ニュース
【特別企画】「超次元変形フレームロボ」開発者インタビュー&体験レポート
“組み替え”に、“分解”も楽しい、新時代のプラモデル
(2015/9/4 00:00)
バンダイが9月19日に発売を予定している「超次元変形フレームロボ」(以下、フレームロボ)は、今年6月の東京おもちゃショーにて発表された新作のプラモデルで、ロボットや武器などの状態に完成させたあと、再び組み立てる前の状態に戻して遊べるという、独自のギミックを備えている。
ガンプラをはじめ、近年では「妖怪ウォッチ」、「ふなっしー」など、キャラクターIPのプラモデルを主力商品とするバンダイホビー事業部が、これまで積み重ねてきたノウハウをつぎ込んで展開する「フレームロボ」とは一体どのようなものなのか? 今回、本商品の開発者にインタビューを行ない、発売前の製品サンプルを一足先に触らせてもらった。感触についてもお届けしてみたい。
“何度でも組み立てられるプラモデル”、「ランナーロック」がその仕様の原点
「超次元変形フレームロボ」は、やや派手目でヒロイックなデザインに大型の武器を持つ、比較的低年齢を意識した新しいプラモデルシリーズ。その名の通り“フレーム”がむき出しとなったデザインが特徴だ。
本商品の最大の特徴はただ説明書の通りにパーツを組み上げて完成させて終わりという通常のプラモデルと大きく異なり、完成したロボットの状態から成型時の形状に再び戻せるという、これまでにないユニークなコンセプトを持っているところにある。
さらに単純に分解・組み替えができるという点だけでなく、成型時の形状を「フレームフォーム」と名付け、エンブレムのようなオブジェとして楽しめるようなデザインが施されていたり、ロボットから武器の形状「ウェポンフォーム」へと変形させることで、複数揃えたときのプレイバリューを高めていたりと、細かなところまでよく考えられている。
筆者は東京おもちゃショーの取材で本商品を見て、非常に興味をそそられた。今回、この「超次元変形フレームロボ」の開発経緯やコンセプトを聞き、そして何よりも触らせてもらうことはできないかと考え、取材を申し込み、開発担当者であるバンダイホビー事業部の安永亮彦氏と、清水和幸氏に話を聞いた。
まずは、「本商品はいかにして生まれたか?」を質問してみた。「ガンプラという主力商品がある中で、さらに低年齢層の間口を広げられる商品を、ホビー事業部から発信していきたい、というのが最初の企画の経緯でした」と語ったのは、この「フレームロボ」を企画した、同事業部の安永氏。
「もちろん、我々がただ格好いいだけのロボットを作っても仕方がないので、ホビー事業部ならではの、“プラモデル”という成型品に何かしらの付加価値を付けたものを作り出すことを考えたんです」とさらに安永氏は言葉を続けた。この方向性から浮かんだのが、かつてガンプラなどで採用された「ランナーロック」だという。
「ランナーロック」とは、ランナーに付いたパーツを切り取らず、ランナーごと合わせることで、一度に複数のパーツが完成するという独自の成型方式で、低年齢のユーザーでも簡単に組み立てられ、部品をなくす心配もないという方式だ。しかしこの方式は、一部のガンプラで使用されたものの現在は使われなくなってしまっている。
今回は、そのノウハウを現代の技術で進化させて商品化するという企画でスタートした。しかも「フレームロボ」では、ランナーロックからそのランナーさえも取り去るという、プラモデルの概念を覆す進化を実現している。
そしてこの企画にあたって、もう1つフィーチャーされたのが、「1度組み立てたプラモデルを、何度も組み立てることができる」というギミックだ。「組み始めてからできあがるまでの、プラモデルの一連の楽しみを繰り返し体験できる」という、完成後の遊びの新しい提案であり、鑑賞や改造などとはまた違う、ブロック玩具的な要素をプラモデルに取り込んでいるという。
このコンセプトを実現させるために素材にも工夫がされている。やや軟質の「ポリプロピレン」を採用し、パーツをつなぐ部分に蛇腹やベルト状の部分にヒンジの効果を出して、これらを曲げて合わせるだけで組み立てられるようになっている。またこれによりパーツ数が必要以上に増えないという利点もあり、低年齢層でも作りやすい仕様となった。
武器形態の変形をくわえより楽しいロボに。コンセプトに惑星のイメージも!
「フレームロボ」のデザインに関しては、安永氏は「人型のロボットが成型時の状態に戻りつつ、ランナーは這わせず、さらに見栄えがする形状で、完成後の姿が一見ではわからないようにする」と、かなり難度の高い設計をデザイナーに発注したという。
安永氏は、「完成時の状態に戻すからには、成型状態のフレームフォームも見栄えするものにしたいし、さらにユーザーが最初に組み立てるとき、どんな過程でロボットになるのかワクワクするように演出したかった」と語った。
この難度の高い要求にデザイナーと設計担当者は見事に応えた。設計の苦心のすえに完成したのが、ショーなどで一般への試遊時に披露した通称「プロトガイア」と呼ばれる試作品だ。この時点で、安永氏の理想に近い形に完成していたが、まだこの段階では武器に変形することはできなかった。
プロトガイアの完成でフレーム←→ロボットの変形が実現したところで、安永氏は今後シリーズを展開する上で、複数集めたときに一緒に楽しめるよう、ロボットからさらにもう一段階、武器の形態へと変形できる機構を設けた。このギミックにより設計の難易度はさらに上がったが、プレイバリューを大きく高めることができたという。
さらにデザイン上での大きなテーマとして「宇宙」が盛り込まれている。その中でも強く宇宙を象徴するのが、ロボット時の胸の部分にある惑星で、青は地球をイメージした「ガイアフレーム」、赤は火星をイメージした「マーズフレーム」という感じで、ロボットの名前にもつながっている。さらに人工衛星や宇宙船を連想させるソーラーパネルやトラス状のモールドなど、宇宙的な意匠を随所に取り入れているのだ。
お子様でも気軽に買える、ワンコインへのこだわり
そして、これだけのプレイバリューを備えながら、驚かされるのは本商品が「500円」という価格で販売されることだ。値段が上がりつつある近年のプラモデルとしては考えられない低価格だ。
この価格設定について安永氏は、「死ぬ思いでした」と苦笑いを浮かべた。安永氏はかつて低年齢層が主体の「SDガンダムBB戦士」シリーズを手掛けていて、「子供たちのおこづかいの範囲内の価格設定」は決して譲れない部分であるという。特に今のような情報が氾濫する中であえて手にしてもらえるような、「500円で500円以上の価値を出していく企画の実現」に力を入れているとのことだ。
この価格を実現するため、複数のカラー成型や塗装などはあえて施さず、色に頼らずとも全体に情報量の多いデザインにまとめ、完成時にモールドから影が落ちることで、無着色でも見栄えのする造形を実現したという。安永氏は「いち企画者として、500円というワンコイン価格には今後もこだわっていきたい」と語った。
作っていて気持ちいい感触と、素立ちでも見栄えする完成度の高いデザイン
ここからは本製品「ガイアフレーム」(青色)の簡単な組み立てインプレションもお届けしてみたい。これまでの話にあるとおり、キットにランナーはなく、1枚のシート状になっている。各パーツがゲートでつながっていて、これは“指でちぎる”ことが可能だ。
昨今の部品の細かいプラモデルではニッパーを使うのが推奨されているが、筆者も子供時代はもっぱら指で部品を取り外していた。指でちぎったときの「パチッ」という感触は、なかなか気持ちよく、これまでのプラモデルではあまり味わえなかったものだ。
頭、胴体、腕、脚などの比較的大きな部位は、蛇腹やベルトで小さなパーツがつながっていて、それらを折り曲げ、曲げた先にあるダボ穴や溝などにはめ込むことで1つの形になっていく。
今回筆者は説明書なしで組み立ててみたのだが、これがパズルのような感覚がなかなか面白かった。最初はあえて説明書を見ずに作ってみるのも面白いかもしれない。なお折り曲げる部分が場所によって白くなるところもあったが、これは材質上仕方のないもので、組み替えや変形にはまったく問題ない耐久力があるとのことだ。
パーツの連結は各キット共通の約2mmのボールジョイントと、約1.5mmのダボとダボ穴を使って行なう。前者は主に関節部に採用され、後者はもともとフレームフォームに戻すために用意されたものだが、サイズが共通であらゆるところに配置されているので、他のパーツを使った組み替えにも使える。
最初の成型状態からロボット形態の「ロボフォーム」までは、10分かからずに完成させることができた。本体のほか、一部見た目をよくするディテール的なパーツもあり、これをどこに取り付けるのか迷ったが、あまり深く考えず自由に組み付けても違和感はないだろう。またオノのようになるウェポンフォームは、腕と脚、翼のパーツのみを使用して、2組作ることができるようになっていた。
筆者個人の感想としては、作ったり戻したりする面白さももちろんあるのだが、完成してからのロボフォームの見た目が素直に格好いいと思えた。変形などの特殊な機構を備えたおもちゃやプラモデルは、どうしてもプロポーションが犠牲になってしまう印象があるが、このフレームロボはリアルとデフォルメの中間程度のバランスで、筆者好みのスタイルにまとまっていて、素立ちのポーズでも見栄えがするところも気に入っている。
「フレームロボ」の仕様や価格などを決めるうえで安永氏と清水氏の頭にあったのは、「ホビー事業部として何か新しいことを打ち立てて、ビジネスとして成立させる」という点だったそうだ。
バンダイのほかの事業部、食玩を扱うキャンディトイ事業部や、ガシャポンを扱うベンダー事業部などでは、「もじバケる」や「破幻のジスタ」、あるいは「たまごっち」など、独自のIPでビジネスとして成立させた商品も数多く発売している。ホビー事業部も独自IPで、得意分野でもある「格好良くて、組み立てることにワクワクする」という感覚を気軽に味わえる商品を生み出したい、そういった想いをこの「フレームロボ」に込めているという。
これまで東京おもちゃショーや、次世代ワールドホビーフェアで行なった体験会に立ち会い、子供達が「フレームロボ」を触ったのを見た清水氏は、「子供たちが新しい商品に対する好奇心を持ってくれたこととともに、自由な発想で組み替えを楽しんでいたのが嬉しかった」と語った。また良心的な設定価格も好評で、「500円なら1ヵ月に1つ買える!」といったリアルな反応に手応えを感じたとのこと。子供たちの親からは、「ランナーが出ないのはエコロジーだ」という反応があったのが興味深かったとも話している。
先日幕張メッセにて開催された「キャラホビ2015」では、12月5日に発売予定の第2弾も発表され、9月にはオリジナルアニメを導入したPVを公式サイトにて公開する予定で、その発売が楽しみなこの「超次元変形フレームロボ」。具体的な予定はまだないものの、カスタムを前提としたシリーズの構想もあるとのことなので、商品発売後の展開についても楽しみにしたいところである。これまでのプラモデルとは違う感触が味わえる製品なので、発売されたあかつきにはぜひ1度触ってみることをお勧めする。
(C)BANDAI