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クルマのプロがレースゲームを斬る! ――その3「Forza Motorsport 7」
「クルマの挙動をわかっている人が制作していることが伝わってきました」(岡本)
2017年10月27日 12:00
クルマのプロにレースゲームをプレイしてもらい、そのインプレッションをお届けする「クルマのプロがレースゲームを斬る!」。3回目となる今回は、日本マイクロソフトから発売されている「Forza Motorsport 7」をクルマのプロに試してもらった。
「Forza Motorsport」シリーズと言えば、初代Xboxの時代から続く人気カーレースゲームの1つで、「ForzaがあるからXboxを買う」という人もいるくらいの人気を誇る。全世界でシリーズ累計販売本数が1,000万本以上という、Xboxプラットフォームにおける有力タイトルの1つである。
特徴は何といっても、リアルなグラフィックスと精密に再現された車両の美しさ、さらにこだわりのサウンドにある。また、クルマをぶつけたときのダメージ再現が初期の作品から実装されており、「あのクルマを壊せるのか」という想定外な話題も拡散した。
今回体験していただいたのは、Car Watchでもおなじみのモータージャーナリスト岡本幸一郎さん。ビデオ「ベストモータリング」の制作、自動車専門誌編集者を経てモータージャーナリストに転身した方だが、これまで所有するクルマも数多く、その知識量は半端ではない。そんな岡本さんが「Forza Motorsport 7」にどのような印象を持つのか、とても興味深い。
【プロフィール】
岡本幸一郎
学習院大学を卒業後、モータージャーナリズムの世界へ。Car Watchをはじめ多数の自動車関連のWEBや専門誌に鋭意寄稿中。脳細胞の90%をクルマが占め、話す言葉の95%はクルマに関することばかり。これまで25台の愛車を乗り継ぐ。国内A級ライセンス所持。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
RX-7などいろいろなマシンで鈴鹿サーキットを走る!
BMW E36 M3編
まずはどんなクルマが選べるのかを見ていくことに。収録車種を確認しながら「1990年代のクルマもたくさんあるんですね」と、懐かしいクルマのラインアップに目を細める。するとその中に、「BMW E36 M3」を発見。
「E36 M3ではないんですが、BMWの『318iS』は思い出深いクルマです。実は同じクルマを2台ずつ、セダンとクーペを持っていたんですね。前から見ると同じなんですが、横から見るとドアが1枚か2枚かという(笑)。BMWを訪問したとき『あれ? セダンじゃなかったですっけ?』と言われたこともあります」と思い出話を披露した。本題であるE36 M3の内装は「よく再現されてますね!」と感心していた。
さっそく鈴鹿サーキットを走行。選んだクルマは無論E36 M3だ。
「外から入ってくる光の感じがリアルですね。遠近感も上手く再現されています。ドアミラーで見える後続車にあえて焦点を合わせていない感じや、メーター周りもリアルです」。
また、Forza Motorsportシリーズ特有のサウンドに加え、インテリアの完成度も気に入ったようだ。
「クルマの中の視点でプレイすると音がこもるのもいいです。真後ろから聞くとこうなんだろうなと思います。窓やドアに反射して聞こえる音もリアルですね」。
「インテリアもこれこれって感じ! エアコン吹き出し口のルーバーのあたりとか実物そのままの雰囲気が出ています。とにかく、このクルマが入っていること自体がうれしいです!」。
マツダ RX-7 FD編
次は、過去に3台も乗り継いだということで、マツダの「RX-7 FD」にチェンジ。
「4型の途中でアンフィニマークからマツダマークに変わったんです。北米仕様だからスポイラーがないですね。外から見た遠近感もいい感じです」。
また、右ハンドル仕様で収録されていることにも着目する。「4型の頃は左ハンドルモデルがないんですよ」と、間髪入れずにマニアックなコメントを放り込んでくる。
早速プレイ。まず音の違いに気がついた。
「ロータリーエンジン特有の音が出ていますね。これは素晴らしい。ロータリーってこんな感じなんですよ。立体交差のところで反響した音も、ロータリー感が出ています」。
E36 M3と挙動が違うことにも注目。
「リアが流れるところもFDらしいですね。E36 M3とは違って(操作が)シビアで、このクルマは見た目もそうだけどスポーツカーそのものですね」。
ちなみに、3台乗り継いだうちの2台は所有していた時期が重なっていて、「1台は普通のクルマのブーストアップ仕様。もう1台はシングルターボにして馬力を上げました」。そのため、BMWよりも高くついたのだとか。
ロールスロイス Dawn編
収録車の中に2016年の「ロールスロイス Dawn」を発見。「乗ったことはないんですが『Wrace』の屋根なし版ですよね」。どんな挙動なのか面白そうなので、鈴鹿を走ってみることに。
「ロールスロイスでサーキットを全開で攻めるなんて現実では考えられない。4,000万円くらいしますから。でもゲームではぶつけ放題(笑)。ロングホイールベースらしく挙動が安定していてスピンしにくいし、いかにも車両重量が重そうなまったりした感じも出ています」。
車内のインテリアを見て「おしゃれで高そうなんですよね」。フロントガラスにインパネが映りこんでいる様子にもリアルさを感じているようだ。
「4,000万円を(ライバルマシンに)ぶつけまくるのって快感ですね(笑)。ちなみに専用の高級傘がドアに仕込んであるんですよ」。
フェラーリ 375編
今度は、クラシックカーの「フェラーリ 375」で走ってみる。スーツをオールドっぽいものに変えられることに「マニアの心をくすぐりますね」とニンマリ。
実際に走っている姿を滅多に見られないマシンだけに、「いかにも細いタイヤでグリップが低く、車幅の狭そうな、ちょっと危なっかしい動き方。ブレーキもなかなか利かないですね。昔のレーシングカーって、本当にこういう感じだったんだろうなぁ。でもこんな古い希少なクルマの走り方まで、どうやって確認したんですかね? いずれにしてもすごいですね」と、挙動の調整方法に興味津々だった。
また、「シフトチェンジのタイムラグもさっきとは違いますね。マニュアル操作を再現しているのかもしれないです」とし、シフトチェンジ時の細かい仕様も見逃さない。
傍目に見ても、ちょっとステアリングを切っただけで簡単にリアが滑り出すのがわかる。
「当時のドライバーはこんな感じで運転していたんだろうなあ。シミュレーターでは接地感が表現しづらいと思いますけど、スリリングな感じがよく出てますね。バイクのタイヤをはいているみたいです」。
ここから昔のF1の話題に。
「昔フェラーリは、フロントにエンジンを積んでいたんですね、F1でも。当時はマシンも壊れやすいし、シートベルトもありませんでした。ベルトをすると何かあったときに救出に手間取るという理由です」。
ドライバーの安全面も配慮する現代のF1とは、まったく異なる考え方のもとにマシンが作られていたとは……と、話しに気を取られている間にコースアウトし、マシンがキレイに1回転。
「わ、横転した。ここまで再現されてるんですね」。
その場にいた全員が、華麗に宙を舞うフェラーリ 375に釘付けだった。
KTM X-BOW編
最後はKTMの「X-BOW」で鈴鹿にチャレンジ。
「乗ったことあります。(一般的なクルマに比べて)見た目はかなり奇抜ですが、意外と普通に走れて、乗り心地も快適なんですよ。2人乗りで、バイクメーカーが作ったんです」。
また、サスペンションの動きまで再現されているという。鈴鹿を何周も走り込み、その動きを堪能する岡本さんは、実際にX-BOWを運転していた当時を思い出しているかのようだった。
乗りたいクルマで一通りドライビングを楽しんだ岡本さんに、鈴鹿サーキットで気になった箇所の所感を伺った。
「平面なのにアップダウンがうまく表現されていますね。道路って少し内側に傾いていないとクルマの四輪に荷重がかからないんですが、ここは実際には違うけど、外側に傾いていて外にはみ出してしまいそうに見える。だからコーナーの名前が『逆バンク』なんです」。
「1コーナーは進入スピードが速いのに先が見えないのでちょっと怖いのですが、できるだけ減速せずに通過しその次のコーナーで帳尻を合わせるんです。1コーナーへ進入後、前に進んでいくにつれて、次のコーナーのクリッピングポイントが見えてくる感じもうまく表現されていますね」。
カーシミュレーションゲームは、「グランツーリスモ」の攻略本に関わったことがあるので、プレイしたことがあるという。
「ひさびさにレースゲームをプレイしましたが、こんなに進化しているのかという印象です。クルマの描写、表現の緻密さ、巧みさに驚きました。機能も豊富に用意されてますね」と、「Forza Motorsport 7」のクオリティに感動していた。
「クルマの挙動をわかっている人が制作していることが伝わってきました。操作に慣れてくるとさらに奥が深くなるんでしょうね。いろいろとオドロキです」。
自分が乗ったことのあるクルマの試乗で、昔を振り返りながら走っている姿は、本当に楽しそうだった。
市販車から大統領専用車まで豊富な収録車種たちに満足気
残りの時間を使って、カーコレクションから収録車を眺めていると、大統領専用車「Caddy Limo」や、映画「ワイルド・スピード」に登場する「Ice Charger FF」などを発見。
「意外なマシンがいっぱい入ってますね。Cカーまで。ランボルギーニもひと通りありますね。5,000万くらいですか。デビュー前のコンセプトカーも! フェラーリも車種が多いなぁ。GT3マシンまでありますね。こういうゲームではフェラーリは必須ですよね。全メーカーの中で1番多いような気がします」。
「最近のクルマにはほとんど乗っているのですが、1990年代までは乗ったことのないクルマが結構あるんです。当時のフェラーリはどうだったんだろう、どれくらい再現されているのか気になります」。
「古いアメ車がいっぱい入っているのも面白いですね。クラシックカー好きが喜びそうな車種がたくさん入ってます。これもある、あれもあるみたいな。初代のレガシィも! わかる人同士でカーコレクションの画面を眺めながらお酒が飲みたいですね(笑)」。
クルマを眺めている最中、おもむろに「昔のクルマ(実車)は所有し続けるのが難しいですね。時間がたつと(メンテナンスがしにくくなり)乗れなくなる可能性もありますから。ゲームで対面できると、懐かしさを感じます。実際に所有していたクルマだったら、なおさらうれしいですね。FD31やGT-Rなど、日本車でも1970年代、1980年代のクルマがいっぱいありますね」。乗ったことのない(買えない)クルマが運転できるのもゲームのよさだ。
収録車種は700種以上! 思い入れのあるクルマがきっと見つかる
物心ついた頃からクルマが好きだったという。親がテレビに出演させようと思っていたくらいで、クルマの本を読みあさり、走っているクルマの車種をすべて覚えていたとか。
「幼稚園や⼩学校の時、スーパーカーブームが来る前からクルマが好きでした。どのオプションを付けたらいいのかも把握していたので、担任の先⽣がクルマを買い換えるときに相談に来ていたんですよ」。
という、クルママニアな岡本さん。現在は実装されていないものの、「Forza Motorsport 7」で思い⼊れのある「70スープラ(A70型)」、「セリカXX」、「NCロードスター」を⼿に⼊れて、ぜひ運転してみたいという。かつてのF1マシンから最新のクルマまで、収録⾞種も豊富な「Forza Motorsport 7」。⾳にもこだわって作られているこの1本で、⾛りを楽しんでみてはいかがだろうか。