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序盤と、地域襲撃を体験。「マフィア III」ファーストインプレッション

裏切り、差別、人身売買……社会に蔓延する悪に、復讐の刃を突き立てろ!

体験会には複数のメディアが参加した

 2Kは東京ゲームショウに先がけ、「マフィア III」の体験会を開催した。試遊時間は数時間に及び、様々な要素を体験できた。本稿では体験バージョンの動画と共に、ゲーム要素を紹介していきたい。

 「マフィア III」は、主人公リンカーン・クレイの“復讐”が描かれる。彼は黒人とのハーフとして生まれ孤児として施設で育つ。彼は自分の居場所が得られなかった。そんな彼を受け入れてくれたのがニューボルドーの黒人組織だった。しかし、その“家族”は、卑劣な裏切りで奪われてしまう。彼の激しい怒りが、物語を大きく動かしていくのだ。

 今回は復讐が始まるまでの物語の序盤と、ゲーム中盤、自由にニューボルドーを動き、イタリアンマフィアの勢力を荒らしていくパートを体験できた。ストーリードリブン型でありながら、自由度の高いオープンワールドゲームとしての楽しさもきちんと体験できたので、その感触を語っていきたい。

【体験会会場】
会場にはキャラクターのイラストや、グッズの展示も

安寧の場所を奪われた怒り! イタリアンマフィアの裏切りが明らかに

 「マフィア III」の冒頭はCIAのジョン・ドノヴァンへの法廷での質問シーンから始まる。ドノヴァンはリンカーンの“復讐”に手を貸したのかを問いただされているのだ。プレーヤーにはこの時点でこの法廷シーンが“どの時間か”がわかりにくくなっている。それというのも、ここから複数の時間軸が提示されるのだ。

2Kで本作のエグゼクティブ・プロデューサーを務めるデンビー・グレイス氏
主人公リンカーン・クレイ。彼の怒りが本作のテーマとなる
今作はステルスによる攻撃が効果的だ。敵をいかに減らしていくか、試行錯誤も楽しい
ニューボルドーは時間で様々な表情を見せる。そしてどの時間帯、天候にも独特の美しさがある

 そしてその証言からシーンが切り替わり、リンカーンが警備員の制服に身を包み、連邦警察に向かうシーンに映る。リンカーンと仲間であるジョルジは連邦銀行へ向かうバンを奪っており、警備員に偽装してまんまと連邦銀行への潜入を果たすのだ。

 さらにシーンは“回想”へと繋がっていく。リンカーンがベトナム戦争から帰ってきたところから。彼は弟分の出迎えを受け、ピカピカの車に乗って“ファミリー”達の元へ帰還した。彼は4年従軍し、特殊部隊に所属したという。ファミリーのボスであるサミーを始め、神父のジェームズなどリンカーンは温かく迎えられる。

 しかしサミー達はトラブルを抱えていた。ハイチ人の組織とトラブルを起こしており、イタリアンマフィアに大きな借金をしていたのだ。リンカーンは武器を取りハイチ人達の拠点に乗り込んでいく。ここでリンカーンはベトナム仕込みのすさまじい戦闘力を見せつける。しかしイタリアンマフィアへの借金は残ったまま。その借金をチャラにするために、リンカーンはイタリアンマフィアが計画する連邦銀行への襲撃に協力することになるのである。

 ……このように、ゲームではプレーヤーに徐々にリンカーンの状況が分かるようにな展開になっている。基本的な操作を覚えるチュートリアルという形なのだが、いきなり銀行への潜入、侵入がばれたことでのド派手な銃撃戦そのど真ん中での回想シーン、そしてたった1人でのハイチ人組織への襲撃と、めまぐるしく場面が変わり、戦闘シーンも矢継ぎ早に盛り込まれる。特にハイチ人への襲撃は、敵も多く難易度が高い。

 「マフィア III」は、TPSのオープンワールドアクションだ。全体的に攻撃力が高めで、ちょっと油断すると倒されてしまう。難易度調整と、照準アシストも設定できるので、自分の腕に合わせるのが良いだろう。

 プレイしてみて実感したのだが、「マフィア III」の鍵は“ステルス”にある。闇に紛れ、敵の死角をつき、1人1人確実にしとめる戦い方が有効だ。銃撃戦では1発が大ダメージになる。危なくなったら距離を取って物陰に隠れていれば、体力の半分までは回復する。さらに、アイテムとして「アドレナリン注射」があり、使えば全快できる。ハンドガンやショットガン、さらにはLMGなど、短いスパンで様々な武器を使うことになる。

 「マフィア III」は接近戦が強い。通常の接近戦ボタンはPS4では○ボタンで、敵に近づいていれば〇を連打していれば何とかなる状況も多い。相手がこちらに気がついていなければ幅広いナイフで一撃で倒せるし、そうでなくても手持ちの武器で殴りつけられる。特殊攻撃ボタン(PS4では△)で「処刑アクション」も可能だ。攻撃されるとかなりの大ダメージを負ってしまうので、敵より早く倒すというのを心がけるのがいいだろう。

 演出や街の描写も見所だ。法廷シーンは1960年代のテレビ映像のようなノイズが入り、回想シーンはセピア風のフィルタがかかる。通常シーンでも独特の“空気感”がある。まるで映画を見ているようなこのグラフィックス表現は、「マフィア」シリーズが磨き上げてきたものだ。「マフィア III」では特に車に乗っているときの街の風景が美しく、本当にドライブしているだけで楽しい。また、車体が見える3人称視点でも、バックミラーが表示され後ろが見えているのもいい。ドライブゲームとしてもしっかりした進化を感じさせられる。

 そして所々に見える時代の描写も素晴らしい。風景や人々の風俗、街を歩いている人や車なども味わい深いのだが、かなりのエグ味を感じさせる“差別”表現も目を惹く。リンカーンはハーフではあるがその肌の黒さのため、様々なシーンで差別を受ける。警官達には“人種枠”だといわれ、ただ1人だけ重い荷物を持たされるし、白人達のいる高級ホテルに行けば露骨に顔をしかめられ、まるで泥棒かのように扱われる。

 1968年当時でも根強く残る人種差別をきちんと描く、こういった“社会派”のところも、「マフィア III」の大きな魅力だ。ゲームできちんと社会の暗部、“普通の感覚”の醜さを糾弾する姿勢は、筆者も大いに気に入っているところでもある。

 この序盤はさらに派手で印象的な展開、モデルとなったニューオリンズでおなじみのお祭り「ニューオーリンズ・マルディグラ」の真ん中を突っ切るシーンなども盛り込みながら、無事に連邦銀行の金を奪うことに成功する。しかし、それこそが悲劇の始まりだった。銀行襲撃の祝いの場でイタリアンマフィアが裏切るのだ。さっきまで兄弟のように親しげな顔を見せていたジョルジがリンカーンの顔面を撃ち、乱入してきたマフィアに仲間達が皆殺しにされ、火をつけられる。

 ……しかしリンカーンは生きていた。ジェームズ神父に助け出され、一命を取り留めた彼は、復讐をするために立ち上がるのである。彼は同じようにイタリアンマフィアを恨む連中を仲間に引きこみ、そして自らの手を血に染めて、復讐の闘いをしていくのだ。

【「マフィア III」 Gamescom 2016 公式トレーラー 「強奪」】
イタリアンマフィアの裏切りをテーマにしたムービー

【激しく、過激なアクション】
今作の大きな特徴がバイオレンスアクション。リンカーンの激しい怒りが感じられる。この復讐の果てに、リンカーンは何を見るのだろうか

「こいつら生かしちゃおけねえ!」、思わず感情移入してしまう“邪悪”の描写

 体験会では、ゲーム中盤も体験できた。「マフィア III」はオープンワールドゲームとして、高い自由度を持っている。ニューボルドーの多くの地域はイタリアンマフィアの支配地域であり、リンカーンはその拠点を襲撃し、たたきつぶして、マフィアの資金源を奪っていくのだ。

車で街を激走するのも楽しい
ニューボルドーは地域で様々な風景を見せてくれる。ミシシッピ川の湿地帯も
激しく、過激な闘い。リンカーンが強くなるにつれさらに派手に

 今回は「フランス街」と、「フリスコフィールズ」の2つの地域のミッションを見ることができた。これらの地域には“ルール”がある。リンカーンはその地域での“情報提供者”の協力を得て、マフィアの資金源に繋がるものを見つけ出す。用心棒の拠点や、裏商売が行なわれているところ、違法品の倉庫など、それらを襲撃し、マフィアの資金源を奪っていくことで、その地域のリーダーがあぶり出される。

 リーダーを倒すか、自分に従わせることでその地域を得ることができる。地域には2人のサブリーダーがいて、2種類の犯罪が行なわれている。その両方を潰すと、地域を支配している本当のリーダーが明らかになるのだ。奪った地域は2人の幹部に任せることができる。こうしてイタリアンマフィアの地域を、リンカーンの協力者達で染め上げていくのだ。

 プレイしていてはらわたが煮えくりかえったのが、フリスコフィールズのミッションだ。この地域は白人が多く住む治安の良い地域なのだが、裏では黒人を監禁し人身売買を行なうという身の毛もよだつ犯罪が行なわれている。プールがある豪邸の地下室に誘拐してきた黒人を監禁していたり、大きなスーパーマーケットの2階のホールで人身売買のオークションが行なわれていたりする。また路地裏や建物の影で、捕らえた黒人をこずきまわしたりしている。

 この差別主義者どもは顔を覆面で隠しサディスティックな喜びに酔いしれている。本当に恐ろしいのは、覆面をつけている彼らの服装は“普通の人”であるところだ。彼らは“一般市民”なのだ。黒人をなぶり者にして喜ぶクソ野郎は、いつもは普通の人間として何食わぬ顔で生活しているのだ。

 情報を元に現場に急行すると物陰に隠れて黒人をリンチしている犯罪者がいる。この嫌な風景は妙にリアリティがあり、義憤に駆られてAK-47で覆面集団をなぎ倒してしまった。ゲーム的には姿をさらすよりも物陰に隠れて1人ずつ撃ち倒すのが得策だが、「こいつらは生かしてはおけない」と瞬間的に思ってしまった。黒人のオークション会場ではゲームのルール的には必要がないのに観客席のど真ん中に手榴弾を投げ込み、皆殺しにしてしまった。

 一方のフランス街では、強引に娼婦にしてしまった女達を監禁していたり、エログロなムービーを撮影している場所を襲ったりする。いきすぎた行為により相手を殺してしまって焦った男がいたりとこちらもエグイ。社会の暗部、人間の悪をえぐり出す「マフィア」シリーズならではの語り口がスゴイ。こういった社会の暗部への描写はこれまで以上にパワーアップしていると感じた。そしてリンカーンであるプレーヤーは彼らを容赦なく倒していく。ナイフを突き立て、蜂の巣にし、燃やし、爆殺していく。目の前の犯罪行為を制裁している気になってドンドン過激に暴れていく感覚がすさまじい。

 ゲーム的には、かなりテンポ良く、スピーディに進められていると感じた。正面からアサルトライフルを構えて突っ込むのも良いが、裏口を探してこじ開け、1人1人倒していくのが有効だ。何人かが固まって雑談しているところに手榴弾を投げ込むと、敵はパニックを起こして右往左往する。

 ドンドン進み、目の前の敵を倒していくのが有効だ。逆に一カ所で隠れていると敵にかこまれてしまう状況が多い。「マフィア III」では、タッチパッドを押し込むことで、壁越しに敵の気配を検知できるので、有効に使っていきたい。

 襲撃時には仲間を呼ぶことも可能で、多くの敵が待ち構えているときなどには特にありがたい。呼びつけた仲間はショットガンを連射しながら奥へ奥へと進んでいく。彼らと共に進むのも良いが、襲撃者に気を取られた敵を側面から襲うことで戦闘はグッと楽になる。他にもバンを呼び出し弾薬の補給や、武器のアップグレードなどができる。呼びつけるとすぐに来るので、使い勝手が良い。

 そして敵のサブリーダーを倒し、地域を幹部に任せることでリンカーンはパワーアップする。幹部にはそれぞれパワーアップ項目が設定されており、任せる地域が増えると恩恵が増えるのだ。リンカーンの弾薬の所持数がアップ、体力の増加や、襲撃部隊の強化など要素は多彩だ。ロケットランチャーやLMGなども所持できるようになる。

 ただし幹部達の「バランス」にも注意しなくてはならない。1人の幹部に注力すると、他の幹部は面白くない。機嫌を損ねると仲間から離脱し、リンカーンが制裁を与えるという要素もすでに紹介されている。もちろんあえて幹部を減らして物語を進ませる、という方法もある。幹部達の行動でもストーリーは大きく変わってくるとのことで、1度クリアしてから、別のやり方を試すのもありかもしれない。

 今回の体験会では「マフィア III」の一部分を触ることができた。正直、もうひたすらこのゲームをプレイしたいし、リンカーンの復讐の果てを見てみたい。この殺伐とした物語の結末がどうなるのか、本当に楽しみだ。時代をえぐり出す「マフィア」ならではの要素も期待したいし、1960年代の名曲を聴きながらひたすらニューボルドーを爆走するのも良い。まだまだ体験できていない要素は多い。本作の発売日が待ち遠しい。

【「マフィア III」フリスコフィールズでの戦い】

【「マフィア III」フランス街で大暴れ】

【スクリーンショット】
時には隠れ、時には正面から、リンカーンは戦いを挑んでいく。カーアクションも注目