「カールじいさんの空飛ぶ家」WiiとDSで発売
映画プロデューサー、ストーリースーパーバイザーインタビュー
映画のスタッフも影響を受けたゲームのクオリティ
カールじいさんは最も大切な人……妻に先立たれ、ふたりの想い出が詰まった家に風船を仕掛けることで、家ごと冒険の旅に出る |
ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン配給によるPIXAR制作のフルCG映画「カールじいさんの空飛ぶ家」が12月5日より全国一斉ロードショーで公開となる。カンヌ国際映画祭でオープニング上映され、東京国際映画祭でもクロージング作品として招待されるなど、各国で話題を集め高い評価を得ている。
主人公は最愛の妻を失いひとりぼっちになってしまった、78歳のカール・フレドリクセンこと“カールじいさん”。1人想い出のつまった家にとどまっていたが、ふとした事件から思い切った行動に出る。それは数多の風船を用意し、家ごと冒険の旅に出るということ。妻との約束……パラダイスフォール (秘境の滝) への冒険を果たすために。ところが、1人旅のはずだったのに偶然珍客が加わることに。近所に住む少年ラッセルが家に居合わせてしまったのだ。カールとラッセルの旅は、意外な人物との出会いもあり大冒険へと繋がっていく。
おじいさんが主人公という、これまでにあまりないキャラクター。そして妻の死から始まる物語と言うことで、しんみりしたストーリーを想像するかもしれないが、大冒険に次ぐ大冒険に、老若男女誰もが楽しめる映画に仕上がっている。しかしそこから得られる“想い”は深く、様々なことを考えさせられる。できればだれかと一緒に観に行って欲しい作品だ。
その「カールじいさんの空飛ぶ家」がゲーム化された。制作は米THQで、日本ではイーフロンティアのローカライズにより、カラフルで映画さながらのグラフィックスで2人で協力プレイも楽しめるWii版と、映画のストーリーを楽しめるニンテンドーDS版の2つが発売される。今回は映画のプロデュースを担当したジョナス・リヴェラ氏とストーリースーパーバイザーのロニー・デル・カルメン氏にゲームとの関わり合いについて合同インタビューを行なう機会があった。映画のスタッフにゲームの映像を見せ、より高みを目指すよう叱咤激励したといった、面白い話題も語られた。
カールと妻のエリーは小さい時からの幼馴染み。ふたりで協力し合い、励まし合いながら人生を歩んできた。ふたりの夢はいつか冒険の旅に出ることだった…… | |
引っ越してきた当初は閑静な住宅街だったカール家も、今ではすっかり都会のど真ん中。立ち退きに応じないのはカールじいさんだけになってしまった | エリーが亡くなってからは大切な家を守るためカールじいさんはかたくなに心を閉ざしてしまった |
■ 映画プロデューサー、ジョナス・リヴェラ氏とストーリースーパーバイザー、ロニー・デル・カルメン氏インタビュー
―― まず最初に、今回の映画はこれまでにないキャラクターが登場しストーリーが展開すると言うことで、世界観などについてどういったきっかけで着想し構成していったのでしょうか?
ロニー・デル・カルメン氏(以下、ロニー): 私自身が発案したわけではないのですが、どういったところからこういった物語を思いついたかという話をさせてもらいます。私の役所はストーリースーパーバイザーで、もともとピート・ドクター監督とボブ・ピーターソンのふたりが思いついた内容からスタートしています。
この物語にはまず、カール・フレドリクセンという78歳の老人が妻とした約束(パラダイスフォールに旅をする)を果たせなかったというところがあります。そして、ピートとボブが1番はじめに考えついたのは、老人が現実から逃避するために何千もの風船を使って家を飛ばすという点です。ではなぜ家を飛ばす必要性があったか?どこに行くのか?道中なにが起こるのか?という話は決まってなかったので、それを我々も含めて決めていったのです。
もともとの発端は、いろいろなことがありピート監督が現実から少し距離を置きたいと思ったことがあり、それを老人というキャラクターを使って描いていこうとしたんです。このピート監督の持っていた小さなアイディアをどんどん膨らませていったのです。78歳のお爺さんが持つたくさんの想い出、人間関係を考えていき、彼が風船で家を飛ばす前にどういった人生を歩んできたのか?どういった冒険に出るのか?と考えていく段階で他のキャラクター……妻のエリーやラッセル、むかしの冒険家といったキャラクタが生まれてきました。
―― ゲームをプレイするということはある意味現実から離れる遊びとも言えます。映画では現実から離れると言うことが描かれていますが、その映画が、ゲームになったことに対してどのように感じられましたか?
ジョナス・リヴェラ氏(以下、ジョナス氏): 仰るとおりなんですが、映画ではカールじいさんが逃避するという行為を観客のみなさんに観察してもらう立場です。これがゲームになった場合、(逆に)プレイする人に“逃避”自体を体験してもらうことになります。なかなか、ゲームのアクションヒーローとしてこういった老人のキャラクターを使おうとは思わないでしょう(笑)。
実は映画を制作している早い段階で、THQの側からPIXARにゲームのアイデアを頂き、米国で発売することが決まっていました。そして、彼らが作ってくれたゲームがあまりに出来が良かったので、映画の制作スタッフにゲームのプロトタイプを見せたのです。そこでスタッフがゲームの影響を受けて、カメラの使い方などが変更されました。通常ですと作品があってからゲームが影響を受けるのですが、今回はゲームからの影響を映画が受けました(笑)。
影響を受けたのはカメラの使い方が主だったのですが、実際に例を挙げると、山々の断崖絶壁の写し方があまりにも良かったので、「自分たちも最低これくらいの映像は作らなきゃね!」と思ったのです。なので、PIXAR史上初めてだと思うのですが、ゲーム制作のほうが映画より先に進んでいたんですね。
―― ゲームをプレイするのは子供が多いかと思うのですが、子供と大人ではこの映画を観た時の反応が全く違ったものになるかと思いますが、プレイするであろう子供達にどんな風に観て欲しいと思われますか?
ロニー: この映画の強みは、お爺さんと孫のようなキャラクタが登場すると言うことで、実際に観客側もお爺さん・お婆さんと孫で一緒に楽しんでもらえる映画と言うところだと思うのです。いままで我々は映画の中で老人を扱ってこなかったので、「カールじいさんの空飛ぶ家」では家族の中で最も年長者と最も若い孫のような子供が同時にに楽しめる作品だと思うんです。
ビデオゲームと言うことになると私の子供のような若い人も遊ぶと思うのですが、子供達は私に向かって「プレイしているところを見ていて!」とよく言うんですよ。そこで私は子供達がゲームをプレイするのをよく見ているのですが、「カールじいさんの空飛ぶ家」のゲーム版では2人以上で遊べますので、場合によってはおじいちゃんと孫でプレイできるゲームだと言うことで、それはそれで良い機会だと思いますね。
―― お2人はすでにゲームをプレイされましたか?プレイした感想は?
ジョナス氏: とても楽しかったですし、興奮しましたね。なぜならまず飛行機を飛ばす経験ができますし、数々のパズルを解いていくこともできます。そして、ゲームの利点としては、継続してプレイしていけるところがあると思います。1つの障害を克服してもどんどん次々とチャレンジできると言うことがあります。さらに場合によってカールでプレイしていればラッセルとなにかできることもありますし、ラッセルでプレイしていれば逆にカールとなにかすることもできます。
とても興奮することとしては、映画の中では描かれていないことをゲームの中で遊べます。例えばカールが虫を潰したりですとか、映画の中では登場しない別の冒険を楽しむことができます。
PIXARには大きな試写室があるのですが、そこでアニメーターを呼んでゲームをプレイしてみたんです。すごく迫力があって“Cool”でした(笑)。
―― 最後に日本のユーザーに向けて一言お願いできますか?
ジョナス氏: 本当にファンのみなさんには心から何度も何度も「ありがとうございます」と言わせていただきます。そして私たちの作品を元にこのようなCoolな素晴らしいゲームを作っていただきありがとうございます。
映画を観に行っていただくことだけでなく、私たちの映画の世界観を反映したゲームやおもちゃが出来ていると言うことは本当に喜ばしいことで、ゲームを手にすると言うことは、自分の大好きなものを自分の一部にしてもらえるような感覚と同じ事だと思うので、そういったことでゲームを楽しんでもらいたいと思います。
―― どうもありがとうございました。
インタビューでは交互にいろいろと答えてくれた。ゲームのグラフィックスを見て映画の中盤以降のシーンに影響を与えたといった、興味深い話が飛び出した | パッケージを強調しての1枚。サービス精神旺盛なお2人で、いろいろとポーズをとってくれた |
■ 2人で協力して遊べる、Wii版「カールじいさんの空飛ぶ家」
Wii版「カールじいさんの空飛ぶ家」 |
Wii版「カールじいさんの空飛ぶ家」は、映画の中盤以降に登場する「パラダイスフォール」がある未知のジャングルを舞台に大冒険が繰り広げられる。1人のプレーヤーでプレイした場合はカールとラッセルを切り替えながら交互に操作してゲームを進めていくことになるが、プレーヤー2人でそれぞれのキャラクタを操作し協力しながらゲームを進めることもできる。音声は声優による日本語吹き替えを実現している。
ゲームでは、映画にも登場する伝説の鳥・ケヴィンとしゃべる犬のダグを呼び出して助けてもらうことができる。2匹のキャラクターはそれぞれ特殊な能力を持っており、これらの能力を利用しなければ先に進めない仕掛けなども用意されている。
プレーヤーはゲームを進めていく中で、飛行中に家から落として行方がわからなくなった想い出の品を集め、エリーが書き残した日記「エリーの冒険ブック」を埋めていくといった収集要素も用意されている。一方、ボーイスカウトのラッセルは道中現われる虫を虫取り網で捕まえたり、植物を鑑定することでごほうびバッチを集めることもできる。
用意されているステージは11面で、最初の面以外はステージ最後にボスが現われ戦うこととなる。それぞれのステージには様々なアクションで挑むこととなり、飛行機を操作したり、鳥に乗り家を引っ張ったり、ウォータースライダーのような場所を滑るように下るなど違ったアクションが楽しめる。
操作は簡単で、1ボタンで岩をよじ登るアクションから巨大な石をひっくり返したりワニの口につっかい棒をするなど様々なアクションが可能となっている。さらにゲームの不得意な人でも楽しめるよう、時間や難易度からプレーヤーが苦戦している場面を判断し、追加でヒントが表示される機能も搭載されている。
アンロック後に最大4人まで参加できるマルチプレイ用のミニゲームなども収録されている。
【スクリーンショット】 | ||
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映画における中盤から後半にかけて描かれている大冒険のシーンがゲームの中心となる。3Dで表現されており、映画を観た後でプレイするとより感情移入できるだろう |
■ カールじいさんとラッセルそれぞれの特性を活かして進んでいくDS版
DS版「カールじいさんの空飛ぶ家」 |
ニンテンドーDS版のゲームは映画のストーリーに沿って進行。映画のシーンを再現しているカットなどが挿入され、映画を観てからプレイすれば映画の追体験となり、映画を観ていなくても雰囲気を楽しむことができる作りとなっている。
プレーヤーは基本的にはカールを操って進めていくが、場面によっては後ろからついてくるラッセルと切り替えて進めなければならない。たとえばラッセルは段差のある仕掛けが苦手なため、カールが先に行き高いところに登りラッセルを引っ張り上げることになる。逆に水に入ることができるのはラッセルだけで、プレーヤーはラッセルに切り替えてカールを助けなければならない。ステージを進んでいく中でバラバラに進むことも可能だが、マップ間を繋ぐエリアチェンジとステージのゴール達成条件はふたりがそろっていなければならない。
カールとラッセルはそれぞれ数々の小道具を持っており、これらをセットすると画面上に小道具アイコンとして表示され使用することができる。ゲームを進めていくためには、これらの小道具を使用していく必要がある。
上画面には常に犬ゲージが表示されており、これが諸条件で減少していきゼロになった段階でバトルに突入する。これは映画の中にある「犬に追いかけられる」シーンからくる設定で、この犬バトルに突入した段階で専用のマップに自動的に移り、犬と戦うこととなる。ゲームではタイムアタックも可能となっているが、犬バトルの間も時間がカウントされるため、なるべく犬バトルにならないようにゲームを進めた方がタイムアタックでは有利となる。
DS版のステージ数は7面。全ての面の最後にはボス戦も用意されている。
【スクリーンショット】 | |||
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DS版もWii版同様に“パラダイスフォール(秘境の滝)”のあるジャングルを中心に冒険を楽しむこととなる。ステージを進んでいく内にカールとラッセルを切り替えて、それぞれの特長を生かし協力してゲームを進めていかなければならない。たとえばカールで先に進み高いところからラッセルを引き上げてあげるなどの協力が必要な仕掛けが用意されている |
■ ピート監督「驚きとこれまでにないものを盛り込んだ。劇場に来るというのはそういうこと」
記者会見でピート監督は「歳をとったとき『UP (同映画の原題)』して人との繋がりを絶つのではなく『DAWN (地上に降りてくる)』して人と繋がることも大切」と語った。これは映画の裏テーマとも言えるコメントの1つで、最後まで見るとうなずける言葉の1つだ |
10月に開催された東京国際映画祭に合わせて映画「カールじいさんの空飛ぶ家」の制作スタッフが来日し記者会見に挑んだ。来場したのは監督/原案/脚本のピート・ドクター氏、共同監督/原案/脚本のボブ・ピーターソン氏、プロデューサーのジョナス・リヴェラ氏、ストーリー・スーパーバイザーを担当したロニー・デル・カルメン氏の4名。
ピート監督は「『カールじいさんの空飛ぶ家』は我々にとって特別でユニークな作品。(プロモーションで)各国を旅してきたが、日本が最後の国。ケーキの上に乗ったチェリーのようにおまけが付いた」と喜びを表現。「カールじいさんの空飛ぶ家」はPIXARにとって10作目という記念すべき作品となるが、「1作目も10作目も関係ない。驚きとこれまでにないものを提供することが重要。劇場に来てもらうと言うことはそういうことでしょ?」と続けた。
「大切にしたことは?」と問われたロニー・デル・カルメン氏は「主人公の感情。映画ではパラダイスフォールへと旅をするが、そういった物理的な旅もあるが……心の旅、夫婦の関係性を大切にした。伝えたかったことは妻への愛だ」ときっぱりと答えた。
お爺さんが主人公として活躍する映画となったことについてピート監督は「もし僕がフリーで(メジャーの)スタジオに企画書を持って行ってたら絶対ダメと断られるだろう」と言い、企画書に興味を持ちOKを出したのがジョン・ラセターだと明かした。また、ボブ・ピーターソン氏は「おじいちゃんやおばあちゃんは非常に面白い。話を聞いていると楽しい。お年寄りは苦労してきた分、今では好きなことを言っても良い権利を得ている。そういう点で面白い」とコメント。監督もいろいろなリサーチを行ないお年寄りというキャラクターを作り上げていったようだ。
同作品は一部劇場ではディズニーデジタル3-Dで上映されるが、3Dの手法についてジョナス・リヴェラ氏は「3Dで上映することが決まってから考えたことは、3Dは新しい技術だが物語を伝える1つの手段と言うこと。ものを投げつけたり(することで、ものが飛び出してくるの)ではなく、観客がスクリーンの中にのぞき込むような効果を狙った。映画に入り込めるような技術として可能性があると思う」と語り、映画においてはストーリーが大切で、「仕掛けにこだわると人は付いてこない」とあくまでも充実したストーリーで観客に想いを訴えていくことが大切だと強調した。これは3D云々ではなく、アニメにも言えることで「アニメというのは手法。カンヌに認められたのはアニメというジャンルだからではなく、映画として認められたのだと思う。我々は良い映画を作るだけ」と語った。
発表会には映画の応援団としてタレントのアニマル浜口夫妻も来場。映画を観た感想を問われたアニマル浜口さんは「空を飛ぶ姿を見て涙が溢れた。夢があるから生きることができることを教えられた。一切の困難を超えれば夢は叶う。家族愛も描かれていて、夫婦が長く仲良くしていなければ京子(娘でメダリストの浜口京子さんのこと)もいなかった」と語り、初枝夫人は「良い時ばかりではない。苦しいこともあれば楽しいこともある」と夫婦で歩んできたことを振り返りながらコメントを残した。最後はアニマル浜口さんの恒例の「気合いだー」の10連発が注入され記者会見を締めくくった。
ピート・ドクター氏 (監督/原案/脚本) | ボブ・ピーターソン氏 (共同監督/原案/脚本) | ジョナス・リヴェラ氏 (プロデューサー) | ロニー・デル・カルメン氏 (ストーリー・スーパーバイザー) |
(C)DISNEY /PIXAR
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□ディズニーのホームページ
http://home.disney.co.jp/
□Pixarのホームページ
http://www.pixar.com/jp/
□映画「カールじいさんの空飛ぶ家」のホームページ
http://www.disney.co.jp/movies/carl-gsan/
□イーフロンティアのホームページ
http://www.e-frontier.co.jp/
□ゲーム「カールじいさんの空飛ぶ家」のページ
http://carl-gsan.e-frontier.co.jp/
(2009年 12月 2日)