グリー、「GREE Platform Forum 2011」と「GREE Platform Award 2010」を開催
コーエーテクモ襟川氏、KONAMI上原氏らがソーシャルアプリを題材に講演



2月24日 開催

会場:パークハイアット東京


 グリー株式会社は2月24日、「GREE Platform」にサービスを提供しているコンテンツ開発者を集めて講演や発表を行なう「GREE Platform Forum 2011」をパークハイアット東京で開催した。「GREE Platform」は携帯電話やスマートフォン向けにグリーが提供しているOpenSocialベースの開発環境を提供するサービス。

 フォーラムで最初にグリー代表取締役の田中良和氏が挨拶し、Android端末向けのソーシャルアプリケーション検索サービス「GREE マーケット(仮称)」、本年1月に子会社化した株式会社アトランティスとの協業サービス第1弾となる「GREE Ad Program」などの新サービスや、サービスプロバイダー向けの新支援サービスの発表が行なわれた。

 同時に株式会社コナミデジタルエンタテインメント執行役員ネット事業統括の上原和彦氏、コーエーテクモゲームス代表取締役社長の襟川陽一氏、「GREE」がグローバル展開の一貫として提携を発表した中国のプロバイダーTencentのDavid Guo氏らが講演を行なった。

 また今回が第1回になる「GREE Platform Award 2010」も同時に開催され、2010年度に「GREE Platform」でサービスされた中から優秀な成績を収めたタイトルが表彰された。

 同日にはグリーと角川グループホールディングス(以下、角川グループ)による共同記者発表も行なわれ、角川グループの電子書籍プラットフォーム「BOOK☆WALKER」にソーシャル性を加味した「ソーシャル電子書籍アプリ」を「GREE Platform」からサービスすることが発表された。第1弾として現在アニメが放送中の「GOSICK」がソーシャルゲーム化され、その後人気ライトノベル「涼宮ハルヒの憂鬱」や、今冬に公開予定の映画「源氏物語」などでも連携をとっていく。



■ 伸び続けるモバイルソーシャル市場。今後は海外へも展開

グリー代表取締役田中良和氏

 田中氏は冒頭のあいさつで、「2010年6月に『GREE Platform』を開始してまだ半年を少し過ぎたところなのに、とても長い時間がたったような気がする」と、モバイル向けソーシャルゲーム市場の変化の速さに感嘆した。続けて「グリーは元来、自社で作ったソーシャルゲームを柱にしてきた。それは今後も変わらないが、プラットフォームビジネスを始めたことで自分たちだけではできないアプリを提供することができた」と謝辞を述べ、今年もユーザーだけでなくコンテンツの提供者に対しても喜ばれるようサービスしていきたいと語った。

 日本におけるモバイル向けのソーシャルゲーム市場は昨年来急激に成長し続けている。「人数も1人辺りのARPUもまだまだ伸びしろがあり、来年以降も伸びていく分野だと思っている」と田中氏。その中でも特にスマートフォンはPCの出荷台数を上回る伸び率で、「5年後10年後はパソコンと言えばスマートフォンを指す時代が来るでしょう」と将来性に大きな期待を抱いている。

 グリーでは2010年12月に「GREE Platform for smartphone」を公開したばかりで、スマートフォンはこれから重点的に力を入れていく分野として位置付けられている。「グリーは常に挑戦し続けることで新しい時代を開くことができた。今回も我々が率先して新しいマーケットを切り開いていくことを考えています」という。同じプラットフォームのままグローバルに展開できるというスマートフォンの利点を生かして、中国をはじめとした海外展開にも積極的だ。本年1月にはサンフランシスコに子会社GREE Internationalを設立した。

 田中氏は「今後、日本の人口やGDPが横ばいになっていけば産業をグローバル化せざるを得なくなります。日本からグローバルに展開できるということを1つずつ証明していきたい。それを大きな目標にビジネスを進めていきたいと思います」と語った。


【スライド】
モバイル向けのソーシャルゲーム市場は急激に成長しており、来年以降もこの勢いは続くだろうと田中氏は予測している




■ スマートフォン向け「GREE マーケット(仮称)」など新サービスを発表

グリー株式会社執行役員 マーケーティング事業本部長、小竹讃久氏
中国Tencentのワイヤレス・プロダクト・デパートメント・ジェネラルマネージャーDavid Guo氏

 フォーラムではスマートフォン向けの新サービス「GREE マーケット(仮称)」と、開発者向けの支援施策や広告プログラム「GREE Ad Program」、今後のスマートフォン戦略などが発表された。

 「GREE マーケット(仮称)」は「au one GREE」と「GREE」のすべてのソーシャルアプリから、ユーザーが好きなアプリを検索しやすくするサービス。検索機能に加え、カテゴリ分類、ランキング、オススメなどの機能を備える。将来は友人がアプリを使用し始めたことを知らせる機能なども追加される予定。2011年夏以降に発売するauのAndroid端末にプリインストールされる(一部機種を除く)。

 サービスプロバイダーに向けた支援施策の強化も発表された。これは、グリーにアプリを提供しているメーカーが使うDeveroper Centerで提供されるサービスで、収集しているデータをさらに細かく分析できるよう、登録N日後継続利用率、年代別の会員数、アイテム別消費量などより細かいデータに基づいた収益向上のアドバイスを行なうというもの。

 「GREE Ad Program」はグリーが本年1月に子会社化したアトランティスとの協業によるサービス第1弾。携帯電話やスマートフォンの画面に広告を出すことで収益アップを図り、自社開発のアプリに広告スペースを用意することで広告収益を得るというもの。2月25日から4月上旬にかけて、携帯電話、Android端末、iPhoneなどでサービス提供を開始する。

 グリーのスマートフォン戦略については、端末へのアプリのプリインストール、スマートフォン向けカジュアルゲームの投入、スマートフォン版のテレビCMの3つが紹介された。グローバル戦略でもスマートフォンは中心に据えられており、国内外でSDKを共有する「GREE Platform」のグローバル化や、KDDIやTencentを始めとした大手プレーヤーとのアライアンスを通じて、日本で成功したビジネスモデルをグローバルに展開していくための構想が紹介された。

 中国の大手プロバイダーTencentのワイヤレス・プロダクト・デパートメント・ジェネラルマネージャーDavid Guo氏も登壇して、11,000人が働く巨大企業Tencentの紹介を行なった。Guo氏は「SDKを共有することで中国の優れたコンテンツを日本に持ってきたい」と語った。


【スライド】
グリーから発表された、携帯電話とスマートフォン向けの新サービス
【中国Tencentの紹介スライド】
Tencentは携帯プラットフォームだけではなく、検索サイトやMMORPG、SNS、電子商取引などいずれも中国国内トップクラスのサービスを行なっている通信の総合企業




■ KONAMIの上原氏が「ドラゴンコレクション」成功の要因を分析

コナミデジタルエンタテインメント執行役員ネット事業統括の上原和彦氏
「ドラゴンコレクション」成功の要因を5つの方向から分析した

 コナミデジタルエンタテインメントの上原氏は「『ドラゴンコレクション』の成長と今後」というタイトルで講演を行なった。「ドラゴンコレクション」はファンタジー世界を冒険して「モンスターカード」や「秘宝」を集めるソーシャルカードゲーム。2010年9月のサービス開始から大好評を博し、GREEでの人気ランキングで18週連続1位を獲得し、現在も利用者数と売り上げが伸び続けているという。

 現在はフィーチャーフォン向けのサービスのみだが、スマートフォン向けのゲームにもそろそろ参入を考えている。さらに来週、新作アプリの発表もあるそうなのでリリースに注目して欲しい。

 上原氏はいくつかの要素に分けて「ドラゴンコレクション」成功の要因を分析した。

【成功の要因】

・インバイトの多さ
 友達を誘いたくなるようなタイミングでのインバイト、誘いたくなるインセンティブ、誘われた側がもらって嬉しいインセンティブの3つが揃ったために、口コミでのインバイト数が非常に多い。誘う側がどんなインセンティブを得られるかがわかりやすい見せ方にも工夫したそうだ。

・納得感のある課金
 アコギな方法ではお金を取りたくない。ユーザー視点に立って、この金額でこのアイテムが手に入るなら納得できるという感覚を念頭に置いて課金アイテムを企画した。

・イベントとキャンペーン
 ユーザーが飽きるタイミングを想定して、飽きる前にイベントやキャンペーンを展開する。内容についてもクリックだけの作業的なものではなく、演出面やゲーム性に重点を置いて楽しめるようなものにした。

・サポート
 1度不信感を持って去っていったユーザーは2度と戻ってこない。耳の痛いような指摘でも、誠実に対応すれば逆にファンになってもらえる。

・スピード感
 従来のゲーム開発のように1年、2年といった長いスパンの制作体制を見直し、分析、提案、実施のサイクルをある程度現場判断で行なえるようにした。言葉でいうと簡単だが、非常に大変な作業だった。

・常に変化を続ける
 ソーシャルアプリの世界には似通ったモデルやテーマの作品が非常に多く出ている。それらのタイトルが追いつけないようなものでユーザーの満足を追求していきたい。長年にわたるゲーム開発のノウハウから、我々にはゼロからゲームを生み出すクリエイティブがある。これが最後に差をつけると信じている。


【スライド】
「ドラゴンコレクションは男性だけでなく女性ユーザーからの支持も高いことが嬉しい」という上原氏。来週には新作ソーシャルゲームが発表される予定だ




■ コーエーテクモ襟川氏が有力IPを使ったソーシャルゲームを紹介

コーエーテクモゲームスの代表取締役社長、襟川陽一氏
講演では、コーエーテクモゲームスの新作ソーシャルゲームと、グローバル戦略についての発表が行なわれた

 コーエーテクモゲームスの襟川氏は「グローバルソーシャルゲーム」と題した講演を行なった。コーエーテクモゲームスは2010年10月25日にソーシャルアプリ「100万人の三國志」をリリースし、現在までに会員数は90万人を突破している。

 襟川氏は、グリーの2,400万人という会員数と海外展開、SNSやソーシャルゲーム運営のノウハウが、コーエーテクモゲームスの持つゲーム開発技術、IP、コンシューマやネットワークゲームのノウハウと手を結ぶことで高品質なコンテンツを提供できたと分析し、さらに今後の中国展開にむけて、「中国のユーザーに向けて画期的なゲームを出していきたい。三國志シリーズは中国の多くのお客様に喜んでいただけるのではないかと思っている」とも語った。

 3月10日には「100万人の真・三國無双」のβサービスがスタートする。これはプレイステーション 3用ソフト「真・三國無双6」の発売に合わせた形で、PS3版のパッケージにはソーシャルアプリのインゲームアイテムがもらえるシリアルコードが同梱される。ソーシャルゲーム版の開発は現在佳境に入っているところで、「PS3版と同様の一騎当千の爽快感をゲーム内で楽しめるようなものにしたい」と襟川氏は語った。

 紹介されたもう1本のタイトルは、こちらもコーエーテクモゲームスの人気フランチャイズ「アンジェリーク」シリーズの恋愛ソーシャルゲーム「ラブラブ天使様 ~アンジェリーク~」。これまでの「アンジェリーク」シリーズと違い現代が舞台で、華麗なセレブに転身したキャラクターたちとの恋愛が楽しめる。歴代の声優陣に新たな声優を加えての登場となる。3月にクローズドβテストを行ない、2011年春に正式サービスが始まる予定だ。

 襟川氏はグリーのグローバル展開を大いに支持して、スマートフォンを使って中国で「1億人の三國志」も可能かもしれないと展望を語った。そして「日本発のソーシャルゲームを日本のデベロッパーの手で世界に向かって発信していきましょう」と会場にいる開発者たちにもエールを送った。


【スライド】
コーエーテクモゲームスは「100万人の真・三國無双」、「ラブラブ天使様 ~アンジェリーク~」、スマートフォン版「100万人の三國志」の3タイトルについて語った




■ 「GREE Platform Award 2010」栄えある第1回大賞は「ドラゴンコレクション」

受賞者記念撮影

 フォーラム終了後に、今回が第1回となる「GREE Platform Award 2010」の表彰式が行なわれた。表彰されたのは「期待賞」、「優秀賞」、「特別賞」、「ジャンル最優秀賞」、「総合大賞」の5部門。大手メーカーから創業して8カ月の会社までバラエティあふれる顔ぶれが受賞した。

 総合大賞を受け取ったコナミデジタルエンタテインメントの上原氏は「受賞はひとえにコンテンツを支えてくださったユーザーのおかげです。第1回でこのような賞を獲れたことは忘れられない思い出になると思います。今遊んでくださっているユーザーの方にもっと満足していただけるよう、日々改善していきたいと思います」と受賞の喜びを語った。

・総合大賞
「ドラゴンコレクション」(株式会社コナミデジタルエンタテインメント)

・RPG最優秀賞
「100万人の三國志」(株式会社コーエーテクモゲームス)

・シミュレーションゲーム最優秀賞
「おみせやさん for GREE」(芸者東京エンターテインメント株式会社)

・恋愛ゲーム最優秀賞
「幕末志士の恋愛事情 for GREE」(株式会社タイトー)

・占い最優秀賞
「魚ちゃん激辛占い for GREE」(株式会社モバイルファクトリー)

・デコレーションメール最優秀賞
「リラックマデコメ」(イマジニア株式会社)

・特別賞
「しろつく」(株式会社ケイブ)
「サンリオキティ★デコメ絵文字」(株式会社サンリオウェーブ)
「ぼくのレストラン 2」(株式会社Synphonie)
「芸能マッハ!!!」(株式会社Blau)

・優秀賞
「さかつくG」(株式会社セガ)
「恋愛上等★イケメン学園 for GREE」(株式会社ボルテージ)
「コーデマニア」(株式会社サムザップ)
「ダービーズキングの伝説」(株式会社オルトプラス)
「ヱヴァンゲリオン ~めぐりあう絆~」(株式会社エンタースフィア)
「サンシャイン牧場」(Rekoo Japan株式会社)
「SanseiR&D モバイル for GREE」(株式会社オン・ザ・ネット)
「365誕生日大占術」(株式会社ザッパラス)
「レプロエンタきせかえアプリ」(株式会社エムアールアイ)
「きせかえ×キセカエ for GREE」(株式会社インクルーズ)
「グラビアロワイアル」(株式会社CoolJapan)

・期待賞
「プリティ☆マイガール」(株式会社アカツキ)
「BABY☆CH♪~赤ちゃん編~」(i-ドメイン株式会社)
「ソウルハント ~魔界の後継者たち~」(株式会社ORATTA)


【受賞式の様子】
2010年は、コーエーテクモゲームスの藤重和博氏(中央)や、タイトーの松澤祥一氏(右)ら大手ゲームメーカーがソーシャルゲームに本格進出してきた年だった




■ グリーと角川グループが提携。「GOSICK」や「ハルヒ」がソーシャルアプリ化

発表会はフォーラムの隣の会場で開催された
田中社長と角川会長がにこやかに記念撮影

 同じ日に別会場でグリーと角川グループによるインタネットコンテンツ事業での事業提携についての共同記者発表会があった。この提携は角川グループが有する雑誌、アニメ、コミック、ゲームなどのコンテンツ力と、グリーの持つソーシャル性を相互に生かしてこれまでにない新しいサービスを提供するというもの。

 発表会ではグリーの代表取締役田中良和氏と、角川グループホールディングス取締役会長の角川歴彦氏が挨拶した。提携の詳細は株式会社角川コンテンツゲート代表取締役社長の浜村弘一氏が説明した。

 説明によると、提携によって3つのサービスを展開することが予定されている。1つ目は「ソーシャル電子書籍アプリ」。これは現在試験運用が行なわれている角川グループの電子書籍プラットフォーム「BOOK☆WALKER」にソーシャル性を盛り込んだもの。購買履歴を友達と共有したり、「BOOK☆WALKER」に友達を招待したりといったことができる。2011年の夏ごろから「GREE Platform」で提供する。

 2つ目は角川グループのコンテンツを活用したソーシャルアプリを「GREE Platform」で提供するというもの。第1弾は、現在アニメが放送中の人気ライトノベル「GOSICK」のソーシャルアプリで、近日中のサービスを予定している。他にも、今年の5月に新刊が出る「涼宮ハルヒの憂鬱」や今冬に公開される映画「源氏物語」、人気声優がアカペラに挑戦するというコンセプト企画「ぺらぶ! a cappella love!?」の計4タイトルがソーシャルアプリ化される。他のタイトルについても現在検討中で、順次提供される予定だ。当初は携帯向けのアプリからスタートするが、今後はスマートフォンに向けた展開も視野に入っているとのことだ。

 3つ目は両社のサービスやメディアを連携させた共同プロモーションの展開だ。第1弾として「BOOK☆WALKER」で電子書籍を購入すると、ソーシャルアプリ「GOSICK」のインゲームアイテムを獲得できるキャンペーンが3月中旬に予定されている。


【記者発表の様子】
角川グループホールディングス取締役会長の角川歴彦氏株式会社角川コンテンツゲート代表取締役社長の浜村弘一氏「GREE」と角川グループがお互いの利点を生かしてタッグを組む
「GOSICK」や「涼宮ハルヒの憂鬱」などの人気コンテンツのソーシャルアプリが「GREE Platform」から配信される

(2011年 2月 24日)

[Reported by 石井聡]