【特別企画】
ファミコン版「スパルタンX」が発売40周年。気分はカンフー映画の主人公! 華麗な技で敵をなぎ倒す、懐かしのアクションゲームを振り返る
2025年6月21日 00:00
- 【スパルタンX】
- 1985年6月21日 発売
1985年6月21日に任天堂が発売したファミリーコンピュータ用ソフト「スパルタンX」が、本日2025年6月21日で40周年を迎えた。
本作は、ジャッキー・チェン主演のカンフー映画をモチーフとし、1984年にアイレムが発売した同名のアーケードゲームを移植したもの。主人公のトーマスを十字ボタンとパンチ、キックボタンで操作して敵を倒し、制限時間内にボスを倒してゴール地点まで到達すればクリアとなるアクションゲームだ。敵に体をつかまれたり、攻撃されたりするとトーマスのライフが減り、ライフがゼロになるか、または時間切れになるとミスになり、トーマスのストックがゼロになるとゲームオーバーとなる。
以下、もう随分昔のことなので記憶があいまいになっているが、筆者の当時の体験を元に、本作の魅力を改めて振り返ってみた。
迫力のカンフーアクションとボイスで本作の虜に
筆者が本作の存在を最初に知り、大いに興味を持ったきっかけは、どちらが先だったのか覚えていないが、マンガ雑誌「コミックボンボン」の紹介記事とテレビCMであった。
主人公のトーマスがパンチやキック、あるいはジャンプ攻撃を繰り出し、迫り来る敵を次々となぎ倒す、そのビジュアルがとにかくカッコいい。すでにアーケード版が登場して久しい時期ではあったが、筆者が当時通っていた駄菓子屋やゲームコーナーには置いていなかったこともあり、本作はすごく面白そうに思えた。
しかし、筆者は当時ファミコン本体と別のソフトを買ったばかりのタイミングだったので、本作を買えるだけのお小遣いはまったく残っていなかった。ほかのゲーム仲間も、本作を発売のタイミングで誰ひとりして買っていなかったこともあり、同年の夏休みの7月末頃、たまたま出掛けたデパートのおもちゃ売り場にあったファミコンの試遊台が、筆者の「『スパルタンX』デビュー」となった。
事前に得た情報どおり、トーマスがキックを放つたびに「アチョー!」、パンチを繰り出せば「ハッ!」と叫ぶボイスはすごい迫力で、敵が接近するとついついボタンを連打してしまう。「トーッ!」と叫びつつ放つジャンプキックのカッコよさも秀逸で、一発の攻撃で複数の敵を倒すと高得点が入るのも実に快感だった。当時はアーケードゲームも含め、ボイスを導入したタイトルはまだ少なかった時代であり、トーマスがしゃべる演出だけでも凄まじいインパクトがあった。
後に友人のひとりが本作を購入すると、早速みんなで友人宅に押し掛けて夢中になって遊んだ。みんなキック攻撃をメインに使用するなか、筆者だけはパンチを好んで使っていた。その理由は、道中に出現する敵の「つかみ男」「トムトム」「ナイフ投げ」は、パンチで倒したほうが得点が高いからだ。
ほかの友人たちは、キックのほうがリーチが長い(ように見える)、あるいはボイスがカッコイイからキックを選択したと思われるが、筆者はハイスコアでみんなに負けたくなったことと、5万点でエクステンド(※トーマスのストックが増える)という実利も重視し、頑なにパンチ戦法を押し通した思い出も残っている。
ここで、演出面での余談をひとつ。テレビCMのプレイ映像では、最後のカットでトーマスがジャンプキックと同時に「ソイヤー!」と実に力強い叫び声を出していた。だが、いざ自分で遊んでみたら、何回ジャンプキックを出しても「ソイヤー!」とは叫ばなかった。なので「オイオイ、CMのセリフと違うじゃないかと!」と画面に向かってツッコミを入れた思い出も、今なお忘れることができない。
偶数ステージの序盤~中盤には、さまざまな仕掛けが用意されている。
ステージ2では、天井から壺や玉が次々と落下し、地面に落ちると中から蛇や竜が現われて、トーマスにどんどん攻撃を仕掛けてくる。ステージ4の壁には数か所穴が空いており、穴から出現した毒蛾が、トーマスをしつこく追い掛けてくる。
軽快なBGMと、いかにも中国風の建物を模したビジュアルとも相まって、まるで自身がカンフー映画に登場する敵のアジトに侵入したかのような気分になり、ますます本作に夢中になった。壺や毒蛾のサイズは非常に小さく、破壊または倒すにはピンポイントで攻撃をヒットさせる必要があるため、人間の敵と戦う場合とはまた違った面白さがあった。
ボスキャラクターとの戦いも白熱。「妖術使い」の技に翻弄され続けた思い出
各ステージの最後には、手強いボスキャラクターが待ち受けている。
どの敵も一撃では倒せず、逆にトーマスが攻撃を受けると大きなダメージを負ってしまう。ステージ1の「棒術使い」は、棒を使ったリーチの長い攻撃を繰り出し、ステージ2の「ブーメラン使い」は、その名のとおり飛び道具のブーメランを次々と放つ。ステージ3の「怪力男」は、巨体から繰り出す攻撃を2回食っただけで、ほぼ確実に死が待っている。
筆者もゲーム仲間も、最初に苦戦を強いられたのがステージ4のボス「妖術使い」だった。接近して攻撃を仕掛けようとするや否や、火の玉や蛇、竜を次々と出現させて行く手をことごとく阻んでしまう。極めつけは、攻撃を顔面にヒットさせたかと思いきや、何と「妖術使い」のクビがポロリと外れてから姿を消し、再び現れたときには首が元に戻る不気味な術も使うこと。しかも「妖術使い」は、首を落としてもダメージは一切受けないので、いったいどうやって倒せばいいのか、なかなか攻略の糸口が見出せなかった。
ステージ3までのボスは、トーマスの体力をある程度残しておけば力ずくで倒すことができたが、「妖術使い」だけは何度も何度も負かされた。トーマスが死ぬたびに鳴る「ボヨーン!」という効果音と、直後に流れる「妖術使い」の笑い声と思しき「ワッハッハッハ……」という甲高いボイスを、いったい何回聞かされたことか……(※ちなみに、ほかのボスキャラにやられた場合も同様に笑い声が流れ、相手によって声の高さが若干変わる)。
先述したデパートで、筆者はたまたま居合わせた見知らぬ子が「妖術使い」だけでなく、ステージ5のラスボス「Mr.X」をも軽々と倒し、エンディングに到達するところを目撃していた。偶然だったとはいえ「クソッ、あのヤローに負けたくない!」と、「妖術使い」に翻弄されるたびに悔しさがますます募った。
試行錯誤を続けた結果、筆者も友人たちも瀕死のダメージを受けるのを覚悟で接近し、唯一の弱点であるボディに下段パンチを叩き込むことが、唯一の「妖術使い」攻略法になったと記憶している。
「Mr.X」はパンチ、キック、下段キックに加え、時折トーマスと同様に豪快なジャンプキックも放つ、まさにカンフーの達人。最初に対戦したときは、こちらの技がなかなかヒットせず、軽くあしらわれたと記憶している。
その後も何度か繰り返しチャレンジした結果、ローキックをひたすら出し続け、相手が勝手に引っ掛かって死ぬのを待ち続ける戦法(?)に行き着き、初めてMr.Xに勝つことができた。難敵を画面外へと叩き落し、1万点の高得点ボーナスが加算され、そしてトーマスが捕らわれていた恋人のシルビアと再会し、祝福の曲が流れるエンディングに自力で到達したときは、デパートで見掛けた子のおかげでネタバレしていたとはいえ本当に嬉しかった。
本作は、続編にあたる「スパルタンX2」が1991年に、ゲームボーイ用ソフト「スパルタンX」が1990年に、ともにアイレムから発売されたことはあるが、現在に至るまで移植版が一切発売されていない。今の目で見れば極めてシンプルなアクションゲームだが、トーマスが威勢のいいボイスと華麗な技を繰り出し、敵を倒す快感は昔も今も変わらないなと、本稿の執筆のため数十年ぶりにプレイして改めて実感した。
いつの日か、本作が再び脚光を浴びる機会があることを願ってやまない。
(C)IREM CORP. 1984
(C)1985 Nintendo