Game Developers Conference 2012レポート

【GDC 2012】明かされる「バイオハザード リベレーションズ」の秘密
制作は「二毛作」スタイル。川田将央氏が3DSの開発環境などを説明


3月5日~9日開催(現地時間)

会場:San Francisco Moscone Center


 


 株式会社カプコンは「GDC2012」の会期3日目となる3月8日、ニンテンドー3DS用「バイオハザード リベレーションズ」の制作秘話を語るセッションを開催した。

 「バイオハザード リベレーションズ」は、日本では1月に発売された「バイオハザード」シリーズのニンテンドー3DS版となる。本作の舞台は豪華客船となっており、何が飛び出してくるかわからない密閉空間の恐怖を味わえる、シリーズの原点回帰を目指した作品である。

 セッションに登壇したのは、「バイオハザード リベレーションズ」プロデューサーの川田将央氏。川田氏は3DSをプラットフォームに選んだ制作のきっかけや、制作スタイルの秘密を来場者に語った。




■ 目指したのは初代「バイオ」の怖さ。3DSの高いスペックを活かす

カプコン「バイオハザード リベレーションズ」プロデューサーの川田将央氏

 まず川田氏が話したのは、「バイオハザード リベレーションズ」制作のきっかけについて。本作のきっかけは、3DSが登場したことで、それを使ったタイトルを発売したいというのと、「バイオハザード」のIP(知的財産権)の裾野をより広げていきたかったからだという。

 本作の制作には「バイオハザード 5」にも関わったスタッフもいたそうだが、それ以外のスタッフも含めて「初代『バイオハザード』のような怖いタイトルにしたい」というのが共通の認識だったそうだ。


「バイオハザード リベレーションズ」はホラーを意識したアドベンチャー要素の強い作品。「本格的なTPSが遊びたいなら、『バイオハザード オペレーション・ラクーンシティ』がオススメです」と川田氏

 その恐怖を演出する方針は、「バイオハザード 5」でプロデューサーを務めた竹内潤氏に示唆をもらった「豪華客船」というコンセプトを元にしたという。密閉された空間でのホラー体験をより味わえるように、これまで以上にアドベンチャー要素を増やしたと川田氏は話した。

 また世界観やデザイナーにも「バイオハザード 5」のスタッフを抜擢し、川田氏は「携帯機ゲームだからといって妥協のない制作環境が作れたのではないか」と語った。

 続いて川田氏は、3DSでの開発環境について話した。「バイオハザード リベレーションズ」は、携帯ゲーム機の特化した自社のゲームエンジン「MT Framework Mobile」を使って開発されたという。3DSをプラットフォームとして選んだ理由としては、新しい市場の開拓、立体視やすれ違い通信などの機能、ホラーを表現するには十分なスペックなどが挙げられたが、川田氏が最も注目したのは3DSのライティング能力だったという。

 3DSのシェーダー機能は、他のコンソールゲーム機と同等の機能を保有しており、プログラマブルシェーダーではなくハードウェアの固定機能で計算されるため、GPUの負荷も低い。そこに注目した川田氏は、キャラクターと背景に常時4本の光源を当て、光源をクラスタで使い分けることで1シーンに30から40個の光源を配置しているという。またエリアの切り替えに合わせてライトデータも切り替えるという工夫もしており、3DSでリッチな光源処理ができたと話した。


セッションでは、コンソール機に負けないスペックを持つ3DSでの開発秘話が語られていった。川田氏によれば、携帯ゲーム機の方が没入感は強くなるので、3DSは今作のホラーテイストに適していたという



■ コスト低減と高クオリティの両面を実現する日本人の知恵「二毛作」

スライドで提示されると少々滑稽だが、理由を聞けば納得できる

 川田氏は、「バイオハザード リベレーションズ」の制作で工夫したことを「日本人の知恵」として、「幕の内弁当」と「二毛作」に例えて紹介した。「幕の内弁当」とは、様々な種類のものを1つのパッケージの中に詰め込んで、色々なニーズに応える技術を表している。これは本作に詰め込まれたジャイロセンサーを活かした操作方法、スキャンシステムの導入、スライドパッドへの対応や、ハックアンドスラッシュが楽しめる「RAID MODE」などを意味している。

 そしてもう1つの「二毛作」は、本作と川田氏がプロデュースした前作の3DS用「バイオハザード ザ・マーセナリーズ3D」の2タイトルの制作プロセスのことを示している。「二毛作」とは本来、1年の間に1つの畑で2つの作物を栽培し収穫すること。

 「バイオハザード ザ・マーセナリーズ3D」はスピーディーなアクションで、「バイオハザード リベレーションズ」はペースのゆっくりしたホラーアドベンチャーといった全く異なる趣だが、この2タイトルは同じスタッフたちの手により、正に同時並行で制作が進められていた。

2つの作品は相互にリンクしながら発展していった

 具体的な過程としては、世界観を重点的に作りこみたかった「バイオハザード リベレーションズ」のシナリオ制作の合間に、「バイオハザード ザ・マーセナリーズ3D」の制作を進めていたという。そして「バイオハザード ザ・マーセナリーズ3D」の制作途中で見えてきた3DSにおける開発での反省点や改善点を「バイオハザード リベレーションズ」に活かした。さらに「バイオハザード リベレーションズ」の体験版を「バイオハザード ザ・マーセナリーズ3D」に付属させることで、お互いにフィードバックが図れたそうだ。

 これは開発コストを抑えることにも繋がったようで、スケジュールはスムーズに進んだという。またコストを抑えるという点では、外部委託も積極的に行ない、外部にも社内と同じ開発環境を整えた。ただし、大事な部分では自社で制作の責任を負うようにするという「ハイブリッドな環境」にすることでコストとクオリティの面で成果が出せたのではと川田氏は述べた。

 川田氏は次回作の企画について、「『RESIDENT EVIL 6』(「RESIDENT EVIL」は、「バイオハザード」シリーズの欧米での名称)の発売も控えているが、ナンバリングタイトルとはまた違った形で行ないたい。みなさんが考えている以外の、もしくはみなさんがもっと遊びたいと思っている『RESIDENT EVIL』を制作できれば」と語った。



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(2012年 3月 9日)

[Reported by 安田俊亮]