GDC 2011レポート

米EA、プライベートショウ「EA Partners Showcase」を開催
強力な大物タイトルを続々披露、モバイル/ソーシャル向けのパブリッシャープログラムも発表


2月28日~3月4日開催(現地時間)

会場:サンフランシスコ Moscone Center



 米Electronic ArtsはGDC2日目の3月1日、Moscone Center周辺のイベント会場において第4四半期以降に発売される新作タイトルのプレス発表会を開催した。本稿では同社が“EA Partner”と呼んでいるサードパーティー製のタイトルを集めた発表会「EA Partners Showcase」の模様をお伝えしたい。

 なお、GDC会場でも話題を集めているEA DICEの「Battlefield 3」のローンチイベント「『Battlefield 3』 Unveil Event」や、Chillingo、EA Mobile、Playfish、Pogoといったモバイル/カジュアル/ソーシャルゲーム系の発表については別稿にてお届けするのでお楽しみに。

 「EA Partners Showcase」では、昨年の東京ゲームショウ2010の前夜に実施された「EA Showcase Tokyo」でアナウンスされたグラスホッパー・マニファクチュアの「Shadows of The Damned」やSpicy Horseの「Alice Madness Returns」、38 Studiosの大作ファンタジーアクションRPG「Kingdoms of Amalur: Reckoning」、そしていよいよ北米で3月22日、日本で3月24日に発売されるCrytekの次世代アクションシューティング「Crysis 2」などEAの強力なラインナップが実機で披露された。ただ、今回もまたタイトルごとに細かくエンバーゴが設定されており、残念ながら本稿ですべてのタイトルを紹介することはできない。「Crysis」を除く新作タイトルの最新情報は追って解禁をお待ちいただきたい。

 本稿では、発表会の冒頭で告知された、Electronic Artsがモバイルゲームおよびソーシャルゲーム向けにスタートさせるパートナープログラムに関する発表を中心に取り上げる。

【EA Partners Showcase】
Moscone Centerから歩いて5分ほどの場所で開催された。会場の奥に見えるのは12台で実施されたPS3版「Crysis 2」のマルチプレイゾーン



■ ChillingoとPlayfishを軸に展開させるEAがモバイル/ソーシャル向けパブリッシングプログラムをスタート

ジョー&クリスと紹介されたChillingoの2人。短いトレーラーの後、新しいパートナーと出会えることを楽しみにしていると挨拶した
登壇したPlayfish副社長のCJ Prober氏は、挨拶の冒頭で「『Pet Society』の『Crysis 2』のミニゲームが見せられなくて申し訳ない」とジョークを飛ばし笑いを誘った

 「EA Partners Showcase」の発表は大別して2つある。ひとつは上記のサードパーティー製の強力なタイトルラインナップの発表、そしてもうひとつがEAが近年力を注いでいるモバイル/ソーシャル向けの施策の発表である。

 軸となるのが2009年と2010年にそれぞれEAの子会社に名を連ねた英Chillingoと英Playfishである。EAは2009年にソーシャルゲーム大手のPlayfish、2010年に「Angry Bird」のメガヒットで一躍名を挙げたモバイルゲームパブリッシャーのChillingoをそれぞれ買収し、それらの分野の強化する意思を鮮明にしている。

 Chillingoは2002年に設立された、当時で言うカジュアルゲーム、現在で言うモバイルゲームを得意としたゲームパブリッシャー。物理流通を介さないデジタル流通のみで多数のゲームを展開し、iPhone向け、iPad向けにヒット作が多い。代表作は先述の「Angry Bird」に加えて、「Cut the Rope」、「Helsing's Fire」、「iBomber Defense」、「iDracula」など。

 Playfishはソーシャルゲームの分野で米Zyngaに次ぐナンバー2のシェアを誇るソーシャルゲームパブリッシャー。代表作はFacebookアプリの「Pet Society」、「Restaurant City」など。2009年にEAに買収されてからはEAの子会社としてEAのIPを使ったソーシャルゲームも手がけ始めている。近作は「FIFA Superstars」、「Madden NFL Superstars」、「MONOPOLY Millionaires」など。

 さて、今回の発表では、主に独立系のゲームデベロッパーに対して、ChillingoもしくはPlayfishとパブリッシャー契約を交わすことで、EAグループ独自のパートナープログラムが受けられることが明らかにされた。具体的な条件については触れられなかったが、現在のEA partnerと同等のサポートが受けられるとしており、独立系デベロッパーの大きな懸念事項である資金面で大きなバックアップが受けられそうだ。

 ターゲットプラットフォームは、AppleのApp Store、GoogleのAndroid、そしてFacebookで、EAグループで独自のプラットフォームを構築するようなことはなく、そのままのスキームでそれぞれのシェアの拡大を目指す。ChillingoとPlayfishはこれまでもパブリッシャーとして同様の取り組みを水面下で行なっていたはずだが、親会社のEA自体が表明することで、パブリッシャーを探している優秀な独立系デベロッパーをいち早く囲い込みたい考えだ。

 この試みがどのような形となるかは予断を許さないが、モバイルゲームやソーシャルゲームが一定のシェアを獲得する新しい時代においても、EAは世界のリーディングカンパニーの座を明け渡すつもりはないことは明らかだ。今回サードパーティーからも次々と強力なタイトルが発表された。2011年のEAにも要注目だ。


【Playfish Publishing Program】
Playfishはスライドを使って、Playfishとパートナー契約を結ぶメリットをアピール。具体的なメリットは、マーケティング&流通のサポート、プロダクトサポート、リソースサポート、そしてテクノロジーサポート。CJ Prober氏は「Playfishのミッションとして、ゲームの世界を変え、人々の遊び方を変えることを掲げてきたが、今後は新しいパートナーとそのパッションを共有したい」と意気込みを述べた



【Crysis 2】
いよいよ3月22日(日本では3月24日)に発売となる「Crysis 2」。今回の発表会では、PS3版12台を使って、大きな魅力のひとつであるマルチプレイモードをプレイすることができた。しかも新マップ、新モード、そして3D立体視バージョンと豪華仕様。マルチプレイモードは先に公開されたXbox 360版マルチプレイデモのフィードバックを活かしており、北米では最新バージョンが本日よりダウンロード可能になるという。PS3ユーザーが待ち望んでいたPS3版のマルチプレイデモは3月15日の配信開始が告知された。3D立体視による試遊は、UIがHUD上に表示されているという本来の設定が自然に感じられる感じで、自然な雰囲気で楽しむことができた

【Rango】
Paramount PicturesのCG映画「Rango」をモチーフにしたアクションゲーム「Rango The Video Game」。北米では3月1日から発売が開始された。日本での取り扱いは未定。パブリッシャーはParamountのゲーム部門Paramount Digital Entertainmentだが、EAが流通を担当しているため紹介された。日本では知名度がないため、愛着がわきにくいが、主人公Rangoの不思議な旅が追体験できるアクションアドベンチャーゲームとなっている。PS3、Xbox 360のほか、WiiやDS向けにも発売され、低年齢層にもアピールできる内容となっている

(2011年 3月 2日)

[Reported by 中村聖司]