GDC 2011レポート

GDC2011、NVIDIAブースレポート
TEGRA3のスペックも少しずつ明らかに!


2月28日~3月4日開催(現地時間)

会場:サンフランシスコ Moscone Center



NVIDIAブース

 NVIDIAといえば、かつては「GeForce」というブランド名が筆頭に思いつくわけだが、今、NVIDIAが最も力を入れているのは「TESLA」と「TEGRA」の2大新ブランドの方だ。

 前者はGeForceコアをGPGPU向けに転用したハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)ハードウェアであり、後者はGeForceアーキテクチャを組み込み機器向けに応用したSoC(System on a Chip)を指す。

 さすがに、“ゲーム開発者会議”であるGDCにおいて「TESLA」製品の展示はなかったが、今年のGDCではGoogle勢力(Android勢力)の台頭が目立ち、スマートフォンやタブレットなどの情報端末がゲームプラットフォームの主役となったような雰囲気もあったため、NVIDIAブースの主役はGeForceよりも「TEGRA」となっていたように思える。



■ TEGRA3が実動デモと共に公開される

NVIDIA「TEGRA2」はNVIDIAの組み込み向けSoCの主力製品

 TEGRAとは、NVIDIAがスマートフォンやタブレットなどの組み込み機器向けに開発したSoCで、ARM系CPUとGeForceアーキテクチャのGPUコアを1つにまとめたSoCハードウェアのブランド名だ。

 現在、主力製品となっているのがTEGRA2で、こちらは2011年発売の様々なスマートフォン製品やタブレット製品に採用されている。LGのOptimus2X、サムスンのGalaxy SIIなどの期待のハイパフォーマンス端末はこぞってTEGRA2を採用していることもあって、今年は「TEGRA2元年だ」というたとえが飛び出してくるほど勢いが強い。

 TEGRA2はデュアルコア仕様のARM CORTEX-A9と、GeForce7000系(G70系)のグラフィックスパイプラインを8コア仕様にまとめたGPUを統合したSoCだ。


 CPU部分はデュアルコアとしているので一般的な小型デバイス向けSoCとしては贅沢な部類になるが、ARM CORTEX-A9コア自体はありふれたものであり別段珍しいものではない。

 やはり注目されるのは、NVIDIAならではといえるグラフィックスコアの部分だ。

 小型デバイス向けのハイパフォーマンスグラフィックスコアといえばImagination Techonlogies社のPowerVR系コアになるが、現行のものは複雑なシェーダープログラムを動作させたときのパフォーマンスインパクトが大きいといわれている。これに対し、TEGRAシリーズ、とくに最新のTEGRA2はかなり優秀だとされる。

 TEGRA2のグラフィックスコアはULV(Ultra Low Voltage)版GeForceといわれ、その“8コア”仕様が意味するところは“8シェーダコア”として説明されている。ベースアーキテクチャがGeForce 7000系ということもあり、汎用シェーダユニットを負荷に応じて頂点シェーダに起用したりピクセルシェーダに起用したりする近代的な統合型シェーダではなく、4コアが頂点シェーダ、4コアがピクセルシェーダに固定的に振り分けられている。

LG「Optimus2X」はTEGRA2採用製品の代表格TEGRA2のハイパフォーマンスをゲームの形で知らしめた「Dungeon Defenders」(http://dungeondefenders.com/)。いわずとしれたUnreal Engine3ベースのゲームだ

 NVIDIAブースでは、早くも、次世代TEGRAとして「TEGRA3」の展示が行なわれており、来場者達から強い関心が寄せられていた。

 TEGRA3はCPU部分が、TEGRA2の倍に相当するCORTEX-A9の“4コア”仕様となり、このことが世界初のクワッドコアCPU搭載SoCとしてアピールされていた。

 グラフィックスコアは12シェーダコアに増強されているが、根幹アーキテクチャの部分は同じGeforce 7000系と見られ、先代TEGRA2と同様、統合型シェーダアーキテクチャではなさそうだ。となれば、12シェーダコアの内訳は固定的になるわけだが、その振り分けは明らかになっていない。これまでのGeForceアーキテクチャの系譜で考えれば、頂点シェーダとピクセルシェーダの数は「6:6」のイコールか、あるいはピクセルシェーダが多めの「4:8」といったところが怪しい線だろうか。

 また、TEGRA3は、立体視出力への対応もホットトピックとなっている。

 基本性能はTEGRA2に対して2倍から5倍に高められていると説明され、ディスプレイ出力性能もTEGRA2の「最大1,920×1,080ドット」が「最大2,560×1,600ドット」へと引き上げられている。

 TEGRA3も、TEGAR2同様にスマートフォンやタブレット端末向けだとされるが、基本性能がかなり高められているため、ハイパフォーマンス製品向けへの採用を想定しているとみられる。

 ブースでは、1,366×768ドットの液晶パネルに、比較的リッチな3Dグラフィックス表現を行なったピンボールゲームのリアルタイムデモを見せていた。

さっそく公開された「TEGRA3」。このタイミングでのアナウンスはこの分野での競合メーカー、Imagination Technologiesの「PowerVR 6」シリーズのアナウンスと無関係ではなさそうだ

(2011年 3月 5日)

[Reported by トライゼット西川善司]