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マゴスカーレットが賞金150万円とLA行き切符を手に! チーム戦大会「ストリートファイターリーグ:Pro-JP」グランドファイナルレポート
2019年12月2日 11:23
- 12月1日開催
- 会場:品川クラブeX
12月1日、品川クラブeXにて「ストリートファイターリーグ:Pro-JP」のグランドファイナルが開催された。「ストリートファイターリーグ:Pro-JP」は今年9月から開催されている国内シリーズで、個人戦のカプコンプロツアーと違い、チームで戦われることが最大の特徴となっている。
当リーグでは、あらかじめ選ばれたプロプレーヤー6名が、ドラフトで2人のチームメイトを選出し、結成された3人一組のチームでリーグを戦っていく。個人戦ではめっぽう強い選手の結果が振るわなかったり、反対に個人戦ではパッとしない選手が意外なリーダーシップを発揮したりと、チーム戦ならではのプロプレーヤーたちの一面が垣間見えるシリーズだ。
9月からポイントを競い合ってきた6チームのうち、上位3チームがグランドファイナルの舞台に招待された。その優勝賞金は150万円と、国内大会では最大規模だ。その分注目度も高いようで、有料チケット制だったにもかかわらず、会場には大勢の観衆が押し寄せた。各チームがそれぞれ違った色を見せた「ストリートファイターリーグ:Pro-JP」グランドファイナルを、写真と共にレポートする。
絶対的リーダーか、チームワークか。
まず行なわれたのは準決勝、つまりリーグ本選を2位・3位通過で終えたチーム同士の対戦だ。これに勝ったチームが1位通過チームとの対戦権を獲得し、反対に負けたチームは3位で終了となる。2位通過チームはTeam Liquid所属ネモ選手率いるネモオーロラ、対する3位通過チームはCygames Beast所属ふ~ど選手率いるふ~どガイアだ。
この2チームにおいて決定的に違うのは、それぞれのリーダーの方針だろう。ふ~ど選手がチームメイトと和気あいあいとした雰囲気づくりをしているのに対し、ネモ選手は持ち前のリーダーシップをいかんなく発揮し、チームを引っ張っている印象だった。対戦順を決める作戦タイムにおいても、ふ~どガイアは3人で相談するのに対し、ネモオーロラはネモ選手の指示が主体となっていた。
まず先鋒戦、ネモオーロラからはキチパーム選手、ふ~どガイアからはShuto選手が選出された。この2名は日本の若手の中でもトップクラスの実力を誇るプレーヤーだ。しかしふ~どガイアは事前にキチパーム選手のメインキャラクターであるザンギエフをBANしているため、キチパーム選手はサブキャラクターのアビゲイルで戦うことになる。
Shuto選手はユリアンの高圧的な攻めを持ち味とするプレーヤーで、「Japan Premier」のTOP8でときど選手に勝利したのは記憶に新しい。対するキチパーム選手は使い慣れないアビゲイルでの対応に戸惑いがあったか、要所でのミスが目立ち、試合はShuto選手の勝利となった。
続く中堅戦はネモオーロラから竹内ジョン選手、ふ~どガイアからはボンちゃん選手が選出された。ボンちゃん選手は言わずと知れた「EVO 2019」の覇者だが、当リーグにおける勝率は30%と、他のプレーヤーと比べても低い。本人もそれを気にしているようで、試合前には「これ以上チームに迷惑をかけたくない」と述べていた。
対する竹内ジョン選手はネモ選手と同じTeam Liquid所属の選手で、ネモ選手との親交も深く、それだけに負けるわけにはいかない。互いの想いがぶつかり合った中堅戦は、竹内ジョン選手の立ち回りが僅かにボンちゃん選手を上回り、ネモオーロラに軍配が上がった。
そして大将戦ではお互いのチームリーダー同士が対峙した。ネモ選手とふ~ど選手、お互いの実力は互角だが、ネモ選手はふ~ど選手が使うレインボーミカというキャラクターを苦手としている。ふ~ど選手としては、大将としてチームを勢いづけるためにも、何としても勝っておきたい試合だ。
しかし、チームメイトを背負ったネモ選手は一味違った。ネモ選手が苦手とするレインボーミカのコマンド投げに対しても冷静に対処し、そしてVトリガーが溜まれば得意のエイジスリフレクターからの攻めでふ~ど選手をみるみる追い詰めていく。ふ~ど選手も健闘したが、試合は勢いのままにネモ選手に軍配が上がった。
1巡目を勝ち越すことができたネモオーロラは、続く2巡目も盤石な立ち回りを見せた。ネモ選手はもちろんのこと、キチパーム選手、竹内ジョン選手も大健闘し、ふ~どガイアを破り決勝へと進出した。やはり、チームにおいて必要なのは絶対的リーダーなのだろうか。
圧倒的チーム力!マゴ選手が積年の雪辱を晴らす!
決勝へと勝ち上がってきたネモオーロラを待ち構えていたのは、本選1位通過のマゴスカーレットだ。マゴ選手といえば格闘ゲーマーにとってはお馴染みのプレーヤーだが、マゴ選手の真価はその分析力にある。ときど選手が「EVO 2017」を優勝した際に「マゴのおかげです」と言い放ったのは有名な話だが、マゴ選手は他人のプレイを見て分析するのが得意で、彼のアドバイスには絶大な信頼が寄せられている。
リーグ本選でマゴ選手はそのアドバイス能力をいかんなく発揮し、チームメイト2人を確実に勝利に導いてきた。その証拠にチームメイトのまちゃぼー選手は勝率90%、ユージ選手は80%を誇っている。カリスマ性でチームをまとめるネモ選手に対して、ロジックと分析でチームを率いるマゴ選手、と言ったところだろうか。
加えて、マゴ選手とネモ選手には深い因縁がある。それは2017年の大みそかのこと、以前より堂々とマゴ選手を「弱い」と評してきたネモ選手が、その意見を証明するべく、両者の間で10本先取のエキシビションマッチが行われた。どんな接戦が繰り広げられるかと、格闘ゲームファンはこぞってその試合を見守ったのだが、なんと結果は10-0でネモ選手のストレート勝ち。マゴ選手が「弱い」ということが実証される結果となってしまった。
以来ネモ選手はマゴ選手を弱いプレーヤーと見なしているようだが、当然マゴ選手は納得がいかない様子。このグランドファイナルの舞台が、2017年の雪辱を晴らす格好の舞台となった。
先鋒戦に選出されたのは、マゴスカーレットからユージ選手、ネモオーロラからキチパーム選手だ。ユージ選手は現役東大生のプレーヤーで、レアキャラクターである春麗を巧みに使いこなす技巧派プレーヤーだ。対するキチパーム選手は準決勝に次いでザンギエフがBANされており、アビゲイルでの戦いとなる。
先鋒戦はユージ選手がキチパーム選手を圧倒する展開となった。キチパーム選手がサブキャラクターを使っていることもあるだろうが、それにしてもユージ選手の技が魔法の様に噛み合っている。キチパーム選手の動きが分かっているかのような立ち回りを披露し、みるみるうちにキチパーム選手の体力が減っていく。試合はマゴスカーレットに軍配が上がった。これもマゴ選手の分析の成果なのだろうか。
続いてマゴスカーレットからはまちゃぼー選手、ネモオーロラからは竹内ジョン選手が選出された。まちゃぼー選手は本来ネカリの使い手だが、相手チームによってネカリがBANされているため、豪鬼で試合に臨む。まちゃぼー選手にとって豪鬼はサブキャラクターのはずだが、その仕上がりは目を疑う完成度だ。決して難しいことをしているわけではないが、対空・差し合い・Vトリガーの攻め、どれをとってもサブキャラクターとは思えない高水準で、まちゃぼー選手の練習量の多さが伺える。対する竹内ジョン選手は準決勝での1勝を思い出して、ネモ選手につなぐためにも、まちゃぼー選手を倒したいところだ。
試合は一進一退の攻防になったが、まちゃぼー選手の丁寧な攻めが勝敗を分けた。まちゃぼー選手は決して無駄な技振りをせず、中足払いや大パンチを確実にダメージに変えていく。竹内ジョン選手も健闘はしたが惜しくも届かず、試合はまたもやマゴスカーレットの勝利となった。
続く大将戦は、因縁の対決となった。マゴ選手のキャミイ対ネモ選手のユリアン、キャラクターも2017年時と同じだ。その頃のマゴ選手は、大事な場面でのプレッシャーに弱く、精神的に追い詰められた状況で致命的ミスをしてしまうプレーヤーだった。対するネモ選手はそういった類のミスを決して見逃さず、容赦なく咎めてくるプレーヤーだ。
しかし試合はマゴ選手の成長ぶりが伺える展開となった。どっしりと構えた立ち回りから大きなミスもなく、着実にネモ選手を追い詰めていく。ネモ選手の使用するユリアンは背が高いため、キャミイの得意とする空中からの攻めが特に対処しづらい。プレッシャーからか、ネモ選手がコンボをミスする場面も見受けられ、軍配はマゴ選手に上がった。緒戦はマゴスカーレットの勝利となった。
続く2巡目、決勝戦は6ポイント先取したチームが勝ちとなるため、ネモオーロラは後がない展開だ。1巡目と同じ組み合わせの中、竹内ジョン選手がまちゃぼー選手に勝つファインプレーを見せ、続く大将戦でまたもやマゴ選手対ネモ選手のカードが組まれる。マゴ選手が勝てばマゴスカーレットが優勝できる場面、ネモ選手にはプレッシャーがかかる。
しかし、プレッシャー下の状況にも強いのがネモ選手だ。先ほど敗北したマゴ選手に対して、今度は強気の攻めを展開し、マゴ選手を勢いに乗らせない。一切ミスが許されない場面で強気の行動ができるのは、場数を踏んできたプロならではの技だろう。マゴ選手は圧倒されてしまい、この試合はネモ選手の勝利となる。
2巡目が終わった時点で両チームのポイントは5-3でマゴスカーレットがリードしている。マゴスカーレットは1試合でも勝てれば優勝、対するネモオーロラは続く3巡目を全勝しなければならない。
そんな3巡目、ネモオーロラは竹内ジョン選手を先鋒に送り出すが、対するマゴスカーレットはマゴ選手を先鋒として選出。マゴスカーレットとしては先鋒戦さえ勝てれば優勝のため、初っ端からリーダーを投入する作戦に出たのだ。加えてマゴ選手は竹内ジョン選手の使うラシードを得意としている。
マゴ選手はキャラクターをよりラシードに強いかりんに変更し、戦いに臨む。竹内ジョン選手としては何としても勝ちたいところだったが、試合はマゴ選手の分析力が光る結果となった。立ち回りでの中足払いの振り方、そしてラシードの三角跳びへの対処は、確実にこれまでの竹内ジョン選手の動きを見ていたであろう精度だ。竹内ジョン選手も健闘するも、試合はマゴ選手の勝利となり、「ストリートファイターリーグ:Pro-JP」のグランドファイナルはマゴスカーレットの優勝で幕を下ろした。
優勝後コメントを求めらるとマゴ選手は、「本当にチームメイトに恵まれました、僕一人では成しえなかった優勝です」とチームメイトに感謝の言葉を述べた。マゴスカーレットは優勝賞金として150万円と、アメリカはロサンゼルスで開催される「ストリートファイターリーグ 日米対抗戦」へ日本代表として招待される。「SFV」強国である米国の代表を相手にどのような戦いを見せてくれるのか楽しみだ。