【特別企画】

「ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣」35周年! ユニットが死んだら即リセット! SRPGの草分けとなった「FE」シリーズの第1作目

【ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣】
1990年4月20日 発売

 任天堂より1990年4月20日に発売されたファミリーコンピュータ用シミュレーションRPG「ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣」が、本日2025年4月20日で発売35周年を迎えた。

 本作は、現在でもシリーズ作品が発売され続けている人気SRPG「ファイアーエムブレム」(以下、「FE」)の第一作。

 直感的な操作性と先読み要素、歴史シミュレーションゲームやロールプレイングゲームのように作品中に登場する人物を物語と密接に絡ませることで、複雑な相関図とを組み合わせ、臨場感や悲壮感を演出し、作品の世界観を盛り上げている。

 その上で「死亡すると二度と生き返らない」という、命の重さを感じさせる作品性となっているのが大きな特徴だ。

 本作は、限られた戦力をどのように育成、運用し、ひとりも死亡させないようにしながら攻略を進めていくかという戦略性で緊張感を保ちつつ、ロールプレイングゲームのような感情移入がしやすい作品へと仕上がっている。

 これにより、本作は「シミュレーションロールプレイングゲーム」(SRPG)という新しいゲームジャンルを切り拓いた、画期的な作品なのである。

 本稿では、その思い出について触れていきたい。

【『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』(ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online)】

数十名にものぼる仲間キャラクター

 本作を語る上でまず欠かせないのは、豊富なキャラクターユニットたちだろう。

 仲間になるキャラクターは、村の中にいることもあれば、敵キャラとして登場し、特定のユニットを隣接させて話しかけることによって仲間に加わる場合もある。

 もちろん、仲間キャラクターによってステータスが伸びやすいキャラクター、伸びにくいキャラクター、使い勝手のいい強キャラクター、といったものはあるのだが、どのような組み合わせでどのように育成していくかは、あくまでプレーヤー次第だ。

※画像は任天堂の公式サイトより

 ちなみに筆者は、成長率が悪いということで比較的軽視されがちなドーガが大好き。巨体の持ち主であり、その屈強な体躯と力で、文字通り仲間の壁となって戦うアーマーナイト。かっこいい。

 アーマーナイトは防御が非情に優秀ながら機動力が劣るのだが、筆者はドーガに「使用者の移動力+4させる」というアイテムのブーツを使って、動く守備要塞を作っていたりしたものだ。

 なお、ドーガはカインやアベルらと共にアリティア王国から旅立ったマルスの護衛の初期メンバーのひとりなので、彼にそこまで個人的な物語はないのだが、長く使っている分愛着が湧き、外見的な好みもあれど、外すに外しにくいキャラクターのひとりなのである。

 ドーガと共に旅だったカインとアベルは、それぞれ「FE」シリーズでお馴染みの赤い騎士の元祖と、緑の騎士の元祖。このふたりは成長率も非常に優秀で、そこにさらにドーピングアイテムを使用してやれば、バッタバッタと敵をなぎ倒す、立派なパラディンに成長してくれる。

 初期マップから最後の最後までカインとアベルを外さずにクリアした、というプレーヤーも多いだろう。

 そしてエース級のユニットといえば、傭兵のオグマと、ナバール。実はふたりとも成長率がそこまで高いわけではないのだが、素のステータスが強く、なんだかんだとふたりともそこそこ早い段階でほぼ全ステータスがカンストするはずだ。必殺が出る確率も高く、敵ユニットの足止めをしておいてほしいだけだったのに必殺で敵を倒してしまい、どんどん後からくる敵ユニットの攻撃を食らって逆に死んでしまう、なんてことも……。

 ちなみにSFC版では大分顔のグラフィックが変わったナバール。個人的にはFC版のナバールも好きでした。

「ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣」でのナパール
こちらがSFC版「ファイアーエムブレム 紋章の謎」でのナパール

 あと忘れてはならないのが、マルスの幼馴染で親友の、魔道士マリク。成長率が高いのはもちろんのこと、専用魔法のエクスカリバーが、飛行系特効と必殺率+20%までついていて、とても強力。多くの魔法タイプが上がりにくいHPと守備のステータスが、そこらへんの物理ユニットよりも成長してしまうのだ。

 ……とはいえ、ラスボスは直接攻撃以外無効だったため、ガクーンとうなだれる結果にはなってしまうのだった……。

マルスの亡命先であるタリスの王女・シータも可愛かった。転職してドラゴンナイトになると少し儚さが失われた感はあるが

 ミネルバと、その部下のペガサス三姉妹・パオラ、カチュア、エストなども思い出深いキャラクターなプレーヤーが多いのではないだろうか。

 ミネルバは、マケド二ア軍屈指の指揮官で、「赤い竜騎士」と恐れられてきた将軍。数多くの戦功を挙げてきたが、実はそれらの戦いは幽閉されている妹のマリアのためだった。

 後にマリアがマルスに救出されると、ドルーア帝国に反旗を翻す。祖国マケドニアでの戦いでは兄ミシェイルとも戦い、自らの手で兄を討ったというミネルバを取り巻くドラマも素晴らしかった。

 そして元祖ペガサス三姉妹は、3人そろうことでトライアングルアタックが可能になり、必ず必殺の一撃が発動するという強力な攻撃を繰り出すことができるようになる。この頃、まだペガサス三姉妹にそこまで深堀りされた設定がなかったので、もっぱらトライアングルアタックの印象ばかりが強かった。

 ちなみに間接攻撃も可能な武器はトライアングルアタックの対象外という仕様があり、最強の武器であるグラディウスは間接攻撃可能だったため、グラディウスを持たせてのトライアングルアタックは発動しなかったのだけが残念だった。

死んだら即リセットォ!!! 特に忘れられない、カミュ戦

 本作は、前述の通り、「死亡すると二度と生き返らない」というコンセプトで作られている作品である(後発作品では、難易度を下げることで、死んでも仲間がロストしないモードなどを採用しているものもある)。

 そのため、バトルは毎回毎回緊張感が漂うものとなっており、まさに神に祈るような気持ちで見つめていたものだ。

 また、当時は章の途中でセーブなんていう機能がなかったので(中断セーブはあるが、失敗時のやり直しには使えない)、リセットとはつまり章の最初から全部をやり直すということになる。

 「FE」の経験者ならわかるとおもうが、本作は1章の戦闘が基本的に長い。しかも、じっくりと敵が来る位置を考えて、何体ものユニットを動かして、一体ずつ撃破していって……と、かなり地道な内容のため(シミュレーションとはそういうものだが)、ひとりのロストで全てが無に帰す、あのリセットボタンを押す瞬間の切なさといえば、胸が張り裂けんばかりなのである。

 なお、もちろんロストしたまま進めることも可能ではあるのだが……実際にはロストしたまま進めたプレーヤーはあまりいないのではないだろうか。

 特に本作は、ユニットがロストしたからといって新たなユニットが補充されるわけでもなく、仲間になるユニットは限られている。

 しかも「え? この敵を仲間に説得するために、あのキャラが必要なの?」なんてことも後になってわかったりするので、ユニットは常に万全の状態で揃えて進めたい。だからロストしたらリセットする……、という風になっていたように思う。

 さて、そんなユニットのロストに怯える本作なのだが……筆者が今でも忘れられないのは、「20章 ブラックナイト・カミュ」である。

 その名の通り、アカネイア大陸随一の名将であり、グルニア王国の黒騎士団を率いているブラックナイトのカミュが立ちはだかるマップなのだが、このマップの難しいこと、難しいこと。

 ボスのカミュは威力20、重さ4、命中100という、悪夢のような本作最強の槍のグラディウスを持ち、しかもグラディウスは直接、間接攻撃共に可能とあって、弓で一方的に攻撃をするような攻撃手段も使えず、その上クラスがパラディンなので移動距離が広いため、こちらのパラディンで一気に近づいて攻撃をすることも難しい。むしろ下手なユニットで近づけば、2回攻撃を食らって即死である。カミュこそが、本作最強、もとい最凶のボスなのである。

 しかもこのカミュ、ゲーム中の流れで、「もしかしたら仲間になる?」なんていう雰囲気を醸し出すのだ。そのため、攻略なんてない当時、マルスを筆頭にとにかく片っ端からユニットを隣接させて説得を試みる、なんてことも試し、その度に説得もできずユニットをロストしてリセットを繰り返す、嗚呼無情。

 そもそもカミュに近づくまでの周囲の敵たちもかなり強いため、この20章だけで当時何十時間レベルでリセットを繰り返した人も多いのではないだろうか。

 仲間にならないかと模索するだけで、何時間も何時間もかかる。いざ仲間にならないとわかっても、グラディウスであっさり殺される。またここで、何時間も、何時間もかかる。

 この攻撃に耐えられるのは、恐らくこの時点できちんと育成されたオグマとマルスくらいではないだろうか。それでも必殺発動のリスクがあるので、必ずしも勝てるわけではない。

 そしてこちらも必殺発動頼みでキルソードやメリクルを持たせた上で、さらに光のオーブを持たせ、城の防御効果を無効化して確実に攻撃を当てるくらいしか、勝てる道筋がないという、なんともギャンブルなボス戦となっていた。

いやもう……カミュに勝てた時は、心の底から叫んだものです

 なお、敵将として本当に心底しんどかったカミュだが、物語上は、アカネイア王国の制圧を命じられつつ、王家唯一の生き残りとなったニーナ王女を処刑することができず、2年間も匿い続け、そのうち互いに惹かれ合っていったのだった。

 しかし、ニーナを処刑するためにドルーア王メディウスが直接出てきたため、カミュはニーナを部下に託してオレルアンに亡命させた。

 その後カミュは、ドルーアへの反抗を企てるマケドニアのミシェイルから共闘を持ちかけられるが、どうしても祖国を裏切ることができず、ニーナが身を寄せたマルス王子率いるアリティア軍と敵対することになる、というドラマがあった。

 こういう悲劇も、戦争を舞台にした「FE」ならでは、というところだ。

第一作目だからこその粗さもあれど、今プレイしても素晴らしい良作

 このあと、SFCで出る「FE 紋章の謎」(「暗黒竜と光の剣」のリメイクを「第1部:暗黒戦争編~暗黒竜と光の剣」、後日談の「第2部:英雄戦争編~紋章の謎」を収録した2部構成のソフト)ではアーマーナイトがジェネラルに転職できるようになったりと、より高性能に、遊びやすくなっているのと、2008年にはDSにて「ファイアーエムブレム 新・暗黒竜と光の剣」となってリメイクされ、さらには「紋章の謎」が「スーパーファミコン Nintendo Switch Online」でも配信されているため、いまさらファミコン版の「暗黒竜と光の剣」をプレイしようとする人もなかなかいないのではないかと思うが、今プレイしても傑作と言える一本である。

 35年という長きにわたる「FE」シリーズの原点で、その端々には現在のビジュアルとは違っているキャラクターがいたりと、今の「FE」を知っているからこそ楽しめる部分がある。

 ぜひこれを機にあえてFC版の「暗黒竜と光の剣」を遊んでみるのも良いのではないだろうか。

 そして章の途中でのセーブ機能がないが故のカミュとのひりつく戦いを、ぜひとも楽しんでほしい。