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「World of Warships」、孤高の存在“空母”に大胆なリデザインを実施

よりカジュアルな存在へ。RTSから臨場感溢れる空戦アクションに進化

【空母リデザイン】

今週末~来週βテスト開始予定

 ウォーゲーミングジャパンは9月18日、PC向けオンライン海戦バトル「World of Warships」の発表会を開催し、航空母艦(空母)のリデザイン計画と、5種目の艦艇となる潜水艦の実装計画を明らかにした。空母は今週末から来週頃にβテストを開始する見込みで、早ければ年内にも本サーバーへ実装される見込み。潜水艦については10月中旬よりスタートするハロウィンイベントで試験的に導入される予定で、その後計画は「ユーザーの要望次第」としている。本稿では空母のリデザインについてお届けしたい。

【「World of Warships」新旧空母比較】

「World of Warships」エグゼクティブプロデューサーのArtur Plociennik氏
Wargaming.netサイドで認識していた空母の問題点
リデザインの方向性

 発表会には、「World of Warships(以下、WoWS)」エグゼクティブプロデューサーのArtur Plociennik氏が参加し、その大胆な構想を自身の口から明らかにした。

 空母のリデザインは、「WoWS」における開発側/コミュニティ側双方の宿願として実装直後から要望の多かった要素のひとつだ。空母は、偵察、対艦、対空の3つのロールを担える唯一無二の存在として、史実通りの活躍をすべく、それはつまり、第二次世界大戦の海戦ではすでに旧世代となっていた戦艦や巡洋艦を次々に海の底に沈める圧倒的な存在として実装されたが、戦場に与える影響力の大きさと、何でもできる万能性から、いつしか忌み嫌われる存在になってしまっていた。

 さらに、その影響力の大きさがゆえに、空母は1チーム1隻までに制限されたことで、その特殊性に拍車が掛かり、空母使いの熟練度によって勝敗が決するまでになった。上級者の空母乗りは勝率8割に達する一方で、ビギナーの空母乗りは常に負け続けるだけでなく、“戦犯”扱いされ、その結果、空母乗りが極端に減ってしまうことになる。こうなってしまうと、空母不在のマッチが増え続け、せっかく磨いた対空戦装備が意味を成さなくなり、対空戦を意識した消耗品も使われなくなり、いよいよ空母が使いづらくなるという負のスパイラルが止まらない状態になってしまった。

 この状態に終止符を打ち、空母を駆逐艦、巡洋艦、戦艦と同列に引き戻し、ビギナーが気軽に空母を使えるようにするためのプランが、今回発表された空母のリデザイン計画だ。

 具体的には、空母限定のモードだった、通称“RTSモード”と呼ばれる上空から見下ろした視点を廃止し、空母視点、もしくは飛行中隊視点のいずれかでプレイするというタクティカルアクションゲームに戻す。これにより既存の3艦種とプレイの一貫性を維持すると共に、単艦でマルチロールを担えるオーバーパワー状態を緩和する。

 これが何を意味するかというと、空母の大幅な弱体化だ。従来の空母はRTSモードから、複数の飛行中隊を発艦させ、戦闘機中隊で偵察を行ないつつ、敵部隊を発見し次第、攻撃部隊が空母や戦艦部隊に魚雷攻撃や急降下爆撃を行なうという流れだった。偵察、攻撃に加えて、味方艦艇の援護まで行なえていたわけだ。

 新モードでは、空母の視点からゲームがスタートし、雷撃機、爆撃機、攻撃機という3つの中隊から任意の1中隊を発艦させる。発艦後はその中隊に視点が移り、プレーヤーは中隊長としてその飛行中隊を自ら操り、敵艦を発見し次第、自身の操作で雷撃や爆撃を行なっていく。この間、視点はずっとその中隊のままで、あとは空母の行き先を全体マップから指定するぐらいだ。

 現行の空母が文字通りのRTSだとすると、新たな空母は、さしずめ空戦アクションゲームだ。同じ空母でもゲーム性はまったく変わってしまっているが、駆逐艦、巡洋艦、戦艦とのプレイの一貫性は保たれている。これまでは想像するしかなかった激しい対空砲火や、爆弾命中時の大爆発、雷撃時の吹き上がる巨大な水柱などを間近で眺めることができる。これはこれでエキサイティングな体験だ。

【「World of Warships」新空母新旧比較】
左が旧バージョン、右が新バージョン。RTSから空戦アクションへ。一番重要なポイントは、アクション性が高まり、ゲームプレイの臨場感が増し、ゲームプレイの一貫性が保たれていることだ。ようやく名実共に空母が「WoWS」の仲間入りを果たしたということになる

 空母弱体化のもっとも大きなポイントは、同時に1中隊しか操作できないところだ。現行のルールはTierがいくつの空母だろうが、同時に1中隊しか攻撃できない。1中隊は12機で編成され、1回あたり3機ずつ攻撃を行なっていく。対空砲火で全滅させられない限り、最大で4回まで攻撃を行なうことができ、4回の攻撃を終えると空母に視点が戻り、新たな飛行中隊の発艦が可能となる。ここまでが新空母の攻撃サイクルとなる。見ての通り、ほぼ1つのロールしか担えないようになっている。

 先述したように飛行中隊には3種類が用意されている。雷撃機はその名の通り魚雷攻撃を得意とし、爆撃機はHE/AP爆弾を搭載し、大型艦にAP弾で直接ダメージを与えたりHE弾で大規模火災を起こしたりできる。攻撃機は、今回新たに設けられた飛行中隊で、HEロケット弾を装備する。3中隊の中でもっとも攻撃範囲が広いため、すばしこい駆逐艦への攻撃手段として有効だが、直接的な打撃力は限定的となる。戦況に応じて、この3飛行中隊を選んで投入していくわけだ。

 ここで「戦闘機は?」と思った「WoWS」ファンもいるだろう。戦闘機中隊は、現時点では“消費アイテム”に格下げされ、使用すると近隣海域を戦闘機中隊が哨戒し、偵察や敵機攻撃を行なってくれる、という存在になっている。ただ、この仕様は、あくまで現時点では、というもので、ユーザーの要望によっては、再度仕様が変わる可能性もあるようだ。

【「World of Warships」新空母ゲームプレイ映像】

 会場では実際に試遊することができたが、自らの活躍によって勝敗が決するという重責を担う存在から、“偵察と航空攻撃を得意とする大型艦”という、まさに駆逐艦、巡洋艦、戦艦と同列に並ぶ存在となった。空母乗りの視点から見ると、最後方から戦場を支配する全能の存在から、通常艦のひとつに格下げされた印象だが、全体のバランスとしてはここまでしないと空母使いを増やせないと判断したのだと思われる。

 この「WoWS」における空母問題は様々な視点から語ることができると思う。現状の問題は、史実通りの強さにしたら文字通りの敵なしとなり、影響力を限定するために1チーム1隻にしたら、その重責のあまり使う人が減り続け、空母自体が絶滅危惧種になってしまったというものだ。こうなるとアプローチとしては空母を変えるか、外すかしかないが、Wargaming.netは「空母を変える」という判断を下した。

 筆者自身は、ユトランド沖海戦(1916年の英独間の艦隊決戦)に代表される戦艦が艦隊の主力だった時代の海戦と、ミッドウェー海戦(1942年の日米空母決戦)のような空母が主力となった時代の海戦を同一の枠組みで再現しようと言うこと自体に無理があると思っているため、世代別の海戦ルールを採用する、つまり特定のルールでは空母を外すのもありだと思っている。ただ、Wargaming.netとして、何が何でも空母を中高Tier帯の戦場に投入したいという思いは伝わってきて、その意思は尊重したいと思う。あとはコミュニティが支持するかどうかだ。

 ともあれ、空母のリデザインは、まもなくテストサーバーでテストがスタートし、テストが好調に推移すれば、順次本サーバーに実装していくとしている。なお、リデザイン後の空母の仕様が気に入らない場合は、空母ユーザー向けの移行計画を策定するとしている。これがクレジットの全額払い戻しを意味するものなのか、同一Tierの他の艦種へのマイグレーション(移住)を意味するものなのかはわからないが、このアップデートで重要なのは、空母ユーザーの批判は覚悟の上で、断行されるものだということだ。運営4年目にして重大な決断を下した「WoWS」の展開を今後も見守っていきたいところだ。

【スクリーンショット】
大幅に変化した空母ビュー。とりわけ、これまで空母を使っていた人にとっては衝撃だろう。今後は空母もまた他の艦艇と同じように、最前線で迫力ある海戦が楽しめるようになる