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行動や選択が「曲」になる。“音楽のための”眩しい青春ADV「nerd: tracing dayline」試遊【TGS2024】

会話を頑張るひたむきな主人公にも注目してほしい作品

【東京ゲームショウ2024】

開催期間:9月26日~9月29日

会場:幕張メッセ

 indie Game incubator(iGi)は、イベント「東京ゲームショウ2024」のiGi/創風ブースにて、PC用アドベンチャー「nerd: tracing dayline」を試遊出展している。

 「nerd: tracing dayline」は「一曲のためのゲームを」をコンセプトに制作されているアドベンチャーゲーム。田舎に転校してきた主人公の「渡波 汐音(以下、渡波)」が隣の席に座る男子生徒「亘理 航(以下、亘理)」たちと会話で交流を図るべく「話題」を集めることになる。

 インディークリエイターのための無償インキュベーションプログラム「iGi」の第4期タイトルとして選出されたタイトルで、「TGS2024」の会場では最新のバージョンが試遊できる。

【nerd: tracing dayline トレーラー】

 今回の試遊版ではクラスで渡波と亘理だけが残された場面からスタートする。2人は今日の日直で、亘理は学級日誌を担当し、渡波は教室の戸締まりや黒板の掃除などを任されている様子。ただし、教室は2人だけで静まり返っており、少し気まずい空気をなんとかするべく、亘理と話す話題を探しながら仕事をこなす。

 作品のタイトルに「nerd(内向的などの意味を含む英語のスラング)」と入っているように、主人公の渡波は学校に馴染めていないようだ。この場面では亘理は学級日誌を書いているため、こちらに話題を振ってはくれない。

 見つけた話題を亘理に持ちかけ、帰ってきた反応に応じていくつかの選択肢を選びながら会話を続ける。会話中の選択肢がやや特殊で「質問する」や「話を合わせる」といった漠然とした項目が多い。これが控え目な性格の渡波らしさを体現していた。テキストベースのアドベンチャーゲームでは選択肢が次のセリフや具体的な行動になっていることも多いが、本作ではあえて曖昧な項目にしているものと思われる。

日直の仕事を進めつつ教室で話題探し。教室の張り紙を調べる場面なども存在した
亘理は気だるげな性格のようだが、渡波があまりクラスに馴染めていないことを気遣ってくれている

 また、別の場面では「八乙女」というキャラクターも登場する。こちらは明るく快活な性格で、主人公の渡波とはどう見ても相性が悪そうだ。だが、八乙女は初対面であるにも関わらず、同級生であることを理由に渡波を会話に巻き込んでくる。渡波も学校に馴染むため頑張って会話を続け、性格が真反対にも感じられる2人の会話パートが展開されていく。

 ゲームとしては比較的シンプルな作りになっているが、取り扱っている題材の特殊さが「この先どのような結末に至るのか」という気持ちにさせられる。

学校からの帰り道に八乙女に遭遇し会話に巻き込まれる

 また2Dと3Dを組み合わせた絵作りもポイントで、教室内では全体的に淡いカラーリングが採用。対して、学校の外に出ると夏の暑さを感じさせるメリハリのある色使いになっていた。加えて、要所要所に環境音が取り入れられており、窓を閉める音、自動販売機から缶ジュースが落ちてくる音など、我々の日常に潜む音が非常にリアルだった。

 本作はゲーム体験をそのままミュージックビデオにすることを目指しているようで、この“ゲーム体験”には「効果音をMVの音楽にしたり、行動をMVの映像に、さらに言葉が歌詞になる」ことで「音楽のためのゲーム」ができあがるとのこと。

 デモ版では主人公と学校の友人との関係性を描く内容が中心となっていたため、曲がどのように制作されるかまではわからなかったが、効果音などで印象的なものもあり、そういったミュージックビデオの一部になりそうなかけらが散りばめられていたように思う。

 なお、筆者がデモ版の終了部分まで遊んだ際には出てこなかったが、開発者のEvan氏の公式Xによるとギターを演奏するリズムゲームパートも存在するとのこと。記事ではあまり伝えられないが音にもこだわりを感じるタイトルで、試遊スペースではヘッドホンが用意されているので、試遊する際にはリアルな環境音にも聞き耳を立ててほしい作品だ。

iGiの第4期タイトルに選ばれており、2026年のリリースへ向けて制作が進められている
是非ヘッドホンをつけてプレイしてほしい