米Take-Two、PS3/Xbox 360「Duke Nukem Forever」プレビュー
15年経っても変わらぬ味わい、世界で最もファンキーなFPS


2月7日開催(現地時間)

会場:Deja Vu Showgirls

「Duke Nukem Forever」
今夏発売予定
価格:7,140円


 既報の通り、米Take-Two Interactiveは現地時間の2月7日、米国ラスベガスにおいて、米Gearbox Softwareが開発しているFPS「Duke Nukem Forever(デューク ニューケム フォーエバー)」の体験イベントを開催した。本稿では開発着手から15年でついに完成しようとしている「Duke Nukem Forever」のファーストインプレッションをお届けしたい。なお、日本はPS3およびXbox 360向けに今夏の発売を予定し、価格は7,140円。

【Duke Nukem Titty City】
発表会当日の夜は昼間と同じ会場で、Duke Nukemお気に入りの場所「Duke Nukem Titty City」という設定でナイトパーティーが実施された。昼間とは打って変わって試遊台は少なくなりポールダンスを楽しめた。ちなみにポールダンスを踊っている女性の衣装は、ゲーム中のベイブの衣装を模したもの



■ 15年掛けて「Duke Nukem Forever」がついに完成! ウソのようなホントの話

我らがゲームの主人公Duke Nukem。白人マッチョで常にサングラスを絶やさないタフガイである
ついに公開されたスクリーンショット。ラスベガスのカジノがエイリアン達に襲われる!

 まだ欧米のゲーム市場のメインプラットフォームがPCだった1996年、その強烈なキャラクター性と、品のないゲーム性で一大センセーションを巻き起こしたあの「Duke Nukem 3D」の続編「Duke Nukem Forever」がついに発売される。

 「Duke Nukem」と聞いて何を思い浮かべるだろう? 「懐かしい」と思う人は、往年のPCゲーマーか、FPSが大好きなコアゲーマーだろう。「待っていた」と思う人はよほどのDukeマニアだ。実は「よく知らない」という回答が1番多いのではないか。「Duke Nukem」はそれぐらい多くのゲームファンにとって過去の存在であり、忘却の彼方に押しやられたフランチャイズだからだ。

 何せ「Duke Nukem 3D」の1996年1月の発売から15年、続編の制作発表から14年、そしてE3での「Duke Nukem Forever」のトレーラーの発表から13年が経過している。「Duke Nukem 3D」のライバルは初代「Quake」や「Doom II」であり、「Duke Nukem Forever」の当時想定されていたライバルは「QUAKE III: Arena」や初代「Unreal」である。タイトルをいくつか拾っただけでもどれほど過去のタイトルなのかがわかるだろう。

 1997年の発表から現在まで発売が延期され続けたことに関しては、非常に長く険しい経緯があるが、それはここでは触れない。もし興味のある方は米国のWikipediaに有志が書き上げた力作の年表が構築されているので参考にするといいかもしれない。本稿では直接関係するGearbox Softwareが「Duke Nukem」シリーズのすべてのライセンスを3D Realmsから獲得したところから紹介していこう。

 紆余曲折あって発売が無期延期状態だった「Duke Nukem Forever」に最大の転機が訪れたのは昨年2010年の9月である。元3D Realmsの開発者であり、現Gearbox Software CEOのRandy Pitchford氏が、「Duke Nukem」フランチャイズに関するすべての権利を3D Realmsから獲得したことを発表した。3D Realmsの開発者の一部はGearbox Softwareに移籍し、同社の元で完成に向けて開発が急ピッチで進められている。パブリッシャーは元々Take-Twoで発売する予定だったことから、その子会社の2K Gamesとなった。

 北米ユーザーへのお披露目は、2010年9月に実施されたPenny Arcade Expo(PAX)2010が最初で、グローバルなユーザーを対象にした発表は今回が初となる。冒頭でもお伝えしたように北米での発売は5月3日が予定されており、マスターアップに向けて急ピッチで開発が進められている。日本語版は欧米での発売から数カ月後となる今夏の発売が予定されている。そして今回、発売を5月3日(日本では今夏)に控え、完成に近いバージョンのお披露目となったわけだ。



■ ラスベガスがエイリアンに侵略を受け、ベイブ達を守るための戦いに

発表会には「Duke Nukem」復活の立役者となったGearbox CEO Randy Pitchford氏も出席
最初のステージでのワンシーン。地球防衛軍がホワイトボードで作戦を練っているところをDukeが邪魔をするシーン
道すがらファンに自著にサインを求められる。自著のタイトルは「私はなぜ偉大なのか」
エイリアンのマザーシップと対空砲で戦いに挑む。このあたりの無茶な展開もDukeの魅力だ

 さて、それではいよいよ「Duke Nukem Forever」の中身について紹介していきたい。「Duke Nukem Forever」は、先に触れたように「Duke Nukem 3D」の続編に当たるFPSである。プレーヤーは主人公Duke Nukemとなり、エイリアンの侵略からベイブ(女の子)を守るために極めてヒロイックな戦いを繰り広げていく。オフィシャルのストーリーは以下のようなものだ。

【ストーリー】
 図らずもエイリアンの地球侵攻を阻止し、地球を救ったヒーローとなったDukeはかわいいベイブ(女の子)に囲まれ悠々自適な生活を満喫していた。
 そんなとき、突如、ラスベガスに、また、エイリアンどもがやってきた。
 奴らの目的は、
Dukeが最も愛するベイブたちを誘拐することだった!
 地球がどうなろうと知ったことではないが、かわいいベイブを1人としてエイリアンどもに奪われるなんてことは許せない! 世界中の女は俺のものだ!!!
 次から次へと押し寄せるエイリアンたちと戦い、ベイブを救い出すんだ!

 ストーリーだけ読むと、いわゆる“バカゲー”に該当するが、詳しくは後述するがバカゲーはバカゲーでも全米一のバカゲーだと考えて良い。実は前作と基本ストーリーはほとんど同じであり、Dukeはこのストーリーを真面目に実践していく。

 今回は、チュートリアルを兼ねたステージ1から、マザーシップや、カジノでのエイリアンとの銃撃戦まで中盤手前辺りかなと思わせるところまでプレイできた。ゲームの難易度は「PIECE OF CAKE」(イージー)、「LETS ROCK」(ノーマル)、「COME GET SOME」(ハード)の3段階。

 ステージ1「Duke Lives」は、鼻歌を歌いながらトイレで小便をするところからスタートする。小便器に一定時間出して止めるという一連のアクションを通じて、ゲームの遊び方を学ぶ。トイレには大便所も並んでおり、便器に浮かぶ“それ”をつかみ、周囲に投げつけ、壁や地面を汚すことも可能。トイレを出ると円形の広間で敗色濃厚な部隊がホワイトボードを前に作戦を練っている。ここでDukeはおもむろにペンを掴み、ホワイトボードに線や文字を書き入れることができる。

 言うまでもなく極めてナンセンスな要素ばかりだが、あとで意味がわかる。また、Dukeは前作同様、相手がいるかどうかにかかわらずよく喋る。Dukeの声優は「Duke Nukem 3D」と同じJon st. John氏を起用。挨拶代わりに放送禁止用語を連発するところはまったく変わっておらず、伸びやかな低音のボイスが前にも増して魅力的だ。

 あとは道なりに進むと、途中でいくつかのエイリアンに遭遇するが、いずれも拳でぶちのめし、最後にアメフト場でのボス戦となる。Dukeは途中で拾ったミサイルランチャーDevastatorを武器にして、Cycloidと名付けられた巨大なボスも、同じくミサイルのような攻撃を仕掛けてくる。敵のミサイル攻撃は避けやすく、動きも緩慢なので、こちらのミサイルの補充さえ欠かさなければ倒すのは難しくない。

 敵の体力をゼロにした後は素早く頭の上に飛び乗り、背中にある中枢部をもぎ取る。敵は頭部からもんどり打って倒れ、倒れた拍子に、コアがコロリと足下に転がり出てくる。これをDukeがアメフトのフィールドゴールに蹴り込むとクリアとなる。「it's gooooood!」と独りごちて「Duke Nukem Forever」のロゴが中央にドンと表示される。

 しかしこれは実はすべてDukeがゲームをプレイしている映像なのだ。Gearbox CEO Randy Pitchford氏によれば、これは「『Duke Nukem 3D』での成功を元にしたゲームをDukeがプレイしている」ということだ。カメラは次第にモニターから視点を手前に引いていき、豪華な邸宅が映し出されていく。本物のDukeはソファに座り、手にXbox 360のものらしきゲームパッドを持ち、ベイブ2人を足下に侍らせている。

 Dukeがやけに情感のこもった「oh yeah」を連発していることから、ゲームで遊びながら、ベイブとお楽しみ中だったことを伺わせるが、DukeがおもむろにTVのチャンネルを変えると世界がエイリアンに侵攻され、地球が危機的状況であることを知る。かくしてDukeはベイブたちを守るために再び戦いに乗りだしていくことなるわけだ。



■ 全編通じて「Duke Nukem」が存分に味わえるFPS

試遊イベントの模様。ストリップクラブでのゲームの試遊会はなかなかない体験だ
基本はこのような閉所での遭遇戦が続く。近接攻撃も有効だ
孤立無援の中、ひとりでヒロイックな戦いを繰り広げていく
巨大なボスとの戦い。ボスには比較的わかりやすい弱点が設定されており、そこを突いていくことになる

 その後ようやくゲーム本編のスタートとなる。基本的に1本道のステージを進み、イベントやミニゲームをこなしながら、敵の襲撃を撃退していく。特徴的なのはDukeは基本的に素手による殴りが強烈に強いところだ。閉所での遭遇戦というシチュエーションが多いため、殴るのが手っ取り早いこともあるが、とにかく殴りが強く、屈強なエイリアンを2発もあればたいてい伸してしまう。あたかもマイク・タイソンのようなパワフルさがあり、近接戦闘は大きな快感がある。ちなみにステロイドを飲むと一定時間パワーアップし、敵が1撃で倒せるようになるだけでなく、敵をこなごなに粉砕してしまう。武器の強弱やゲームバランスを完全に無視した爽快感のみを重視したゲーム性が楽しいところだ。

 ゲームの主題はあくまで敵エイリアンとの戦いにあるが、フィールドの途中には無数のギミックやミニゲームがあり、ユーザーを飽きさせない工夫が凝らされている。ギミックでは、スナックを口にしたり、缶ジュースを飲んでゲップしたりといった細かい要素に関してそれぞれ固有のアクションを用意しているのが嬉しい。時にはDukeのファンがサインを求めてくることもあり、しっかりサインを書いて上げたいところ。

 また、こうしたギミックをプレイすることにより、Dukeのヒットポイントに相当するEGOのパラメータが少し上がることもある。今回の試遊で確認できたのは、鉄アレイの上げ下げやファンへのサインによってそれぞれ数ポイントずつEGOがアップした。こうしたギミックを積み重ねることで少しずつDukeが強くなっていくようだ。

 一方、ミニゲームでは、定番のピンボールとラスベガスらしくスロットゲーム、そしてラジコンを操作して閉まった扉の奥にあるエナジーセルを手が届くところまで押し出していくというものなど。ピンボールやスロットゲームでハイスコアを出すとどうなるのかは不明だが、ベイブ救出に支障が出ない範囲で楽しみたいところだ。

 今回一通りプレイして実感したのは、非常に「Duke Nukem」であるということだ。ここ10年のFPSの進化をまるで無視し、バランスを度外視した爽快感重視のバトル、放送禁止用語連発のDukeの台詞、そして「またか(笑)」、「なんだよこれ(笑)」と思わずつぶやいてしまうような下品でファンキーなゲーム展開。進化著しいFPSの分野において、何か新しいものが体験できるゲームではないが、存分に「Duke Nukem」が楽しめるゲームに仕上がっている。

 実際にプレイしていて気になったのは、クラッシュバグを含む、いくつかの気になるバグが目に着いたことと、シェーダーがほとんど使われておらず、ライティングとシャドウイングがすべてカットされていたことだ。本作で採用されているDuke Engineは、Unreal Engine 2.0世代をベースに、無数のカスタマイズを施したものということで、ポテンシャルは決して低くない。あと3カ月でどこまでブラッシュアップできるかに注目したい。

 なお、今回一切わからなかったのはマルチプレイモードだ。過去に最大12人まで同時対戦可能とアナウンスされたが、それを裏付けるような情報は出てこなかった。3月のGDCか、それ以外の機会で、マルチプレイモードについて発表が行なわれることが予想されるので注目したい。

 コンシューマーゲーム機向けのFPSということで、ダウンロードコンテンツ(DLC)も期待されるところだが、現時点では「まだ何もコメントできない」ということで、作ってはいるものの、その内容までは確認できなかった。こちらも今後の発表に期待したい。「Duke Nukem」シリーズは、ライセンスが3D RealmsからGearboxに完全に移ったことで、今後様々な展開も考えられる。「Duke Nukem Forever」はいわばその第1弾となるだけに、どのような形で軟着陸するか、まずは北米での発売を注視したいところだ。


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(2011年 2月 10日)

[Reported by 中村聖司]