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【GDC 2013】「ドラゴンズドグマ」伊津野英昭氏講演レポート

「ポーン」の企画が原点。世界で100万本を売り上げた大作アクションの制作秘話を語る

3月25日~29日開催(現地時間)

会場:San Francisco Moscone Center

カプコン「ドラゴンズドグマ」ディレクターの伊津野英昭氏

 カプコンはGDC 2013の会期3日目にあたる3月29日、プレイステーション 3/Xbox 360「ドラゴンズドグマ」についての講演を行なった。

 「ドラゴンズドグマ」は、2012年5月に発売されたカプコン初の大型オープンワールドアクションRPG。剣と魔法、そしてドラゴンの住む世界というクラシックかつ重厚なファンタジーの世界観に加えて、冒険に仲間として連れて行けたり、オンラインでほかのプレーヤーに貸し出すことができる「ポーン」という特徴的なシステムが組み込まれている。

 登壇したのは、カプコン「ドラゴンズドグマ」ディレクターの伊津野英昭氏。「Behind the Scene of DRAGON'S DOGMA」銘打って、「ドラゴンズドグマ」の制作秘話を披露した。

「ポーン」のアイディアはBBSの気軽さから。構想12年を経て結実

「ドラゴンズドグマ」が生まれるまでの経緯とコンセプト。なおこの途中で企画した格闘ゲームは別口で企画を進めているという。期待しておきたい

 2008年から制作が開始された「ドラゴンズドグマ」だが、伊津野氏によればコンセプト自体は2000年頃からあったという。当時伊津野氏が注目したのは、インターネット上で普及していた掲示板(BBS)でのコミュニケーション。メッセージを書き込んで反応を待つというやり取りがチャットなどに比べてずっと気楽で、この気楽さをゲームにも活かせないかと考えたという。

 「ポーン」は、このアイディアが元となって生まれている。同時に新規タイトルとして立ち上げるチャンスも巡ってくるのだが、伊津野氏はこの後「デビル メイ クライ 2」やその続編の開発に携わることとなり、一旦はこのアイディアはお預けとなってしまう。

 そして再度チャンスが巡ってきたのは2008年。会社から「100万本以上売れる新規タイトルを」と声をかけられ、何本か出したアイディアの中から「ドラゴンズドグマ」の原案にGOサインが出たのだという。

 この時、伊津野氏がコンセプトとしたのは、「ポーン」を通したコミュニケーションがあること、アクションに重点を置いたアクションRPGにすること、そしてオープンワールドであること。

 伊津野氏が最も苦労したのは、これらのコンセプトを周囲に理解させる部分だったという。「その時はまだ『デモンズソウル』もなく、現在でこそソーシャルゲームなども登場して『ポーン』のような概念も一般的になってきているが、当時はアイディアに対するイメージを持ってもらえなかった」と話した。

 加えて「オープンワールド」というのも日本では全く浸透しておらず、社内ネットワーク上でのデモを通じて「あ、そういうことか」とようやく理解してもらえるようになったという。

 ここで伊津野氏は、当時の企画書を公開した。コンセプトは「BBC-RPG」という直球のジャンル名で、「ポーン」も「カスタムできる傭兵キャラクター(Custom Mercenary Character)」ということで「CMC」と呼ばれていた。

 この時点でポーンの行動をカスタムできること、ポーンの3人をAIで動かすことでリニアなアクションが可能となっていること、4人パーティーということで各職業の能力をあえて偏らせて、パーティーを組んだ方が有利になるといったことはすでに盛り込まれている。

 企画書の中の面白い部分では、登場する味方キャラクターの想定に人間以外のキャラクターも描かれていたことだ。かわいい感じのペットのような生物や強面のモンスターなどがおり、この企画書通りであればもっとカジュアルな印象を持つ作品になっただろう。

こちらが初期の企画書。最終版とはイメージの全く違うキャラクターがいることがわかる
キャラクターメイキングなど、課題となった技術

 「ドラゴンズドグマ」の制作では、技術的な課題も多くあったという。まず、プレーヤーそれぞれが作り出す「ポーン」にバリエーションを出すため、キャラクターエディットシステムを作った。結果として、人型であればどんな体系や骨格でも自然な動きができるという技術が生まれ、アニメーターなどの作業量は3分の1に減らせたという。

 このほかオンラインの運営やオープンワールドにおけるシームレスなフィールドの移動など、新しい技術を生み出しながら制作が進められていった。

 またコンセプトとしては、伊津野氏はスタッフとの間で「死ぬかもしれない感」を大事にしろ、と徹底して話してきたという。「死ぬかもしれない感」とは、プレーヤーが取った行動の1つ1つの先に死が待っているぞ、と緊張感を持たせることで、スリルと楽しさの両面を持つ「冒険」の面白さを思い起こさせるようにしたのだという。

 これは来場者から「昼と夜の差がはっきりとしているが、何か狙いがあったのか?」という質問から話されたもので、伊津野氏は「次死ぬかもしれないと考えたときに、夜は真っ暗にしなければならなかった。だから明かりを付けなくては死ぬ可能性が高くなるし、明かりを付けたとしても死ぬかもしれない。次の一歩が死につながるという感覚を、リアルに表現できたと思う」と答えた。

 結果、「ドラゴンズドグマ」は世界で100万本の売り上げを達成し、続編を望む声も寄せられている。なお日本では4月25日に本作の完全版「ドラゴンズドグマ:ダークアリズン」の発売が予定されている。続編のみならず、日本から世界的なヒット作が生まれることを、今後も期待していきたい。

2008年に社内プレゼン用に制作されたキャラクターメイキングシステムの紹介デモ
デモの最後では集団で踊り狂うモンスターの姿が……。伊津野氏いわく、「踊りに目がいきますが、手足の長さまで変えているのに同じアニメで手がちゃんと合わさる、といった辺りに注目してください!」
島のイベントマップと、クエストのフローチャート
世界で100万本を売り、まずは成功を収めたと言える「ドラゴンズドグマ」。成功を機に、新たなチャレンジを今まで以上に期待していきたい
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(安田俊亮)