ニュース
【特別企画】思わず大人も欲しくなる魅惑の「トミカワールド」の世界!
「動けトミカ!」子供の夢の実現に挑んだ開発者達に密着
(2012/12/28 12:00)
タカラトミーが発売するミニカーシリーズ「トミカ」は、多くの子供達が遊んだ日本の代表的な“おもちゃブランド”の1つだ。トミカは日本の代表的なミニカーとして世代を超えた人気を集めている。
このトミカを“動かす”挑戦を行なっている「トミカワールド」というブランドがあるが、筆者は今年の「東京おもちゃショー」で、この「トミカワールド」に触れ、“トミカを動かす”ということに対する開発者の情熱に大きな興味を持った。動力のないミニカーを“いかにして走らせるか”というところに開発者はチャレンジし、様々な動きを与えるだけでなく、実車が走る風景を、トミカを使って再現しているのである。タカラトミーは動力を持つ電車の「プラレール」があるが、トミカはプラレールとは全く異なるやり方で、トミカに動きを与えているのだ。その技術的なアプローチ、表現したいこと、車でしかできないこと、ここを取材してみたいと思った。
そこで今回はこのトミカワールドから「高速道路にぎやかドライブ」、「トミカ峠やまみちドライブ」そして「スーパーオートトミカビル」、「トミカ シティパーキング」の4つの作品を紹介したい。
各作品は開発者であるタカラトミービークル事業部トミカグループトミカ開発チーム係長の遠藤優希氏と、トミカ開発チームエキスパート流石正氏に各ギミックを解説してもらい、さらにトミカを動かす“想い”や、開発時のエピソード、今後の挑戦などのインタビューも行なった。
トミカに革命をもたらした、「高速道路にぎやかドライブ」から始まる“循環走行”
トミカは1970年に生まれ、現在では140種類を発売。今後は新シリーズの「ドリームトミカ」を加え、総ラインナップ160車種で展開予定しており、コレクショントイとして子供のみならず大人の人気も集めている。
トミカは指で転がすと快適に走るが、“動力”は搭載されていない。「トミカワールド」は“車が走る風景”を再現する子供向けジオラマで、「トミカを走らせる」というテーマに様々な方法で挑戦している。今回紹介する4つの作品以外にも、工事現場を再現したり、サーキット場を再現したり、プラレールという電車のおもちゃと連動するものなど多彩な商品が発売されている。
今回紹介する「高速道路にぎやかドライブ」は高速道路を再現した作品で、スイッチを入れておけば電池が続く限りトミカはずっと道路を巡回し続ける。「高速道路にぎやかドライブ」は2003年に発売されたが、この前まではトミカが巡回し続けるという商品はなかった。この作品が以降の「トミカワールド」に大きな影響を及ぼしたのである。「トミカ峠 やまみちドライブ」は高速道路から一転、険しい山道を再現し、こちらも大ヒットとなった。
また、過去の名作の雰囲気やシルエットを受け継ぎ、最新技術を盛り込んでリニューアルした「スーパーオートトミカビル」、「トミカ シティパーキング」も注目である。建物の周りを回ったり、らせん状の道路を高速で降りるなど過去の作品でもあった仕掛を改良し、さらに透明なエレベーターや、回転するエレベーターでトミカに面白い動きを加えている。子供が両親と車で買い物に行くとき利用した立体駐車場の記憶を蘇らせるような仕掛も詰まっている。
今回は「トミカワールド」の代表的な4つの作品をピックアップし、特徴を紹介していきたい。これらの作品の対象年齢は3歳以上と小さい子供に向けた商品だが、大人でも思わず引き込まれる、開発者のこだわりに満ちているのだ。
高速道路 にぎやかドライブ
2003年発売
価格:6,279円
サイズ:100×23×54cm(幅×高さ×奥行き)
「高速道路にぎやかドライブ」は2003年に発売された作品で、「トミカを循環させ、動かし続ける」というテーマに初めて挑んだものだという。この試みは大きく成功し、現在でも店頭に並んでいるヒット商品となった。「高速道路にぎやかドライブ」は高速道路をイメージしており、道路が環状線状になっている。中央に電池で動くエスカレーター型の坂がありトミカを持ち上げる。そこから緩やかなスロープを進み一周し、再び坂を上るというしくみだ。
面白いのが、車線が2つあり、坂を上がるスピードが車線で異なっているところ。ボタンを押すことで坂の前でレーンチェンジができる仕切りが飛び出し、トミカが走る車線を変えることができる。変更側の坂は基本車線より速度が速い“追い越し車線”になっている。複数のトミカを走らせてる場合、レーンチェンジさせたトミカは通常の道を走るトミカを追い越していく。
もう1つのボタンを押すと、道路から外れ「サービスエリア」に入ることができる。ここは駐車場の他、サービスエリアのお店をイメージしたシールが貼られていて、手で車を動かす“ごっこ遊び”ができる。そして再び高速道路に戻すのも手で行なう。
細部をチェックしていくと、様々な発見がある。坂の可動部分はゴムのヒダがついていてスムーズにトミカを上に持ち上げることができる。道路は緩やかな傾斜でトミカのスピードを維持するように計算されているのがわかるし、坂の前は1車線に戻るようになっている。高速道路に入るための料金所もあって、ここから手で高速道路にトミカが入るごっこ遊びができる。
また、高速道路を降りるところも再現されており、手で持って高速道路を抜けることができる。高速道路の要素をちゃんと凝縮してあるのが伝わってくる。サービスエリアも含め“手で遊べる要素”は、見ているだけでなく、子供が「自分で運転をしている」という感覚を楽しんでもらうため必ず組み込んでいるという。
「高速道路にぎやかドライブ」の可動部分は黄色のパーツになっている。ボタンも黄色で、どこを押せば走行に変化が出るかわかりやすくなっている。道路には木や、街灯、看板などのパーツも取り付けられるようになっている。ステッカーでサービスエリアの木々や、ガードレールの上の反射板なども再現している。
街灯などのオブジェクトの選択は、遠藤氏達製作スタッフが実際に高速道路を何度も走って抽出したものだ。トミカは“3歳児以上”を対象にしている。このため遠藤氏は“チャイルドシートでの子供の目線”を意識し、シートをリクライニングして上を見ながらどんな要素が子供の視界に入るか、印象に残るかを考えていった。ステッカーやオブジェクトは“子供の記憶に残るもの”を意識しているという。
トミカ峠 やまみちドライブ
2004年発売
価格:6,279円
サイズ:76×50×35cm(幅×高さ×奥行き)
「トミカ峠やまみちドライブ」は山道を走る風景をイメージした作品。2004年から発売されている。こちらもエスカレーター状の坂を登って位置エネルギーを与えるのだが、坂が2つ用意されていて、登る動きはより面白くなっている。
山を下りる道はヘアピンカーブのような急な角度になっていて、車に乗ってカーブを曲がるときの体に慣性がかかる感じを思い出させる。トンネルや鉄橋、S字カーブでくねくねと曲がる場所など変化に富んでいて楽しい。トミカが様々な地形を進んでいくのを楽しめる作品となっている。
「やまみち」というと大きな山のオブジェクトがあるかとも思ったが、「トミカ峠やまみちドライブ」は道路の複雑な形状で山を再現している。山の上には駐車場と観光案内板があり、ふもとには駐車場がある。道路脇からのぞき込むところに“滝”があったりもする。また「落石注意」や、「スリップ注意」の看板も細かい。
山道のカーブはただ曲がっているだけでなく、内側に向かって傾斜する“バンク”になっているところも興味深い。カーブが連続する複雑な地形をできるだけエネルギーを維持して走らせようという工夫が感じられた。S字カーブもよく見ると全てにガードがついているわけではなく、車がぶつかるところを計算して作ってある。
ちなみに「トミカワールド」の商品は、走行可能なトミカほとんど全てがきちんと走れるように走行テストを行なっているという。トラックやバスといった車体の大きなトミカも、山道を進めるのだ。
こちらのオブジェクトにも遠藤氏のこだわりが込められている。トンネルのアーチは“年代物”を感じさせる古いデザインになっており、鉄橋も鉄骨を組み合わせた無骨なものにして“旅情感”を出している。カーブもきついものだけでなく、ゆっくりしたものも用意されている。「高速道路にぎやかドライブ」が高速道路を表現しているのに対し、「トミカ峠やまみちドライブ」は複雑な山道の要所を表現している。それぞれが対を為すような雰囲気を持っていると感じた。
これらを遊ぶ子供の対象年齢は3歳以上とのことだが、お父さん、お母さんが感心するようなギミックやこだわりも盛り込まれている。またジオラマとして“視点”も考慮してあり、ネジ留めや電池ボックスは裏側に集中している。「トミカ峠やまみちドライブ」は関東地方の山々を中心に、ロケハンで坂の上り下りを何度も繰り返し、取材を行なったという。
ちなみに「トミカワールド」の商品の多くは合体可能で、「トミカ峠やまみちドライブ」には「高速道路にぎやかドライブ」と接続できるパーツも付属している。高速道路から険しい山道へ向かう旅行も再現可能なのだ。複数の商品と組み替え、合体できる要素もあるため、コレクションしたり、友達の商品と繋げて遊ぶことも可能となっている。