「大航海時代 Online ～Cruz del sur～（以下、『大航海時代 Online』）」は、コーエーの名作ゲーム「大航海時代」をベースにしたオンライン海洋冒険ロールプレイングゲーム。プレーヤーは大航海時代を生きる冒険者、商人、または軍人として冒険、交易、海戦などを行なう。プレイ時間の多くの部分を航海に費やすシステムが独特で、高評価ながら遊び手を選ぶゲームと評されている。2009年4月28日、プレイステーション 3ユーザーにとって待望となるPS3版が発売された。

　「大航海時代 Online」は、Windows専用のオンラインゲームとして2005年3月から正式サービスが開始され、現在も国内で4つのサーバーが稼働している。現在Windows版は拡張パック第2弾の「Cruz del Sur」までの内容が実装されており、PS3版もここまでの内容が入ったものとなる。

　もともとWindows版として開発されたために、UIがマウスでの操作を基本に作られているが、PS3ではコントローラーでの操作が可能になる。そのためPS3版ではまったく新しい専用のユーザーインターフェイス（UI）が採用されている。今回、発売を前にコーエー本社で体験プレイをする機会を得た。PS3版になりどこが変化したのか、新しくなったUIや、PS3ならではの視覚効果、PS3での操作感などを、一足早く体験してきた。

■　大航海時代の住人となって、七つの海を制覇しよう

Windows版ユーザーにはおなじみのスタート画面。だが、よく見るとタイトル後ろのジャイロコンパスが違う。PS3ではこれが回転するのだ

イースター島のモアイ。冒険者のクエストでは、世界じゅうに散らばる秘境を探検して新たな発見を行なう。周囲にはアクティブなNPCがいて、陸上での戦いもある

　「大航海時代Online」は15世紀半ばから始まった大航海時代を舞台としたMMORPGタイプのオンラインゲーム。実在する港町や大陸が登場し、キャラクターの服装や船の構造などもリアルに作りこまれている。プレーヤーは冒険家、商人、軍人から1つを選んでプレイを始める。プレーヤーはイングランドやポルトガル、ヴェネツィアなどヨーロッパにある6カ国の港町から所属を決めてスタートする。プレイを続けていくとだんだんと航海できる海域が広がっていき、やがて太平洋や大西洋を越えて世界一周する広大な冒険が可能になる。

　今回PS3版のサービスにあたっては、専用の新サーバーを設置する形ではなく、既存の4サーバーのいずれかでWindows版のプレーヤーと共に遊ぶことになる。コーエーとしては、PS3版とWindows版のプレーヤーでは同じテイストのゲームを遊んで欲しいという考えのもと、キャラクターや港町の景観は敢えてWindows版に近付けたという。美麗なグラフィックが売りのゲームが多いPS3だが、フォトリアルを追求するという手法はとらなかったようだ。

　開発によると、PS3版開発当初は、リアルで暗い感じのリアル志向ビジュアル案もあったが、「大航海時代 Online」ならではの明るい街並みと世界観を残すべく、なるべくWindows版のテイストに近づけるような形で作り直されたそうだ。Windows版をそのまま持ってきているように見えるが、PCモニタとテレビでは見え方が異なるため、実はパソコンのモニターで見たときと同じ感覚になるように、光源を調整するなどの工夫が行なわれている。

　同様の理由から作成できるキャラクターの体格や髪型、肌の色などをカスタマイズできる種類もWindows版と同じだ。「その他」の項目では、ヒゲや眼帯などのフェイスアクセサリーが選択できる。名前の入力にはキーボードを使用するが、PS3版ではソウトウェアキーボードを使用することもできる。ちなみにソフトウェアキーボードは、いわゆる携帯電話タイプのUIを選ぶこともできる。

画面上で文字入力ができるソフトウェアキーボード。予測変換が出るので、慣れると使いやすそう	細かい部分も変更されている。プレーヤーキャラクター以外の影はWindows版では円形表示だったが、PS3版ではすべてキャラクターの形に合わせて表示されるようになった

■　UIはよりシンプルに、必要なコマンドは頭上のリングで操作できる

PS3版のメインメニュー。Windows版ユーザーには見なれたアイコンが頭上に表示され、回転する

参考までにWindows版のUI。画面の右上にメインメニュー、その下にサポートメニューがまとめて表示されている。ずいぶん違うのがわかるだろう

　PS3になってもっとも大きく変更されたのが画面と操作の方法だろう。Windows版ではコマンドは画面上に並んでいて、マウスでクリックして選択していたが、PS3版はすべてコントローラーで操作できるように作られている。キーボードを併用しての操作も可能だが、いずれにしてもマウスは使用できない。

　では、具体的にどう変わったかを見ていこう。画面はWindows版にくらべて非常にシンプル。メッセージウインドウは画面中央あたりに配置されており、位置とサイズは固定。画面が広くなり、画面上が整理されたことで視界がかなり広くなった印象を受ける。

　Windows版で右上にまとめられていたメニュー（艦隊、人物、船、日誌、コミュニケーション、システム）は、PS3版ではなくなり、△ボタンを押して呼び出すリング上のメニュー（リングメニュー）に変化した。リングメニューはプレーヤーの頭上にリング状に表示され、方向ボタンでリングを回転させて、Windows版と同じメニュー項目を選択することができる。□ボタンでは同様にサポートメニュー（アイテム使用、スキル使用など）を使用することができる。

　いかにもコンシューマーゲームらしいリング状のコマンドは、どこに何が入っているかを覚えてしまえば大変使いやすい。また、カスタムスロットはR2ボタンでも呼び出すことができ、4つ前までに使用したスキルやアイテムは左側に記録されていくので、ボタンを2回押すだけの簡単操作で繰り返し同じスキルやアイテムを使うことができる。

PS3版のサポートメニュー。メインメニューと同様に、アイコンがリング状に回転する	交易NPCとの取引画面。「値切り」などのコマンドはすべて左側にまとめられている
PS3版のサポートメニュー。メインメニューと同様に、アイコンがリング状に回転する	交易NPCとの取引画面。「値切り」などのコマンドはすべて左側にまとめられている

■　最近のMMOによくある便利機能が「大航海時代 Online」にも。街中の自動移動が実現

拡大街地図。出港所や銀行、ギルドなどが一目でわかるようになった

　もう1つの大きな変更点はマップ画面だ。Windows版では右下に小さなマップ画面が表示されていて、画面上にカラーで表示された■にマウスカーソルを重ねることで、施設の名前を確認していた。それがPS3版発売と同時に、PS3版とWindows版の両方に「拡大街地図」が導入される。拡大街地図では施設はアイコンで表示されるので、どこに何があるのかが一目でわかるようになった。さらに、地図上のアイコンを選択することで、キャラクターがその場所まで自動的に移動してくれる機能まで付与されている。

　マップの自動移動は、アジア系のMMOではごくポピュラーなシステムだが、国産タイトルではまだまだ珍しい。交易のために港と街中を行き来する頻度の高いこのゲームでは非常に便利だ。Windows版ユーザーにも嬉しい機能だろう。

拡大街地図は、メインメニューの「日誌」か、Ctrl+G（Windows版）・SELECT（PS3版）で呼び出すことができる	地図上のアイコンを押すと、キャラクターは自動で動き始め、行きたい場所まで移動してくれる

■　PS3版の本領はグラフィックスにもあり！　さらに美しく、より視覚的になった海と空

　海と空の表現には、PS3らしいグラフィックス描画能力が発揮されている。海と空は特に力をいれてPS3用に作り直された。まずは両者の比較画像で、雰囲気の差を感じて欲しい。

Windows版	PS3版

　空はより奥行きを増して重厚になり、海も今まで以上に広がりが出た。遠くにかすむ陸地もWindows版より遠距離まで表示されるので、遥かかなたからでも街の存在を確認することが可能だ。海はプレーヤーが多くの時間を過ごす場所でもあるので、開発が特に力を入れたのも頷ける。さらに、南米など波の高い地域での海面表現は一から作り直され、さらに美しくなっていた。

　また、Windows版では、右下に周辺地図とともに波情報、風情報が数値で表示されて常時確認することができたが、PS3版ではこれが周辺地図と波情報、風情報が切り離され、周辺地図は従来通り表示されているものの、波情報、風情報は任意で呼び出さないと表示されなくなった。その代わりにPS3版では波情報、風情報がビジュアルで確認できるようになった。波の高い場所を航海すると、船は波に乗って大きく揺れる。高波の上をジャンプするスリリングなシーンも楽しめた。

高波の表現はリアリティを増した。迫力のある高波が外海の荒々しさをよりリアルに感じさせてくれる

■　Windows版ユーザーとの差がつかないように、操作のバランス調整に腐心

スキルの使用画面。スキルは陸上にいるときと同じく□ボタンのメニューから選んで選択する

対人戦は相手の船を選択して戦闘コマンドを選べばスタートする。選択はR1もしくはL1を押せば近くのオブジェクトを順番に選んでくれる

　そのほかにも細かいところが変化している。まず、Windows版では出航して、マウスクリックで毎回帆をひらく必要があったが、PS3版では、アナログスティック操作により、出航した時点で既に帆が上がった状態になっている。Windows版の自分で帆を操作して出航するという仕様は、RPGとして欠かせない旅立ちの演出として用いられていた。しかしコンシューマーゲームに慣れたPS3プレーヤーにとっては、フィールドへ出てスティックを倒せば移動するという感覚が普通。そのためPS3ではすでに帆を開いた状態に変更したのだそうだ。

　移動についても基本的に船を移動させたい方向にスティックを倒すだけだが、方向の微調整には、最初はスティックを倒したまま左右に動かすなどちょっとしたコツが必要になる。この移動システムについても、「大航海時代Online」が対人戦が可能なゲームであることから操作感の違いで有利不利が生まれないよう、操船のバランスには特に気を使ったらしい。

　体験プレイでは、NPC戦、対人戦をそれぞれ試してみた。NPC戦では操作に慣れる前に取り囲まれて沈められてしまった。対人戦では多少ハンデを付けてもらって、大砲を撃ち込み合って相手を撃破することができた。スタッフによると、ベテランのプレーヤーになるとすでに画面のどこの位置にどんなコマンドが出てくるかを熟知しており、表示される前から先読みでマウスを動かして待っていたりと、スタッフが驚くような眼にもとまらぬ操作を見せてくれるのだそうだ。

　対人戦のバランスについては、Windows対PS3に分かれて、メンバーを入れ替えながら何度も対戦を繰り返して、勝率が同じくらいになるよう調整をしたとのこと。それでも、本番になれば当然差は開いてくるかもしれない。そこはそのつど調整していくとのことだ。

■　特典がいろいろ。始めるなら今がチャンス

　「大航海時代 Online」は、さすがにすでに4年近くも続いているオンラインゲームだけの事はあって、コンテンツは非常に充実している。懸念だったコントローラーでの操作方法も、コンシューマーゲームらしい新開発のリングメニューで見事に解決している。ただ、仮にWindows版と同時並行してプレイしようと考えた場合、同じゲームなのに全く違う2つの操作方法を使い分けなければならないという新たなデメリットもある。Windows版をゲームパッドでプレイしたいという要望は以前からあるため、PS3発売に合わせて今後要望が増えてくるかもしれない。ただ、現実問題としてコントローラー用にUIを完全に作り直したPS3版をプレイした限り、Windows版に従来のマウス主体の操作に加え、ゲームパッドへの対応を実現するのはかなり難しそうだ。

　今回開始と同時に新サーバーは設置されないが、参加人数がサーバーの上限を超えるようなら、運営サイドではすぐに新サーバーを設置する準備は整えてあるようだ。実際、「信長の野望Online」の時にも、開始の数日後に新サーバーが設置されたこともある。ユーザーの中には、新サーバーなら始めてもいいかもと思っている人もいるかもしれない。ただ、このゲームは比較的ソロで遊べる要素が多いことや、プレーヤーのレベルが直接強さに結びつかないこと、また現在スクールチャットが常ににぎわっていることからもわかるように、低レベル帯にも一定数の人口がいるので、他のMMOのように先行ユーザーとの差を意識することなく遊べるゲームでもある。カラフルな帆を張った大船団を見ながら小さな船で湾内を航海するのも、大航海時代の雰囲気を味わうという意味では悪くない。

　PS3版の「大航海時代Online」はPS3のトロフィー機能に対応している。既に条件を満たしたWindows版のアカウントを持っている場合、PS3版でログインすれば、一気にたくさんのトロフィーが手に入る。また、ゲーム内で一定の条件を満たすと、PlayStation Homeで利用できるアバターに着せることのできるTシャツや、部屋に飾れる船の模型など、様々なホームリワードを獲得できる。

【PS3版購入特典】
プレーヤーキャラクターが装備できる、爽やかなイメージの船乗用シャツ「セイラーズシャツ」と、「特殊整髪用具」を使うことによって可能になる新しい髪型（左）、アパルタメントを持っているプレーヤーが所持した状態で「調教師」に話しかけると、飼育できるようになる「レッサーパンダ」（右）

　さらに、PS3版の発売に合わせて、4月28日から6月9日までは「『大航海時代Online』をはじめよう！キャンペーン」がスタートする。5つの特典は以下のようなものだ。

(1)製品版アカウントの登録で、7日間のプレイ無料
(2)レベル20未満は獲得経験値1.5倍
(3)お役立ちアイテムを毎日プレゼント
(4)航海中の水、食料の消費が通常の50％に減少
(5)身体言語スキルを使用した際の成功率が100％

　他にも5月2日から5月6日のゴールデンウィーク期間中、19時から24時の間に西欧6カ国の本拠地でゲームマスターが挨拶を行なう。さらに「大航海時代 Online」を遊びやすくするため、以下の3つの仕様が変更される。

・難破したとき損害なしで復活できるレベルをレベル5からレベル20へ引き上げ

　海で遭難して航海不能になった場合、積み荷や所持金、所持品にダメージを受けずにその場で復活できるのは冒険、交易、戦闘の合計レベルが5までのプレーヤーだけだった。しかし、航海者養成学校でクエストをこなしていくと、海に出る前にそのレベルを超えてしまうので、レベル上限が引き上げられた。

・スクールチャットのチャットルームが2つに

　新米航海者が自動で参加するスクールチャットが2つに増える。スクールチャットは、新米航海者が「航海者養成学校（チュートリアル）」に入学すると自動的に入室する初心者用のチャットルームで、1つのチャットルームには最大100人までが参加できる。これまでもピークタイムになると満員状態が続いていたため、あらたに定員100人の第2チャットが増設されることになった。参加者は自動的に人数の少ない方のチャットに振り分けられる。

・航海者養成学校の制服と制帽が奪われなくなった

　初心者がうっかり外洋に出て、あっという間に海賊プレイをしているプレーヤーキラーに沈められてしまうのはよくある光景だ。対人戦に負けた場合にアイテムを奪われることがある。しかし戦闘に敗れても、航海者養成学校の制服、制帽など貴重なアイテムは奪取されないようになる。

　現在は2つめの拡張パック「Crus del Sur」の最終章となる「Extra Chapter」のアップデートが7月に予定されており、その後には拡張パック第3弾が登場する。今後も新しい遊びが登場しそうな「大航海時代 Online」。その高い評判の理由をぜひ自分の目で確かめて見てほしい。

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