Electronic Entertainment Expo 2010現地レポート

E3 2010最大の話題作! THQ「Homefront」プレビュー
北朝鮮に支配された未来のアメリカを生き抜くレジスタンスアクション


6月15~17日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center



 E3の名物といえば行列である。今年もっとも長かった行列はなんといっても任天堂ブースのニンテンドー3DSだが、ゲームソフトの分野ではTHQの「Homefront」が1番だったかもしれない。なにしろ、会場の内外の至る所に広告を出していた一方で、出展がわずか20席ほどのプライベートシアターだけだったため、1度は見ておきたいと考えた来場者でみるみる長い行列ができてしまっていた。

 「Homefront」の開発を担当しているのは「Frontline: Fuel of War」を手がけたTHQの子会社Kaos Studios。「Frontline」では現代のエネルギー危機を基点として発生した第3次世界大戦が描かれたが、現在の危機を基点に大きな紛争をぶち上げるという点では「Homefront」も非常に似通ったコンセプトを持っており、「Frontline」の姉妹作という言い方もできるかも知れない。

 発売時期は2011年2月を予定し、発売プラットフォームはXbox 360、PS3、Windows PC。昨年のE3で初公開され、今回で2回目の出展となる「Homefront」はどのようなゲームなのかご紹介したい。なお、下記に掲載しているトレーラーは、プライベートシアターで見ることができたものの一部となっている。ぜひ1度ごらん頂きたい。


【「Homefront」バックストーリー】


【「Homefront」最新トレーラー】


【THQブース】
THQブースは「Homefront」以外にも、「WWE Smack Down VS RAW 2011」「UFC Undisputed 2010」シリーズ最新作。「Redfaction Armageddon」、「Warhammer 40000 Space Marine」、「de Blob 2 The Underground」などを出展



■ 舞台は北朝鮮支配下のアメリカ。どこかで見た風景でレジスタンスアクションを繰り広げる!

北朝鮮の国旗をあしらった赤地の布で目隠しをされた米兵というショッキングなパッケージイメージ

 「Homefront」はなんといっても設定がユニークだ。2010年現在の北朝鮮の核開発問題を基点に、縦横に空想の翼をを広げた設定となっている。その一端を紹介すると、2011年以降も北朝鮮は核開発を続け、金正日の死去、金正雲体制への移行を経て、朝鮮民族の統一、大朝鮮連合の結成、連合への日本の参加、東南アジア地域への勢力圏の拡大と2020年ぐらいまでに驚くほどの成長を見せていく。

 一方、世界の盟主であったはずのアメリカはエネルギー政策に失敗し、経済は破綻。エネルギーの価格は上がり続け、街では連日デモが発生し、政府の無策をなじる怨嗟の声で満ちあふれる。そうした状況下で北朝鮮は間髪入れずにアメリカに侵攻し、ハワイ併合、サンフランシスコ上陸、そして米軍の殲滅と最悪の事態へと突き進んでいく。

 プレーヤーは2027年の北朝鮮支配下のアメリカを舞台に1兵士としてレジスタンス活動に参加していくことになる。それにしてもニューヨークが壊滅する「Crysis 2」といい、本土にロシア軍が侵攻してくる「Modern Warfare 2」といい、核戦争でワシントンDCが壊滅してしまう「Fallout 3」といい昨今の大作タイトルには“被侵攻もの”が多い。元々映画の題材としては普遍的であるためその影響が大きそうだが、ゲーム単体で考えて見ても素材が身近にあるためシーンにしやすいということ、ありふれた日常とのギャップがおもしろさに繋がることなどが理由として挙げられそうだ。「Homefront」の異常なまでの期待度の高さは、外れの少ない“被侵攻もの”だからということも挙げられるのかもしれない。

 さて、デモでは、実機によるデモンストレーションが行なわれた。木々とカモフラージュネットを巧く使ったセーフハウスからスタート。これがプロローグシーンなのかどうかは不明だが、起こしてくれた人物に付き従い、セーフハウスの中を見て回ることになる。

 セーフハウスは、複数の家屋と木々で覆われた中庭で構成されており、家屋には子供が寝袋を敷いて床で寝ていたり、破れ目が目立つソファでは乳飲み子をあやす女性の姿も確認できる。中庭では子供の遊び場や作業場など廃材を使ったいくつかの施設が置かれ、家庭菜園や羊の飼育など生活感を感じさせる設備もあった。幸せの象徴であるアメリカンマイホームが壁はボロボロで、落書きも多く、ピカピカの設備は何ひとつない。被占領状態の困窮ぶりを丹念に描いている。この辺は「Fallout 3」や「Metro 2033」にも通じるところがある。

【セーフハウス】
これがデモで見たセーフハウス。実際はひとりではなく、年配のNPCに連れられて見て回った

 場面は変わって、部屋の中。丁度目の前の女性兵士が北朝鮮の武装兵の首を絞めて引き倒しているところだった。彼女は作戦を共にする味方。扉を開けるとそこは2階で、時間帯は深夜。眼下には北朝鮮の重要拠点となっている旧ショッピングセンターと駐車場が目に入る。しばらくすると拡声器を付けた車が駐車場に突進して中程で停止し、入り口付近から現われたレジスタンス兵と交戦状態に入った。プレーヤーはスナイパーライフルを持っており、側面から遊軍を支援するという役回りのようだ。

 ところが北朝鮮軍の攻撃ヘリが大規模なナパーム攻撃を地上に向けて行ない、辺り一面は炎に包まれる。体に火が付いて逃げ惑う北朝鮮の兵士や、ガソリンに引火してはじけ飛ぶ車などを避けながら、仲間と共に火の海から非難していく。やがて櫓にとりついて炎から身を守ることに成功するが、再び攻撃ヘリの攻撃を受け、櫓ごと倒されてしまう。身を投げ出され、北朝鮮兵士に見つかってしまった主人公一行。しかし、どこからともなくやってきた機関銃を取り付けた自走式装甲車両が助けてくれる。その後も、攻撃ヘリとのバトルや大きな爆発が相次ぎ、休む間もなく次々にドラマティックに物語が展開していく。

 このスクリプト多用型のゲームデザインは、「Call of Duty」シリーズにそっくりだが、めまぐるしく展開が変わるためゲームの流れから取り残されて何をしていいかわからなくなる懸念がある。しかし、見ていてひとつ感心したのは、スクリプトが処理されるたびに新しいオブジェクトが細かく設定されることだ。このため万が一どうすればいいかわからなくなっても、オブジェクトを確認すれば、「どこそこに行く」、「攻撃ヘリを撃墜する」といった具合に、今まさにやるべきことがすぐわかるようになっている。これは非常に親切な機能だ。

 今回はまだ実際にプレイすることはできなかったが、ゲームそのものの開発はかなり進んでいることを伺わせた。発売時期は冒頭でも触れたように2011年2月を予定。日本展開も視野に入れてパブリッシャーとの交渉に入っているようだ。実はこのゲーム、マルチプレイモードや細かいバトルシステム、ストーリーの行く末などわからないことだらけなのだが、東京ゲームショウで日本語版が見られることを期待してこの稿を終えたい。


【闇夜のゲリラ戦】
これがデモで見た旧ショッピングセンター駐車場を舞台にしたゲリラ戦のシーン。闇夜を照らすサーチライトがまぶしい。攻撃ヘリのナパーム攻撃によって戦場はいっぺん。射撃戦から紅蓮の炎から逃げ惑うことになる


(2010年 6月 18日)

[Reported by 中村聖司 ]