【特別企画】EAとZynga、ソーシャルゲームの王者はどちらだ!?
「CityVille」VS「SimCity Social」、「The Sims Social」VS「The Ville」直接対決!
日米を問わず、ソーシャルゲーム業界には大ヒットしたゲームに非常によく似たゲームが雨後の筍のように乱立する傾向がある。現在日本ではカード系のソーシャルゲームが花盛りだが、一足先にソーシャルゲームブームに沸いたアメリカでも、過去には「Mafia Wars」と似たようなシステムを持つ「○○ Wars」が大量に作られたり、「Farm ○○」や「○○ Ville」が乱立した時代がある。
そもそも、ソーシャルゲームブームを作ったZyngaの創業者でCEOのMark Pincus氏は他のゲームをコピーしていると公言しているし、現在はElectronic Arts(EA)グループの一員となったPlayFishの創業者Kristian Segerstrale氏も「GDC 2010」で行なった基調講演で、同じようなゲーム性のゲームがたくさん出てきて競争するのは市場として健全な行為だという意味合いの発言をしている。
そんなZyngaとEAが全面対決の様相を呈している。Zyngaのヒット作「CityVille」に似た「SimCity Social」をEAがローンチ。逆にEAのヒット作「The Sims Social」に似た「The Ville」をZyngaがローンチ。ローンチ日はどちらも7月頭。ソーシャルゲーム界最大手の看板ゲームと、長い歴史を持つビッグフランチャイズのタイトルを冠したブランドゲーム。そんな大物同士を対決させてみたいと思うのは人情だ。
そこで今回のレポートでは、一見するとどこがどう違うのかわからないほど似ているこれらのゲームを徹底比較してみたい。シミュレーション要素や、コミュニケーション要素、ストーリー、アバターなどゲームの各要素を個別に比較して、何がどう似ていて、どう違うのか、どちらが優れているのかを個人的に評価してみた。
■ 第1試合「CityVille」VS「SimCity Social」で町づくり対決!
先行しているZyngaの「CityVille」。Zyngaの中でもトップランクの人気ゲームだ |
大ヒットフランチャイズの正式タイトルとして登場した「SimCity Social」 |
Zyngaの「CityVille」は、町づくりをテーマにしたソーシャルゲーム。「SimCity Social」はPCの人気町づくりシミュレーションゲーム「SimCity」シリーズをソーシャルゲーム化したものだ。両者のサービス開始は「CityVille」が2010年12月で、「SimCity Social」が2011年8月で、「CityVille」のほうが古いが、そもそも市長になって自分の街を発展させていくというコンセプトは「SimCity」が元祖だ。しかしながら、その元祖の名前を冠した「SimCity Social」は様々な部分で先発の「CityVille」の要素を参考にしている。見た目はほとんど同じで、まさに元祖対本家の因縁対決だ。
「CityVille」は、出現したアイテムをマウスオーバーだけで拾えるようにしたり、街の中を小さな住民が自由に行き来する動的な演出を採用したりなど、当時としてはまさに革新的な要素が多数盛り込まれていた。現在でもZyngaのVille系ゲームの中では「FarmVille」とともに高い人気を誇っている。
一方、「SimCity Social」は「SimCity」シリーズの要素を受け継ぎつつ、友達と関係を深めたり、ライバルとして対抗したり、プレゼントを贈り合ったりと、「The Sims Social」と共通するソーシャル要素をベースに開発されている。これまでもたくさんの街づくり系ソーシャルゲームが「CityVille」の前に敗れ去っていったが、とうとう本家本元の冠を付けた大本命がライバルに名乗りを上げた格好だ。
・町づくり
「CityVille」も「SimCity Social」も住民を増やしながら自分だけの街を作っていくという目的は同じだ。どちらのゲームも経験値で増えていくレベル以上に街の人口が重要な意味を持っている。しかし、人の増やし方の違いが、街の景観に影響を与えている。
「CityVille」では家をクリックすると、時折引っ越しトラックが出てくる。このアイコンを拾うとその家に新しい住民が引っ越してくる。「SimCity Social」は過去のシリーズと同様に、周囲の環境によって増減する。レベルは6段階あり、段階に応じてデザインが変わる。そのレベルで収容できる人数を超えるとレベルが上がり、家の見た目が変化する。
「CityVille」は、家の種類によって人数の上限が決まっているので、もっとも収容人数の多い高層ビルを周辺部にずらりと並べるという光景をよく目にする。愛着のあるデザインでも、収容人数の関係で撤去せざるを得ないこともある。「SimCity Social」では、家の居住人数は周辺の環境で決まるため、やたらに家を並べるよりも、デコレーションをたくさん設置して家のレベルを上げた方が効果的。そのため緑地や公園の多い綺麗な都市になる。
【街づくりは「SimCity Social」が街並みの美しさで勝利!】
【町づくり】 | |
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「CityVille」の街には人口を増やすためのマンション密集地帯が必ず出現する | 「SimCity Social」は街の景観をよくすることで人口を増やせる |
・商業のサイクル
ゲーム内でお金を稼ぐのも、街づくりゲームの重要な目的だ。どちらのゲームでもたくさんのお金を稼ぐためにお店や商業施設が必要だ。店はアップグレードでレベルを上げると、収益が増えたりお金が貯まる間隔が短くなったり、特別なボーナスが付くようになる。
「CityVille」では、店からお金を収集すると閉店状態になる。そこで農場や鉄道、船、工場から収集した「グッズ」や「プレミアムグッズ」を補充する。グッズを収集、店からお金を集金、グッズを補給、集金したお金でグッズを生産というサイクルが「CityVille」の最も基本となるプレイスタイルだ。
「SimCity Social」では工場と列車から「マテリアル」という、似たようなアイテムを入手できる。しかし使い方はずいぶん違う。「SimCity Social」の店は一定の時間ごとに自動的にお金が貯まり、補給の必要がない。その代りに施設のアップグレードにマテリアルを使う。「CityVille」では集金するたびにたまっていく店ごとの経験値でアップデートさせるので、直接グッズは使わない。
また、「SimCity Social」では公園や遊園地などのアトラクションや、消防署、警察などの施設を購入するためにもマテリアルが必要になる。デコレーションの中には、マテリアルでしか購入できないものもある。
列車で集めるところなど、一見全く同じに見えるが遊んでみるとまるで別の要素であることが分かる。「CityVille」はグッズ倉庫がすぐに満杯になったり、グッズを収集しているとそれ以外のことをするエネルギーが足りなくなったりと、プレイがグッズによって縛られる要素が多い。逆に「SimCity Social」のマテリアルはプレイにはさほど関与してこないが、サイクルがないために少し散漫な印象を受けてしまう。
【商業のサイクルは、どちらにも一長一短あるため引き分け】
【商業のサイクル】 | |
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「CityVille」は商業のサイクルを延々と繰り返すのが時々だるくなる | 「SimCity Social」はクリックだけで済むが、多少単調になりがち |
・ソーシャル要素
「CityVille」では、自分の店に名前を付けることができる。例えばハンバーガー屋に「OK Burger」という名前を付けて、さらにその店を友達の街にフランチャイズ出店させることができる。友達が自分の店をクリックすれば、収益の一部がフランチャイズ料として入ってくる。もちろん、人の街を視察に行くこともできる。
「SimCity Social」では住居を建てると、そこにフレンドリストから無作為に選ばれた友達が住み着く。だがこれはオマケのようなもので、ソーシャル機能のキモは友達の街で行なうアクション。アクションには「ライバル」と「親密」という2つの方向性があり、親密度、ライバル度とも増していくとお互いの関係性が変っていく。親密さをあげていくと、相手の街にカラフルな気球を飛ばすボーナスアクションが選択できる。ライバルの場合は、大量の鳥が街にフンをまき散らすことになる。
それぞれに個性的なソーシャルシステムだが、どちらのゲームも友達にアイテムや協力を頼まなければならない要素が多く、友達がいないとたちまちゲーム進行に支障が出てしまう。ソーシャルブームの渦中に始まった「CityVille」がそういったシステムなのは仕方がないかもしれないが、後発の「SimCity Social」はもう少し遊び安さを考える余地があってもよかったのではないかと思う。
【ソーシャル要素は、フランチャイズシステムのある「CityVille」に軍配】
【ソーシャル要素】 | |
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「CityVille」のフランチャイズ。レベルが上がると、フランチャイズできる店の種類が増えていく | 「SimCity Social」では、友達とライバルになると友達の街に鳥のフン攻撃をしたりといったいたずらが可能になる |
・シミュレーション要素
「CityVille」には、住民の状態を示す項目があり、住民が今ハッピーかどうかがわかる。商店をクリックしていると泥棒が出現したりもするが、シミュレーション要素は低くむしろソーシャル要素と関連付けられたものが多い。
「SimCity Social」は元のゲームと同じように、建物が火事になったりといったハプニングが起きる。消防署があっても距離が遠いと消化が間に合わずに全焼してしまう。すると住民から「消防署はどこだ!」と怒りのメッセージが届く。逆に施設をアップデートした時などには、喜びのメッセージが届く。元祖に忠実なシミュレーション要素を楽しめる「SimCity Social」の方がよりシミュレーションゲームらしいゲームと言えるだろう。
【シミュレーション要素は、突発アクシデントがある「SimCity Social」が勝利!】
【シミュレーション要素】 | |
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「CityVille」は最近気候の要素が追加された | 「SimCity Social」の災害。消防署がないと、火事で家が燃え落ちてしまい、住民からはクレームが |
・クエスト&ストーリー
「SimCity Social」はクエストにミニストーリーがあり、ただ建物をクリックするだけではなく、インタラクトの種類がクエストごとに変化する。例えば、住民の意見を聞いてこいというクエストなら、住宅をクリックすると「意見を聞く」という項目が現われる。
「CityVille」にもストーリー要素はあるが、割合とあっさりしていてずっと続くメインストーリーのようなものはない。「SimCity Social」も骨太のストーリーがあるわけではないが、最新のゲームらしく演出が凝っていて、UFOが墜落してくるシーンがアニメーションになっていたり、新しいNPCが登場した時に全画面で紹介の演出が入ったりと、動的な演出で楽しませてくれる。
【クエスト&ストーリーは「SimCity Social」が演出力の差で勝利!】
【クエスト&ストーリー】 | |
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「CityVille」クエストには、企業とのコラボレーションしたPRクエストもある。中央には上場記念のナスダックも | 「SimCity Social」ではゲーム序盤にいきなりUFOが墜落してくる。また、メルセデスベンツとのコラボ企画も進行中 |
・土地の拡張
土地を小分けした区間に区切り、お金と拡張許可証を使って広げていくというのは「CityVille」発のアイデアで、「SimCity Social」もそれを踏襲している。しかし元をただせば、区分けした区域を1区画ずつアンロックしていくのは、PlayFishの「Restaurant City」が最初なので、それを「City Ville」が採用したという考え方もできる。「CityVille」では一定数の人口も必要だが、「SimCity Social」はそこを問わない。どちらもアンロックしていない場所にアンロックしないと使えない特別な施設や古代の遺跡、動物などを置いて、アンロックのモチベーションを高めている。
【土地の拡張は、要素としてはほとんど差がないので引き分け】
【土地の拡張】 | |
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「CityVille」では、拡張許可証と一定の人口が必要で、特に人口要件を満たすのが結構大変だ | 「SimCity Social」も同じようなシステム。おそらくだんだん大変になるのだろう |
・BGM
「CityVille」のBGMはいかにもパワフルでエネルギッシュな大都会を思わせる、「SimCity Social」のBGMはどちらかと言うと柔和で優しい郊外の住宅地を想像する。純粋に好みの問題だが、昼遊ぶなら「CityVille」、夜遊ぶなら「SimCity Social」がいいかも。
【BGMは、純粋に好みの問題なので引き分け!】
・総評
始まって1年半も経つゲームと、ようやく1週間を過ぎたばかりのゲームを比べるのはかなり酷かもしれない。「SimCity Social」には、「SimCity」的な要素はもちろん、「CityVille」、「The Sims Social」、「CastleVille」といったゲームで生まれた要素があちこちに反映されている。画面も一回り大きくなった。ゲームとしての完成度は高く、非常に遊びやすいゲームに仕上がっている。日本語対応していないのは残念だが、筆者としても安心して勧められるクオリティだ。
とはいえ、気になる部分もある。特にソーシャル要素が良く言えば非常にソーシャルゲームらしい作りで、悪くいうと少し古くさい。友達にプレゼントを送ってもらうという部分は、ソーシャルゲームの根幹ではあるが、もっともネックになる部分でもある。この部分で特に画期的な新しさを見いだせていないのが、本作の不安要因になるだろう。
「SimCity Social」はローンチ直後に宣戦布告とも思えるような攻撃的なタイトルのトレーラー「More City, Less Ville」を発表している。それだけ本作に自信があるということなのだろう。現在でも2,700万人のマンスリー・アクティブ・ユーザーがプレイしているZyngaの看板作品「CityVille」の牙城に、「SimCity」のブランドがどれほど切り込めるかここではEAが攻める側の戦いを楽しみたい。
【対決の勝者は、美しいグラフィックスとゲーム性を融合させた「The Sims Social」!】
【「More City, Less Ville」】 |
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■ 第2試合、「The Sims Social」VS「The Ville」でアバター対決
「The Sims」をかなり忠実にソーシャルゲーム化した「The Sims Social」 |
一見「The Sims Social」にそっくりなZyngaの新作「The Ville」 |
2番勝負では攻守が逆になる。今度はEAの「The Sims Social」に、Zyngaの「The Ville」が挑むという展開だ。「The Sims Social」はEAが2011年8月にサービスをスタートした箱庭系のソーシャルゲーム。「The Sims」シリーズの要素をふんだんに取り入れ、ビッグフランチャイズ系のタイトルでは初めて、人気ランキングに顔を出すほどのヒットを記録した。
「The Ville」はZyngaが7月頭にスタートしたコミュニケーションゲーム。Zyngaが2008年にサービスを開始したコミュニケーション系ゲーム「Yo Ville」の流れを汲むという触れ込みだ。「Yo Ville」はZyngaが初めて作ったアバターコミュニティで、日本の「アメーバピグ」と同じように大勢のプレーヤーのアバターが一カ所に集まってチャットをしたりミニゲームで遊ぶというゲーム。「The Ville」の見た目はあまり「Yo Ville」には似ていないが、「The Sims Social」とは見分けがつかないほど似ている。
プレイを始めた直後は「おいおい、ここまでパクっていいの?」と驚かされる。しかし、しばらくプレイを続けると、ゲームデザイナーが何を重視してゲームを作ったのかが、明確なプレイスタイルの違いとして実感できてくる。結論から言うと、PC版を限りなく忠実にソーシャルゲーム化している「The Sims Social」に比べて、「The Ville」は友達同士のコミュニケーションと言う部分に特化して、ゲーム性はむしろ捨てる方向に作られている。そういう意味ではアバターコミュニティだった「Yo Ville」の遺伝子を正しく受け継いでいると言える。それでは各要素を見ていこう。
・シミュレーション要素
「The Sims Social」は原作となる「The Sims」シリーズのギミックをかなり正確にソーシャルゲームの中で再現しており、とりわけ2Dベースで作られていた初代「The Sims」を彷彿とさせる。ゲームの目的は、自分のアバターシムのスキルを磨いてお金を儲けながら、家を豪華にしていくことで、ソーシャルコミュニケーションもそのために必要な1つの要素として位置付けられている。
キャラクターには「Social(ソーシャル)」、「Fun(楽しみ)」、「Hunger(空腹)」、「Hygiene(衛生)」、「Bladder(膀胱)」、「Sleep(睡眠)」という6つの欲求パネルがあり、不足するとパネルの色が赤くなっていく。「空腹」、「衛生」、「膀胱」、「睡眠」パネルが真っ赤になると、エネルギーを消費する行動をさせようとしても文句を言って動いてくれなくなる。逆にすべてが充足されると、才能を発揮できるインスパイアの状態になり、普段よりも仕事で多くのお金を稼ぐことができるようになる。
後発の「The Ville」も同じようにアバターを作って家の中でテレビを見たり、料理を作ったり友達を家に招待してコミュニケーションを取ったりすることができる。しかし「The Ville」には「The Sims Social」のような欲求パネルはなく、アバターが今何を望んでいるのかは、時折アバターが出すフキダシでしか掴めない。
例えばトイレに行きたい時には、フキダシとそぶりでトイレに行きたそうにする。この欲求フキダシは、放っておいても特にネガティブな影響はでない代わりに、該当する行為をさせるとエネルギーが手に入るというメリットが生まれる。
「The Ville」では行動はアバターの欲求を充足させるためではなく、お金を稼ぐための行為になる。例えばテレビの中にある「ニュースを見る」という項目を選べば、見た後お金と経験値が手に入る。また、連続でお金を稼げないよう、次にニュースを見られるまでにクールタイムがある。Zyngaらしい独自の解釈で「The Sims」に切り込んでいるといった印象だ。しかし、正直なところ、やはりゲームとしては本家の方がおもしろい。
【シミュレーション要素は、「The Sims Social」が豊かなゲーム性で勝利!】
【シミュレーション要素】 | |
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「The Sims Social」は初代「The Sims」を思い出すシミュレーション寄りのゲーム性 | 「The Ville」はコミュニケーションツールとしての側面が強い |
・コミュニケーション要素
「The Sims Social」は自宅に友達を呼ぶことができないので、コミュニケーションは友達の家を訪ねるところから始まる。インタラクトの種類は親密さを上げるものと、対立要素を上げるものがあり、内容はその友達との関係で変化していく。友達の対象となるのは、Facebookの友達で、かつ「The Sims Social」のネイバー登録で承認しあった人間のみと、若干クローズなコミュニティとなる。
一方、「The Ville」は友達の家を訪ねることができるだけでなく、逆に友達のアバターを家に招待することも可能だ。複数のアバターを呼び出すと、それぞれが勝手に行動したりインタラクトしたりしてにぎやかになる。他のアバターとコミュニケーションを取ると「ハッピー」がたまっていく。これは仕事をするために必要なので、お金を稼いで家具を買うためにも積極的にコミュニケーションを取っていかなくてはならない。
さらに「The Ville」にはFacebookのフレンズではないプレーヤーのアバターとも友達になれる「Ville Friends」という機能がある。この機能をオンにしておくと、自分のキャラクターが他のプレーヤーの家を訪ねていく。訪問先のプレーヤーは訪ねてきたアバターが持っているプレーヤーのプロフィール写真や情報を確認することができる。
もう1つ、「The Ville」には「Z Talk」というチャット機能がある。これは友達とゲーム内でチャットができるだけではなく、プレゼントと一緒にメッセージを送ったり、自分が相手の家を訪問して起こしたアクションを記録しておくことができる。「The Ville」はソーシャル要素にかなり力を入れており、ゲームと言うよりもコミュニケーションツールとしての側面が大きい。
【コミュニケーション要素は、「Z Talk」と「Ville Friends」がある「The Ville」の勝利!】
【コミュニケーション要素】 | |
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「The Sims Social」は相手の家を訪ねることはできるが、呼ぶことはできない | 「The Ville」は友達を家に呼ぶことができる。チャット機能もあり |
・クエスト&ストーリー
どちらのゲームにも、ストーリーを引っ張ってくれるNPCが複数存在している。メインストーリーと呼べるほど骨太のものはないが、NPCごとに生産やスキル開発など、方向性の違うクエストで色々な遊び方を提供してくれる。どちらも複数のクエストを組み合わせて、1つのエピソードが作られている。
「The Sims Social」のクエストは、スキルに沿ったものになっている。筆者のアバターはパーソナリティーに「クリエイティブ」を選んでいるので、絵を描いたり音楽を作ったりといったクエストが出現する。さらにそこからプロを目指してキャリアを積んでいくためのクエストも用意されている。クリエイティブからは、「アートマスター」、「ロックスター」、「セレブリティシェフ」が選べる。
「The Ville」にもクエストがあり、どちらかと言うと友達と何かをしようという形が多い。まだ始まったばかりのゲームなので、現在はチュートリアル的なクエストが多いため、今後違った方向性が出てくる可能性はある。
【クエスト&ストーリーは、「The Sims Social」が選択肢の多彩さで勝利!】
【クエスト&ストーリー】 | |
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「The Sims Social」の期間限定クエスト。アメリカ独立記念日に合わせたクエストで、国旗やネイティブアメリカン風の家具が手に入る | 「The Ville」では、部屋を飾ることと、自分を着飾ること、そして友達との交流がクエストでも重視されている |
・アバター
どちらのゲームにも最初にキャラクターを作る時にそのキャラクターの得意なスキルを決めることができる。「The Ville」の場合は「芸術家」、「チャーミング」、「パーティー好き」、「金の亡者」、「悪党」、「スポーツマン」の6から選択できる。「The Sims Social」ではこういった初期設定に加えて、得意技を後から設定することができるので、そのぶん個性の幅が広い。
服装はどちらも非常に豊富にそろっている。「The Sims Social」はカジュアル、水着、ナイトウェア、フォーマル、スポーツ、「The Ville」は普段着のほか、水着、パジャマ、フォーマル、アクティブにそれぞれ別の衣装を登録して、必要に応じて着替えることができる。アバターの個性作りでは、現段階では先行している「The Sims Social」にやや分があるように見える。
【個性的なアバターが作成できる「The Sims Social」の勝利!】
【アバター】 | |
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「The Sims Social」の着替え画面。センスがよく、可愛い服が多い | 「The Ville」の着替え画面。靴下という装備個所もある |
・BGM
これは「The Sims」で遊んでいるかどうかで評価が変わる。もし遊んでいた場合、おなじみのBGMやSEに反応して、「ああ、Simsで遊んでる」と嬉しくなること請け合いだ。
「The Ville」のBGMも綺麗で聞きあいない。ZyngaはCastleVille以来、BGMには力を入れており、今回もいい曲が揃っている。
【BGMは、個人的な「The Sims」への思い入れで「The Sims Social」の勝利!】
・総評
「The Ville」は日本語に対応しているので、コミュニケーションゲームとしては抜群にプレイしやすい。しかし「The Sims」は日本でも人気のあるゲームであり、そのゲーム性をかなり忠実に再現している「The Sims Social」は取っ付きやすさでは一歩先んじている。
筆者がプレイした印象は、ゲームとして遊ぶなら「The Sims Social」。友達と遊ぶことが目的なら「The Ville」をおすすめしたい。とても似たゲームなのだが、根底に流れている目的がまるで違うので、必要に優劣を決めるのが難しい。敢えていうと、「The Sims Social」のアバターの方が日本人の好みに合いそうだ。
ちなみに「The Ville」には、かなりセクシャルなインタラクトも入っているそうなので、どんどん関係を深めていくとすごいことが起きるのかもしれない。「The Sims Social」はピーク時よりはアクティブユーザーを減らしているが、まだまだどちらも発展途上のゲームであり、ライバルが現れたことでの一段の進化を期待したい。
【それぞれ目指している方向性が異なるため引き分け!】
■ 模倣から次世代のスタンダードになるオリジナリティが生まれる!
というわけで今回4つのタイトルを比べてみた。ちょうど攻守が入れ替わっていることもあり、なかなか面白い対比ができたのではないかと思う。こうしてみていると、2つのメーカーの違いも見えてくる。
Zyngaはライバルゲームの人気要素を臆面もなく真似てくるが、決して二番煎じでは終わらず、そこに必ず何かイノベーティブな試みを追加してくる。今回ならば「Z Talk」や「Ville Friends」がそうだ。そして不要だと思える要素は、これまた潔くバッサリと切り捨てる。結果として、見た目こそ似てはいるが、Zyngaに必要なものだけで構成された新しいゲームが誕生する。
さらに進化を止めないことも驚きだ。実は今回のレポートのためにしばらく辞めていた「CityVille」を久しぶりにプレイしたのだが、数えきれないほどの要素の追加以上に驚いた。とりわけ感心したのが、ロード時間の高速化だ。ストレスになるほど遅くなっていたロード時間が、今はトップ画面のスクリーンショットを取るのが大変なほどに短くなっていた。
EAのタイトルはどちらも確たるブランドがあるので、その遺伝子を受け継ぐことに心血が注がれている。また、PlayFishの伝統としてグラフィックスが非常にカラフルで美しい。「The Sims Social」の街は驚くほど細かい部分まで作りこまれている。SEやBGMは全体に抑えた作りだが、街の騒音は非常にリアル。良くも悪くも作りが堅固だ。
しかし、「The Sims Social」の章でも少し触れたが、イノベーションという意味ではZyngaほどの驚きが感じられない。今ある最高のものを作ったが、一歩先には踏み出せていないという印象だ。このあたりは、粗削りで絵は少し古臭いが、ゲームデザインでは常に新しいものを出してくるDisney/Playdomとは対照的だろう。
ちなみにZyngaはDisneyの「Gardens of Time」とも、後発でそっくりのゲーム「Hidden Chronicles」で戦っている。Disneyも、「Hidden Chronicles」に似た「Animal Kingdom」を出して対抗。さらに6waveがBBCとコラボした「Jane Austen's Rouges & Romance」を出して、こちらも混戦が続いている。ソーシャルゲームのパクリ戦争の終わりはまだまだ見えない。
業界内のポジションでは、新しいものを生み出すがクオリティの面で一歩後れを取るDisney、常に革新的だがそれ以上にパクるのが得意なZynga、ブランドとコラボした定番ものをかっちりと作ってくるがなんとなく古いEA、という布陣に、カジュアル系を得意とする他のメーカーが絡んでいるという形だ。
アメリカソーシャルゲーム業界の面白いところは、こうした対立軸を全く隠さず、むしろ煽るようなプロモーションを作ったりと勝負を挑んでくるところだろう。日本のソーシャルゲーム業界からはマネタイズの話ばかりが聞こえてくるが、新しいものを出して驚かせるという気持ちを作品から感じられるのが、筆者がアメリカのソーシャルゲームを何年も遊び続けても飽きない理由かもしれない。
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(2012年 7月 11日)