【特別企画】

「鉄拳8」緊急アプデで理不尽行動を改善。仕様変更されたポールの鉞打ち、ジャック8のメイクサムノイズも動画で解説!

壁攻めのフレーム改善、体力増加によるシステム変化で攻守共に気の抜けないスリリングなゲームへ!

【「鉄拳8」:v2.00.02】
4月17日 配信開始

 4月1日から「鉄拳8」の2年目、シーズン2がスタートし、DLCキャラクター「アンナ・ウィリアムズ」の参戦やランクマッチの仕様変更、新技の追加などに伴うキャラクターバランスの調整など「鉄拳」ユーザー待望の大型アップデートが実施された。しかし、対戦においてあまりにも強力すぎる技が存在し、競技性を損なうようなゲームバランスへと変貌したことが主な原因となり、ユーザー間で不満が噴出。Steamでのレビューも4月1日を皮切りに圧倒的に不評とする評価が占めるようになり、SNS上でもその様な不満を挙げる声が数多く聞かれた。

 この様な自体に対し、4月3日にX(旧Twitter)にて開発側は早期の修正をアナウンス。4月中~下旬頃を目処に緊急の修正アップデートを行なうことが告知され、そして4月17日に……

・「OPTIONS」の設定不具合修正
・緊急度の高いキャラ挙動不具合修正
・方針に基づくバランス調整の見直し

の3点を修正する緊急のアップデートが行なわれた。

 本稿では、特に「緊急度の高いキャラ挙動不具合修正」と「方針に基づくバランス調整の見直し」に関連する技の挙動変更に関して調査を行なってみた。

□「鉄拳8」ver.2.00.02のパッチノート

明らかにバランスを損ねていた技の調整が実施! 理不尽なガード不能現象や一方的に同じ技を繰り出される展開は解消へ

 前バージョンで問題となっていたとして特に修正すべき内容として掲載されていた技が2つある、1つめはポールの鉞打ち(6WP)である。シーズン2からの追加要素として、特殊ステップである二重潜りへと派生ができ、二重潜りからの中、下段の攻撃で揺さぶりをかけるのが開発側の意図だったように思える。しかし、二重潜りから方向キーを4に倒して二重潜りのモーションをキャンセルしてから一部の攻撃を放つとガード不能となり、鉞打ちをガードした相手に確実にヒットしてしまうといった不具合があった。

 こちらを今回のバージョンで再現しようと試みたのが以下の動画である。

【鉞打ちからのキャンセルガード不能操作はそもそも技が出ないように調整された模様】

 このように、二重潜りが4入力でもキャンセルがかからないように修正されたようだ。また、キャンセルを行なわない二重潜りからはトゥースマッシュ(立ち途中にRK)や獅鷹(立ち途中にLKRP)を放ってもガードが間に合っていた。では、本来開発が意図していた鉞打ちからの二重潜りの使い方はどうだろうか? 下記の動画はCPUには鉞打ち>二重潜りまではレコーディングで共通して行動させ、そこから……

・トゥースマッシュ
・獅鷹
・盈月

の3つの技をランダムに再生し、それらに筆者が対応を試みた動画である。

【修正パッチ適応後鉞打ちガードからの対策行動】

 この3つの選択肢のうち唯一の下段攻撃である盈月は、攻撃発生フレームも速いため視認してからの対応は難しいが、麗奈が下段攻撃に対して一方的に打ち勝てるジャンプステータス技の9RKを放った際はポールに手痛い反撃をしている。また、中段攻撃でリターンがある獅鷹は2発目は上段攻撃なのでその部分だけしゃがみで空振りさせ、そこからコンボ始動技で反撃する、といった対策を行なっている。これらが合わさることで次のような駆け引きもできる。視認できない速度の下段攻撃自体は「鉄拳」のお約束のようなものなので過去作から存在する。

 当然高速での下段攻撃は対処は難しいがジャンプステータス技暴れを用いて一方的に潰す、下段捌きを仕込んで空中コンボで反撃、対となる中段攻撃とどちらが被害が大きいかを調べておいて片方にヤマを張るなどガード不能に比べれば理不尽な攻めではない。

【鉞打ち対策をしてきた相手と裏の裏を読む駆け引きが可能に】

 これは鉞打ちガード後、最速でしゃがみLPを打てば二重潜り自体を潰せるのでは? と気付いた筆者が想定したポールと麗奈の駆け引きの予想例である。

 麗奈側がしゃがみLPで二重潜りを迎撃してくることを見越して、ポールは二重潜りをしないで横移動でしゃがみLPをかわし、そこに反撃を加えている。それを読んだ麗奈側はしゃがみLPをやめ、高速で下がるテクニック「山ステ」を用いてポールが横移動から手を出すところを回避して反撃……と本来の「鉄拳」らしい画面の奥行きを使った攻防、巧みな間合い調整で相手の攻撃の空振りを誘い、反撃を叩き込む「スカ確」の動きが楽しめるようになったと思われる。ここからさらにポール側が裏をかくことも可能であり、その逆も然りである。3D格闘ゲームらしい独創性が求められるゲームに戻ったと言えるだろう。

 では、もう1つの対策が難しいとされていたジャック8の技、ストレート~エルボー~メイクサムノイズについて調べていこう。こちらはジャック8の主力技、ストレート~エルボーに追加された新連携である。

前バージョンでの問題点は……

・メイクサムノイズが横移動や暴れによる対処が不可能で、防御側が取れる行動がほぼパワークラッシュ技暴れのみ。しかし、パワークラッシュ技は攻撃を受け止めた際にダメージを受ける。また、パワークラッシュ技で与えるダメージと、メイクサムノイズを受け止めたことで生じるダメージがほぼ同一

・メイクサムノイズの裏の選択肢としてフライングフォートレスというフェイントのような技があり、こちらにパワークラッシュ技を合わせるとジャック8側はガードが間に合い、そこから手痛い反撃を受ける

の2点であったと思われる。

 では、今回のバージョンでどうなったか検証を行なった。トレーニングモードでジャック8にストレート~エルボー~メイクサムノイズとストレート~エルボー~フライングフォートレスの2つの連携をランダムで再生した、それに対して前バージョンではできなかった行動を行うとどうなるかを検証した。

【メイクサムノイズ及びフライングフォートレスへの対策】

 調べてみた結果だが、まずストレート~エルボーからメイクサムノイズ、フライングフォートレスのどちらを選んでも最速で打ち返された立ちLPには対空となり、そこから空中コンボで追撃される。また、横移動での回避も可能となり、手前移動、奥移動どちらを選択しても回避できるようだ。若干ジャック8の左手側へ横移動したほうが回避がしやすいと思われる。

 また、これらを横移動で回避した際、フライングフォートレスには確定反撃が発生しない(画面左上のPUNISH表記が出なかったので確定反撃ではなかったと思われる)が、メイクサムノイズにはPUNISH表記がでていた。1,2分ほど練習してみて気づいたが、横移動中にしっかりジャック8を注視すれば、フライングフォートレスの時は攻撃せず、メイクサムノイズが空振ったときだけ反撃を入れる、といったことも十分可能だと思われる。

 そして、こちらもジャック8側には対策行動があるように思われるので検証してみた。

【メイクサムノイズなどを対策してくる相手へのジャック8側の行動例】

 これは最速でLP暴れを行なってくる相手への対策で、毎回ストレート~エルボーからメイクサムノイズなどの派生を行なわず、ストレート~エルボーで攻撃を一度止めて一瞬しゃがみや横移動>素早くガードなどで立ちLPで対空されることを防ぐ動きだ。立ちLPがしゃがみで回避できたならば即座に立ち途中RKで反撃できるので、お互いにメイクサムノイズやフライングフォートレスまで入れ込むのか? という読み合いができるようになったと言える。

 その他、様々なキャラクターに存在したバグなども修正されている。アンナが特定の動作をすることで対戦相手の技を使用するようになってしまうものや、全体的なものとして、壁際で大幅な有利が取れる行動に制限が加えられている。大ダメージを奪える場である壁際に相手を追いやり、圧倒的に強力な技、行動を一方的に押し付けるのは「鉄拳」の楽しい部分でもあるのだが、防御側にも抗える余地が用意されるようになったようだ。

緊急修正であるため、修正される技は僅かと思っていたのだが、思いの外多くの技、キャラクターへの調整が行なわれていたため、全てを調査するにはかなりの時間が掛かりそうだ。その反面、これは強いのでは? と思った技が修正されていないものもある。画像のクライヴのガルーダエンブレイズはその一例だ。また、ゲームがプレイヤーの研究により熟成されていく中で新たな脅威となる技、戦術が見つかる可能性もあるので、まだまだ予断を許さない状態ともいえる

体力増加により試合時間が長くなり、最後まで気の抜けないゲームへ!

 また、今回のアップデートで全キャラクターの体力が180>200へと増加した。

 体力という面では立ちLP2発程度と僅かな調整に思えるが、「鉄拳」特有のレイジシステムもこの影響を受ける。昨今の「鉄拳」シリーズでは、体力が残り少なくなったキャラクターの体力ゲージが減少した際、体力ゲージの枠が赤く点滅し、キャラクターからもオーラのようなものが発生する。この状態になると攻撃力が上昇する他、レイジ状態中1度のみ「レイジアーツ」という超必殺技のようなものが発動できる。「鉄拳」の豪快な大逆転劇、最後まで気を抜けないスリリングな攻防を盛り上げるシステムだ。

 発動条件が総体力の23.5%を下回ると発動するレイジシステムもこの総体力の変化を受け、発動タイミングが体力が残り43>47になった状態からと変化したようだ。

残り体力が少なくなってレイジ状態となると体力ゲージの外枠が赤く光り、キャラクターもオーラをまとう。レイジ状態の攻撃力UPの効果は凄まじく、「鉄拳」においては大ダメージを与えられる空中コンボのチャンスでも、あえてレイジ突入手前のダメージで体力を調整し、レイジ状態が発動していない相手を攻め込んで倒し切るという戦術も過去には存在していた。今回の調整でレイジ状態に突入しやすく、維持しやすくなったため、この戦術を取り入れるプレイヤーが現われるのかも興味が尽きない

 また、前述のレイジアーツは「残り体力に比例してダメージが増加する」という仕様があるため、レイジ状態を維持できる体力が4多くなったことで、さらなる大逆転劇を発生させるという一発逆転要素の強化になっているのではないか? と考えられる。

レイジアーツは他のゲームで例えれば超必殺技にあたるが、昨今の2D格闘ゲームでよくある「コンボ補正値を無視して固定ダメージを与える」という使い方ではまず用いられない。レイジアーツを用いたコンボとそうでないものでそこまでダメージ差はないためだ。よく狙うならば発動時のアーマー状態を利用しての所謂「ぶっぱなし」でのハイリスク・ハイリターンな使用方法だ、決まれば大逆転、読まれれば反撃を受け敗北というのは「鉄拳」の豪快さを体現している使い方だ

シーズン1でも行なわれた段階的な調整は不安も招くので早期解決を望みたい!

 緊急的な措置から徐々に調整を行なっていく、というシーズン2の今後の展望が公式HPのパッチノートからも伺えるが、これはシーズン1でも存在していた現象である。シーズン1ではリリース当初からデビル仁、ドラグノフ、新キャラクターのヴィクターやアズセナの性能調整に苦心していたように思える。

 特にデビル仁以外は数回のバランス調整を必要にしたことや、アズセナとヴィクターに関しては一部の技だけを繰り返すだけで猛威を振るう性能であり、キャラクターのコンセプトを崩壊させていた事態が発生していた。同じ技を繰り返すも、その打破が難しく、ゲームの単調さにプレイヤーからは批判の声が相次いだ。これはシーズン2の開始時と同じ状態ではないだろうか?

シーズン1初期に猛威を振るっていた新キャラクター・アズセナの666LKRPことエスプレッソアグレシオン。奇襲として優秀、ガードしても体力を削られる上にアズセナ側の攻めが継続するほど有利。横移動での回避が推奨されるが、あまりにも突進力が凄まじく、回避しても反撃が不可能なほど間合いが離れるという欠点らしい欠点がなく、UMAファイターで特殊な構えを用いて撹乱するという本来のコンセプトから大きく逸脱していた。同様にヴィクターも特定の技だけを繰り返す戦術が猛威を振るっていた

 そして、何度も調整のやり玉に挙げられるキャラクターを使用し続けるというのはプレイヤーにとっても心労になるのではないだろうか? どこまでがこのキャラクターの楽しめる要素で、どこまでが本来は想定されていないものなのか、という疑心暗鬼の状態でゲームをプレイするというのはあまり精神的に健全な遊び方とは思えない。

 実際、シーズン1で猛威を奮ったドラグノフは昨年夏頃には筆者の中では納得できる性能に落とし込まれたのだが、繰り返される調整に嫌気がさしてプレイ自体を辞めてしまったドラグノフ使いも身近に存在したので、今回もデジャブが起こることはあってほしくないのが筆者の本心だ。

 同じ轍を踏むことはユーザーへの信頼関係の崩壊にも繋がる。早期に問題を解決し、3D格闘ゲームの最前線を走り続けた王者として業界を牽引する存在に返り咲いてもらいたいものだ。