【特別企画】

探索アクションの始祖、「メトロイド」生誕40周年!

迷路状に構築された惑星に潜入するサムス・アランの活躍を描くSFホラー

【メトロイド】
1986年8月6日発売

 現代における“2D探索型アクション”のいちジャンルを確立した「メトロイド」が、1986年8月6日にファミリーコンピュータ ディスクシステムで発売されてから40周年を迎えた。

「メトロイド」のディスクカード。1986年8月6日発売。価格は2,600円。これは筆者の私物で、説明書は残念ながら発見できなかった

 同年2月21日に発売されたファミリーコンピュータ用周辺機器「ディスクシステム」の、夏の新作タイトルとしてラインナップされた本作。“宇宙戦士サムス”が主人公の“アクション&迷路ゲーム”として宣伝された当時のTVCMは実写特撮で作られており、先発の「ゼルダの伝説」とはがらりと変わったSFテイストの強い作品であった。

「メトロイド」のゲーム画面。画像は指定のものを除いて「ファミリーコンピュータ Nintendo Classics」で撮影している

 そのコンセプトは以降のシリーズも40年間ほとんど変わることなく継承され、数多くのゲーム作品に大きな影響を与えてきた。発売から40年を経て、今もなおこの「メトロイド」を愛し続ける筆者の記憶をもとに、その魅力を改めて振り返りたい。

宇宙戦士サムスの孤独な戦い。装備は全て現地調達となる

 コスモ暦20X5年、外宇宙の「惑星SR388」で発見された未知の生命体「メトロイド」が宇宙海賊(スペースパイレーツ)に強奪されてしまう。メトロイドが武器として増殖・悪用されるのを阻止すべく、銀河連邦は選りすぐりの賞金稼ぎ(スペース・ハンター)「サムス・アラン」を海賊の本拠地「要塞惑星ゼーベス」へと派遣。その中心部に存在する「マザーブレイン」を破壊する作戦が遂行される——本作はそんなストーリーのもと進行していく。

タイトル後に表示されるプロローグは銀河連邦警察からのメッセージ。「メトロイド」と「マザーブレイン」の名が確認できる

□「メトロイド」のページ

 呼称の一部は当時のものとなるが、最新シリーズまで続くスペースパイレーツとサムスの因縁は、この頃から既に始まっていた。ちなみにスペースパイレーツが敵キャラクターとしてゲームに直接登場するのは、3作目の「スーパーメトロイド」(1994年)からとなる。

 サムスが潜入するゼーベスは、上下左右にスクロールするサイドビューの2Dマップで構成されている。複数のエリアがエレベーターで繋がっていて、それぞれに(当時の名称は「小ボス」)が待ち受ける構造も伝統のものだ。なお対応メディアであるディスクシステムではこのエレベーターの移動時にデータローディングが行われ、1分近くの読み込みを要した。それにより、初めて足を踏み入れる未知のエリアに対する恐怖と緊張感は、否応なく倍増させられた。

 ゼーベスに潜入したサムスは、射程が短く威力も低い「ショートビーム」しか装備していない。厳しい環境を生き残り、凶悪な原生生物と対等に戦うためには、この惑星内に隠された強化アイテムの調達が必要となる。

ゼーベスに足を踏み入れたサムス。最初に訪れるのは「ブリンスタ」

 そのスタート地点からすぐ左に向かうと「丸まり(後のモーフボール)」がある。これを取ることでサムスがボールの姿に変身できるようになり、右方向にある細い通路を通って先へ進めるようになる。「アイテムを手に入れて新たな道を切り拓く」というゲームデザインの導線は、このスタート地点から巧みに設置されているのだ。

スタート地点すぐ左にある「丸まり」を手に入れて、すぐそれを使わせる秀逸なレベルデザインが施されている

 ゼーベス内部は、最初に訪れる“岩の面”「ブリンスタ」と、灼熱のマグマが広がる“火の面”「ノルフェア」があり、それぞれには“小ボスの部屋”が存在。小ボス「クレイド」と「リドリー」を倒すことで最終エリアの“基地面”「ツーリアン」へとアクセスできるようになる仕組みだ。大まかな全体構造こそ説明書に記載されていたが、どのような順序やルートで攻略していくかはプレイヤーの自由だった。

最初に訪れるブリンスタは、敵の強さ(接触ダメージ)は低めだが、サムスもまだ弱いので油断は禁物
敵が手強くなるだけでなく、足元にマグマが広がり、岩が噴出するトラップなども存在するノルフェア

広大な迷宮を解き明かす、手探りの探索と洗練されたアイテム設計

 ゼーベスのマップは非常に複雑で、当時はその難解さと敵の強さにずいぶん苦しめられた記憶がある。攻略に必要なアイテムの保管庫へ繋がる通路が何の変哲もない壁の穴だったり、その保管庫の奥にさらなる隠し通路が存在したり、ダメージを受けるはずのマグマが実はダミーでその下に縦穴が隠されていたりと、あらゆる場所に一目では判別できない仕掛けが存在していた。

一見はただの床だが、爆弾を置くとブロックが破壊できる。こうした通路は多数存在するが、先のないただの穴だったりすることもある
アイテムの保管庫。この「ハイジャンプ」の置かれた部屋も、像の足元のブロックを破壊することで先へと進める

 これらを見つける方法はただ一つ、壁や天井、床を片っ端から撃ったり、爆弾を置いたりしていくこと。……とは言ったものの、その半分以上は手がかりがないから大変だ。筆者はディスクシステムの導入が若干遅かったため、当時のゲーム雑誌や攻略本からある程度の情報を得てプレイしていたが、一足先にプレイしていた友人が「スクリューアタックがどこにあるのかサッパリ分からない」と頭を抱えていたことを今も覚えている。

スクリューアタックはノルフェアの何気ない通路の天井にある隠し穴を上がった先の部屋に隠されている
ジャンプの回転動作自体に強力な攻撃判定が追加されるスクリューアタック。入手すれば道中の移動効率が劇的に向上する。

 複雑なマップを攻略するためのアイテムの設計とその配置は実に巧妙で、今改めてプレイしても、40年前の作品とは思えない完成度を誇るレベルデザインには、遊ぶたびに驚かされる。

 「丸まり」で狭い通路を抜け、「ミサイル」で赤いドアを開く。「爆弾」で床や壁に隠された通路を見つけ、「ハイジャンプ」で高所の足場へと上がる。敵から受けるダメージが半分になる「バリア」などもあり、これらの探索範囲を広げるアイテムが段階的に入手できるよう、マップ自体が緻密に設計されている。

サムスのエネルギーの最大値を100増やす「エネルギータンク」。取ると同時に全エネルギーが回復する

 攻撃手段であるビームも探索の鍵を握っている。「アイスビーム」は敵を凍らせて足場として利用でき、「波動ビーム(後のウェイブビーム)」は一部の敵や障害物を貫通しながら波状に飛ぶため、壁に隠された破壊可能なブロックを発見しやすくなる。それぞれが探索における明確な役割を持っているのが特徴だ。

 なお、これら2種類のビームは後のシリーズのように切り替えや併用ができず、必要に応じて設置場所まで付け替えに行かなければならない。この移動自体もクリアまでのルート構築要素となっていた。

敵を凍らせて動けなくするアイスビーム。威力は控えめだが、敵を凍らせて動けなくする。メトロイドを倒すには必須の装備
波を打って飛ぶ強力な波動ビーム。サムスの足元もカバーする攻撃範囲を誇り、壁や天井に隠された壊せるブロックを見つけるのにも重宝する

 これらのアイテムはゼーベス内に散らばっているため、“どこかのエリアをクリアしたら次のエリアに行く”という一本道のステージクリア型ゲームとは一線を画している。同じディスクシステムの「ゼルダの伝説」もアイテム取得型のアクションRPGとして、アイテムの入手順や迷宮の攻略順に多少の自由度があったが、この「メトロイド」はそれを大きく凌ぐ。

 当時としては例のない先進的なゲームデザインだったからこそ、その自由度の高さがそのままプレイヤーに歯ごたえある難易度として受け止められたのかもしれない。

 ちなみに筆者は、最初に訪れるブリンスタのクレイドではなく、アイテム回収ルートの都合から、リドリーを先に倒すというクリアルートを構築していた。

任天堂の「メトロイド」紹介サイトより画像を引用。説明書にはこのようなゼーベスの大まかな構造が書かれていた

その世界観はSFホラー。当時のヒット映画からのインスパイアと独自性の融合

 「メトロイド」の世界観はハードSFでありながらダークなホラーテイストを強く打ち出していて、当時のファミコンタイトルとしてはきわめて斬新だった。サムス本人や敵のドット絵の描き込みは秀逸で、一部モーションを共有しつつも明確に描き分けられたデザインにより、エリアごとに違う敵の生命感が描写されていた。

 耐久力のある強敵やボスと対峙した際に、ディスクシステムのFM音源から発せられる独特の声も迫力があった。

サムスに襲いかかる不気味な原生生物たち。異様さを際立たせたドット絵のデザインも秀逸だ

 当時は「エイリアン」(1979年)、「遊星からの物体X」(1982年)といったSFとホラーを融合させた映画作品が日本でもヒットし、同ジャンルへの認知が高まっていた時期だ。そこに満を持して登場したのがこの「メトロイド」である。

 孤高の女性主人公、未知の惑星への潜入、残された遺物、襲い来る不気味な外来生物——といった要素は、前述の「エイリアン」からの強い影響を感じ取ることができる。現在とはデザインの異なるリドリーの頭部形状や、実在の生物から乖離した奇妙な敵デザインなど、細部にもリスペクトが散見される。

ブリンスタの小ボス「クレイド」と、ノルフェアの小ボス「リドリー」

 最終シーンのツーリアンで現れる生命体メトロイドは、説明書にもイラストが載っていたが、実物は想像を上回る巨大さと凶暴さを備えていた。サムスがアイスビームを持っていないと倒すどころか退けることも困難なその脅威は、「エイリアン」で味わう恐怖に通じるものがあった。敵側の象徴的生命体の名がそのまま作品タイトルに冠されている点も共通している。

 映画のエイリアンがシリーズを通してデザインの根幹を変えないのと同様に、メトロイドもまた作品の象徴として、40年間ほぼその姿を変えずに登場し続けているのは非常に興味深いところ。

ツーリアンで群れをなして襲いかかるメトロイド。取りつかれるとサムスのエネルギーが吸い尽くされてしまう

サムスの素顔が明かされる衝撃のラストは、後のシリーズにも継承

 「メトロイド」の振り返りの最後に記すべきはやはり、主人公サムス・アランの正体に関する演出だ。前述の通り、筆者が本作をプレイしたのは発売から少し経ってからだったため、その結末についてもある程度は認識できていた。それでも説明書で「彼」と表現されていた無骨なパワードスーツの戦士が、実は女性だったという衝撃は大きなものだった。

ゼーベスの最深部で待ち受ける機械生命体「マザーブレイン」。本体は攻撃はしてこないが周囲の自動砲台と、飛んでくる丸い輪の「リンカ」が厄介だ
マザーブレインを撃破後の脱出カウントダウン。緊迫するこの展開は、後のシリーズでも恒例のクライマックスとなる

 ゲームクリアまでの時間によりサムスの姿が変化するマルチエンディングの演出が採用されていて、クリアタイムによっては素顔を見られないというのもポイントだ。後の情報で、時間によってサムスの姿が変わるということを知り、ゲームを再プレイして短時間でクリアするためのルートを模索した人は少なくないはず。

 以降のシリーズでは、クリア時間や難易度によってサムスの異なる姿のエンドカットが見られるという演出は伝統として定着していく。

エンディングメッセージ。全身を覆うスーツの中には水着の美女が! これはスタートからクリアまで2時間以内で見られるトゥルーエンド(!?)

 サムスの正体に関連して、北米のNintendo Entertainment System(NES)版「METROID」にまつわる小ネタも紹介しておきたい。ディスクシステムではなくロムカセットで発売された北米版は、基本的に国内版と同じ内容ながら、セーブ方式がパスワード制に変更されており、音源機能の違いからサウンドの音色も一部が異なっている。

北米NES版「METROID」。これも筆者の私物。1990年代に入ってから輸入ゲームショップで購入したもので、社外品の変換アダプタを用意すれば、日本のファミコンでも遊べた

 この北米版には、ゲームクリア後のパスワードを使用することで最初からスーツを脱いだレオタード姿のサムスでプレイできる隠し要素が存在した。ロングヘアをなびかせて戦う姿はちょっとシュールだが、ここで思い出されるのが2004年に発売されたリメイク作「メトロイド ゼロミッション」である。

 同作ではサムスが「ゼロスーツ」と呼ばれる生身に近い姿で潜入・戦闘を行うパートが追加されていて、それを体験した際に、北米NES版の隠し要素に対するオマージュではないかと感じたのだ。

クリア後のパスワードを使うことで、レオタード姿のサムスでプレイできる(「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」の北米版「NES Classic Edition」収録版で撮影)

40年にわたって描かれてきたサムスの戦いの数々は、Switchでも体験可能

 探索アクションという一大ジャンルを40年前に切り拓いた「メトロイド」。ナンバリングの2Dアクションと、3Dの一人称視点で描く「メトロイドプライム」(2003年)シリーズで表現の幅は広がりを見せたが、根底にあるゲームデザインはどちらにも継承されている。シリーズ一貫してサムス・アランの戦いを描いている点も、長年のファンにとっては実に感慨深い。

「ファミリーコンピュータ Nintendo Classics」では通常版に加え、フル装備で2つのシチュエーションから始められる2種の「SPECIAL」バージョンがプレイできる
【2Dメトロイドシリーズの歴史】

 今回ゲームプレイに使用したSwitchの有償サービス「Nintendo Switch Online」の「Nintendo Classics」ではファミコン、ゲームボーイ、スーパーファミコン、ゲームボーイアドバンスでリリースされたシリーズ5作品を手軽な環境で楽しめる。さらにNintendo Switchでは最新作の「メトロイド ドレッド」や「メトロイドプライム4 ビヨンド」を含む近年のタイトル群もプレイ可能だ。

 シリーズ生誕40年の記念すべき今年、幾多のハードで描かれてきたサムス・アランの軌跡をたどり、メトロイドやスペースパイレーツとの長きにわたる因縁の歴史に改めて触れてみてはいかがだろう。