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KAMIJOさんと「LET IT DIE」開発スタッフとのトークセッションを開催

KAMIJO「カストラート」発売インストアイベントを実施

5月20日 開催

会場:タワーレコード渋谷店

 2017年5月20日に東京・渋谷にあるタワーレコード渋谷店にて、KAMIJOさんのシングル「カストラート」が発売されるのを記念して、インストアイベントを開催。ここにはガンホー・オンライン・エンターテイメントから発売されているプレイステーション 4ソフト「LET IT DIE」ディレクターである新英幸氏、サウンドディレクターの山岡晃氏が登場してトークセッションを開催した。

 今回のトークセッションは、KAMIJOさんが「LET IT DIE」に「Battle of the Tower -16-」を提供していることから開催されたもの。この曲は「カストラート」にカップリングして収録されている。

 「カストラート」はKAMIJOさんのソロシングルとしては2年10か月ぶりとのこと。「EPIC ROCK ORCHESTRA」となっており、「EPIC」(叙情的な・壮大な)というところに力点が置かれている。「映画音楽やゲーム音楽のジャンルにぴったりな表現になっているので、ゲームとのコラボはぴったりのタイミング」(KAMIJOさん)。

 なお「Battle of the Tower -16-」はゲーム内に登場する強敵「JIN-DIE」とのバトルシーンで使用されている。「むちゃくちゃ強いボスの時に流れているので、この曲を聴くと『自分死ぬかも』と思うかもしれない。自分の感情を揺さぶるゲームプレイを、さらに後押ししてくれる感じで印象に残っている」(新氏)。

KAMIJOさん
「LET IT DIE」サウンドディレクターの山岡晃氏

 なお「LET IT DIE」にKAMIJOさんが参加した経緯について、山岡氏は「KAMIJOさんをVersaillesの時から知っていて、ゲームの中でKAMIJOさんの音楽が鳴ったらどのようになるのかとお願いをして実現した」という。最初はジュークボックスにバンドの『LET IT DIE』という曲を書いて欲しいというものだったそうだが、いろいろなバンドが参加することがわかり、「他の人と一緒なのはいやなので断った」(KAMIJOさん)。そこで別枠としてボス戦の曲を作ってもらうようにしたという。

 実際に楽曲を作成する時には、KAMIJOさんが以前映画音楽に携わった時の曲を聴きながらイメージを膨らませた。その中で山岡氏は、KAMIJOさんの技術力はすごいなと思ったという。「ソフトウェアやハードウェア、ものを作る時の技術力や知識がすごいという印象」(山岡氏)。これに対してKAMIJOさんは「話をしていて楽しいキーワードが通じる人はなかなかいない。しかし山岡さんや新さんとは楽屋で盛り上がりすぎてしまって……」と語る。KAMIJOさんは「RPGツクール」でゲームを作っていたことがあり、その点にも新さんは興味を持ったそうだ。しかもKAMIJOさんは小さい頃からノートに1行ずつ文章を書いて選択肢を作り、それによってゲームを進めるというゲームブックを作っていたのだという。

 ちなみに「LET IT DIE」に登場する瀬戸際子という、神田沙也加さんがボイスを担当したキャラクターがいるのだが、これはプレーヤーが死んだ時に現われる保険屋として登場する。“永遠の命を売る保険屋”という設定は、Versaillesの「ASCENDEAD MASTER」のショートフィルムの設定と同じだった。「お互い知らない状態でこの話をした時、これはいいお友達になれる」とKAMIJOさんは思ったのだそうだ。

 「Battle of the Tower -16-」については、「LET IT DIE」のために書き下ろされた曲とのこと。「塔の高さを考え、そこを吹き抜ける風をイメージして楽曲を作った」とKAMIJOさんは語る。

 ゲーム音楽を作曲していて1番楽しかったことは、という質問にKAMIJOさんは、「メインのメロディに入る前に少し落ち着くところがあるが、その空気の埋め方が楽しかった。静かにするだけじゃなくて、その瞬間はゲームの効果音だけが聞こえてくると思ったので、その時のスリル感を楽しみに作った」と語る。

 これを聞いた山岡氏は「いつものKAMIJOさんの音楽らしさもあるが、効果音とか、ゲームのことをすごく考えられて作られている」と舌を巻く。「ほんとにクリエイティブで、音楽というだけでなく、見せ方というか、音楽の価値をいろいろな側面で考えていると思う」(山岡氏)。そして「かっこいい音楽やいい曲が、ゲームの音楽として正解でない場合がある。プレイしているユーザーにどう思って欲しいかというのが大事だと思っている。KAMIJOさんが効果音のことまで考えていることを聞いて感動した」と新氏。

「LET IT DIE」ディレクターの新英幸氏

 KAMIJOさんは「よく理系と文系とか言うが、すべては計算だと思っている。ステージの上での僕の動きも初めは計算。その上でいかにその瞬間の自分の、みんなとの計算が狂うのかが楽しくて。みんなとのライブでのやりとりは、無難に終わってしまったら僕の計算通り。ある意味、ライブが何も盛り上がらなくても、僕の計算通りのショーができる。でも何かの駆け引きがあることによって、想像も付かない世界が待っている、というのが楽しい」とも。

 また「Battle of the Tower -16-」だが、バンド用に作る気がなかったので、生楽器が一切入っていないのだそう。「すべてコンピュータで作っているのでそれが新鮮」(KAMIJOさん)。生楽器を使わないオーケストレーションだが、KAMIJOさんが心を込めて弾いているそうだ。「さっきも言ったが、そのあたりのノウハウや技術がすごい」と山岡氏。「どのようなソフトを買えばいいですか」という質問に対しては「『Cubase Pro 9』ですね。オーディオインターフェイスはなんでもいいですが」と答える。

 「美しい音楽を作るコツはあるか」と聞かれて「譜面が美しければ、美しいと思う」とKAMIJOさん。山岡氏は「音楽は時間だと思う。イントロがあってメインがあって、ではないが。あえて美しくないものが並んで、そのあとに美しいものがあるという“差”があると、それが美しくなる」。これを受けて「人間の心理として、汚れたものをきれいにしていくという時間軸は、ある種の快感を覚えるので」とKAMIJOさん。

 ユーザーを楽しませるために意識していることを聞かれて、まず新氏は「僕のモットーではないが、隣にいる人を楽しませられないようだったら、ゲームを通して楽しませられないと思う。日頃から身近な人を楽しませようとは心がけている」と答える。そして「自分が面白いと思うもの、自分がいいと思うことも大事だが、いろいろな自分じゃない価値観、味方というのを意識してものを作るようにしている」と山岡氏。KAMIJOさんは「手段を問わないことですかね。僕のやりたいことは音楽だが、原作のメッセージに感動してもらいたい。どんな楽曲にもゲームにもメッセージがある」と語る。

 最後に山岡氏は「『LET IT DIE』を遊んでいない人も多かったみたいだが、300万人の人が世界中で遊んでいて、いろいろな国々からメッセージをもらっている。KAMIJOさんと一緒にゲームの世界を作れたのは、1つ新しいことがで来たなという楽しみを得られた。この後も一緒に何か、ゲームじゃないものもできればいいなと思っているので、機会があればこういう場にも呼んでほしい」。

 新氏は「KAMIJOさんはこれから『LET IT DIE』をプレイしていただけると思うが、今始めるとKAMIJOさんと一緒に始められるので……。長い塔を登っていくゲームだが、『ここまで登ったよ』ということを共有し合い、ちょっとした連帯感が作れるようになっている。またオンラインなのでどんどんアップデートされていく。ぜひKAMIJOさんと一緒に塔を登ってください」。

 KAMIJOさんは「僕の音楽を広めるためでもいいので、力を貸してください」と語った。