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プレイステーションの描くインディゲームの未来とは?
東方Projectをプレイステーションであそべる「Play,Doujin!」プロジェクトなど紹介
(2014/12/31 10:00)
ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジア(SCEJA)は、12月に国内ラインナップが配信されるIndies Game(インディゲーム)に関わるキーパーソンを集めたセッション「Indies パブリッシュ座談会」を開催した。参加者は、SCEJAの伊東章成氏、Unity Games Japanの大前広樹氏、メディアスケープの江崎望氏と小山田文雄氏、アクティブゲーミングメディアの水谷俊次氏。
「プレイステーションのインディゲーム展開に関して、国内ではタイトル個々の話になってしまい、なかなか全体像をお伝えできなかった」という伊藤氏。SCEJAは昨年より北米を中心にインディゲームを展開。プラットフォームを問わず「好きなものを出せる」ことで一大潮流を成しタイトルが出揃っていると説明。世界で大ヒット中の「Minecraft」を輩出したMojang ABにいたっては「我々はもうインディではない」と言い切るまでに成長。伊藤氏は「インディと言うか言わないかだけと我々は思っている。自由、独創的。固くいうと独立資本活動。そのマインドがあればインディなんです」という。
海外の隆盛に対し「国内はどうしていこう」という話になったという伊藤氏。課題になってきたのが「プロ仕様コンシューマハードで、どこまで少数の人たちがタイトルを出していけるのか(伊藤氏)」。本来プロデューサー、パブリッシャー、ディベロッパーによるチーム体制で行なわれていたことをやっていくのは難しい。一方、海外は少数体制でタイトルが続々リリースされるものの「プロモーションできない」、「プラットフォームのルールに抵触して先に出せなくなった」といった懸案が発生。
「日本に置き換えたとき、国内はパブリッシャーとディベロッパーが昔から大変多い環境にある。インディゲームを旗揚げしている人たちとサポートしてくれる皆さんを組み合わせた“インディのパブリッシャー”がありうるし、これからどんどん出てくるだろうと思う。我々もそこに協力したい。今回の取り組みは、パブリッシャーとしてインディの方々をケア・サポートしたいという各社が集まった」とした。
会場では、セッション参加各社のプレイステーションフォーマットに対する取り組みと最新情報がそれぞれ紹介された。
Unity Games Japan ~独創的な作品を一般層にも伝えていきたい~
Unity Games Japanの大前氏は「『Unity Games Japan』はパブリッシュブランド。元々Unityはゲームエンジンを作っており、国内外で多数の採用事例がある。近年はセガ『チェインクロニクル(PS Vita)』など大企業でも使われた。特にスマートフォン分野では、世界中のモバイル開発者の47%が使っている」と説明。続けて「誰でもゲームを作れるようにしたい、というのが会社のポリシー。これが一巡、浸透してサクセスストーリーも一杯きこえていた。2005年の設立から10年経ち、これらはある程度達成され“皆の問題をちゃんと解決したい”、“ひとりでも多くの成功に役立てたい”と考えるようになった」と次のミッションを想定。
2011年にUnity Technologies Japanを設立した大前氏は「ひとつの大きな課題が、インディゲーム開発者がプレイステーションのように大きなマーケットに入っていけるのか。結構ハードルが高く、仕上がっちゃっているマーケット。もうひとつの課題が、一般のゲームファンがインディゲームにたどりつけるのか。これは昨年の東京ゲームショウで『インディゲームフェス』を開催し、伝わると確信が持てた。誰もがやらなきゃいけないが、丁度僕らが“中間に立つ存在”パブリッシャーとしての仕事が求められているんじゃないか。ひとつでも多く成功例が出るよう仕事を始めた」と説明した。
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「スマートフォンやPCで先行していたものが、プレイステーションで出せるようになったのは、我々としても凄くありがたい」という伊藤氏。一例として取り上げられたのが、イヌイットの伝承民話をベースにしたアクションゲーム「Never Alone」。「普通だったらまず成立しない企画(大前氏)」といい、イヌイットの方々がゲーム開発に協力。アラスカ民謡は口伝のため「ゲームの形で後世に残す」ことを本気で実践。国内リリースに向けて協力したが「普通のゲームなら吹き替えを考えるが、本作は口伝を残すのが目的なので声の吹き替えはNGで英語にもなっておらず、字幕のみ」と説明。音楽も無駄に使われず、環境音などが奏功し神秘的な世界観を演出。「全編、基本的に雪。今(今冬)出さないとあかんとがんばった!」という大前氏。ゲームとしても面白く、イヌイットの生活にも詳しくなれると説明。
UnityエンジンとUnityゲームのローカライズを独占的に担当しているKakehashi Gamesにより、海外とほぼ同時期の国内リリースを実現。「我々が課題にしていたローカライズ部分を全部わかっており、その体制を作りいち早く手をあげておられる。まさしく“いるべき人”」と伊藤氏も絶賛する。大前氏は「僕らもファミコン世代。ゲームが混沌としていた時期から育っている。僕自身もアクの強いゲームが好き。市場に磨かれて丸くなっていったものが、そういうのを遊びたい人が1周回って結構増えてきているのではないか。メジャーラインは大手がやるだろうから、僕らは独創的な作品を普通の人たちに届けたい」とコメントした。
メディアスケープ ~「Play,Doujin!」にて様々な同人ゲームをパブリッシュ~
メディアスケープは、東方Projectなどの同人ゲームをプレイステーション向けにパブリッシュする「Play,Doujin!」プロジェクトを始動し、カスタムテーマを2本配信。また、発表済みの3サークルにくわえ「CUBETYPE」の新規参入も明らかにされた。
江崎氏は「ZUNさんというと『東方Project』が先行するが、それに限らずもっと大きな枠組みでやっていきたいということで、直球勝負の“Doujin”。ゲームだけでなく“Doujinを遊ぼう!”というコンセプトです。
今回のカスタムテーマに関しては「いきなり伊藤さんに『これやっていいですか』と前代未聞の提案をした」という江崎氏。「『東方Project』は同人誌や音楽をやっている方々が多く、そこに日の目を当てていくことはチャンス拡大の意味合いもある。そのためにカスタムテーマは有効ではないか。参加サークルが1枠増えるタイミングにあわせて『作ってくれ!』というノリと勢い。これは同人の強み」と小山田氏が補足する。
小山田氏は「そもそも私たちがサークルさんに話をきこうとしても、いわゆる法人ではなく取り扱いが難しいという実務的な問題があったが、個人で同人をやっており事情もわかるし会社的にも『僕らが間に入ればいいんじゃない?』というノリでご提案させていただいた」と説明。伊藤氏も、国内同人サークルとのコンタクトの難しさに「凄い数だったり、あまり表で活動されている方がおらず、誰にコンタクトをとっていいかわからなかった」とコメント。小山田氏は「基本的に、中心人物が存在しないからこその同人。逆に外から見ると『彼らはいったい何をやっているんだ?』的なわけのわからなさでもある。あと、さまざまな理由で顔を出せない人もいる」と説明。
日本の同人作家に、海外から「ゲームを出しませんか?」と声をかけられ、実際リリースされている現状があるという江崎氏。「『それがなぜ日本のなかでできないんだ』と常々いっておられる方々が多い。国内でやっていくとなったとき、色々なしがらみ、話を通せるくらい業界に詳しかったり、太いコネクションを持った人がでてくればなんとかなると思っていた。“なかったら作る、やる”は同人的な考え方。『やるところがなければ、うちがやればいいじゃん』というのがスタート。今回は伊藤さんと話ができたため、このタイミングでやっておかないと、それこそ世界に取り残されると考えたのがキッカケ」と9月のリリースを含めやってきたとコメント。
“Play,Doujin”は「そうした意識を体言したブランド」という伊藤氏。「うちが代表というわけではない。基本的に、わかりやすい窓口としてサポート中心。ソニーさんとの橋渡しがメインになる」と江崎氏は説明した。
「Play,Doujin!」新参入サークルを発表、新テーマ2本を配信
9月のカンファレンスで発表された「ZUN×PlayStation」の取り組みをさらに拡大。東方Projectのファン創作タイトルも含め、さまざまな同人ゲームをプレイステーション向けにパブリッシュする「Play,Doujin!」プロジェクトが始動。東方Project作者のZUN氏も引き続き協力し、今後も同人ゲームを紹介および配信していくとしている。今回、「CUBETYPE」が新規サークルとして参入。ゲーム本編のリリースに先立ち、東方Projectの世界観を表現したテーマ2作品を配信中。価格は各432円(税込)。
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アクティブゲーミングメディア ~PCポータル「Playism」をプレイステーションでも展開~
「コンタクト開始が2年前(伊藤氏)」というSCEJAとアクティブゲーミングメディアの関係。PCポータル「Playism」が設立された3年前から「色々な方々から『Playism』は面白い!」と聞かされていた伊藤氏。気になっていたものの、どうプレイステーションに展開すればいいか悩み「まずはモバイルから」とはじめたところ、タイトルがどんどん増えていったと説明。
コンシューマ向けにパブリッシングを開始するPlayismは、現在プレイステーション向けに7タイトルをラインナップ。12月24日に2D回転アクション「TorqueL(PS4、PS Vita)」、アドベンチャー「machinarium(PS3、PS Vita)」がリリースされる。
水谷氏は「『TorqueL(トルクル)』を開発された方が『PS Vita』に出したいとSCEJAの大きな窓口に連絡したところ『個人はダメ』と断られたと連絡がきたのがキッカケ」と説明。伊藤氏と話をした際「うちが間に入ったら出せるんですか?」、「それはできますね」となり話が展開。「インディゲームを広めていけるなら、やりたい」と考えたという。
当初は「なぜローカライズの会社が?」と思っていたという伊藤氏だが、事業内容を確認して改めて納得。「インディゲームの持つ可能性をどれだけ広められるかに注力していた。最初はPCゲームの販売サイトだったが、クリエイターさんに話をきくと『開発資金がない』、『コンシューマや海外で出したいが出せない』といった色々な障壁がある。それをなくす取り組みをしている」という水谷氏。
前述のとおり、Playismは元々ローカライズ会社。水谷氏の本来の役職はコピーライターで、某大手ハンティングアクションの平面ポスターなども手がけている。「どっちが本業かわからないです(笑)」とおどけつつ「ローカライズもマーケティング、世界に届けることもできる。この力をかけあわせてインディの可能性を広げられるんじゃないか。たまたまいい体制が社内にあった」と説明。
SCEJA的にもありがたかったという伊藤氏。「すぐタイトルを出せるんじゃないかという欲目もあったが、すぐポートして出せるものじゃない。だいぶ大変な状況。技術情報のルールブックなどが常々見直されており、プロ仕様の大規模体制だけにフィーチャーせず、もう少し色々な方に対応できるよう改編中。イニシャルも多少なりとも負担できるよう開発機材をできるだけ提供したり、そういうサービスを実施している」と補足。
「インディはこだわりが強く、たとえば『移植会社に売りましょう』となっても『いや、他人に移植されたくない』という人も多い。うちは作るものに一切口は出さない。好きなものを作ってもらい、あとはうちが展開を頑張るから、という感じで組ませていただいている」という水谷氏。今後は海外作品の日本向けリリースもどんどんサポートしていきたいとした。
PS4/PS Vita「TorqueL」、PS3/PS Vita「machinarium」
TorqueL:(C)FullPowerSideAttack.com All Rights Reserved. Music (C)2014 sanodg [Nobuyoshi Sano] c Active Gaming Media Inc. All Rights Reserved.
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machinarium:(C)Amanita Design All Rights Reserved. (C)Active Gaming Media Inc. All Rights Reserved.
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4社座談会 ~海外で盛り上がるインディ「国内はどうしていくべきか?」~
「国内におけるインディの盛り上げ方」というテーマでは、まず日本と海外それぞれの事情に言及。日本は長い年月をかけて受諾ディベロッパーなどの体制が構築されて久しく「いろいろな事案が決まっていて、独立してやるメリットがない(伊藤氏)」と説明。ただ売上ベースがそういいわけでもなく、かたやスマートフォンを見れば「おっ、凄いなぁ(伊藤氏)」という状況。
今後の展望をきく伊藤氏に、大前氏は「(開発会社で)リストラが起これば、個人開発会社はどんどん増える(笑)」と会場を笑わせる。北米では大型スタジオでレイオフが起こると、腕に覚えのある開発者が「やるか」となるケースが多く見受けられるが「日本では、そいうのは滅多にない。日本のゲーム会社は経営がしっかりしていて、やり方も固い。スマートフォンもきっちりやってて増収増益。これが北米だとコンソールに600億をつぎ込む。その陰で大きく伸びているところもあるが、そういう意味では身軽。日本はファウンディングサポートがしっかりしてない。企画の審査やプロデュースなど社会的な仕掛けがないし、学ぶ機会もない。そういう機能を持つ大手パブリッシャーのセカンドラインに、という形に落ち着く」と説明。
ただ、これらは「欧米で成立しているような仕掛けを作らないとダメだとか、日本が遅れているとかそういった類の話ではないと思う。日本は違う方向で成功していたりするし、市場の形も違う。オウンルールで外に出ていけるのか? という話はあるにせよ、それはコンテンツに力があれば出て行けると思う。ニコニコ自宅ゲームフェスはいいポイントじゃないか。100万再生されるコンテンツも出てきてるし、以前に『青鬼』とかノベライズや映画化もされている。日本のインディ、社会的構造でいうと、いわゆるゲーム会社よりはヒットコンテンツを求めている感じ。低リスクでヒットコンテンツを作って出せる市場を作れれば、才能ある個人がチャレンジして普通の人たちに浸透する構造ができるコンテンツの発射台は整備できるので、そういう形で進化していくんじゃないか」という。
「なんだかんだでオーディエンスが多いのは大事」という大前氏。先日SCEが中国で展開することに触れ「動画再生数が20倍くらい違ったり。そこに日本のコンテンツを出せたら……」と期待を抱く伊藤氏。大前氏も「中国でのコンソール解禁は熱いですよね。海賊版の国だからフリーミアムどころか何でもフリーというなかで(一同爆笑)逆にフリーのコンテンツにあきているみたい。プレミアムコンテンツに飢えている面がある」といい、江崎氏も「良くも悪くも所有していることがステータスになるのが現在の中国の段階。だからこそ有料販売されたコンテンツを持っていることがステータスになる。市場として高い価値を持っている」と続ける。
セッションの最後には、プレスとの質疑応答が行なわれた。「こうした橋渡し役となるパブリッシャーは今後増えたほうがいいのか? 今ある状態でパイプを太くしていったほうがいいのか?」との問いには「ぼくらだけで受けられるとは到底思っていない。マネージメントできる人が増えたほうが、個々のタイトルに手厚くできる。ただ、逆にいうと考えなしに増えてもダメ。わかっている人、会社が受けるのが大前提。たぶん条件はふたつあり、SCEJAのサポートがどこまで行なわれるのか。そこが増えないのであれば、もう1点としてその手前でノウハウを持っている方々が独立して窓口になること。あまり増えると情報共有、横のつながりがもろくなり、むしろ欠点になる(江崎氏)」と説明。
「中堅開発会社をインディに誘導できないか?」との問いに、伊藤氏は「有象無象で増やすのは難しい。SCEJAにもキャップはある。取り組みとして魅力的に聞こえるが、意志が重要。無理に引っ張り出すことはしないつもり。とはいえ、今いっぱい会社があるという事実もある。その体制を無理やり壊して作りこんだ細かいゲームを失いたくない。どうしてもオリジナルをやりたいところを直接カバー。意志あってこその資源」とコメント。
「何らかの形で同人など小規模と中堅の交流が増えるとインディー層が厚くなるのでは」と質問者が続けると、大前氏は「見た目以上にそこの交流はされている。中堅はNDAもあって表に出ないが、新規IPを手がける制作会社はいる。最終的なパブリッシュは得意なところにやってもらうため、大手から出る形になることが多い。一番大事なのは、自社IPとするなら、戦える回数を増やさないといけない。再チャレンジの機会をどう担保するかが大事」と説明。ここは伊藤氏も「インディはマルチプラットフォームであるべき。ディベロッパーさんに稼いでいただかないと何の意味もない。次にまったくいけなくなる」と補足した。
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