ニュース
PMCの指揮官となり傭兵を動かす「BLACK COMMAND」、その銃火と砲煙に灼けたプレイインプレッション
その実は随所に”本気”を垣間見るストラテジー
2018年9月25日 00:00
カプコンより9月26日に配信が予定されているAndroid/iOS用ミリタリーシミュレーション「BLACK COMMAND」。同社の「バイオハザード7」を手がけた”特殊部隊”が参加し「ミリタリーブログ(ミリブロ)」が完全監修を行なっており、その外見はハードなミリタリー風味だ。
さて、そのゲーム概要だが、端的に言うと「PMC(民間軍事会社)の指揮官となり、人と武器と金とコネを集めて最強の部隊を目指す」ゲームだ。操作感はターン制のストラテジーに似て、斃れた隊員は(例外を除き)2度と戻ってこない。それゆえ慎重に、ときに大胆にオペレーションを進めていくのだが、この緊張感が面白い。以下では本作に触れて感じたあれこれをお伝えしようと思う。
チュートリアルで”豚野郎”になろう
――それもただの豚ではない。「サー、イエッサー」しか言えないクソ豚野郎になるのだ。そう、チュートリアルの教官は新兵に「ほほえみデブ」とかいうあだ名を付けそうな勢いのある鬼教官風味の漢。こいつに戦闘のイロハを教えてもらえる。
ここでは初期のオペレーションに必要なことをまるっと丁寧に(口はクソ悪いが)教えてくれるため、「うわぁ『フルメタル・ジャケット』だなぁ」と思いながら楽しくゲームの生き抜き方を学べる。なに映画「フルメタル・ジャケット」を観ていない?よし、とりあえずレンタルでいいから「プライベート・ライアン」と「プラトーン」と「山猫は眠らない」と「ブラックホーク・ダウン」を一緒に観よう。
ターン制シミュレーションとストラテジーのハイブリッド
本作はPMCの指揮官、兼経営者として世界で起こる紛争に介入することで進行していく。紛争の規模に大小はあれど、基本は敵の本拠地をブッ叩いて制圧すれば勝利する。
本作ではそのマクロとミクロ、大局と局所をターン制シミュレーションと半リアルタイムストラテジーという波で表現している。味方と敵のターンで出現するミッションを受注し、ストラテジーパートで捌いていくのだ。そしてミッションを達成すれば資金を獲得でき、ミッションによっては課金や高い資金が必要なアイテムも獲得できたりする。
これは後で述べるが、ミッションを受注するには弾薬が必要。これを支援する兵站の確保や、本拠地制圧を助ける味方部隊の協力も場合によっては必要になる。それに加え、ターンが進むごとに敵の戦力が増強されたり、はたまた制限ターンを超えると1発アウトな紛争も存在する。
リアルを重視しつつも損なわれないゲーム性
そうだな、いくらリアルといえど、リアルに寄りすぎるとゲームとしての楽しみを損なってしまう。しかし本作は、絶妙なところでちょうどいい”ライン”に乗れていると思う。
ゲーム内で「ブラックコマンド」と呼ばれている遠隔指揮システム。敵は赤、味方は青の三角形で描かれ、それらの射程、兼視界が扇で描かれている。潜入ゲームのレーダーを思わせる視点だ。ちなみに兵士の移動は6角形のマスで管理されていて、このマスをタップしたり、目標地点をドラッグして動かしたり、ルートをドラッグして中継地点を設定して兵士を動かす。
そして「高速移動」、「警戒移動」、「待機」の3コマンド。「高速移動」は持てる限りの速度で移動し、「警戒移動」では敵の視界にある程度入っても気づかれない速度でゆっくりと移動する。待機は周辺警戒に徹し、全方位に対応できるようにする。
ステルス要素も存在
作戦の基本は隠密だ、なんてかくれんぼが好きなプレーヤーにも嬉しい”ステルス要素”。本作にはそんなシステムとして「奇襲」が存在する。やり方は単純で、敵の背後をうまく突いて攻撃するだけだ。後述するが、サブマシンガンを多く装備させると奇襲可能な範囲が最大で真横に近い角度まで拡大する。奇襲が成功すると弾薬を消費せず、そして敵からの被害も受けない。迅速なオペレーションが必要な場合は積極的に活用していこう。
射程と銃種と使う弾薬(タマ)
本作には、150種以上の銃が登場する。その種類は汎用性の高い「AR(アサルトライフル)」、射程が短いが機動力に優れ、奇襲が得意な「SMG(サブマシンガン)」、動きが遅く被弾しやすいが長距離から敵を殲滅でき、高台からの狙撃も得意な「SR(スナイパーライフル)」、長射程と制圧力に優れるが弾薬消費量が多い「LMG(ライトマシンガン)」、そして弾切れの際に使用され、ARやSMGといった主力武器の能力を補正する「HG(ハンドガン)」の5種だ。その装備群はツリーで管理されており、ミリブロ監修のもと銃たちの系譜を描いている。
ここはかなり試行錯誤がなされた部分のようで、たとえばAKシリーズやMPシリーズ、M16の兄弟機たちのようにおなじみのものもあれば、M1911A1からブローニング・ハイパワーといった少々意外かもしれない系図も。
これらを5人の隊員にうまく配備してやることで、分隊は最高のパフォーマンスを発揮する。たとえば隊列の先頭(編成で1番左)に配備された武器で射程が決まるし、分隊員全員を合計した「操作性」が高ければマップを素早く移動する。「命中精度」が高ければ敵に弾が当たりやすく、結果的に弾薬の消費量が抑えられる。
だがしかし注意してほしい。先頭の射程が長いといえど、分隊員はそれぞれの武器の射程で戦っている。LMGの最大射程ギリギリで戦っていると、その後ろに連なる(例えば)SMGを持った隊員は攻撃ができず、弾薬消費量が多いLMGの掃射のみで敵部隊を叩くこととなってしまう。総合した弾薬消費量でいえば、LMGの攻撃だけより全員でフクロにした方がよっぽど効率的だ。そんなところまで考えているのかと感嘆した――が、できれば先頭だけでなくそれ以外の隊員の射程も描画して頂きたいところ。この点はちょっとだけもどかしい。
ここまで「弾薬消費量」と何回述べただろうか。そう……実は各作戦で、使用できる弾薬の量が決められているのだ。
こと民間軍事会社――PMCにおいて消耗品たる弾薬の問題は深刻なものだろう。本作はそれを(きっと)如実に描いていて、ミッションに挑戦するには指定された以上の弾薬を所持している必要があり、ミッション中、またはミッション受注の前に弾薬が不足した場合は緊急の補給案としてアイテム「弾薬支給」を使う必要がある。ミッション受注前に不足していた場合は、ターンを進めることで味方部隊から補給がやってくる。
施設を駆使して楽しい戦場
マップ上には、スナイパーがいれば狙撃に使える「高台」や高速移動が可能で盾にもなる「ヴィークル」、待ち伏せに使える「廃墟」、そして少しゲームを進めると1度のみの使い切りだが範囲攻撃になる「迫撃砲」が登場する。このほかには敵をおびき寄せる「火薬庫」やアイテムが見つかる「隠し金庫」、それに使える弾薬を奪える「弾薬庫」……といった、上手く使えば戦闘を有利に進められるものが様々。使えるものは何でも使え。
また、同じくマップには等高線で形作られた「山」が存在する。これを移動しようとすると移動速度が落ちるのだ。これが重要で、たとえば正面が固く守られた敵陣を迂回して奇襲するとする。この場合うまく谷を縫っていけば時間もかからず奇襲できるのだが、山を突っ切って行ってしまうと無駄な時間を食ってしまう。作戦には制限時間が設定されているため、行軍にかかる時間なども考慮する必要があるのだ。
個性溢れる明るく楽しい職場です!
我らがPMCには、日夜たくさんの志願者がやってくる。それは元軍属であったり、革命家だったり、「マルチクリエイター」とかニートだったりする。学生もいる。彼らには様々な来歴があるのだ。
そして、彼らは戦闘を通じて経験値を獲得して成長する。「ROOKIE」にはじまり「PRO」、「EXPERT」、そして「MASTER」に。その過程で特定の銃器をうまく扱えるようになったり、味方をサポートできる「スキル」を身につけていく。
また、言ってしまえば「別れ」も当然やってくる。出会った場所が戦場ならなおさら突然に。彼らが死亡した場合は「遺品整理」を行なう。死亡した隊員がスキルや資金を持っていた場合、資金や「執行券」、ゴールドを使用して遺品を獲得できるのだ。スキルは「スキルブック」となる。彼らは死してなお意思を遺そうとする。
しかし、ゲーム中で出会う「LEGEND」の隊員は違う。「LEGEND」隊員は強力なスキルを持っているだけでなく、死亡したのちに雇用に登場する可能性があるというのだ。彼らの死は戦いの死とともにある。
”大国”プレイ
ゲームアプリとして、避けて通れないのが「課金」と「ガチャ」、なのだろう。
だが本作では、在庫やコストなどなどの制限はあれど全ての要素をゲーム内通貨でまかなえる。たとえば「弾薬支給」にはじまり、隊員を死から守る「防弾プレート」、戦車を一撃で沈める「対戦車ロケット」、広範囲に超火力の爆撃を見舞う「航空支援」、そしてゲームを進めると解禁される資金のライフライン「ナチスの秘宝」で使用する「マトック」。また同じくゲームを進めると、兵士の雇用上限や経験値の上昇率などを上げられたり、「スポンサー」による支援を受けられるようになる。
これをうまくやりくりしてジリ貧カンパニーを演じるのもいいが、ちょっとだけ悪いことを言ってしまおう。爆撃はいいぞ、そして弾薬マシマシの硝煙パーティーも楽しいぞ。
航空支援は気持ちいい。あらん限りの火力をもって、敵戦車だろうが装甲車だろうが、果ては司令部すらも爆撃して灰燼と化す。隊員にはもれなく経験値が入る。いいこと尽くめだ。
「弾薬支給」をガッポガッポとつぎ込み、「防弾プレート」で防備を固めるプレイも楽しい。大事な隊員に保険をかけて、奇襲に強襲、正面突破と好きな戦い方を演じる。もちろん隊員に死なれては困るので、可能な限り安全第一だ。
そして、隊員たちを使った「銃の調達」。これがある種のガチャにあたる。1日1回のみ無料で回せるほか、ゴールドを使用すれば確実に「★1」以上のレアな銃が手に入る。ゲーム中に手に入る資金を使用する場合、追加の資金を要求されることもあり、レアな銃が手に入る確率は低い。さらにこの調達、”ヤバい”場所に踏み込んだ隊員を強行させた場合はその隊員が死亡してしまうこともあるため気をつけよう。
全体的にダークでリアルなゲーム
実情を知らない人間が深く言えることでもないだろうが、本作は「戦争経済」とも呼ばれるPMCと紛争を描くゲームとしてはとてもリアルに寄りながらゲームらしさを損なわず、それゆえのシステムへのこだわりも感じられた。限られた弾薬量のやりくりや、長引く紛争で疲弊する味方、増強される敵といったものがそうだ。淡々と行なわれる遺品整理はあっけないが、だからこそ今まで育ててきた隊員の死が悔やまれる。
ただ、たとえば銃のステータスに関する戦場での効果――操作性と機動力の関係や弾効率など――だったり、奇襲の可否といった戦闘についての説明が少し浅い印象だ。これらは戦闘後に見られるTIPSで説明されているのだが、できればチュートリアルだったり、武器のレーダーチャートをタップする以外での場所で説明がほしい。
だがしかし。銃器に対する描写は目から鱗。たとえばSMGの「SMG-90(P90)」はその弾の威力ゆえに弾効率がよく、操作性に優れているとか、2点バーストを採用した「AR-AN94(AN-94)」が射程と命中精度に長けるがパーツの複雑化で信頼性が低いとか。そういったステータス設定については納得アンド納得。俯瞰視点を使用したバトルパートもとても出来がよく、奇襲メインで戦うのも正面切ってランボープレイに任せるのも楽しい。これからの発展がよいものであると期待しつつ、”らしい”戦いとビジネス活動をしっかりと楽しめるゲームであったことをここに記す。
©CAPCOM CO., LTD. 2018 ALL RIGHTS RESERVED