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視野角180度、解像度8KのモンスターVRHMDがGDC 2017に!
Idealensが開発中の「M8K」プロトタイプ
2017年2月28日 19:11
2月27日(現地時間)にGDC 2017が開幕し、初日から超絶スペックのVRHMDを試すことができたのでご報告しよう。
それは中国のVRハードウェアメーカーIdealensが開発中の「Idealens M8K」プロトタイプ。同社のサイト上では型番「M1000」として視野角180度、解像度8Kというにわかに信じられない数字が同社ページで紹介されている。現行のハイエンドVRHMDであるOculus RiftやHTC Viveを遥かに超えるスペックはさすがに眉唾モノだと思っていたのだが、予期せず実物に触れることができた。
「M8K」が展示されていたのは、VR関連のセッションを行なっていたセッションルームに面した通路上の小間ブースで、注意して見ていないとうっかり見落としそうな雰囲気だ。そこではIdealensによる現行モデルの「Idealens K2」に並んで、目下開発中という「M8K」プロトタイプバージョンがひっそりと展示されていた。現時点では価格、発売日等は全く未定である。現時点ではっきりしているのは、HMD内部にプロセッサを仕込んだオールインワン型の「Idealens K2」とは違い、「M8K」はRiftやViveと同様にPCに接続して使うPC用VRHMDであるということだ。
さて「M8K」の基本スペックは上述の通り、公称視野角180度、解像度は8K(つまり片目4K)。この解像度、RiftやViveのおよそ4倍という凄まじい数字である。水平視野角はVive(110度)の1.6倍程度なので、画素密度は単純計算でおよそ2.5倍ということになる。
デモ機では8Kパノラマ動画を使ってデモが行なわれていたが、実際にかぶってみても、視野角、画素密度ともにRift/Viveとはまったく別次元だ。構造的に視野角180度は言い過ぎな感じはしたが、すくなくとも160度以上はありそうで、周辺視野まですっぽりとVR映像に覆われる感覚が得られる。上下視野角も広く、120度はありそうである。それだけの視野角がありながらも、解像度の高さからドットの存在はほとんどわからないレベルで、映像は極めてクリアだ。具体的に言うと、「M8K」のピクセルは、Rift/ViveにおけるRGBサブピクセルよりも小さいくらいだ。どんなに目を凝らしてもドットの粒をはっきりと捉えることは不可能なほどの解像感である。
特に面白いのは、この広視野角と画素密度を両立させているレンズの構造だ。中央から90~100度の範囲はRiftやViveと同じような球面レンズになっているのだが、その外側の領域は弁当箱サイズの矩形レンズとなっており、全体でハウジングの中身が全部レンズ、という構造を実現している。領域毎に画素密度が異なり、中央の領域に多くの画素が集まり極めてクリアに映像が表示されている一方、周辺視野部分は敢えてフォーカスが甘くなっており、より少ない画素で広い領域をカバーするようになっているのも特徴的だ。
実際の見え方としては、近視の人が丸メガネをかけたときの印象に近い感じだ。中央の球面レンズ部と、周辺の矩形レンズ部の境界線は多少意識されるものの、無理に眼球を左右に動かさない限りは周辺部分のぼやけ感は全く気にならない。というのも人間の目そのものが、中央部分のみハッキリと見え、周辺視野はボンヤリとしか見えない仕様になっているためである。「M8K」はこのあたりの人間工学をうまく利用した光学設計になっているようで、期待以上にクオリティの高い見え方を体験することができた。特に視野中央部の緻密さは既存のVRHMDとは全く別次元であり、感動すら覚えるレベルだ。
しかも、見た目よりもずっと軽量である。本体重量が285gしかない「Idealens K2」と同様のシステムで頭部に装着する仕組みとなっているが、スポッとかぶるだけで苦もなく固定することが可能だ。バンドを締め付けるような必要もなく、きわめて負荷が少ない。
というわけで本機「M8K」は、スペック値から期待される以上のクオリティを持つVRHMDに仕上がりつつあり、VRファンにとって理想の未来が垣間見えるようだ。ただし現状では極めて大きな問題点を抱えている。フレームレートの低さだ。
パネルのリフレッシュレートは60Hzと謳われているものの、デモ映像として使用されていた8Kパノラマ動画の実フレームレートは30fpsにとどまっており、人物の動きやヘッドトラッキングに極めて不快なレベルの遅延が生じていた。いくら映像が鮮明も、これではとてもリアルタイムのVRコンテンツやVRゲームには使えない。
Idealensのスタッフに話を聞いたところ、「M8K」の開発における課題はまさにそこだという。8Kという高解像度では動画の再生でも極めて大きな負荷である上、フル解像度でゲームを動かそうとすれば現状のハイエンドGPUを複数持ってきても足りないほどだ。少なくとも何らかの方法で十分なフレームレートを確保しなければ、せっかくの秀逸な光学系も見掛け倒しに終わってしまう。
具体的にどのような方法でこれを解決するかは教えてもらえなかったものの、現実的な方策としては視野中央部のみ高解像度でレンダリングするFoveated Renderingテクニックの採用があり得るだろう。そのためには何らかのアイトラッキング技術をHMD内に埋め込む必要が出てくるが、このあたり、VRHMD用のアイトラッキング技術で先行している日本のFOVEあたりとのコラボレーションが実現すれば理想的なデバイスが誕生するかもしれない。
この「M8K」、理想は高く、技術的ハードルも高く、発売日も価格も当分未定のままになりそうではあるが、最先端のVRHMDとして今後も注目していきたいところである。































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