セガとMAGES.、「ミクの日大感謝祭」を開催
2日間に渡って開催されたライブイベントの模様をダイジェストでお届け!


2012年3月8日
「初音ミクライブパーティー2012 ひる(ミクパ♪)」 14時~
「初音ミクライブパーティー2012 よる(ミクパ♪)」 19時~

2012年3月9日
「初音ミクコンサート 最後のミクの日感謝祭」 14時~
「初音ミクコンサート 最後のミクの日感謝祭 ファイナル」 19時~

会場:TOKYO DOME CITY HALL


会場となったTOKYO DOME CITY HALLの入り口付近には等身大と思われる初音ミクの人形もディスプレイされており、来場者の注目の的となっていた

 株式会社セガと株式会社MAGES.は、3月8日と3月9日の2日間に渡って、初音ミクをはじめとするVOCALOIDたちのライブイベント「ミクの日大感謝祭」を、東京・水道橋にあるTOKYO DOME CITY HALLにおいて開催した。

 本イベントは、2010年、2011年と3月9日に行なわれてきた、初音ミクを初めとしたVOCALOIDたちのライブイベントで、バンドの生演奏によるVOCALOID楽曲に合わせて、セガのリズムアクション「初音ミク -Project DIVA-」(以下、「Projet DIVA」)シリーズのPV映像のように、歌って踊るVOCALOIDたちの姿を見ながらファン同士で盛り上がることができる内容となっている。

 今年からは3月8日には「初音ミクライブパーティー2012(ミクパ♪)」(以下、「ミクパ♪」)が、3月9日には「初音ミクコンサート 最後のミクの日感謝祭」(以下、「最後のミクの日感謝祭」)と、それぞれ異なる内容のライブ公演が昼と夜の2回ずつ行なわれるようになり、より多くの楽曲をよりたくさんのファンが楽しめるようになっていた。

 ここからは、14時から行なわれたこの2つの昼公演それぞれの内容と特長についてお届けしていくとともに、「最後のミクの日感謝祭」昼公演後に行なわれた、初音ミクの生みの親であるクリプトン・フューチャー・メディア株式会社の代表取締役、伊藤博之氏に対する囲み取材の内容も合わせてお届けしていこう。




■ レーザー光線やミラーボールなど光による演出が際立った「ミクパ♪」

昨年のライブで観客をアッと言わせた羽のエフェクトも、今年は6枚と数を増やした上にディティールも細かくパワーアップ!

 開演前、初音ミクのキャラクターボイスを担当した藤田咲さんと、巡音ルカのキャラクターボイスを担当した浅川悠さんが登場。2人はさらにフロントアクトを担当する声優ユニット「Stytlips」の4人、石原夏織さん、能登有紗さん、小倉唯さん、松永真穂さんを紹介した。

 石原さん、能登さん、小倉さんは「Project DIVA」のモーションアクターを担当していたこともあり、モーションキャプチャー時のエピソードなどを交えながらのトークが展開されていった。4人は最後に、デビューソングの「STUDY×STUDY」を歌いあげて、会場を暖める。

 いよいよ「ミクパ♪」の公演が始まり、ステージ中央に用意された透明なスクリーン上に初音ミクがあらわれると会場は一気にヒートアップ。「星のカケラ」から「初音ミクの激唱」まで、「Project DIVA」シリーズでもおなじみの初音ミク楽曲が次々と演奏されていった。

 そこからはほかのVOCALOIDたちが次々と登場し、巡音ルカから鏡音リン、鏡音レンの楽曲のほか、KAITOのサプライズ出演などで会場が盛り上がりを見せる。その後は「白い雪のプリンセスは」からは「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】 」まで、再び初音ミクのステージに。

 「ミーク!ミーク!」と初音ミクを呼ぶ声に応えて行なわれたアンコールでは、初音ミクと鏡音リンのデュエットによる「カラフル×メロディ」から始まり、最後には「Starduster」でしっとりと締める形となっていた。

 「ミクパ♪」で目を引いたのが、随所に散りばめられたレーザー光線や、巡音ルカが登場した際のミラーボール、「こっち向いて Baby」での花火など、視覚的に楽しめるいろいろな演出が用意されていたこと。「結ンデ開イテ羅刹ト骸」などではステージ後方上部に設置された液晶パネル上で複数の光源からスポットライトが当たる初音ミクを演出したり、楽曲終了時には、逆光の中にVOCALOIDたちが浮かび上がるようなライティングが施されたりと、光による演出がさらにパワーアップしており、より目で見て楽しめる演出となっていた。


【「ミクパ♪」公演中の会場の様子】

【セットリスト】
1:星のカケラ オルゴール(Music by 平沢栄司)
2:星のカケラ(Music & Lyrics by 平沢栄司)
3:初めての恋が終わる時(Music & Lyrics by ryo)
4:二息歩行(Music & Lyrics by DECO*27)
5:アルビノ(Music & Lyrics by buzzG)
6:え?あぁ、そう。(Music & Lyrics by 蝶々P)
7:マージナル(Music & Lyrics by OSTER project)
8:恋色病棟(Music & Lyrics by OSTER project)
9:ローリンガール(Music & Lyrics by wowaka)
10:私の時間(Music & Lyrics by くちばし)
11:ぽっぴっぽー(Music & Lyrics by ラマーズP)
12:*ハロー、プラネット。(Music & Lyrics by sasakure.UK)
13:結ンデ開イテ羅刹ト骸(Music & Lyrics by ハチ)
14:初音ミクの激唱(Music by GAiA / Lyrics by cosMo@暴走P)
15:RIP=RELEASE(Music & Lyrics by minato)
16:ダブルラリアット(Music & Lyrics by アゴアニキ)
17:ルカルカ★ナイトフィーバー(Music & Lyrics by samfree)
18:メランコリック(Music & Lyrics by Junky)
19:ココロ(Music by & Lyrics by トラボルタ)
20:いろは唄(Music & Lyrics by 銀サク)
21:悪ノ娘(Music & Lyrics by mothy_悪ノP)
22:悪ノ召使(Music & Lyrics by mothy_悪ノP)
23:Fire◎Flower(Music & Lyrics by halyosy)
24:Pane dhiria(Music & Lyrics by 新城P)
25:白い雪のプリンセスは(Music & Lyrics by のぼる↑)
26:こっち向いて Baby(Music & Lyrics by ryo)
27:Yellow(Music & Lyrics by kz)
28:タイムマシン(Music by 164 / Lyrics by 40mp)
29:ARiA(Music by とくP / Lyrics by lino,とくP&木緒なち)
30:みくみくにしてあげる♪【してやんよ】 (Music & Lyrics by ika_mo)
~ENCORE~
32:カラフル×メロディ(Music by doriko / 編曲OSTER project / Lyrics by minato)
33:歌に形はないけれど(Music & Lyrics by doriko)
34:メルト(Music & Lyrics by ryo)
35:Starduster(Music & Lyrics by ジミーサムP)



■ ストリングス&ホーンの追加で重厚なサウンドとなった「最後のミクの日感謝祭」

「孤独の果て」ではギターを演奏する鏡音リンの姿だけではなく、マイクスタンドやギターアンプもスクリーン上に映し出されており、より臨場感が感じられた

 「最後のミクの日感謝際」の開演前には、「ミクパ♪」に続いての登場となった藤田さんと、鏡音リン・鏡音レンのキャラクターボイスを担当した下田麻美さんが登場。続いてフロントアクトを担当するダンスユニット「DANCEROID」の、いとくとら(いくら)さん、愛川こずえさん、柚姫(ゆずき)さん、まぁむさんの4人を招き入れる。

 「DANCEROID」の4人は、「Baby Maniacs」(Music by 八王子P / Lyrics by q*Left)、「ファーストキス」(Music and Lyrics by キャプテンミライ)、「チャイナサイバー@ウォーアイニー」(Music and Lyrics by キャンディまんじゅうP)に続いて、「ミクパ♪」でも演奏された人気曲「ルカルカ★ナイトフィーバー」と、4曲に合わせてのダンスを披露し、会場を盛り上げた。

 いよいよ公演が始まり初音ミクが登場すると、GoogleのCMソングとしても話題となった「Tell Your World」から始まって、「初音ミク and Future Stars Project mirai」のオープニングテーマ曲である「ゆめゆめ」と話題の楽曲からスタートし、そのまま「初音ミクの消失」までステージを展開。

 曲名通り、初音ミクがステージ上から消失した後は、「変わるわよ!」というセリフとともにMEIKOが登場し、続いて鏡音レン、巡音ルカ、鏡音リンと初音ミクとのデュエットを含めて、さまざまなVOCALOIDたちのステージが行なわれていった。「タイムリミット」からは再び、初音ミクのステージが始まるとラストソングの「SpiCa」では2010年のライブと同様にキャノンでメタリックテープを撃ち出す演出が行なわれ、会場のボルテージは最高潮に。

 「ミーク!ミーク!」という観客の声に応えてのアンコールでは、「愛言葉」から始まり、「ミクパ♪」でもアンコール曲となっていた「メルト」とこちらも2010年のライブを思い出させる展開に。そして「ハジメテノオト」でしっとりとアンコールも終わりかと思われたが、会場からは「もう1回!、もう1回!」とさらなるコールが続いていく。

 更なるアンコールに応えて始まった曲は「Project. DIVA desu.」(Music and Lyrics by t.Komine(うたたP))。ただし、ダンサーチームによるダンスが展開されていくだけで、初音ミクはまだあらわれずという、これまた2010年のライブのオープニングを思い出させる展開だ。そして2度目の演奏となる「ワールドイズマイン」で会場が1つになったところで、「最後のミクの日感謝際」は幕を閉じた。

 「最後のミクの日感謝際」では、生演奏を担当したバンド「The 39s」にストリングスとホーンセクションが加わり、ソロプレイや演奏なども多く用意され、より重厚な生演奏が楽しめたのが特長となっていた。また、楽曲の作曲者がゲストアーティストとして登場する場面も多く用意されており、VOCALOID楽曲のファンにとって、より楽しめる内容といえたのではないだろうか。


【「最後のミクの日感謝際」公演中の会場の様子】

【セットリスト】
1:Tell Your World(Music & Lyrics by kz)
2:ゆめゆめ(Music & Lyrics by DECO*27)
3:ワールドイズマイン(Music & Lyrics by ryo)
4:えれくとりっくえんじぇぅ(Music & Lyrics by ヤスオ)
5:恋スルVOC@LOID(Music & Lyrics by OSTER project)
6:クローバー♣クラブ(Music & Lyrics by ゆうゆ)
7:ぽっぴっぽー(Music & Lyrics by ラマーズP)
8:ロミオとシンデレラ(Music & Lyrics by doriko)
9:ファインダー(DSLR remix - re:edit)(Music & Lyrics by kz)
10:裏表ラバーズ(Music & Lyrics by wowaka)
11:StargazeR(Music & Lyrics by 骨盤P)
12:moon(Music by iroha(sasaki) / Lyrics by はっか)
13:初音ミクの消失(Music & Lyrics by cosMo@暴走P)
14:Change me(Music & Lyrics by shu-t)
15:右肩の蝶(Music by のりぴー / Lyrics by 水野悠良)
16:Just Be Friends(Music & Lyrics by Dexie Flatline)
17:magnet(Music & Lyrics by minato)
18:ワールズエンド・ダンスホール(Music & Lyrics by wowaka)
19:炉心融解(Music by iroha(sasaki) / Lyrics by kuma)
20:孤独の果て(Music & Lyrics by 光収容)
21:Promise(Music & Lyrics by samfree)
22:タイムリミット(Music & Lyrics by North-T)
23:パズル(Music & Lyrics by クワガタP)
24:1/6 -out of the gravity-(Music & Lyrics by ぼーかりおどP(noa))
25:SPiCa(Music by とくP / Lyrics by kentax vs とくP)
~ENCORE~
26:愛言葉(Music & Lyrics by DECO*27)
27:メルト(Music & Lyrics by ryo)
28:ハジメテノオト(Music & Lyrics by malo)
~ENCORE~
29:Project DIVA desu.(Music & Lyrics by t.Komine(うたたP))
30:ワールドイズマイン(Music & Lyrics by ryo)



■ 初音ミクのファンは日本だけではなく世界へ広がっていく
  クリプトン・フューチャー・メディアの伊藤博之氏へのインタビュー

クリプトン・フューチャー・メディア株式会社の代表取締役、伊藤博之氏。

――昨日、今日とライブを実際にご覧になっての感想はいかがですか?

伊藤博之氏(以下、伊藤氏): 5年前に初音ミクのソフトを開発していました。5年前の今ごろは初音ミクの名前もビジュアルも何もなくて、ひたすら音声を切って貼ってというのを行なっていた時期なんですね。それから5年が経ってこれほど皆さんに支持されるようなキャラクターになり、コンサートまで開けるというのは予想していなかったので、非常に感激するとともに、これからもまた進化し続けていくんだろうな、という気持ちを新たにしました。

――初音ミクのムーブメントの盛り上がりをどのように感じられていますか?

伊藤氏: 初音ミクというのは歌を歌うソフトウェアでして、初音ミクの正体自体がそれほどたくさん決まっているわけではなくて、歌が歌えるソフト、そしてそのパッケージのイラストも数点しかなくて、ネットで活躍しているクリエイターの皆さんが活躍できる余地というのが非常にたくさんあります。そういう創作のチャンスというか創作のきっかけみたいなものを、初音ミクが担っていて、その結果たくさんの創作が生まれ、そしてインターネットとか動画共有サイトそれからソーシャルメディアみたいなものが存在として非常に大きかったと思います。

 そういうメディアを通じてですね、クリエイターが作ったたくさんのコンテンツが広がっていく、そしてそれがシェアされてたくさんの人たちに支持され、今回のようなコンサートになる。そしてCDやDVDとかいろいろな商品化のチャンスが、また一方であったりして、コンテンツの作り方自体がそもそも変わってきただな、という実感です。ですので、このムーブメント自体が、今後の音楽を含めたコンテンツ産業の1つの新しいモデルになるのかな、という期待をしています。

――初音ミクの今後の予定をお願いします。

伊藤氏: 初音ミクはインターネットで育てられ、そして支持されているという性格があるものですから、日本だけではなくて世界中につながっているわけです。現在、日本のファンやクリエイターが中心なんですが、実はアジアとか北米、南米、ヨーロッパ、いろんな国々のクリエイターやファンをつなぎ合わせているというか、新しいファンを実際に今、獲得をしはじめているところです。初音ミクのファンは、日本以外の海外でも非常にたくさんいらっしゃって、どんどんそれが熱を帯び始めているというところです。

 現在、初音ミクの、歌を英語で歌える製品を開発中でございます。それは間もなくアナウンスできると思いますが、そういったツールを通じて、日本以外の国で活躍するクリエイターとかファンを大きく魅了する存在になっていければなと考えています。

――セガさんとも協力してこのような大規模なイベントになったわけですが、ファンの方からは「定期的に開催してほしい!」とか「日本全国でやってほしい!」といった要望があるかと思います。そうすればより多くのファンが満足感を得られると思うのですが、ご自身でそういったやってみたいことはありますでしょうか?

伊藤氏: 今回のようなコンサートを定期的に行なうには、かなり仕事量として非常に大きいので、行ないたいとは思いますけれども、毎月というわけにはいかなくて、(時期を)選んでという形にどうしてもなってしまいます。

 一方でモノをクリエイトするという行為は、人間誰しもが持っている本能的な行為だと思いますので、人口がいるところに比例してクリエイターがいるわけであって、日本中そしてもしかしたら世界中のクリエイターとかそのクリエイターが好きなファンがいらっしゃいますので、そこに何かコンサートなのかファンイベントなのかわかりませんけれども、そういったファンが集まってコミュニケーションできるような機会が今後作っていければなと思います。

――今回、初音ミクが歌って踊るモーションにはセガのゲームの技術が使われていると思うのですけれど、セガさんに対しての感想・評価をお願いします

伊藤氏: セガさんはですね……ものすごく凝り性で、中の人は半ば廃人……と言ったらちょっと怒られますね(笑)。ものすごくセガさんの仕事は信頼しています。そして、そういった作品を作り出すことによって、ファンの方々に喜んでいただき、今に至っていると思いますので、体を壊さない範囲で(笑)今後ともよろしくという風に思っています。

――ゲームではなく、初音ミクというソフト自体をPC以外のゲーム機やタブレットなどで展開してみたいという希望はありますか?

伊藤氏: 初音ミクはヤマハさんが開発しているVOCALOIDという技術に基づいて動いている音声合成ソフトなんですけれども、iPadで動くVOCALOIDはリリースされておりますので、もしかしたら今後そのような形でパソコン以外のOSで動くようなものもひょっとしたら出てくるかも知れませんね。

――これだけのファンがいて、世界にもファンの方がいらっしゃるわけですが、ここまで世界に広がることを想定されていましたか?

伊藤氏: 想定はそんなにしていないです。ただ、僕らもなるべくたくさんの方に使っていただき、楽曲もたくさんの方に聴いていただきたいと思っていますので、その中に日本だけではなく世界の方も含まれているわけですから、多分漠然とは想像していたとは思うのですけれども、現在の状況はですね、当初の想像以上ですので、なんとかこういった状況を維持、というよりもさらに発展させて世界に広げていくのが僕らの役割なのかなと思っていますし、僕だけじゃなくてセガさんとかいろいろな関係会社を含めまして、今後とも初音ミクやその他のネット発のコンテンツをどんどん広げていくような活動をしていきたいと思っています。

――一番想定外だったのは何になりますか?

伊藤氏: そうですね。全部想定外になりますけれども(笑)、規模が想定外ですね。10人20人という人が作るのではなくて、何万人という規模の人たちが作り上げるという、規模感が想定外だったと思います。

――ありがとうございました。



(C) SEGA / (C) Crypton Future Media, Inc.
Organaized by SEGA/MAGES

(2012年 3月 10日)

[Reported by 菅原哲二]