットフォームSteamの新型ユーザーインターフェイス「Big Picture」を、3カ月のβテストを経て正式公開した。本機能は同日よりSteam利用者に無償で提供されている。

Steam Big Pictureの画面

 Steamは2003年9月にサービスを開始して以来、現在ではPCゲームにおける支配的なコンテンツ流通システムとして確立している。現在は登録数5,000万アカウントを数え、配信ゲームタイトルは2,500以上と、PlayStation NetworkやXbox LIVE等に並ぶ巨大ゲームプラットフォームになっている。

 その中で、今回の「Big Picture」インターフェイス導入は、これまでマウス・キーボードを前提としていた専用クライアントの操作性を抜本から変える画期的なものだ。「Big Picture」は、リビング向けの大型テレビと親和性の高い画面デザインとなっており、ゲームパッドでの操作がフルサポートされるなど、リビングルームでの利用を念頭に置いた構成となっている。

 機能面ではゲームの検索・購入からインストール、あるいはフレンドとのテキストチャットやボイスチャットなどコミュニティ機能を網羅しており、Steam上でマウス/キーボードを使ってアクセスできる機能がほぼすべて、ゲームパッド操作に最適化されている格好だ。

 ゲームパッドをフルサポートしたゲームタイトルであれば、プレイも含めて全てをゲームパッド操作で完結できる。そのようなタイトルは、現時点で40本以上がリストアップされている。また、タッチ操作と親和性の高いインターフェイスデザインとなっているため、Windows 8やOS X Mountain Lionといったタッチインターフェイスをサポートした世代のPC用OSでの利用も視野に入りそうだ。

 なお、従来のマウス・キーボードを前提としたウィンドウインターフェイスも引き続き使用できる。本稿では「Big Picture」の各機能を実際に使ってみた上でのファーストインプレッションをお届けしていこう。

ゲームパッドでの操作に最適化されたSteam

「Big Picture」トップメニュー画面

 「Big Picture」を利用するには、Steamのメインウィンドウ右上にある大きなアイコンをクリックするか、ALT+ENTERキーを押すだけ。即座に全画面インターフェイスとなり、「ストア」、「ライブラリ」、「コミュニティ」などが表示されたメインメニューが現われる。

 そこから先は、Xbox 360のダッシュボードによく似たデザインだ。「ストア」を開けば最新ゲームの画像やセール情報が並ぶ。数回スティックを倒すだけで、最近発売されたタイトルをまとめた「ニューリリース」、発売直前の「近日公開」、人気タイトルを並べた「売上上位」など、Steamで提供されている各種カテゴリーに素早くアクセスできる。

ストア画面
各カテゴリーにアクセス

 また、「Big Picture」だけの機能である「Trailer TV」も面白い存在だ。放っておけば新作トレイラームービーが次々に再生されていく専門チャンネルのようなもので、新作ゲームのトレンドが簡単に把握できる。

 カタログで各ゲームタイトルを開くと、ムービーやスクリーンショットとともにタイトルの詳細情報が表示される。ここからコミュニティ内のゲーム所有者を確認したり、Steam上のストアページを確認することもできる。あらかじめ決済手段を登録しておけば、そこから購入・インストール、プレイ開始まではわずか数ステップの操作だ。

トレイラームービーは全画面再生向けのインターフェイスを装備
タイトル詳細画面。ここから購入・インストール・プレイが数ステップの操作で完結

 ゲーム内でも「Big Picture」の機能が利用できる。ゲームパッドのスペシャルボタン、例えばXbox 360コントローラーであれば中央のXboxボタンを押せば、ゲーム中いつでも「Big Picture」インターフェイスがオーバーレイ表示され、ここから実績の確認やフレンドの招待などが可能だ。

インゲームからワンボタンで呼び出せる「Big Picture」画面。プレイ中のゲームに関する実績等の情報、またコミュニティ機能などが網羅されている
ビルトインブラウザー。ゲームパッド操作に最適化されている

 「Big Picture」には専用Webブラウザも搭載されており、各ゲームタイトルのストアページ、コミュニティページなど、また各デベロッパー・パブリッシャーが用意している公式サイトもこの中でスムーズに閲覧できる。

 Valveが“ファーストパーソン・ブラウザー”と呼ぶこのブラウザでは、選択項目を決めるカーソルが画面中央に固定されており、ゲームパッドのスティックを倒してページのあちこちにナビゲーションするというスタイル。文字が小さい場合に備え、ワンボタンでズームイン/ズームアウトも可能だ。簡潔な操作性にまとめられており、数分で習得できるシステムだ。

 もちろん、URLを入力して一般のウェブサイトを閲覧したり、ブックマークからお気に入りのサイトに素早くアクセスすることもできる。タブブラウザとしての機能も持っていて、複数のページを同時に開き、十字ボタンで素早くタブを切り替えることができたりと、ゲームパッド前提のブラウザとして綿密に設計されているようで、意外と快適に使用できた。

ズームイン。かなり倍率が高い
開いているタブをサムネイルで選択

 「コミュニティ」メニュー内ではフレンドのオンライン状態やプレイ中のゲームといったアクティビティを確認できるほか、ワンボタンでテキストチャットの開始、ボイスチャットの開始ができる。テキスト入力については専用の“Daisywheel”インターフェイスが用意されており、スマートフォンで主流の“フリック入力”に近いスタイルだ。

 具体的には、スティックを倒すと対応する文字グループがアクティブになり、その状態で対応するボタンを押すと対象の文字が入力される仕組み。残念ながら現時点では日本語入力には対応せず英数字のみの入力となっているが、短文を送信したり、URLを入力する程度であれば思いの外スムーズに扱える。

コミュニティ画面。フレンドやグループの状態を確認、また文字・ボイス両方のチャットなどができる
チャットやブラウジングなどの文字入力シーンで起動する“Daisywheel”インターフェイス。スマホのフリック入力ライクな感触

激安PCゲームを購入してプレイしてみよう!

「$10以下」カテゴリーに並ぶ激安タイトル

 というわけで、実際にゲームを購入してプレイするまでの流れを紹介しよう。今回は、Steam初心者にもオススメできる傑作ゲームの中から、激安セール中の「Portal 2」をチョイス。

 「ストア」画面の中から「スペシャル」カテゴリーを選び、その中の「$10以下」タブを選択すると、気軽に購入できる優良タイトルが多数見つかる。今回チョイスする「Portal 2」はPS3やXbox 360向けのパッケージタイトルとしても人気のあった作品だが、Steamではなんと4.99ドル! 2012年12月現在の為替レートでわずか400円程度だ。

 タイトル詳細画面でトレイラームービーやスクリーンショットをチェックしたら、「購入オプション」を選択。各種バンドルパッケージなど複数の選択肢が出てくるが、今回は単体購入で進めてみた。

タイトル詳細画面でトレイラーやスクリーンショットを確認
購入オプション画面。2本購入で割引き、などの項目がある

 始めて購入する場合は「自分用に購入」で、自分のアカウントにひもづけられた「ライブラリー」にゲームが追加され、以後は永久に遊べるようになる。別のPCでも、同じアカウントでログインすればOKだ。2本目以降は「ギフトとして購入」して、友達にプレゼントして仲間を増やすこともできる。

 決済に使えるのはVISA、MASTER、AMEX、JCBなどのクレジットカードもしくはデビットカード、またPayPalやclickandbuyといったオンライン決済代行サービスだ。初回の購入時には住所氏名・電話番号などの決済情報の入力が必要だが、次回以降は同じ決済手段を使うならワンボタンで購入確認画面に進むことができる。

決済情報の入力は、基本的に初回購入時のみ必要
決済手段の種類によっては、ビルトインブラウザでパートナーサイトが開く。ここで必要な情報を入力
ダウンロード開始。光回線ならダウンロードもラクラクだ
ダウンロード中に「Steam Workshop」にアクセスして、ユーザー作成コンテンツをチェックしてもいい
サクッとゲームが起動。このままゲームパッドで遊ぶ

 購入が済めばダウンロード開始。ダウンロード終了後、プレイ開始時に初回インストールが行なわれ、あとはゲームが自動的に起動する。「Portal 2」はゲームパッドをフルサポートしているので、何も設定しなくても、PS3やXbox 360と同じ感覚でプレイ可能だ。

 ゲーム中にインゲームの「Big Picture」を開いて実績を確認したり、あるいはスクリーンショットを撮るのもゲームパッドで完結できてスムーズ。Xbox 360コントローラーなら中央のXboxボタンを押しながら右トリガーを引くことでスクリーンショットが撮影できる仕組みだ。

 ゲームを終了すればそのまま「Big Picture」の画面に戻ってくる。ここまでゲームパッドからいっさい手を離すことなく、リラックスした姿勢のまま遊べるのは、PCゲームとは思えない体験だ。

ゲームパッドの割り当ては標準のままで問題なく遊べる
ゲームパッドから手を離さずスクリーンショットの撮影も可能

 現在Steamでは「Big Picture」リリースを記念して、ゲームパッドをサポートするゲームの大セールを展開中だ(セールページはこちら)。

 今回例に挙げた「Portal 2」をはじめ、「Left 4 Dead 2」(4.99ドル)、「Counter Strike: Global Offensive」(7.49ドル)といったValveの人気タイトルはもちろん、「ボーダーランズ2」(44.99ドル)、「アラン・ウェイク」(7.5ドル)といった、据え置き機ではフルプライスのパッケージタイトルも激安配信中だ。これらメジャータイトルの大半は日本語もサポートしているので、ゲーマーの皆さんに幅広くオススメできる。

 PlayStation NetworkやXbox LIVE Arcadeでヒットしたインディーズタイトルの数々もビックリ価格で配信されているので、気軽にチャレンジしてみよう。速い、安い、楽しい、と三拍子揃ったSteamの利点に、「Big Picture」で新たな使いやすさが加わったことで、あなたのゲームライフがますます充実してしまうことは間違いない。

「Big Picture」で想定される利用スタイルとSteamの将来像

Valveとしては“リビングでPCゲーム”のスタイルをイチオシ。小型PCと相性がよさそうだ

 ここまでのインプレッションを踏まえて、ゲームユーザーとしての「Big Picture」の使い所、また将来の展開予想について筆者の見解を述べてみたい。

 「Big Picture」はマウス・キーボードでの操作もフルサポートしているが、デスクトップで操作するなら従来のウィンドウインターフェイスのほうが効率的で、使いやすい。Valveがアピールする通り、「Big Picture」の使い所はまず、リビングルームにPCを持ち込んで遊ぶ、というスタイルになるだろう。

 リビングに大画面テレビ+小型PCという利用スタイルは従来からもニッチな利用スタイルとして存在したが、「Big Picture」の登場により幅を拡げることになりそうだ。

 近年、PC・ゲーム機のマルチプラットフォーム対応タイトルは大抵の場合PC版がより安く速く買え、しかも処理性能の違いからクオリティも高いという事情もある。一部の家庭では「Big Picture」がリビングからゲーム専用機を追いやるケースも出てくるかもしれない。

 その点で言うと、「Big Picture」に本格的なタブブラウザが搭載されていることは汎用性の確保という意味で重要だ。ソファーにどっかと座り、ゲームコントローラーを手にしながら、PC向けの各種ネット動画サービスを利用したり、SMS等を利用することを考えてみよう。娯楽にPCを利用するユーザーの生態系の大半がSteamの中で完結するわけだ。

 もうひとつの可能性としては、現時点では明確なアナウンスはされていないが、現在急速に普及が進みつつあるタッチインターフェイスデバイスでの利用が考えられる。

 Windows 8、OS X Mountain Lionと、PC用OSのタッチデバイス対応準備は完了しており、あとはデバイスが市場に溢れ、それをValveがサポートするのを待つだけだ。タブレット型PCとスマートフォン向けOSベースのタブレット端末の“中身”がほぼ同じになりつつある傾向も手伝って、Steam「Big Picture」は将来想定される“ゲーミングタブレット”において、メインプラットフォームになれるだけの条件が揃っている。

 そして仮に、Steam上で映像コンテンツ、音楽などの取り扱いが始まるようなことがあれば、これはいよいよ、Steamが非マウス・キーボード端末における、ハードウェアプラットフォームの垣根を超えた“エンターテイメント向けメタOS”といった地位を確立することにもなりそうだ。

 ただ、投資家マインドに左右されないプライベートカンパニーとしてある意味好き勝手をやっているValveの企業体質を考えれば、そのような非ゲームビジネスに血道を挙げることはまずないだろう(Gabe Newell氏の気分次第と言えなくもないが)。当分、もしくは永久に、Steamはゲーマーの満足度を第一に優先するゲームプラットフォームであり続けるはずだ。

 かなり話が広がってしまったが、このように「Big Picture」の正式公開は、PC・ゲーム・ネット配信サービスの将来について考えさせられる、非常に刺激的な出来事であることは確かだ。ゲーマーの皆さんはぜひお手持ちのPCで試してみてみよう。

(佐藤カフジ)