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今年も台北ゲームショウに行ってきた!

多くのデベロッパーがNintendo Switch市場を指向、「台北ゲームショウ2018」インディゲームゾーンレポート

【Taipei Game Show 2018】



1月26日~29日開催

会場:台北國際世貿中心一館

 毎年1月後半に開催される「台北ゲームショウ」が今年も1月25日からスタート。前回の予告通り25日および26日のみ開催されるB2Bゾーン(インディゲーム)の様子をお届けします。ちなみにB2Cゾーン(一般公開ゾーン)ではここ数年最凶の混み具合で、せっかく入場できても人の流れに逆らえず、どこのブースにも寄れないまま出口まで押し出されてしまった人も出たとか出ないとか……。

併設のB2Cゾーンは恐ろしいほどの混み具合。B2Bゾーンは平和そのものでした

 今年はVRゲーム用に広いスペースが確保された専用ブースが拡張されたため、B2Bゾーンは若干広くなりました。一般のゲーム出展ゾーン自体はほぼ変わらず、地元台湾勢を中心に日本、中国、韓国、香港、シンガポール、マレーシア、インドといったアジア勢に加えて欧米のデベロッパーがめいめいタイトルを展示していました。比率でいうとアジア8:欧米2くらいでしょう。

 事前情報ではコンソール向けタイトルも結構あるのかな? と期待していたのですが蓋をあけてみると実際のコンソール開発機でタイトルをデモしていたのは、当方で確認した限りですが中国から参加したデベロッパー1社のみ。モバイル6:PC4といった展示状況で若干肩すかしを食らった感じです。出展タイトルのラインナップは去年よりも比較的に新作多めで、2年連続出展のタイトルは少なく嬉しい誤算(?)でした。

毎度おなじみのB2Bゾーン。台湾だけでなく欧米に日中韓、マレーシア、インドと今年も様々な国からの参加がありました

 今回、コーラスワールドワイドとしては、台湾、中国、韓国、シンガポール、マレーシアと主にアジアのデベロッパーと多くの打ち合わせを持ちました。彼らの共通するイシューは「どうすればNintendo Switch市場に参入できるか」という点に尽き、彼らの出展タイトルがモバイルやPCであってもこれからはSwitchでも勝負をしたいという意見を多く伺いました。これはニュースなどでSwitchのインディゲームが盛り上がっている(=他プラットフォームより良い売上が出ている)という話題が念頭にあると考えられます。

 実際のところは「Switch版を考えている」という話を聞いても具体的にどうやって参入するか方法がわからないという人が多く、運良く任天堂より情報開示を受け開発機を導入できている開発者はごく少数のようでした。「Nindies」を標榜する任天堂としては、日本以外のアジアの開発者開拓もぜひ進めていただきたいところです。

 またアジアのスタジオや開発者はすでにPS4の開発機を入手しているものの、開発になかなか手をつけられないという話も聞きました。特に台湾勢は「ソニーが中国ばかりに向いていて相手にしてくれない」というコメントもあり、サポート体制など、なんらかの事情でPS4への開発意欲を削いでしまっているという印象を受けました。

 欧米勢の出展社(者)は、おおむね他のインディゲームイベントで出展され話題をさらった既発タイトルが多く、ここで改めて取り上げる必要もないのですが、PC用サンドボックスゲーム「Factorio」で有名な英国のWube Softwareが出展しており、同作のアジア市場展開をぼちぼち模索しはじめていました。いわくアジアのイベント初出展ということで「とにかく雰囲気をつかみに来た」そうなのですが、もしかすると近い将来アジア市場開拓で新しい展開があるかもしれません。

欧米勢の中では「Factorio」のWube Software参加に注目

 さて今年も独断と偏見で注目したいタイトルをいくつか選んでみました。一部タイトルはすでにリリース済み、すべてのタイトルは(開発者に聞いた限りでは)年内リリースを予定しているものです。

「Vambrace: Cold soul」

 韓国のDevespresso Games開発のローグライク・アドベンチャーゲーム「Vambrace」です。同社は、韓国の高校を舞台にしたホラーゲーム「ザ・コーマ(The Coma: Recut)」をPC、コンソールでリリースしており、もしかするとご存じの方も多いかもしれません。

 同社2作目となる「Vambrace」は、ズバリ言うと日本版発売もアナウンスされている「Darkest Dungeon」+ αという感じの内容です。ローグライクということで、繰り返し冒険に出て進めていくタイプのゲームです。ただし仲間が死ぬと蘇生不可というシビアな面もあり、ハードコアなゲームを求めている方におすすめできそう。

 「Darkest Dungeon」をプレイしたことのある人なら、なんとなく感じた「もっと親しみやすいビジュアルだといいなあ」、「冒険で拾ったアイテムを使ってクラフトしたいなあ」といった要素がもれなく盛り込まれており、我ら日本のやり込みゲームファンにとっても楽しみな一作となりそうです。ゲームはPC以外にPS4, Xbox One, Nintendo Switchと一通りの現行プラットフォームで年内リリース予定。

□「Vambrace」のページ

個人的注目度急上昇スタジオ。新作のリリースが今から楽しみだ

「Roof Rage」

 こちらも韓国のスタジオEarly Melon開発のアクションゲーム。ちなみに韓国に拠点がありますが、開発者はフランス人。上の項目で紹介した「Vambrace」のゲームデザイナーはアメリカ人。なにやら韓国系のインディスタジオは国際的ですね。

 「Roof Rage」はゲームのスクリーンショットを見てもわかる通り、最大8人まで対戦できる画面固定型アクション。要するに「スマッシュブラザーズ」の流れをくんだゲームなのですが、特色あるキャラクターとユニークな攻撃方法、そしてバランスのとれた対戦が印象的。「スマブラ」(のようなゲーム)で銃と刀、怪しい妖術の戦いなんて面白いに決まっているじゃないですか。各マップのギミックなど細かいところの仕掛けも凝っています。

 ゲームのウェブサイトをみると1vs1のオンライン対戦もサポートする旨の記述がありますが、基本はローカルでの対戦を想定しているようで会場ではオンラインに関しては言及がありませんでした。春頃にPC(Steam)での発売を目指していますが、ゲーム内容的にピッタリということでNintendo Switchへの移植も視野にいれているとのこと。

□「Roof Rage」のページ

会場ではPC版が最大4人まで対戦できた。リリース後はオンラインランキングまわりなどのアップデートを予定しているそうだ

「Cubie Adventure」

 またまた韓国のスタジオ、UNIT 5のモバイル用ゲームです。こちらは昨年にリリース済みで、興味のある方はすぐにお試しOK。タップだけでゲームができるランニングゲームなのですが、ほどよいアクション性、楽しいボス戦、オンラインユーザーとのレース(正しくはオンラインユーザーのゴーストとのレース)もあります。万人受けしそうなキューブを組み合わせたようなビジュアルと色使いも相まって、非常に完成度の高いゲームに仕上がっています。マネタイズモデルはF2Pで、広告を見たりアイテムを購入することでパワーアップや新しいキャラクター、ペットなどを入手することができます。

 個人的に特筆したいところは、とにかく丁寧に作り込んであることです。並のモバイルインディゲームとは頭1つ、2つ抜けたクォリティがあり、英語、日本語、中国語など主要な14言語に対応済み。ローカライズも日本語をみた限りでは翻訳や改行位置など適切な対応がとられており「いい仕事してるなぁ」と思わずうなってしまいました。気になる方はいますぐダウンロードして試してみてください。長く端末に残しておけるゲームです。

□「キュービーアドベンチャー :キューブランドの夢見る冒険者たち」のページ(Google Play)
□「キュービーアドベンチャー :キューブランドの夢見る冒険者たち」のページ(App Store)

アジア発のモバイル用インディゲームとしてここまでよくまとまったゲームは久しぶりに見たかもしれない。画面を見て興味を持ったらぜひ試遊を

「極楽町」

 台湾のスタジオ、魚拓(Yu Tuo)が開発中のタップ&放置系ゲーム「極楽町」は台湾インディゲームにはびこるターン制チームバトルRPGとは一線を画すゲームデザインとグラフィックスが会場内でも目立っていました。

 1930年代の台湾の風景を題材にした世界観で、住民をタップすると入手できるコインで住宅や施設を建設、町を発展させ新たな住民を呼び込むお手軽都市開発ゲームとしても楽しめます。ARにも対応しており町の背景部分を自分の住んでいる町並みと被らせることも。

 放置系・タップゲームは2Dが多かったのですが、3Dで町の成長ぶりを確認できるのは新鮮です。Yu Tuoの開発者いわく、1日15分程度のプレイでゲームを楽しめるよう設計をしているそうです。ウェブサイトに掲載されているトレーラーを見ていただくとゲームの概要や世界観を一通り理解することができます。課金モデルはF2Pで、かわいいキャラクタとやわらかなビジュアルと相まって人気を呼びそうです。リリース時期は春を予定。

□YUTUOGAMESのページ

【「恆樂町」TGS2018】
実機の写真を撮り忘れてしまったのが残念。とても良い雰囲気のゲームなのでぜひトレーラーをチェックしてみていただきたい

「Space Cycler」

 最後の1本も台湾から。発表から2年の開発期間を経て1月12日にリリースされたばかりの360度シューティング「Space Cycler」です。360度シューティングというと弾を360度の方向に撃つゲームを想像しますが、本作の場合は自機を360度に動かして敵を倒すという代物です。まさに発想の転換。自機を動かさないと弾を発射しないため、ゲーム中は常にグルグルと画面を回っていることになります。

 ゲームは基本的にオフライン協力プレイを前提に設計されており、その場合は端末を挟んで向かい合ってプレイすることになるため、スマートフォンのような小さい物よりもiPad Proのような大きな端末の方がゲームを楽しめるでしょう。2人でプレイするとなかなか盛り上がりますが、オンラインプレイ対応はいまのところ予定されていないため、相手がいないと手軽に楽しめないのは残念なところ。飲み会などアルコールが入る場でプレイしみてると盛り上がるかも? もちろんシングルプレイでも楽しめます。ゲーム内容とハード特性に合うNintendo Switchにはやはり興味があるそうです。テレビで遊べると一層楽しく遊べるでしょう。

 ゲームは買い切りモデルで240円。日本語対応もされています。iPhone Xのスクリーンにも対応済みで、余白に気をそがれることなくプレイを楽しめます。ちなみに古めのデバイス(会場ではiPad 3が使われていました)だと自機の回転が処理落ちして遅くなってしまいますのでご注意。シューティングファンの方にはぜひプレイしてみていただきたい1本です。

□ 「Space Cycler」のページ
□ 「Space Cycler」のページ(App Store)

リリースしたての製品版も早速App Storeで購入。ポイントはつねにグルグルと自機を回転させておくこと。このプレイ感覚になれれば楽しく遊べる

台湾インディシーンはどこに向かうのか?

 併催のB2Cゾーンが圧倒的な活況ぶりを眼下に見下ろしつつ、例年通りのまったりペースで進むB2Bゾーンでは今年も様々なタイトルを見ることができましたが、地元台湾勢よりも韓国、中国、マレーシアといったその他アジアから参加したタイトルの方が明らかに際立っていましたのは気になるところです。

 それはこの(「台湾のゲームショウTaipei Game Show 2018が台湾台北市で開幕」という記事にもあるように産地にこだわらず、面白いゲームをどんどん取り込んでいく一大消費国としての市場性と国民性にあるのかもしれません。

 欧米・日本・中国・韓国を問わず面白いゲームであれば受け入れられる土壌がある一方で受け身一方であるせいか台湾発となると、どこかで見たようなビジュアルと世界観や戦闘システムを組み合わせた、いいとこ取りをしたようで失敗している没個性のゲームがまだまだ多いのも事実です。

 もちろん今回紹介したタイトルのようにユニークで高いクォリティを持つゲームも多数開発・リリースされていますが、海外から様々な大作を受け入れていることが災いしているのか地元・台湾のスタジオやタイトルに脚光があてられることは希です。個人的に注目していたQubit Gamesの「Qubot」はリリース後半年程度でクローズ。PS4版もリリースされたアクションゲーム「Rabi-Ribi」を開発したCreSpiritのゾンビシューター「D-Squad」も1年程度でクローズと、インディ~中規模ゲームでは良い結果がなかなか出ず、いま1つ元気がないのは残念。

 そんな逆風が吹きあれている(?)台湾インディ界隈ですが、モバイルF2Pモデルから脱却し、PC(そしてあわよくばNintendo Switch)で仕切り直しを進めているようです。6月末の開催が予想される「Taipei Game Developers Forum」や9月の「東京ゲームショウ」あたりで新作を……という話を複数伺いました。幸運にも開発中の未公開タイトルやアートワークなどを見る機会もあり、いまから完成が楽しみなタイトルもありました。

 今年もアジアのゲーム市場ゲートウェイたる台湾市場と台湾インディに注目していきたいと思います。

個人的には中国発インディが今年以降注目度合いを高めるのではないかと予想。モバイル、PC、コンソールどれも試遊してみたがすばらしい内容だった。開発段階からしっかり現地パブリッシャーがついているところが多いのも特徴か