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【特別企画】AMD FreeSyncでヌルヌル滑らかPCゲーム!

最新の適応型リフレッシュレート技術をLGの超ワイドモニターで検証

 今、ハードコアなPCゲーム界隈で最もアツいトピックといえば適応型リフレッシュレート技術(Adaptive Refresh Rate)だろう。モニターの垂直同期に合わせてゲームを動かすのではなく、ゲームのフレームレートに合わせてモニターが垂直同期するという、逆転の発想を実現化するテクノロジーである。この技術があれば、PCゲームからティアリングはなくなり、入力遅延は極限まで最小化され、実フレームレートも上がり、そして常時ヌルヌルの滑らかさでゲームをプレイできる。ゲーマーとしてコアであればあるほど有り難みを感じられるであろう技術だ。

今回検証するのはAMDの適応型リフレッシュレート技術「FreeSync」

 目下の問題は、適応型リフレッシュレート技術に対応したGPUとモニターが、これまでのところ非常に限られていた、ということだ。最初に消費者向け製品となったNVIDIAのG-Syncは、モニター側に専用のチップが必要になるなどクローズドな仕様で、2014年のデビューから1年余りが経過したが、現時点で対応モニターは5つのメーカーから10モデル程度。しかも全モデルともに映像入力端子はDisplayPortが1系統のみで、HDMIが無いためPCゲーム以外に使えないという弱点もあった。それから、全体的に価格も高め。

 ところが本来は、この技術はもっと広く使えてしかるべきだし、より柔軟に様々なモニターで対応されるべきものなのだ。なぜなら、原理的にはリフレッシュレートの仕組みにちょっとした追加仕様を加えるだけの話である。使い回し面や価格面等で、あまり大きな犠牲を伴う必然性は薄い。

 その理想を実現するのが、AMDによる「FreeSync」である。FreeSyncはG-Syncと同様に適応型リフレッシュレートを実現する技術だが、その規格はVESA標準の「Adaptive-Sync」としてDisplayPort 1.2aの外部出力仕様に組み込まれており、オープンな技術だ。つまり、モニター側に特殊なチップを付ける必要がないので、より柔軟な製品設計ができるし、メーカーが追加のライセンス費を負担させられることもないので、価格も低めに抑えられる。ユーザーとしては願ったりかなったりの規格なのだ。

 VESA標準の仕様となれば今後、対応モニターがたくさん出てくるのは明らかだ。あるいはNVIDIAもG-Syncを捨てて標準仕様に乗っかっていくシナリオもあり得るだろう。少なくとも現時点で言えるのは、早速FreeSync対応モニターがリリースされはじめ、最新のAMD Radeonシリーズなら今すぐにこの技術を使えるということだ。

 最大限にGPUパワーを引き出す結果としての変動型フレームレート環境にて、ティアリングなし、カクつきなし、常時滑らかで快適なゲームプレイを実現する適応型リフレッシュレート技術。その本命となるAMD FreeSyncを本稿で検証してみよう。

適応型リフレッシュレート技術の大本命FreeSync

FreeSyncはVESA標準のオープンな適応型リフレッシュレート技術だ

 FreeSyncの特徴を一言で言うなら、“AMDが提唱した適応型リフレッシュレート技術が業界標準規格になったもの”、と言える。VESA的にはこの技術を「DisplayPort Adaptive-Sync」と呼んでいるが、中身は全く同じものだ。したがって今後、DisplayPort 1.2aの仕様をフルサポートしたモニターは自動的にFreeSync対応ということになる。

 このFreeSyncで解決する問題は、NVIDIAのG-Syncと同等だ。ゲーム側のリフレッシュに合わせてモニターを駆動させることで、フレームレートを最大化させつつ、画面のティアリングやカクつきをなくし、入力遅延も軽減する。以前ならVSYNCをオフにしていた時に得られていたパフォーマンスを、VSYNCオンの映像クオリティと滑らかさで得られるという感じだ。

従来のVSYNCオフ環境で現れていたティアリング現象。モニターの画面リフレッシュ中にゲーム側の描画が更新され、1フレームずれた絵が画面上に混在するため画面中央付近でぶった切れて見えるというもの。適応型リフレッシュレート環境では根絶される

 以前の固定リフレッシュレート環境では、PCのグラフィックスパワーが微妙に不十分であるとき、ゲーマーは常にアンビバレントな状況に置かれていた。つまり、“VSYNCをオンにするとあからさまにフレームレートが落ちて動きがモッサリするので、VSYNCをオフにしたところ、ティアリングが目立って画面が見苦しい”、というやつだ。

 動作パフォーマンスを取るか、画面の綺麗さを取るか。ひたすら高リフレッシュレートのモニターを導入してVSYNC待ちの影響を軽減するのもひとつの手ではあったが、根本的にこの二律背反から逃れるすべは、“モニター側のリフレッシュレート以上のフレームレートを常時叩き出せるモンスターGPUを導入する”といった力技をとるほか無かったのが実情だ。

 適応型リフレッシュレート技術はこの二律背反を根本的に消滅させてくれる。パフォーマンスを最大化しながら、ティアリング無しの映像でゲームをプレイできるのだ。多少フレームレートが落ちたって、モニターと映像の同期がずれることはないので、動きも常時なめらかに見える。

従来のVSYNCオン環境では、ゲーム側の描画が少し遅れると、次の垂直同期を待つためGPUパワーが無駄になり、にフレームレートも大きく落ちるはめになっていた
適応型リフレッシュレートの環境では、ゲームの描画完了に合わせてモニターが駆動するため、GPUパワーがフルで使え、全体のフレームレートもVSYNCオフ環境並に向上する
オープン規格ゆえにモニター側への制限が少ない

 という夢の様な環境を実現してくれる適応型リフレッシュレート技術ではあるが、先行して登場したNVIDIAのG-Syncは独自仕様をとった影響からモニター側に専用のSoC(System on Chip)が必要となり、映像エンジンの設計に柔軟性を持たせることができないという大きな弱点があった。端的にいうと、モニター自体がDisplay Port専用になってしまってPCゲーム以外で使いようがなくなるのだ。

 しかしVESA標準のFreeSyncなら、モニター側の設計はもっと自由になる。その証拠として、国内販売が開始済みもしくは近日中に発売されるFreeSync対応モニターは軒並みDisplayPortに加えてHDMI、DVI-DLをはじめとする幅広い映像入力端子を備えている。同じ適応型リフレッレート対応モニターなら、端子が多いほうがユーザーの利益にかなうというのは考えるまでもない。

LG「34UM64-P/29UM67-P」
解像度2,560×1,080。ネイティブ75Hz。DisplayPortのほかHDMI、DVI-DL端子を装備。価格は34インチモデルで約90,000円、29インチモデルで約56,000円。

BenQ 「XL2730Z」
解像度2,560×1,440、ネイティブ144Hz。DisplayPort 1.2aのほかHDMI 2.0+HDMI 1.4、ミニD-Sub15ピン、DVI-DLと5系統の入力端子を搭載。店頭想定価格91,800円

 現在のところ国内販売が確定したFreeSync対応モニターはLGとBenQからの計3モデルだが、海外も含めると早速11モデルがラインナップされており、VESA標準規格であることから今後も順調にその数を増やしていきそうだ。アスペクト比、解像度、搭載する映像エンジンの種類など、製品の選択に幅が出ることも期待していい。

現時点では国内未展開のものを含むFreeSync対応モニターラインナップ。ゲーミング分野に強いメーカーだけでなく、LGやサムスンといった超大手も対応に乗り出している点がNVIDIA G-Syncとの大きな違いのひとつだ

国内発売第1号のLG「29UM67-P」でFreeSyncを導入してみる

検証のため我が家に届いたLGエレクトロニクス「29UM67-P」

 何はともあれ、FreeSyncはまだまだ新しいテクノロジー。最新のVESA仕様に対応したモニターと対応GPUが必要だ。

 対応モニターのほうはこの4月から各メーカーより相次いで発売されている。その第1号となったのはLGエレクトロニクスから発売されたアスペクト比21:9のウルトラワイドゲーミングモニター「29UM67-P」だ。34インチモデルも4月下旬に発売されることになっているが、まずは早速入手できたこのモニターで「FreeSync」を検証してみよう。

 これに対するGPUの方は、現時点では最新のAMD Radeon R9/R7 シリーズのGPUもしくはAMD A10/A8/A6シリーズのAPUとなっている。ただしRadeon R9 270Xなど現時点では一部対応しない最新GPUもあるので注意が必要だ。

・対応GPUおよびAPU
 AMD Radeon R9 295X2 / 295X / 290 / 285
 AMD Radeon R7 260X / 260
 AMD A10-7850k / 7800 / 7700K
 AMD A8 -7650K / 7600
 AMD A6-7400K

【FreeSync対応GPU】
AMD Radeon R9/R7シリーズおよびAMD最新のAPUシリーズのほとんどが対応済み。
適切なドライバの導入ができるとFreeSyncの設定を促すダイアログが出現する
モニター側でもFreeSyncのOn/Offができるが、常時OnでOK

 あとはPC側にFreeSync対応ドライバーが必要だ。Radeonシリーズ用のドライバーであるAMD Catalystのうち、現在FreeSyncに対応するのは2015年4月13日リリースのβドライバー(15.4 Beta)だ。AMD公式サイト上のドライバー自動検出ツールでは標準でインストールされないので、手動でパッケージをダウンロードしてインストールする必要がある。

 ドライバーがインストールされたら、あとはAMD Catalystコントロールセンターで[マイデジタルフラットパネル]の設定画面を開き、「AMD FreeSync Technology(or DP Adaptive-Sync)」のチェックボックスをオンにすると、FreeSyncの導入が完了する。ゲーム側では垂直同期(VSYNC)をONにする設定をしておこう。

 また、今回検証に用いたLG「29UM67-P」の場合、モニター側の設定でもFreeSyncをON/OFFできるようになっているが、OFFにするメリットは全くないので、デフォルトのままでよし。うっかり間違ってFreeSyncをOFFにしていないか一応確認はしておこう。

 あとはゲームを起動すれば、以前よりもヌルヌルかつティアリングもない快適な環境になっていることが確認できるはずだ。さて、その実際のところを引き続き見ていこう。

FreeSyncに対応するのは下段のβドライバーのほう。2015年4月中旬現在では手動でダウンロード/インストールする必要あり
AMD CatalystコントロールセンターでFreeSyncを有効にすれば導入完了

FreeSync+ウルトラワイドでFPS、TPS、レースゲームが素晴らしく快適に!

AMD Gaming Evolvedユーティリティ。各ゲームの1発で最適設定にしてくれる
「GTAV」。フリーローミングゲームの常として、フレームレートの振れ幅が大きいゲームだ

 今回、FreeSyncの検証にはAMD Radeon R9シリーズの中でも売れ線となっているR9 290およびR9 285を使用した。

 システム全体のパフォーマンスとしてはR9 290搭載時で3DMarkのFireStrikeベンチマークがスコア9,387で、おおよそハイエンドな性能。R9 285搭載時では同じテストでスコア7033と、おおよそミドルハイクラスの性能だ。結論からいうと、どちらのGPUでもFreeSyncの効果は大であったが、より性能が限定的なR9 285で特に大きなメリットを感じられた。

 まずは早速「GTAV」をプレイ。今月15日にPC版がリリースされたばかりの本作は、シーン毎のフレームレートの変動が激しく、従来型のモニター環境でプレイしているとティアリングやカクつきがものすごく目立つゲームだ。かなりグラフィックスオプションを下げて、モニターのリフレッシュレートよりも高いフレームレートを常時確保しないとなかなか快適にならないタイトルである。

 であればこそFreeSyncの効果は絶大であった。

 まず、項目数が非常に多く面倒な画質設定は、AMD公式のゲームユーティリティである「AMD Gaming Evolved」で1発設定。このツールの良いところは、スライダー上で「最適」を選ぶだけでおおむねモニターの最高リフレッシュレートが得られるギリギリの設定にしてくれるところだ。特に今回は解像度2560×1080@75Hzという、微妙にフルHD以上で、微妙にハイリフレッシュレートという環境であるため、細かい設定を詰めなくても最適にできるというのは非常に有り難かった。

 前述したとおり「GTAV」はとにかくフレームレートの上下が激しいタイトルで、視界内に入ってくる車の数、人の数、建物の数などなど変動要因が山ほどあるせいで、通常のモニターであればかなり余裕をもって画質設定をしておかないとすぐにガクガクした動きになる。実際、今回1発設定した環境でも数字上は50~75fpsという動作パフォーマンスだった。

ベンチマークでも75fps張り付きとはいかない。時折40台までfpsが下がる。従来のモニターならガクガクに見えるところ、FreeSyncモニターでは常に滑らかに見える

 従来型のモニターでこれを見ていれば、ひどいティアリングやカクつきを感じて、常時60fps以上を確保するためにグラフィックスオプションを2段階くらい下げるところだったろう。しかしFreeSync有効となった今回の環境では、フレームレートが50近辺まで落ちてもまだヌルヌルに滑らかに見えるのである。ゴチャっとしたシーンで45fpsあたりまで下がってもまだいける。60fps相当の滑らかさは常に崩れない。

 そんなおかげで、「GTAV」のあまりよろしくない特徴であるフレームレートの不安定さというものをほとんど感じずにプレイすることができた。特にスピードたっぷりに展開するカーアクションのシーンなどは最高だ。ウルトラワイドモニターによる広大な視野角もあいまって、普通のモニターでプレイする時とは比べ物にならないくらい快適で、楽しい。

PC版で実現した主観視点のドライビングシーン。ウルトラワイド+FreeSyncの滑らかさで最高の体験になる

 これならもうちょっとフレームレートが下がってもまだ滑らかに見えるのではないか?と思い、さらに少しグラフィックスオプションを上げてみたものの、さすがに30fpsを割り込むとカクカクした感じが目立ってくる。したがってあまり極端な贅沢はできないが、おおむね45fps以上出てれば60Hz相当に見えるため、従来なら60fps以上を常時確保するために要していた調整は要らない。結果として、FreeSync対応は、GPUパワーが3割増しくらいになったのと同等の威力といえる。FreeSyncモニター+「GTAV」の組み合わせは最強であると、ここに宣言しておこう。

ウルトラワイドのアスペクト比は、本作のように広い世界をさまようゲームには最適だ。フルHD以上の解像度が必要となるため、FreeSyncによる滑らかさも大いに快適性を後押ししてくれる

 「GTAV」でのドライビングシーンで非常に手応えがあったので、本格レースシム「Assetto Corsa」でも試してみたが、やはりFreeSyncの効果は大だ。ウルトラワイドによる広い視野角のおかげでコースの先を捉えやすくなるし、サイドミラーの視認性も高まる。その犠牲として、フルHD環境では常時60fpsを確保していた設定では50fps強くらいの動作パフォーマンスとなったが、FreeSyncのおかげで見た目上、60Hz相当の滑らかさは維持。従来型のモニターならガクガクぶりに耐えかねえて無理矢理にでも60fps以上の設定を詰めるハメになるところだったが、本環境ならそんな面倒もなく、納得のグラフィックスで快適にレースができるというわけである。

「Assetto Corsa」。UI要素を自由に配置できるので、ウルトラワイド環境でもゲームプレイ上の情報は画面中央部に集約できる。画面端はコーナーの先を捉える際などに眼をやる感じになるが、視野角が広いおかげで状況を把握しやすい

 オーソドックスなFPSでもこの環境は活きる。例えば「Counter-Strike: Global Offensive」は基本的に動作が軽いゲームであるため常時75fps駆動が期待できるためFreeSyncの効果はそれほど体感できなかったが、広がった視野角のおかげで周辺状況が掴みやすくなり、また、画面端に大量に並ぶUI要素があまり邪魔に感じられなくなるなど数々のメリットが感じられた。

動作の軽いFPSである「CS:GO」。ウルトラワイドの視野角が功を奏して、トップゲーマーのプレイを視聴するにも快適な環境になった

 本質的には、その他のゲームも含め、FreeSync環境ではより高解像度の環境でも間違いなく快適にプレイできるはずだ。たとえば前述の「CS:GO」も、2,560×1,440や4Kといった超解像度の環境ではリフレッシュレート以上のfpsを維持することが難しいケースもあるだろう。FreeSyncのような適応型リフレッシュレート技術を搭載した環境であれば、120fpsや60fpsといった従来の基準フレームレートを微妙に確保できない状況でも、相応の滑らかさ、快適さでゲームがプレイできるのだ。

 今後高解像度環境がより普及していくなかで、FreeSyncはゲーマーにとって必須の機能のひとつになっていくはずだ。今後、幅広い対応モニターが出てくることもある。ゲーマーの皆さんはそれも踏まえて今後のゲーミングPC環境を構築していって欲しい。

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(佐藤カフジ)