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「BlizzCon」eスポーツトーナメント、5種目中3種目で韓国勢が優勝
eスポーツイベントとしての「BlizzCon」にBlizzardの本気を見た
2017年11月5日 18:41
BlizzCon 2017が2日間の会期を終えた。現在、夜の12時過ぎ、ホテルの一室でこの原稿を書いているが、BlizzConを終えても興奮冷めやらぬ参加者たちの歓声が未だに聞こえてくる。夜遅くまで楽しかったイベントの余韻に浸っている来場者が多いようだ。
「オーバーウォッチ」ワールドカップレポートでも触れたように、BlizzConのメインコンテンツは、各タイトルの新情報発表ではなく、eスポーツトーナメントだ。世界各地から長い予選大会を勝ち抜いた強豪達が2日間かけて優勝トロフィーを目指して死闘を繰り広げる。それも1タイトルや2タイトルではなく、一挙5タイトルだ。ジャンルも、FPS(「オーバーウォッチ」)に、RTS(「Starcraft II」)に、MOBA(「Heroes of The Storm」)に、MMORPGに(「World of Warcraft」)、カード(「ハースストーン」)と実にバリエーション豊かで、eスポーツに関心のある人にとっては、まさに天国のようなイベントと言える。
筆者も、eスポーツを存分に楽しんだ2日間だった。初日は、取材の都合上、「オーバーウォッチ」ワールドカップの準々決勝米国対韓国の1戦しかまともに見られなかったが、2日目はすべてのタイトルの試合、しかもハイライトである準決勝、決勝を楽しむことができた。
「Starcraft II」、「World of Warcraft」、「Heroes of The Storm」の3タイトルは日本でサービスしておらず、正直、筆者も現役プレーヤーではないため、試合を追うのにやっとという感じだったが、いずれも数千席がすべて埋まった超満員で、大歓声やどよめき、バルーンスティックの乱打で満たされた会場に身を置くのは楽しい経験だ。筆者は10月に、中国上海で行なわれた「Counter-Strike: Global Offensive」のアジア大会「eXTREMESLAND」を現地で観戦する機会があったが、ライブストリーミングがメインで、イベント会場には観客を入れていなかっただけに、その違いに驚かされた。どちらも良し悪しがあるが、純粋なeスポーツファンの意見としては、やはりオフライン大会は客を入れて欲しいし、できるだけ大規模であってほしいと思う。
今回行なわれた5種目の大会の中で、一番盛り上がっていたのはやはり「オーバーウォッチ」だ。このタイトルだけ会場が大きいだけでなく、実況解説やライトアップ、観戦システムなどBlizzardの力の入れ方も凄い。何よりこのタイトルのみ、国別対抗のワールドカップとなっており、オリンピック同様、盛り上がりを生みやすい。
「オーバーウォッチ」大会2日目は本来、3位決定戦と決勝の2試合のみが行なわれるはずだったが、初日4試合目の米国対韓国戦が長引きすぎて、本来1日目に行なうはずだった準決勝2試合が丸ごと2日目に繰り延べされ、3位決定戦、決勝を含めて、全4試合が行なわれた。正直な所、1日目の米国対韓国戦が事実上の決勝戦だったなという印象で、韓国に対して「これは行けるか?」と思わせてくれるようなプレイは見られなかった。
決勝は韓国対カナダの1戦となり、カナダは米国にとっては兄弟分ということで、観客の9割ほどはカナダを応援するという、韓国にとっては再びスーパーアウェイの状況となった。ただ、韓国チームは、常に笑顔が見られるほど余裕の表情で、エースのflow3rもなぜかノーマークで、ウィドウメイカー、マクリー、ファラなど次々にキャラクターを変えながら、おもしろいようにロングレンジからキルを重ねまくり、準決勝、決勝とも終始安定した試合運びで、韓国チームが優勝を決めた。
「オーバーウォッチ」ワールドカップは、12月からプレシーズンがスタートする「Overwatch League」の前哨戦と位置づけられており、韓国チームの強さを改めて世界中に知らしめる大会となった。
ちなみに、この「オーバーウォッチ」のほか、「Starcraft II」、「Heroes of the Storm」でも韓国勢が優勝しており、5種目中実に3種目までが韓国優勝という、凄まじい強さを見せつけている。余談だが「Starcraft II」では前座として今年HDリマスターされた「StarCraft Remastered」のエキシビションマッチも行なわれており、こちらも韓国選手が優勝している(もっとも「Starcraft」は1も2も韓国人同士の戦いだが)。韓国は、力を入れるタイトル、入れないタイトルがハッキリしている国だが、相変わらずBlizzardタイトルだけは例外なく強い。
ところで、「ハースストーン」会場も楽しい空間だった。「ハースストーン」会場だけ、少し離れた別の会場になっていて、連絡路を通ったり、エスカレーターを上がったり降りたりする必要があって、歩いて10分ほど掛かる。
ようやくたどり着いた会場は、全体が西部開拓時代を彷彿とさせるタバーン風のデザインになっており、試合を観戦している人もいれば、特設のタバーンで酒を片手に会話やライブを楽しんだり、「コボルトと秘宝の迷宮」の試遊を楽しむ人もいたりと、自由気ままに楽しむ大人の空間だった。
試合会場も、ステージ側の客席はタバーンのテーブル風になっていて、タバーンで酒を飲みながらカードゲームの戦いを眺めるといった雰囲気になっており、目の前で試合をしているのにステージを見ていないとか、向かい合っている友人と話しこんでいたり、あるいは手元のスマホで「ハースストーン」を遊んでいたりと、まさにフリーダムだ。
解説も、「オーバーウォッチ」や「Starcraft II」と比較すると、ジョークや無駄話も交えたウィットに富んだ内容で、どうしても長考による静止が避けられないカードゲームならではの試合運営で、巧いなあと感心させられた。
全体を通じてeスポーツイベントとしてのBlizzConはとてつもない成功をおさめており、来場者はBlizzConに参加できることを心から喜び、存分に楽しんでいることが伝わってきた。199ドル(約22,700円)と大人でもためらいを感じさせる価格設定にもかかわらず、一瞬でチケットが売り切れるのも頷ける。今年は過去最高を更新する3万人以上が来場したということで、未だに成長を続けていることも驚きである。
ちなみにチケットは1回の予約で最大4人まで確保できるため、子連れのファミリーの姿も目立ったのが印象的だった。会場のアナハイムといえば、ディズニーランドで有名なリゾート地。ディズニーランドを選ばずに、BlizzConを選ぶというカルチャーが米国ではすでにしっかり根付いているわけで、メイン会場のMythicには、そうした家族専用シートも用意されている。
来場者全員に配られるバッグを背負って会場を駆け回る子供達の姿を見ると、日本はeスポーツの分野で2周ぐらい遅れていることを認めざるを得ないが、日本でもeスポーツはここ数年でもっとも盛り上がっており、日本から世界を驚かせるようなeスポーツイベントが生まれることを期待したい。最後に、完全にプレミア化している米国のイベントだけに、「ぜひ参加すべきだ」と軽々には書けないが、日本のeスポーツ関係者やeスポーツファンは、一生に一度は行くべきイベントなのは間違いないと思う。
©2017 BLIZZARD ENTERTAINMENT, INC.