カプコン、「鬼武者Soul」のテストプレイ「戦国体験 初陣」をレポート
名作「鬼武者」の遺伝子と県民魂が融合したジワハマリゲーム


4月27日~5月1日開催



 


 株式会社カプコンは、ブラウザ用戦国SLG「鬼武者Soul」のテストプレイ「鬼武者Soul 戦国体験 初陣」を4月27日から5月1日まで開催した。GAME Watchもテストプレイに参加することができたので、プレイの感触をお届けしたい。

 「鬼武者Soul」はカプコンの戦国アクションゲーム「鬼武者」の名前を冠した、村づくりと物語、対人戦が楽しめる戦国シミュレーションゲーム。基本無料で遊べるブラウザゲームで、Unity Web Playerというプラグインを使った派手で動的な画面が特徴。正式サービスではブラウザ版が6月28日から、スマートフォン版が秋にスタートする予定で、8月2日にはYahoo! Mobageでもサービスが提供されることになっている。

 なお「鬼武者Soul 戦国体験 初陣」では、正式サービス後に遊べるシステムのごく一部がプレイできただけなので、今回レポートしている内容だけが「鬼武者Soul」のすべてではないことを、先にお断りしておく。




■ 47都道府県に分かれて覇権を争う全国県バトル!

住んでいる県で選ぶも、陣営や武将で選ぶもプレーヤー次第
怪しいオーラをまとった「宇喜多直家」。こんな怖い姿の領主だが、領民からの信頼は厚いようだ

 本作の特徴は、47都道府県に分けられた地域同士で対抗したり、その県らしい城下町を作れるということにある。勢力ごとに別れて戦う歴史系のゲームはほかにも数あるが、全ての都道府県とその地域の武将に着目し網羅しているゲームはなかなか珍しい。

 地名は戦国時代に合わせた旧地名になっているが、分け方は現代の県境を使っている。例えば筆者が選んだ岡山県なら「備中、備前、美作」がエリアになる。日本が舞台になっているゲームでは、自分の住んでいる場所や故郷をスタート地点に選ぶという話をよく聞く。愛国心が薄いと言われる日本人だが、県民魂はかなり熱いと思うので、県に別れての対抗戦はかなり熱い戦いが繰り広げられるのではないだろうか?

 県民魂はゲームの随所に生かされている。例えば城下町の背景には、その地方の名山や湖など有名なビューポイントがモチーフに使われている。また、京都なら清水寺、神奈川なら鎌倉の大仏とその地方限定の建築物もある。それぞれの県には、その県にゆかりの深い武将がプレーヤーの最初の肖像画として設定されている。筆者が選んだ岡山県は「宇喜多直家」だった。陣営が幻魔なので、怪しいオーラをまとっていた。

 都道府県は「鬼陣営」、「人陣営」、「幻魔陣営」の3つに分かれている。遊ぶ内容に差はないが、陣営によって天守閣のデザインが異なっていたり、プレーヤーにゲームの指南をしてくれる小姓のデザインが違っている。琉球(沖縄県)だけは、独自のデザインが用意されている。

 ところで過去の「鬼武者」シリーズとはゲームシステムの全く異なる本作だが、織田信長が幻魔として復活しているという世界観やグラフィックスの一部はシリーズを踏襲している。おどろおどろしい雰囲気はゲームの端々に感じられるので、その辺りも加味して読み進めていただきたい。


陣営によって小姓のグラフィックスが変わる。さらに性別と、5色のバリエーションから色を選ぶことができる城主の名前、領地の場所、小姓のデザインを決めたらゲームスタートだスタートしてしばらくはチュートリアルに従って進めていく




■ 村づくりの自由度はかなり高め、しかしエネルギー不足で苦労

村には、自由な街づくりと戦闘のためのアイテムづくりと言う2つの機能がある

 スタートして最初の作業は城下町の土台作りだ。小姓が指南してくれるチュートリアルに従ってクエストをこなしていけば、最低限必要な施設をすべて作ることができる。要する時間は2~30分ほど。カジュアルさが売りのブラウザゲームにしては1度のプレイ時間はわりと長めな印象を受けた。

 まず初めに城の場所を決めて、その後周辺に施設を作っていく。設置できる施設は大きく4種類。1つめは資源を作る「生産」で畑や水田、鉱山、植林地などがある。2つめは飯屋や家具屋、金物屋などお金を稼ぐための施設が集まった「城下」、3つめは兵法書を作るための施設「兵法」、最後はデコレーションのためのデザイン重視の施設「鑑賞」だ。

 「鑑賞」以外の施設は、稼働させているとレベルが上がって見た目が変わったり、作れる資源が増えていく。資源を使って建築物や「兵法書」を生産していくというゲームシステムは、戦略的にマップを育てていくいわゆる「村ゲー」と呼ばれる部分と、「Farm Ville」(Zynga)のように何を作るのかを好きに選択していく部分が融合したような独自の仕様だ。

 村づくりは後述する戦闘システムと関連しているものの、すべてが戦闘のための準備でしかないという意味合いを持つ村ゲーに比べて、「鬼武者Soul」では村づくりがそれだけで楽しめるような遊びになっている。一見村ゲーに似ているが、プレイした感触で全く違うジャンルのゲームなのだとわかった。

 城下町での行動は「内政ポイント」を消費する。1度の行動で1消費するのだが、例えば畑に作物を植えるのに1、収穫するのに1、レベルが上がっていた場合レベルアップにも1消費する。通常のプレイでは、収穫して新たな作物を植えるという行動がセットになることが多いので、1つの畑だけで2~3ポイントを消費してしまう。

 10ポイント消費して、すべての施設から一斉に収穫するというボタンもあるので、ある程度施設が増えてくると、これを使って収穫したほうがお得になる。それでもポイントはたいてい不足気味だ。幸い回復速度が早いので、対人戦などほかのことをして遊んでいるうちにまた溜まってくれる。ただ、じっくりと箱庭で遊びたいというプレーヤーには物足りないかもしれない。

 生産物はいくつかの種類(今回は最大2種類)から選べるようになっている。今回は時間の短いものばかりで、すぐに収穫になってしまうので気忙しさがあったが、おそらく今後は色々な時間の生産物の中から、自分のプレイにあったものを選べるようになるのではないかと思う。作った資源は建築や生産に使うが、商店を通じての換金が基本となるようだ。

 村づくりはかなり楽しそうな要素だが、「初陣」ではたっぷり作りこめるほどの時間がなかったことと、人の村を見に行く機能が未実装だったことから、その楽しさを十分に味わい尽くせたとは言えないため、今後に期待するところだ。


最初に城を設置して、その後周辺に生産施設を作っていく施設は怪しい店主が経営するショップ「みの屋」で販売している内政クエストをこなしていけば、必要な施設の建て方を教えてくれる
一部の施設は建設するために「設計図」が必要になる城はレベルを上げていくと、属性に合わせて姿が変化していく収穫を繰り返していると、レベルアップする。レベルアップは手動で内政ポイントを1消費する
資源地から収穫した材料を店で加工して販売することでお金を稼ぐ城下町の施設は、兵法書の生産に影響を与える「鑑賞」タブには、デコレーション用のアイテムが揃っている




■ アイテムや武将の獲得、戦闘もあるメインストーリー「鬼物語」

メインストーリーの「鬼物語」。1話が全10章で1つの物語になっている

 内政ポイントが尽きたら、メインストーリーである「鬼物語」を進めていく。「初陣」では「領内巡検編」というストーリーのみがプレイできた。これは、領内で次々に起きる異変を解決していくと言うもので、ストーリー仕立てになっている。1話につき10章あり、1つの章を終えると報酬がもらえる。

 「鬼物語」は、「探索」というボタンをクリックして道を進んでいく。1回の探索にはエネルギーを1消費する。ボタンを押した時のSEは「鬼武者」の決定音をそのまま使っていて、懐かしい思いをする人もいるだろう。敵の「幻魔」も過去のシリーズに登場したそのままの姿で登場する。

 時折アイテムやお金が出たり、出会った武将をスカウトしたり、選択肢が出ることもある。画面横には、その章でしか手に入らないアイテムと武将が表示されていて、自分がそれを手に入れたかどうかがわかるようになっている。

 今回は未実装だったイベントクエストの中には、歴代の「鬼武者」シリーズのストーリーをオリジナルクエストモードで再現するものもあるらしい。今後、明智左馬介に会う機会もあるのだろうか?


「鬼武者」の世界観を踏襲しつつ、本作のオリジナルな物語が展開していく今回実装されたのは「領地巡検編」。今後も追加されていく予定だ探索の途中で敵との戦闘になることもある
途中で人影が現われると、武将を獲得できるチャンス武将獲得。ハズレの場合は立ち去ってしまう道が二股に分かれていたり、行動の選択肢が出ることも
NPCもたくさん登場する。何やら伏線になりそうな女性キャラも物語を進めていくと、様々な武将に出会う謎を探求して進んでいくと、最後にボスが待ち構えている




■ 武将は総勢400名以上! 強化と兵法書で強くしよう

武将の編成画面

 登場武将は総勢400名以上。イラストは複数のイラストレーターが手掛けており、女性キャラもかなり多い。鬼陣営の武将は鬼っぽく、幻魔陣営の武将は幻魔っぽく描かれているので、イメージとはかなり違う印象の武将もいる。

 武将にはレベルとグレードがあり、レベルを上限まで上げると、グレードを1つ上げることができるようになる。グレードを上げる時には同じ武将カードがもう1枚必要になる。消費する側のカードはレベルやグレードを問わないが、レアなカードだと2枚目を入手するのが大変そうだ。

 レベルを上げるための経験値は、強化で獲得する。強化は、他の武将カードを、1度で最大8人まで生贄にして行なえる。生贄というと物騒な感じだが、魔法陣にカードを配して行なう強化の儀式はまさにそんな単語がふさわしい怪しさだ。

 武将のステータスは「攻撃」、「防御」、「知略」の3つと、そしてその武将固有のスキルがある。攻撃と防御は戦闘に、「知略」は内政の生産量に関係してくる。編成画面では、攻撃部隊、防衛部隊、内政部隊という3つの部隊にそれぞれ5人ずつ武将を編成することができるので、それぞれの武将の得意分野を考えつつ組み合わせを作っていく。

 武将の強さに影響を及ぼすもう1つの要素が「兵法書」だ。兵法書には防御と攻撃にボーナス値を与えるもの、特殊な効果を持つものの3つがあり、城下町の城で生産できる。これを編成画面から武将に持たせることで、戦闘する時に兵法書の効果がプラスされる。

 例えば「鶴翼」という攻撃系の兵法書を持っている武将は、ラウンド開始時に自分の攻撃力が20%上昇する。消費アイテムなので、1度の戦闘で1つ消費するが、1度セットしておけば同種の兵法書を入手した時に自動的に補てんされる。


必要ない武将は、強くしたい武将の生贄にする。1度に最大8枚まで使用可能強化を実行すると、使った武将は消えてしまう。CBTでは強化は100%成功していた魔法陣の上にカードを並べて行なう、儀式のような強化画面
兵法書をセットしていく。外すまでは0枚になってもそのまま保持される城から収穫できる兵法書はランダムなので、どんどん種類が増えていく武将は総勢400名以上。自分の好みの絵柄で固めた部隊を作るのが楽しい




■ ワンクリックの簡単戦闘。5人で戦う合戦

「開戦」をクリックした後は、結果が出るまで自動で進んでいく

 「鬼武者Soul」の戦闘はカードゲーム方式。プレーヤーはあらかじめ攻撃部隊を編成しておき、「鬼物語」の中で幻魔に遭遇した時や対人戦で戦うことができる。戦闘に参加できる武将は5人で、「先鋒」、「次鋒」、「中堅」、「副将」、「大将」となり、先鋒から順に敵と戦っていく。1回ごとに判定があり、敵の体力がなくなった時点で勝利となる。

 対人戦は小規模から大規模まで多彩に用意されているが、「初陣」では近くの地域のプレーヤーと戦う「合戦」だけが体験できた。合戦は、身近な地域のプレーヤーと遊ぶ対人戦。非同期で、あらかじめセットされている相手の攻撃部隊と戦う。お互いに用意した5人の武将を先鋒から順に戦わせていって、勝ち星の数で勝者を決める。参加するには「合戦ポイント」が必要な以外は特に制限はなく、失うものもないので強化した武将の力試しとして気軽に参加できる。

 1回の対戦は5分程度と必要な時間は短いが、それでも待ちきれない人のためにクリックすれば即座に結果が分かるスキップ機能も用意されている。

 戦闘が始まってしまうとプレーヤーが関与できる要素はない。どんな編成にするか、どの武将を編成するかを考えるシミュレーション要素がバトルの醍醐味となる。武将の強さは、ステータスの数字がダイレクトに影響しているので、どのくらい強い武将を持っているかが最も重要になるわけだ。


対人戦は5人同士の一本勝負。5回の勝負でついた勝ち星の数で最終的な勝負を競う
対人戦の選択画面。相手は近隣の県のプレーヤーだ兵法書を使えば、能力で負けている武将にも逆転のチャンスが同点で迎える大将同士の最終決戦。派手なエフェクトで盛り上がる




■ 遊ぶほどにジワジワ面白くなってくるブラゲーの新境地

今までのブラウザゲーにはなかったボイスの派手な演出や豪華な音楽でとてもゴージャスな雰囲気

 今回は、プレーヤーが集まって作る「一門」や、戦闘での友達との連携などのソーシャルな機能が未実装だったため、スタンドアローン的なゲーム性だった。ブラウザゲームやソーシャルゲームはずっとプレイを続けていると、ある時点でプレイを続けるためには時間を置くか課金する必要が出てくる。しかし本作は、内政→物語→合戦を繰り返していると、ポイントの枯渇に悩まされることなくずっとプレイし続けることができた。

 何より特筆したいのは、ブラウザゲームには例を見ないほどの開発への力のいれようだ。主題歌やBGMはもちろん、キャラクターイラストからエフェクトまで、手を抜くことなく丁寧に作られている。「鬼武者」の名前を冠した新作として恥ずかしくない出来だ。

 ただ、「初陣」ではまだ実装項目が少なく、ゲームとしての奥行きを感じるまでには至らなかった。今後要素が追加されて遊びの幅が増えていけば状況が変わってくるだろう。現在すでに2次テストプレイ「戦国体験 第弐陣」の募集がスタートしており、プレーヤーのフィードバックに基づいて50項目以上の改善が予定されている。フィードバックの内容はリストで発表されているので、次回どんなところが変わるのかを確認できる。

 街づくり、探索、対人戦、キャラクター育成と遊びの要素は多い。特に県にこだわって地域性を持たせた街づくりは、今までのゲームにはあまりない要素だ。ただ、少し残念なのは自由な街づくりをゲームの楽しさに挙げているにも関わらず、建築物とバトルに密接な関連性があるためある程度建設の方向性が決まってしまうことだ。

 対人戦があるゲームでは、定石ができると全員がそこに右習えしてしまう傾向があるので、あまり関連付けが強いとみんな同じ施設ばかりになってしまうのではないかと心配になる。街づくりの多様性を取るのか、戦闘と紐付けた機能性を取るのか、現段階ではまだはっきりと方向性が見えない部分なので今後が少し気になる部分だ。

 しかし今回プレイしたのは、ゲームのほんの一部にすぎない。正式サービス後には、メインコンテンツとなるであろう、地域ごとに分かれた大規模な合戦や、陣営に分かれて戦う「幻鬼戦」が予定されている。また、人の城下町を見に行くこともできるようになるようなので、お国自慢の街づくりが楽しそうだ。


(C)CAPCOM CO.,LTD.2012 ALL RIGHTS RESERVED.

(2012年 5月 17日)

[Reported by 石井聡]