「GeForce LAN / NVIDIA Gaming Festival 2012」eスポーツ大会レポート

「LoL」トッププレーヤーたちのプレイとは?!
有名プロゲーマーMoon選手の「SC2」試合もお届け!


4月29日、30日開催

会場:上海正大廣場 9F



中国ではeスポーツへの関心が非常に高い。すべての試合が終わったのは夜9時ぐらいだったが、最後までほとんどの席が埋まっていた

 中国上海で開催された「GeForce LAN / NVIDIA Gaming Festival 2012」では、プロゲーマーたちによるeスポーツ大会も設けられた。中国ではeスポーツがすごく人気で、2日目の決勝戦を見に来た観客は約8,000人だという。

 種目となったタイトルは「League of Legends」(以下、LoL)、「Starcraft II」、「DotA」の3つ。何れも日本ではあまり知られていない作品ばかりだが、中国や韓国、欧米では、大々的にヒットしている作品たちで、こうしたeスポーツ大会も頻繁に行なわれている。

 本稿では世界トッププレーヤーたちが見せる試合の模様から、種目タイトルたちの面白さを日本のユーザーの皆さんにお伝えしたい。




■ まったくキルが見られない序盤。トッププレーヤーだからこその試合模様


WE.GIGABYTEチーム
Taipei Assassinsチーム
キャラクターの選択画面

 「LoL」はAoS、もしくは、MOBA(Multiplay Online Battle Arena)と呼ばれるジャンルのゲームだ。日本では正式サービスがされておらず、あまり知られていないと思うが、欧米、中国、台湾、韓国では大ヒットしている超人気作である。ゲームに関する基本的な内容は、本誌によるレポートをご覧頂きたい。

 今回の「LoL」大会では、中国、台湾での予選を勝ち抜いた4チームによる試合が行なわれた。1日目では、Taipei Assasins対EHOME、WE.GIGABYTE対iGが行われ、勝ち抜いたTaipei Assasins(以下、TPA)とWE.GIGABYTE(以下、WE)チームが2日目の決勝戦で試合を行なった。

 本作の試合はまずチャンピオンの選択からスタートする。チャンピオンの選択画面では、まず試合で使えないようにBANする6つのチャンピオンの選択と、各プレーヤーが使用するチャンピオンを順番に選択するものだ。

 まず、BANするチャンピオンはいわゆるOP(Over Power)と言われるバランスを崩すほどの強いチャンピオンか、相手のプレーヤーが得意とするチャンピオン、もしくは、自分たちが考える組み合わせで対応が難しいチャンピオンを選択する。その後に行なわれるチャンピオンの選択では、チームとしての組み合わせを考慮して選択するものだ。

 各チームが第1試合で選択したチャンピオンがご覧のとおりである。

Taipei Assassinsチーム(台湾)
BANしたチャンピオン:Galio、Kennen、Twisted Fate
選択したチャンピオン:Nidale(タンク兼AD)、Urgot(遠距離AD)、Morgana(AP)、Soraka(サポータ)、Trundle(Jungler)

WE.GIGABYTEチーム(中国)
BANしたチャンピオン:Vladmir、Mundo、Shen
選択したチャンピオン:Lee Sin(タンク兼AD)、Ashe(遠距離AD)、Cassiopeia(AP)、Janna(サポータ)、Nocturne(Jungler)

 両チームともEUスタイルと言う1番安定的だと言われる組み合わせの選択だ。タンク、遠距離AD(物理攻撃タイプ)、AP(魔法攻撃タイプ)、サポータ、Junglerの組み合わせで、タンクは上のレーンを担当、APは真ん中のレーンを担当、ADとサポータは下のレーンを担当、Junglerはマップ中に位置する中立ミニオン(ユニット)を倒しながら、各レーンに攻撃を仕掛ける役割だ。

 ゲームの序盤はお互い無理に攻撃を仕掛けず、敵ミニオン(ユニット)を倒しながら、チャンピオンを成長させた。キル数を上げると装備を買えるお金が沢山ゲットできチャンピオンも早く成長するので、普通のゲームでは、アグレッシブにプレイする人が多く、序盤からチャンピオン同士の戦闘が多いものだ。

 しかし、トッププレーヤー同士の戦いでは、皆、素早く状況を判断して引くタイミングを熟知しているので、1対1では、倒しながらキル数を上げることは難しい。黙々と敵ミニオンを倒しながら、徐々にチャンピオンを育てていく模様となった。


幾度も奇襲を仕掛けるJunglerだが、なかなか倒すことはできなかった




■ 中盤から少しリードしていくWEチーム。しかし、Nidaleの活躍で勝機は一気にTPAチームに!


Morganaのコンボ攻撃が上手く命中し、ようやくファーストキルを達成

 トッププレーヤー同士での戦いで、なかなかキルが出ない理由はもう1つある。トッププレーヤーは、周りの視野を確保するためのWardを必ず用意するので、Junglerの動きも常に把握する。そのため、Junglerによる奇襲も成功することはなかなか難しいのだ。

 まったくキルが出ず、緊張が続く中、ようやく始めてのキルがでたのである。最初にキルをあげたのはTPAチームのMorganaだ。

 ゲームが6分ほど過ぎて、レベル6になったとき、同じレーンにいるCassiopeiaに相手の動きを封じる第1スキルを命中させ、その次にレベル6で覚えられる究極スキルのコンボで、Cassiopeiaを倒したのである。その次に上のレーンでは、WE.GIGABYTEチームのLee Sinが敵の砲台に突っ込んでしまう判断ミスで、Taipei Assassinsチームにもう1キルをあげることになった。

 しかし、試合が開始してから8分を過ぎた時点で、WE.GIGABYTEチームは下のレーンの遠距離AD&サポータとJunglerとのコンビネーションで、2キルを連続で獲得。その後のいくつかの戦闘でもキルをあげることができ、試合を少しリードしていった。

 「LoL」の試合では、ゲームの中盤まではこういった小さな戦闘が無数に行なわれる。相手のチャンピオンを倒しても、復活するまでの時間の間、敵の砲台といった建物を破壊することが難しいからだ。とりあえず、無数の戦闘からキル数を上げて、相手より先にチャンピオンを成長させることが重要である。

 ゲームが終盤になればなるほど、復活する前の時間は長くなる上、チャンピオンは建物を破壊できるぐらいまで強くなる。そのため、後半の戦闘で一気に決着が着くケースが多い。中盤までの幾つかの戦いは、終盤の戦闘で相手より強いチャンピオンに育て有利になるためのものである。とはいえ、より強いチャンピオンを育てたとしても、戦闘では、チャンピオンの強さの他に、攻めるか引くかのタイミング、コントロールスキルなどすべて問われるので、油断はできない。

 試合が開始して30分が経つまでは10対6と、WE.GIGABYTEチームが少し有利な形勢となった。しかし、真ん中のレーンで起きた5対5の戦闘で、Taipei AssassinsチームのNidaleが、混戦の中で相手の遠距離ADやAPを瞬時に倒すことに成功し、ゲームの流れが一気に変わたのである。勝機を掴んだTaipei Assassinsチームは、そのまま攻め続け第1試合を勝利することができた。


中盤からは若干WEチームの方がリードするが、終盤の戦闘で勝機を掴んだTPAチーム。そのまま、攻め続けて、第1試合に勝った
その後に行なわれた第2試合、第3試合でも、第1試合と同様に五分五分の戦いが続いたが、終盤を上手く戦ったWEチームが勝利となった
WEチームは「Counter-Strike」や「Warcraft III」でも有名なプロゲームチームだ。中国での人気は絶大で、試合が終了するとサインを求めるファンたちが選手たちを囲んだ




■ 一瞬の隙を狙う「SC2」プロゲーマーたちの戦い。MacSed選手の根性が勝利へ導いた!


FnaticMSI.Moon選手
iG.MacSed選手

 「SC2」の決勝戦では、IG.MacSed選手(中国)とFnaticMSI.Moon選手(韓国)選手の試合が行なわれた。Moon選手は「Warcraft III」で最も賞金を稼いだ選手で、中国でもものすごい人気を持っている選手である。

 Moon選手が使用する種族はZerg。対して、MacSed選手はProtossの使い手だ。基本的に「SC2」でのZerg対Protossは、ZergのRoach、Hydraliskの組み合わせ、ProtossはStalker、Sentry、Void Rayの組み合わせの戦略をとるのが一般的である。

 第1試合目でのMacSed選手は一般的な組み合わせと、「Warp Gate」と「Pylon」の召喚機能を利用した戦略をとった。Protossの地上ユニット生産建物である「Gateway」は「Warp Gate」にアップグレードすることによって、「Pylon」の近くなら、瞬時にユニットを召喚できる。この機能を利用して、敵のベースへ一気にユニットを送り込もうとする戦略である。

 対してMoon選手は当然ながらも相手の戦略に気づき、広域に偵察していたが、1つの「Pylon」を偵察し損ねて、相手の奇襲を許すことになった。ここで大きいな差を付けられたMoon選手は、RoachとHydraliskの組み合わせで、相手に攻撃を仕掛けてみたが、MacSedの堅調な防御でことごとく失敗。MacSed選手は後にColossusを追加した組み合わせで攻撃して第1試合を勝ち取った。

 第2試合はMacSed選手は同じ戦略にでたのに対し、Moon選手は序盤でZerglingを生産してラッシュするという大胆な戦略を駆使した。序盤は強いが、1度ラッシュに失敗するとその後の形勢はもの凄く不利になってしまう諸刃の剣の戦略である。

 しかし、MacSed選手は、Moon選手の動きを読み取ることができなかった。偵察のために入り口を防いでいたZealotをMoon選手のところに送り込んだが、Moon選手はこの隙を逃さず、Zerglingのラッシュで敵のベースへ侵入したのである。相手の戦略を偵察で事前に把握できず、さらに一瞬の隙を見せてしまったMacSed選手はスタートしてから10分もしない間に、負けを宣言したのである。

 最後の第3試合では、Moon選手のRoach部隊によるゲリラ攻撃が上手く成功してMoon選手が大きくリードしていった。しかし、一歩リードしたMoon選手は組み合わせにMutaliskやBanelingなどを活用しようとしていたところを、MacSed選手の絶妙なタイミングでの攻撃で一気に形勢は逆転し、MacSed選手の勝利となったのである。ゲームの序盤から中盤まで、防御で精一杯だったMacSed選手だが、一瞬の隙を狙った攻撃が、上手く成功した結果とも言えた。「SC2」の決勝戦は2-1で、MacSed選手の優勝となった。


敵の侵入を許してしまうMoon選手。その後、なんとか攻撃してみるが、これといった結果には至らなかった
第1試合目の相手の戦略を逆手にとって、勝負に出るMoon選手。序盤のZerglingラッシュが上手く成功した
最後の第3試合目では、Moon選手のゲリラ攻撃に苦しんだMacSed選手だが、Moon選手が組み合わせを変更する隙を上手く狙って勝利を飾った
【DotA】
「Warcraft III」のMOTDである「DotA」。iG対LGD.Taobaoの決勝戦では、2-1でのiGチームが勝利した。実はLOLの開発責任者はGuinsooという「DotA」の開発者である
【セレモニー】
3位以上の入賞者にはトロフィーと賞金が贈られた。最高賞金は「DotA」の優勝賞金12,000米ドル(約100万円)

(2012年 5月 1日)

[Reported by DongSoo“Luie”Han]