ニュース

「大東京トイボックス」漫画家“うめ”インタビュー(後編)

ゲームは昔から変わらない。“うめ”先生が見た、ゲーム業界の今とこれから

ドラマ「東京トイボックス」へのオーダーは、変身ポーズのみ!?

「原作超え」を期待しているというドラマ「東京トイボックス」。例の変身ポーズの出来やいかに?

――では、ドラマ化についてお聞きしますが、どのように制作に関わっていますか。

小沢氏: これが一般的なのかわからないのですが、シナリオをチェックするぐらいですね。ストーリー的には「東京トイボックス」2巻までの話をベースに、一部「大東京トイボックス」のエピソードを持ってきているのかな?

 シナリオについては、こちらの意見もずいぶん丁寧に取り扱ってもらっていると感じてます。ドラマとしてうまいこと「原作超え」してくれることに期待してます。

妹尾氏: 私もドラマや役者さんにそんなに詳しくないので、お任せしている部分は多いですね。天川太陽役の要潤さんは、シュッとした役が多い印象があったのですが調べてみると幅広い役をやっていらっしゃっていて。

小沢氏: 「仮面ライダーアギト」のときの「仮面ライダーG3」役だったんですよね。だから「スタジオG3」との、まさかの「G3つながり」ですごいなって(笑)。

 あと、僕が1つオーダーさせてもらったのは、「大東京トイボックス」1巻のカバーのポーズ(いわゆるライダーの変身ポーズ)を真顔でやって決まる人、ということだったんですよ。そういう意味でも正しい配役、人選だなって思いました。加えて、僕らが録画しても見ている数少ないドラマが、要さんが出演している「タイムスクープハンター」だったんです(笑)。

――なるほど(笑)。ほかにオーダーしたことはありますか?

小沢氏: ほかはそんなに口うるさくは言ってないと思います。他の方と比較したことがないのでわかりませんが(笑) 。

妹尾氏: 原作を変えてドラマ化することで、原作を知らない人が見て楽しめる作品になったものも多いと思いますし、大きく変えちゃうのもアリだなと思っていますね。見たら原作を読みたくなるドラマになっているとうれしいです。単行本の売上的にも(笑)。

ゲームは昔から変わらない。“うめ”先生が見た、ゲーム業界の今とこれから

娘さんがお気に入りというSCEJAの「風ノ旅ビト」(PS3)と「ICO」(PS2)。この作品を10年後に遊んだとき、どのような感想を持つのか興味深い

――今現在のゲーム業界について、どう見られていますか?

小沢氏: 難しい質問ですね(苦笑)。「ナムコクラシックアンソロジー」という短篇集に「東京トイボックス」の外伝が載っているんですが、その内容が太陽と仙水が知り合う前にゲームセンターに置いてあるノートを使って、「ゼビウス」についてコミュニケーションするというお話なんです。

 ゲームは、あの時代からソーシャル的な要素をはらんでいる、他者との関係を作るものだと思い続けていて。マスコミからは、引きこもりの象徴みたいにゲームが扱われることもありましたが、実はそうじゃない。コミュニケーションの手段、触媒になり得る力を持っている、と。

 そういう根っこの部分では、アーケードの時代から今でも変わっていないと思うんです。今、みんなが「艦隊これくしょん」のレシピをネットで話し合っているのと、「ドルアーガの塔」の攻略をノートで情報交換していたのは、根っこの部分では同じだと思います。根っこの部分が変わっていない以上、なんら悲観も心配もしていないです。

――連載が長期間となりましたが、その間にお子さんが生まれて、何か作品作りに影響はありましたか?

小沢氏: 上の子どもが今5歳になって、少しゲームを触るようになったんです。最初プレイステーション 3の「風ノ旅ビト」を遊ばせたんですよね、セリフが読めなくても遊べるので。そうしたら自分で物語を作り出して、白いベールをかぶった人を「しろゆきおかあさん」と名づけたんですよ。その「しろゆきおかあさん」に会うために旅をしている……みたいに話を自分で作っていて。あのゲームは音と映像だけなのに、恐いとか気持ちいいとか、いろんな感想を言うのがおもしろくて。

 あとは今「ICO」にハマっていて、あれもセリフがほぼないんですが、絵本を繰り返し読むように楽しんでいるみたいですね。そうしたら、「これ作った人にお礼が言いたい!」と言い出しておもしろかったです。

妹尾氏: 作った人というのを5歳で意識しているのが生意気ですね(笑)。「イコとお友達になりたい」とか言うのかな、と思っていたんですけど、最近家にあるマンガを「これお父さんとお母さんが描いたんでしょ?」と言うようになったのも関係あるのかもしれません。

小沢氏: 娘が5歳のときにやった「ICO」って、彼女が大きくなったときに遊んでも楽しめると思うんです。僕らの世代で言う、子どもの頃に見た「ルパン三世 カリオストロの城」を大人になった今でも楽しめるような。ファミコン時代のゲームを今遊んでも、正直つらい部分も多いと思うんです。でも今は、ゲームというものが、長い年月耐えうるコンテンツになってきているのかなと。昔のゲームの残り方と、今のゲームの残り方って違ってくるんじゃないかと思っています。

――連載が終わり、全12巻が完結して、やり残したことはありますか?

小沢氏: 落としたネタはあるんですけど、割と入った気はしています。どうですかね?

妹尾氏: 私も入ったと思います。でも、「業界あるあるネタ」みたいなものは、もうちょっと入れたかったかなぁ(笑)。「東京トイボックス」が打ち切り決まったときは、すごく悔しくて泣いてしまったんですが、そこから考えると大満足ですね。

――取材から数えるとほぼ10年ということでしたが、本当に最後までお疲れ様でした。では、最後に「東京トイボックス」シリーズのファンにメッセージをお願いします。

妹尾氏: 以前、お父さんが買ってきたモーニングで読み始めた当時の中学生が、いまだに読んでくれてて、今ゲーム業界を目指してると聞いたことがあります。いっぽうすでに退職された方が、サイン会に来てくださったり、外国人の方から、感想をいただくこともありました。

 最初「打倒島耕作」なんて立派すぎる御旗を掲げてはじめたものの、実のところ、同じ世代に届けばいいと思って描いてました。それなのに結果、同世代はもちろん幅広い人に読んでもらえたのが、すごくうれしかったし、なにより驚きです。長い間、ありがとうございました!

小沢氏: ほんとおつかれさまでした。描くのも大変でしたが、読むほうもたいへんだったと思います(笑)。

 ありがとうございました。これからもいろいろなマンガを描いていくと思います。でも基本的にウチの各作品の世界観はすべてつながっている予定です。もしかすると太陽たちや、太陽の子供たちが登場するかもしれません。これからもよろしくお願いします。

――連載お疲れ様でした。ありがとうございました。

「東京トイボックス」シリーズは終了したが、現在は「月刊コミック@バンチ」(新潮社)にて沖縄を舞台とした「南国トムソーヤ」を連載中のうめ先生。「東京トイボックス」シリーズのファンは、異なる魅力を持ったこちらの作品もチェックしてもらいたい

(イマイチ)