グリー、「GREE Platform Summer Conference 2012」を開催

田中氏「グローバル展開で重要なのは会社の意識を変えること」。年末までに「バイオ」、「モンハン」など数百タイトルをリリース予定


8月3日開催

会場:ザ・プリンスパークタワー東京

入場料:無料



 グリー株式会社は8月3日、GREE Platformに参入するメーカーを対象にしたゲームカンファレンス「GREE Platform Summer Conference 2012」を開催した。

カンファレンスの司会進行はフリーアナウンサーの福澤朗氏と榎本麗美氏が務めた

 今回の開催は、2012年3月に同じ会場で行なわれた「GREE Platform Conference 2012」に続いて2度目。前回は、単一のプラットフォームで世界169カ国にシームレスな展開を実現する「GREE Platform」のスタートを目前に控えていただけに、参加者からも一種独特の熱気が感じられたが、今回はスタート後ということもあり、また、“コンプガチャ”問題後ということもあり、前回と比較すると落ち着いた雰囲気だった。

 カンファレンスの口火を切ったグリー代表取締役社長田中良和氏からは、前回の基調講演で掲げた「10億人が利用するサービスを提供する」という目標はそのままに、コンプガチャ対策を含む、前回のカンファレンスからこれまでの取り組みと、そして今後の取り組みについて、田中氏独特の熱っぽい口調で語られた。

 関係者やメディアを驚かせるようなアナウンスは一切なかったものの、田中氏のメッセージは非常に明確だった。要約すると、「グリーはグローバル展開に向けて様々な取り組みを行なっており、9月には14カ国語にも対応し、名実共に169カ国一斉配信に対応する。年末に向けて多くの有力タイトルの提供も開始していく。サードパーティーの皆さんはぜひ安心してGREE Platform向けに14カ国語対応のゲームアプリを作って欲しい」ということだ。それではさっそく、基調講演の模様を紹介していこう。

【スポンサーラウンジ】
「GREE Platform Conference」名物となった感もあるスポンサーラウンジ。基調講演後は、ランチョンミーティングスペースとなり、立食スタイルの昼食を取りながら、スポンサーブースを回ったり、関係者同士で情報交換したり、メインステージでのスポンサーのイベントを見ることができる。1番目立っていたのは、Windows Azureのほか、Windows 8やXbox 360など多彩なアイテムを出展していた日本マイクロソフトか


■ 「GREE Platform」は堅調な滑り出し。欧米アジアでランキング上位を獲得

エネルギッシュに30分語り続けたグリー代表取締役社長田中良和氏
一番大きい変化は、「GREE Platform」のグローバル展開がスタートしたこと

 田中氏が最初に取り上げたのは、消費者庁の行政指導を受けて設立された「ソーシャルゲーム利用環境整備協議会(仮)に向けた設立準備委員会の設立」について。

 田中氏は、「ソーシャルゲームという産業は、多くのユーザーに利用され、3~5年で非常に大きな業界になった。それ自体は我々にとっても皆さんにとっても素晴らしいことだが、産業の規模に合わせて、社会の要請にもしっかり応えていかなければ、社会に受けいられるものにはならない。今後は自らで自らを律していくというポリシーでやっていく必要がある」と語り、この件については、ソーシャルゲームをプロバイドするプラットフォーマーとして、「今後も引き続きいろいろお願いをさせて頂くことになる。ご協力に感謝します」と力強く語り、メーカー横断的なカスタマーサポートの設置や、利用金額の上限設定、RMT対策といった枝葉の部分も含め、今後もしっかり取り組んでいくことをアピール。そして、まずはグリー自らが率先垂範するために、「日本でどういったビジネスモデルなら社会に受け入れて貰えるのか自ら律する姿勢で今社内で準備を進めているところ」と語り、10月の委員会設立までには具体的な形として見せていく姿勢を表明した。


【コンプガチャ問題に対する取り組み】

 続いて田中氏は、4月から8月までのグリーの取り組みを「グリーの軌跡」として紹介。まず4月は、北米の開発スタジオによる「Zonbie Jombie」、「Alien Family」に続く、海外向け第3弾として「Dino Life」の提供を開始したことを報告。日本においてはハイクオリティのネイティブゲームアプリとしてペットゲーム「ともだち☆ドッグス」を提供するなど、カードゲーム以外のゲームジャンルにも積極的に取り組んでいることを明らかにした。

【4月の取り組み】

 5月は、欧米向けに展開しているソーシャルゲームメーカー「FUNZIO」の買収、「Zombie Jombie」を始めとした海外タイトルが好調に推移していることを報告。「Zombie Jombie」はUS AppStore売り上げトップ10入りを記録し、アジアや中南米では1位を記録したこともあるという。今後は、欧米のメーカーと組んで、「Moshi Monsters」、「Sid Meier's Pirates!(パイレーツ海賊伝説)」といったタイトルをリリースしていくことを報告した。

 さらに、「Crime City」や「Modern War」といったiPad対応タイトルがアジア、南米、欧州でランキング1位を獲得したことを受け、田中氏は「GREE Platformとしても今後、iPad向け、タブレット向けにも力を入れていきたい」と語った。

 そして残る5月の話題は「GREE Platform」の提供開始となる。すでに実際に169カ国からアクセスがあり、売り上げも発生しているという。ただし、提供言語はまだ日本語と英語のみで、主要言語14カ国語に対応するのは9月となる。

【5月の取り組み】

 6月は「GREE Platform」を通じてサービスが開始されたファーストパーティータイトルの動向として「Fishing Star!(釣りスタ)」、「Driland(探検ドリランド)」がベトナムやシンガポールでランキングベスト10にランクインしたことが語られた。

 田中氏は「釣りというモチーフは全世界で通用する。海の無いような国や、インドのような国でも良く遊ばれている。そういう意味ではまずはリリースしてみて、データを収集していくのがいいのではないか」とトライアルの重要性を語った。

 ほかには、バンダイナムコゲームスとの業務提携により、「NARUTO -ナルト- 忍マスターズ」や「テイルズ オブ カード エボルブ」、「サモンナイト」シリーズ、「アイドルマスター」シリーズなどのタイトルをGREEからソーシャルゲームとして提供することを報告したほか、海外から「ギャングドミネーション」や「ビジュエルド伝説」など、海外から日本への展開事例なども紹介した。

【6月の取り組み】

 7月は、「探検ドリランド」のアニメ展開や、11カ所目の開発拠点となるバンクーバーオフィスの設立、「BLEACH」のソーシャルゲームの提供予定、フジテレビとの提携、ネイティブゲームの提供、ChinaJoyへの出展、韓国NCsoftとの提携などを矢継ぎ早に紹介。

 「BLEACH」の提供については、「有力IPを使ったカードゲームは非常にユーザーから支持されているので、今後も積極的に推進していきたい」と語り、ネイティブゲーム、つまり、カードバトルゲーム以外の普通のゲームの提供については、「ソーシャルゲームはカードばかりではないかという意見もあるが、実際にそれが受け入れられているという側面もある」と大ヒットカードゲームを生み出してきたことに自負心を覗かせながら、「ただ、我々としては新しいゲームデザインの創造も大事」とし、今後も新しいジャンルのゲームも提供していくことをアピールした。

【7月の取り組み】


■ 「GREE Platform」は9月に14カ国語対応、12月までに数百タイトルをリリース

2012年に「GREE Platform」は14カ国語に対応し、名実共にグローバルサービス体制が整う
コンシューマーゲームで著名なIPがどんどんソーシャルゲームになる
目標は10億人

 続いて田中氏は今後の展開について語った。まず、東京ゲームショウやE3、ChinaJoyに続いて、8月16日よりドイツケルンで開催されるヨーロッパ最大規模のゲームショウGamescom 2012に出展することを報告。田中氏は「これで世界の主要なゲームショウをカバーでき、これによって我々のモバイルによる新しいゲーム体験を世界に知らしめることができる」と語った。

 次に「GREE Platform」の次のフェイズとして予定されている14カ国語対応について9月を予定していることを告知。「これにより日本語圏、英語圏以外のマーケットにも深く入っていくことができるようになる。サードパーティーの皆さんも、様々な言語への対応を前提としたゲーム開発が可能になる。我々の新しい取り組みに注目してほしい」と力説した。

 そして田中氏は2012年7月から9月までに約60タイトル、2012年12月までに数百タイトルを順次リリースしていく予定であることを明らかにした。ラインナップの中には、「バイオハザードVS(仮)」(カプコン)、「モンスターハンター ダイナミックハンティング(仮)」(カプコン)、「DanceDanceRevolution(仮)」(コナミ)、「真・三國無双(仮)」(コーエーテクモゲームス)といった有力タイトルが含まれる。

 田中氏は講演の締めくくりとして、「GREE Platformの提供から3カ月経過し、様々なノウハウを貯めたり、テストマーケティングを行なっているところ」とまだ発展途上の段階であることを報告しながら、「グローバルビジネスは私も初めてだが、思っていることがいくつかある」と言葉を切り、「ひとつは、北米の開発スタジオによる『Zombie Jombie』の開発経験の通じて得られたKPI(Key Performance Indicator)と、日本での開発経験を通じたKPIを画面単位で比較したり、ユーザーの属性毎に比較したりといったことを行なっている」と語り、グローバルに開発拠点を持つことを活かし、グローバル単位でのデータマイニングを推進していることを明らかにした。

 「それによってそれぞれがどのような問題に起因してこうなっているということを我々なりに解釈することが可能になってきた。こうしたノウハウをパートナーの皆さんに提供させて頂き、それぞれのゲームにおいて役立てることで、海外進出を手助けしていきたい。これが我々の強みかなと思っている」と語り、ほかにも広告出稿やマーケティングの違いについても言及し、日本のやり方と北米のやり方を統合し、最適にチューニングすることでもっとも効率の良いユーザーの獲得の仕方を学んでいる」とし、特に北米展開については分析と支援の両方で絶大な自信を持っていることを伺わせた。

 そして3点目の要素として田中氏は、グローバルビジネスを展開していく上で重要なのは「会社の意識、会社のスタッフの意識、会社のオペレーションを変えていくこと」であると強調した。田中氏はエクセルによるデータ管理を引き合いに、「これまでは男女、年齢、OSなどを見ていれば良かったが、今後は国という行を作り、国別に何が起きているかを見る必要がある」と熱っぽく語り、「すべての業務オペレーションを全世界に対応する必要があり、いまグリー自身も作り替えているところ」と続け、「もちろん、皆さんの会社の事情もあると思うが、製品が変わり、マーケティングが変われば、会社の意識や業務オペレーションも変えていく必要がある」と、自社のみならずサードパーティーに対しても、時代の流れに対応していく必要があることを力説した。

 最後に、「我々は『10億人が利用するサービスを作るという』ということを目標に掲げ、事業を推進してきているが、今はその目標に向けてスタート台に上ったばかりだと考えている。私としては年末までに大きな結果を残すことはもちろんだが、直近の1カ月間程度で、多くの方がわかる形で結果を出し、『GREE Platform』が全世界で成功できるということを示したい」と自信たっぷりに語り講演を終えた。

 従来のゲームプラットフォームビジネスと、グリーやディー・エヌ・エーが展開するソーシャルゲームプラットフォームビジネスの最大の違いは、どのプラットフォームを選択しても同じハードに提供することになるため、プラットフォームによる差別化が非常に難しいことだ。この点、グリーはそのソフトウェアプラットフォーム特有のウィークポイントを理解した上で、他のプラットフォームとキッチリ差別化できていることを具体的な事例を挙げて示した点は大きく評価できるところだ。グローバル規模でのソーシャルゲーム戦争を戦い抜く覚悟を鮮明にしたグリー。最終的な勝者は誰になるのか、注目していきたい。


【プラットフォーム事業に関する戦略・施策について】
田中氏の発表を受けて、続いて壇上に上がったグリー執行役員マーケティング事業本部長の小竹讃久氏は、パートナーに対する具体的なサポートプログラムを紹介。ゲームジャンル別に過去のケーススタディを取り上げ、課金率や継続率といったKPI(Key Performance Indicator )を改善させることで、ユーザーの満足度は大きく変わり、ビジネスの改善に寄与することをアピール。ソーシャルゲームでは、仮に初速が鈍くても運営の改善によって十分リカバーが可能であることを実例を挙げてアピールし、グリーと組むことのメリットや、グリーのプラットフォーマーとしての強みを強調した

(2012年 8月 3日)

[Reported by 中村聖司]