【特別企画】

「ゼノブレイド」発売15周年! 広大なフィールドとシームレスな戦闘、機械と人との戦いをテーマにしたWiiを代表するRPG

【ゼノブレイド】
2010年6月10日 発売
【ゼノブレイド ディフィニティブ・エディション】
2020年5月29日 発売
価格:6,578円

 任天堂より2010年6月10日に発売されたWii用ゲームソフト「ゼノブレイド」が、本日発売15周年を迎えた。

 本作はスクウェア・エニックスより発売された「ゼノギアス」、ナムコ(現バンダイナムコゲームス)より発売された「ゼノサーガ」シリーズに続く、新たな「ゼノ」シリーズの原点。モノリスソフトによる開発で、総監督・原案を高橋哲哉氏が担当した。高橋氏が手掛けた作品の多くは「ゼノ」の名を冠し、以前の「ゼノ」シリーズに関わってきたスタッフも多く参加している。

 過去の「ゼノ」シリーズと直接的な関連性はなく、「ゼノブレイド」も用語や一部デザインなどで似たような用語こそ使われているものの、世界観は全く異なる新作だ。

 珍しいのは、本作は3DCGデザイナーがモデルを作って、そこからキャラクターアートを作るという、通常のゲームとは異なる作り方がされている点。「キャラクターデザイナー」がいないのだ。そのおかげもあってか、キャラクターデザイン先行型の従来のJRPGよりも、海外製RPGのような雰囲気を出すことに成功しているように感じられた。

 音楽は、「キングダムハーツ」などで有名な下村陽子氏、「ゼノ」シリーズや「クロノ」シリーズで有名な光田康典氏、「ファイナルファンタジー ソングブック まほろば」で知られる清田愛未氏、「エミル・クロニクル・オンライン」で知られるACE+など、豪華メンバーがそろっている。本作は”統一感のある音楽”にこだわって作られており、サウンドがいかにRPGにとって重要なのかを改めて考えさせられる仕上がりとなっている。

 本稿では、「ゼノブレイド」の美しい世界ややりこみ甲斐のあるバトル、評価が高いBGMなどについて、10周年を迎えた今、改めて触れていく。

【ゼノブレイド ディフィニティブ・エディション 紹介映像】

完成度の高いシナリオにプレーヤーも引き込まれる

 「ゼノブレイド」は、巨神と機神の巨大なむくろの上で人々が暮らしているという設定で、主人公たちはさまざまな種族と力を合わせながら、故郷を襲撃した機神兵と戦っていくこととなる。

【【ゼノブレイド ディフィニティブ・エディション】巨神と機神】
【あらすじ】

 遥か昔、この世界がまだ果てない海と空だけだった頃、巨神と機神の二柱の神は、互いのすべてをかけて戦い、骸となった。それから幾千の月日が流れ、巨神界に暮らすホムス族は、機神の骸から生まれたとされる機械生命体、機神兵の侵攻によって存亡の危機に瀕していた。

 機神兵たちは、ホムスへの殺戮を続けていたが、かつて機神を討ち果たしたといわれる神剣モナドを手にした英雄ダンバンによって、退けられる。しかし、モナドの強大な力はダンバンの身体を蝕んでおり、心身を消耗したダンバンは療養の道へと入った。

 それから一年後。神剣モナドは研究施設に保管されていた。主人公シュルクはそこでモナドの力の秘密を解き明かそうと、研究を重ねていたのだった。

 シナリオは、前述の高橋哲哉氏のほか、竹田裕一郎氏、服部由里絵氏も参加しており、非常にクオリティの高い内容となっている。

 というのも、高橋氏のシナリオは少々哲学的でわかりにくいところもあるのだが、本作は他のメンバーの参加によって「王道でわかりやすい」シナリオとなっているだけでなく、同氏の描く残酷さや意外性に富んだ内容も踏襲されている。

 そのため、「王道」と言いつつも非常にプレーヤーの気持ちを引っ張っていくストーリーが魅力的だ。さらに、謎や伏線のちりばめ方も素晴らしい。

 シュルクの物語は、英雄ダンバンによって平和がもたらされた「コロニー9」に、機神兵が突如として攻め込んで来るところから始まる。そこからシュルクは、親友のライン、幼馴染でダンバンの妹のフィルオンなどを始めとする仲間たちと力を合わせ、機神兵と戦うこととなるのだ。

 物語の後半では、機神と巨神の壮絶な過去を知っていくことになるのだが、非常にわかりやすい内容となっており、「ゼノ」シリーズ初心者でも気軽に入りやすい内容に仕上がっている。

 「わかりやすい」ということは良いことなのだが、高橋氏らしさは若干薄まったため、そこは少々残念に思う部分もある。

 しかし、全体的に「新生ゼノシリーズ」としては非常に万人に勧めやすい作品へと仕上がっているのも事実であり、考察好きな筆者としても「もうちょっと複雑でよかったかも」という気持ちと、「2周してようやくわかるようなシナリオじゃなくて遊びやすかった!」という相反する感想を抱いた。

 「ゼノ」シリーズ古参としては複雑なシナリオも歓迎したところだが、同じ路線で続いている「ゼノブレイド2」、「ゼノブレイド3」のヒットから鑑みるに、「新生ゼノシリーズ」としての新たな路線のシナリオも大きな魅力と言える。

リニアでありながらオープンワールドのような広大な世界

 本作は、正確にはオープンワールドではないのだが、街からフィールド、戦闘までがシームレスに繋がったオープンワールド”風”な世界を楽しむことができる。

 とんでもなく広い世界が舞台となっていて、いわゆる普通のリニア式なゲームを想像していた筆者は、実際にプレイしてみて、思っていたのと全く違う世界に素直に驚いた。

 まず巨神のふくらはぎに存在する最初の街となる「コロニー9」とその周辺だけでもかなり広大なのだが、その先に続いていく巨神脚エリアはさらに広い。もちろん、その先も、またその先も、ずっと広大な世界は続いていく。

 広い分、解放した転送先(ランドマーク)へのファストトラベルも使えるようになっており、基本的にイベント中以外いつでもファストトラベルが可能で、そこもオープンワールド風な作りになっている。

 フィールドは景色も様々で旅をしていて飽きないのが魅力的だ。美しい樹林や、湖、洞窟、川、滝……挙げていけばキリがない。道行くプレイヤーの気持ちを高めていくのは景色だけではなく、高低差のあるマップデザインも素晴らしかった。というのも、高所から地面に降りると即死してしまうが、水場に飛び降りればダメージを受けずに済むので、ジャンプなどを駆使してどんどん様々な場所へと行くことができるのだ。

 オープンワールド風な世界は、物語を進めずとも、探索しているだけで楽しくなり、高レベルな敵がいる場所へもどんどんと突き進んでいっては、攻撃を受けてサクっと即死したりした。だが、本作はその「やっちまった」感すら楽しめるようにできていて、決して敵の強さや配置も無秩序なわけではなく、レベルデザインも秀逸だった。

 これだけ広大な世界となるとロードが気になるところだが、恐ろしいほどにロードが短く、とても快適に遊べる作品となっていたのもうれしいポイントだ。

リアルタイムな戦闘システムが楽しい!

 本作のパーティは3人編成だが、操作するのは1人のみ、残りの2人はAIでバトルを行なう。

 フィールド上にいる敵シンボルに近づくとそのままシームレスにバトルに突入。コマンドバトルでありつつ、そこにリアルタイム性をもたせたものとなっており、各キャラクターが持つアーツをバトルパレットに自由に組み込み、アーツのリキャストなどに応じて様々な組み合わせで戦闘を進めることができる。

 アーツとは、いわゆる魔法や技のようなもので、「敵の側面から攻撃すると効果がアップ」、「自分へ敵のターゲットを集中させる」、「敵を崩し状態にする」、「崩し状態の敵を転倒させる」といったようなものがある。「ファイナルファンタジーXIV」などをプレイしていると、よりわかりやすいだろう。本作が発売されたころにはまだ「ファイナルファンタジーXIV」はサービスを開始していなかったので、筆者は戦闘に慣れるまでは少々右往左往していた。

【【ゼノブレイド ディフィニティブ・エディション】堅固な守りを打ち崩す】

 また本作のバトルで特徴的だったのが、「未来視(ビジョン)」だ。これは戦闘中に突如味方が死ぬ映像が現れるというもので、神剣モナドの力によるものとなっている。

 「未来視(ビジョン)」では、攻撃範囲や攻撃対象、ダメージ量、その攻撃が来るまでの残り時間が表示され、例えば防御力を上げるアーツを使ったり、敵の攻撃を妨害したりなど、上手く対処できれば未来視を「ブレイク」することで、戦闘を有利に進められる。

【【ゼノブレイド ディフィニティブ・エディション】絶望の未来を変える】

 戦略性の高いバトルは、慣れさえすればどんどんと楽しさが増すので癖になる。個人的には全体的なバトルの難易度としては、RPGとしては高めなほうだと感じた。

豊富なBGMが素晴らしい

 前述の通り、本作の音楽は下村陽子氏、清田愛未氏、ACE+、光田康典氏(エンディングテーマのみ)によって作られているのだが、非常に耳なじみの良い曲が多い。

 特に、バトルがシームレスなため音楽もフィールド曲から戦闘曲へとシームレスに代わっていく際の変化も滑らかで、さらに場面変化によって曲も様々と変化していくという点にこだわりを感じた。常に違う曲を聴いているような感覚に陥ったものだ。

 フィールドは昼夜で音楽が切り替わるし、バトルも通常時のものだけで先制時、敵から先制されてしまった時、ユニークモンスターとのバトル、ボス戦、未来視のブレイク時と、次々と曲が変わる。

 ユニークモンスター戦で流れる戦闘曲の「名を冠する者たち」は本作の楽曲たちの中でも特に人気の高い一曲で、プレイヤーの戦意をおおいに掻き立ててくれる。

 他にも、タイトル画面で流れる「メインテーマ」、通常ボス戦の「行く手を阻む者」、機神界での通常戦闘曲「機の律動」や、フィールド曲の「ガウル平原」、「マクナ原生林」など名曲が多数ある。

 世界観は作曲者全員で共有されているため、ゲーム全体のサウンドとして統一感が強く、最初から最後まで本作のイメージを崩すことない楽曲が連なっているのも特徴的だ。オリジナルサウンドトラックもいまだに非常に人気が高く、アルバムを聞き続けているプレイヤーも多くいる。

今でもswitchで遊べる名作! ぜひ遊んでほしい

 本作は、「ゼノブレイド ディフィニティブ・エディション」の名前で2020年5月にNintendo Switch版が発売されている。

 「ディフィニティブ・エディション」はゲーム内容は基本的そのままに、主にグラフィックやBGMなどの表現をアップグレードしたリUIの見直しをした、リマスター版。

 Wii版の発売当時もグラフィックの美しさで話題になった本作だったが、「ゼノブレイド ディフィニティブ・エディション」になって、表現が一層向上し、美しさがさらに増したので、今からプレイを考えている人は、ぜひこちらの購入を検討してほしい。

 特に「ディフィニティブ・エディション」で追加された「つながる未来」という、本編の最終決戦から1年後を描いた追加シナリオも大きな魅力だ。「つながる未来」は本編未クリアでも遊べるので、Wii版ですでに遊んでいる人でも簡単に遊べるようになっているのがうれしい。

 また、楽曲についてはフィールド曲、バトル曲の一部が生録音になっているだけでなく、生録音ができなかった曲にはアレンジが加えられたり、デジタル音源を新しい物に変更されたりもしている。

 さらに、カジュアルモードなど、初心者にも優しいモードの追加から、任意でレベルダウンする上級者用モードも追加されている。まさに「完全無欠」な「ゼノブレイド」を遊べる。

追加シナリオ「つながる未来」

 「ゼノブレイド」シリーズは、いずれも壮大で緻密な世界観を楽しめるようになっており、現在は外伝的な「ゼノブレイドクロス」を含めて、すべての「ゼノブレイド」シリーズがNintendo Switchで遊べるようになっているので、既にWii版などで過去作をプレイした方にも、新しくプレイするゲームを探している人にも、ぜひおすすめしたい。