【特別企画】

【VALORANT部門】2連覇達成。連携力の高さで梅田eスポーツキャンパスの「Haven Liberty」が優勝! 「第2回 NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権」レポート

【第2回 NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権 決勝 VALORANT部門】

12月29日 開催

 北米教育eスポーツ連盟 日本本部(NASEF JAPAN)は12月29日、「第2回 NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権」、「VALORANT」部門の決勝大会を品川プリンスホテルのClub eXにて開催した。

 「NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権」は、日本国内に在住する高校生・定時制高校生・高等専門学校生(3年生まで)・通信制高等学校生が参加できる全国規模のeスポーツ大会。第2回となる今回は、全部門で全国573校、976チームが参加した。

 「VALORANT」部門の決勝大会では、第一薬科大学付属高等学校 福岡キャンパスのチーム「POG」、ルネサンス大阪高等学校 梅田eスポーツキャンパスの「Haven Liberty」、自由ヶ丘学園高等学校の「No Info」、ルネサンス高等学校 池袋キャンパスの「Queimar」の4チームがそれぞれ優勝を争った。

【【VALORANT部門】第2回 NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権 全国決勝】
MCを務めるOooDa氏
実況・解説の岸大河さん(左)、yueさん(右)
アナリストのRetloffさん

 高校生「VALORANT」シーンは年々進化しており、これまではエイムなどのフィジカルが強いエースプレーヤーの活躍で勝負が決まることが多かったが、現在は高いフィジカルに加えチーム間での高度な連携も見られるようになってきた。本大会でも、チーム間でのコミュニケーションや作戦面で高いレベルの試合を見ることができた。

 また、本大会はオフライン大会ということもあり、チームでのやり取りがプレス席にまで聞こえてくることもあった他、家族や友人の応援も見受けられ、会場が熱気に包まれていた。

大会トーナメント表
会場ではプレイする選手たちを間近にスクリーンで試合を観戦でき、選手たちがキルを獲得した時などは喜びの声が直に聞こえてきた。また、応援に駆け付けた家族や友人の姿も見られた

準決勝は強豪チームが制す

 準決勝はBO1(1試合先取)。第一試合は、第一薬科大学付属高等学校 福岡キャンパス「POG」とルネサンス大阪高等学校 梅田eスポーツキャンパスの「Haven Liberty」が、第二試合では自由ヶ丘学園高等学校の「No Info」とルネサンス高等学校 池袋キャンパスの「Queimar」がそれぞれ対戦した。

選手宣誓をする各チームのリーダー

 第一試合は、アビリティを駆使した連携で確実にラウンドを取っていくのが得意な第一薬科大学付属高等学校 福岡キャンパス「POG」と、数々のコミュニティ大会や学生大会に出場しており、多くの実績を残しているルネサンス大阪高等学校 梅田eスポーツキャンパス「Haven Liberty」の対決。「Haven Liberty」は本大会に優勝すれば2連覇となっており、強豪相手に「POG」が下剋上を果たせるかが注目された。

第一薬科大学付属高等学校 福岡キャンパス「POG」の選手。左からLucky3選手、ねむいちゃん選手、sanshi選手、mwtalkid選手、Tonelco7選手
ルネサンス大阪高等学校 梅田eスポーツキャンパス「Haven Liberty」の選手。左から、one選手、nokiss選手、ibu選手、misiranu選手、kawanzin選手

 試合に使用されたマップは「バインド」。瞬時にマップを大きく移動できるワープエリアが2つ存在するマップで、連携力が試される難しい地形となっている。

両チームとも最も新しいエージェント(キャラクター)の「ヴァイス」が登場。相手を分断できるアビリティをどう活かせるかが注目された

 試合は序盤から「Haven Liberty」が連取し、3ラウンド目にはnokiss選手が1人で敵全員を倒しエースを獲得。しかし、その後の4ラウンド目には「POG」が、資金を節約して弱い武器で戦うことになるエコラウンドにも関わらず、相手を分断する動きで取り返すことに成功。続く5ラウンドでは「POG」がエースを取り返すなど一進一退の展開になった。しかし、その後は「Haven Liberty」が連取し、リードを広げていく。途中、「POG」がタイムアウトを取り、「フィジカル相手のほうが上だから、チームでやれることをやろう」と話し、チーム全体で諦めない姿勢を見せてくれたのが印象的だった。

 攻守が交代してからも「Haven Liberty」は確実な連携を見せラウンドを連取。特にスパイク(爆弾)設置後のダブルセンチネル(相手の行動を抑制することに長けたキャラクター)を活かした手堅い動きは素晴らしく、相手を封殺しきっていた。それでも「POG」はチームで固まって動くことでフィジカルの差をカバーしようと動き、人数有利を活かす動きでエースを獲得するなど粘りを見せたものの、最終的には「Haven Liberty」がリードに慢心しない動きで確実にラウンドを取得し、13-5で勝利した。

ダブルセンチネル構成は防御が優秀だが、攻撃側でもスパイク設置までいければ強力。「Haven Liberty」はこの強みを生かし、常に優位を築いていた

 第二試合目を戦った自由ヶ丘学園高等学校「No Info」はエースであるLycoris選手を中心とし、高い連携力で勝ち上がってきた。チームの雰囲気が非常によく、試合内外関わらず賑やかなチームだ。一方のルネサンス高等学校 池袋キャンパス「Queimar」は、最高ランクであるレディアントのCru775選手と、デュエリスト(チームの先陣を切る攻撃的なキャラクター)を使用して敵を突破するのを得意とするFlorence選手が所属する強豪チーム。

ルネサンス高等学校 池袋キャンパス「Queimar」の選手。左からピック合わせAkiko許して選手、Cru775選手、、Florence選手、yurimu選手、usagi選手
自由ヶ丘学園高等学校の「No Info」選手。左からLycoris選手、ZEFA選手、SyrexSleepy選手、snowyday選手、Qu1ncey賀喜選手、

 試合に使用されたマップは再び「バインド」。「No Info」は試合前に「13ラウンド初見殺し(対策方法を知らないと対処しづらい作戦の通称)で行きます」と意気込みを話し、その戦術に期待がかかった。

「No Info」が選択したイニシエーター(索敵能力や交戦をサポートする能力に長けたキャラクター)が「ブリーチ」のみのリスキーな構成。初見殺しになるかが注目だった

 試合は2ラウンド目にLycoris選手の見事なエイムが光りエースを獲得するなど、「No Info」が優勢な立ち上がり4ラウンド差のリードを築くも、「Queimar」は固い守りとCru775選手を中心とした撃ち合いの強さを活かして徐々に立て直していき、ラウンドを取っていく。

 前半こそ「No Info」のリードで終えたものの、15ラウンド目には「Queimar」が逆転に成功。ここから悪い流れを完全に断ち切り勢いに乗った「Queimar」が持ち味を活かした動きで圧倒し、1ラウンドも落とさずに勝利。決勝へとコマを進めた。

試合は「Queimar」が制したものの、常に声を出し続ける「No Info」の選手たちも印象的だった

両チーム譲らない決勝戦

 決勝戦はBO3(2本先取)で行なわれ、ルネサンス大阪高等学校 梅田eスポーツキャンパス「Haven Liberty」とルネサンス高等学校 池袋キャンパス「Queimar」のルネサンス高等学校の対決となった。

決勝を前に握手を交わす両チームのキャプテン

 決勝1試合目のマップは「スプリット」。サイドのエリアをどうコントロールするかが明暗を分けるマップで、様々な戦略を取ることができるためチームのカラーが出るマップだ。

スプリットでは珍しいデッドロックのミラー対決となった

 試合は「Haven Liberty」が常に複数のエリアにポジショニングを取ることに成功し、5連取。クレジットの差をどんどんと広げていく。「Queimar」も途中でタイムアウトを取り、チームの連携を確認し、不利を覆そうとするものの前半は9対3と「Haven Liberty」リードで折り返した。後半も依然として「Haven Liberty」がポジショニング、撃ち合い共に制し10体3とリードを広げるも、「Queimar」がそこから4ラウンドを連続で取得する粘りを見せた。しかし、最後にはnokiss選手が人数差を逆転する動きを通し「Haven Liberty」が勝利。優勝に王手をかけた。

決勝1戦目はラウンド差はあったものの、ハイレベルな試合が展開された。特に「Haven Liberty」のエリアコントロールは素晴らしかった

 続く2マップ目のアビスは、中央のラインの主導権をとったチームが優位に展開できるため、その取り合いが重要となるマップ。後のない「Queimar」がどう巻き返すかが注目された。

 試合は序盤こそ「Haven Liberty」が連取するも、「Queimar」はタイムアウトを挟み作戦を確認し直す。このタイムアウトが功を奏したのか、「Queimar」もラウンドを取り返していき、一進一退の激しい戦いとなった。

 後半になると攻撃側になった「Queimar」がどちらを攻めるか相手に悟らせず、揺さぶりをかけるような展開を作り出すことに立て続けに成功。結果、8-13という僅差でこの試合を制し、試合は最終戦までもつれ込んだ。

「Haven Liberty」はここでも「ヴァイス」を選択。対する「Queimar」は「ブリーチ」入りの構成で挑んだ
タイムアウトを有効に使い「Queimar」が接戦を制した。特に後半からのAメインのコントロールを取る動きが勝利に繋がった

最終戦、高度な連携を魅せた「Haven Liberty」が優勝!

 最終戦のマップは「ヘイヴン」。3つの攻める地点にどう攻めるかで、攻撃側の揺さぶりが重要になるマップとなる。2試合目と同様に「Queimar」の揺さぶりが機能するのか、「Haven Liberty」が対応するのかが注目された。また、インゲーム前には両チームとも「いくぞ」と声を出し、それぞれが一丸となっていたのが印象的だった。

両者ともにほとんど同じエージェントを選択したが、デュエリストで差異がでた。味方のサポートが必要になることの多いネオンと、シンプルなエントリーが可能なジェットで、お互いのデュエリストがどう活躍するかも注目された

 試合は1ラウンド目から激しい撃ち合いとなったが、これをone選手が制して「Haven Liberty」が先取。これで勢いに乗ったのか一気に5ラウンドを「Haven Liberty」が獲得した。対する「Queimar」もFlorence選手の使うジェットが相手に切り込むダッシュから撃ち合いを制し6ラウンド目を獲得し、逆転を目指した。

 しかし、「Haven Liberty」は崩れることなくその後のラウンドも立て続けに勝利。8ラウンド目にはアビリティを用いた素晴らしい連携からリテイクを決めると、続く9ラウンドでも勝利。前半を10-2という大差で折り返した。

Florence選手の強気なプレイ

 後半1ラウンド目には「Haven Liberty」オーメン同士の撃ち合いをmisiramu選手が制し、資金差が生まれたことで優勝に向けて一気に有利な状況となった。しかし、「Queimar」も諦めておらず、続くラウンドをフローレンス選手のキルを取る動きから勝利。ここからの大逆転を狙う。

 続くラウンドを「Haven Liberty」が勝利しマッチポイントとなるが、「Queimar」はusagi選手の動きから撃ち合いを制しラウンドを獲得。続くラウンドも相手のエコラウンドをしっかりと取りきった。最後は18ラウンド目。「Haven Liberty」の選手たちはラッシュの動きを通し、スパイクを設置すると、そこから固い連携で相手を封殺。このラウンドを獲得し、見事優勝を果たした。

アビリティの使い方での連携と、戦略の手札の多さを兼ね備えた「Haven Liberty」が2連覇を達成した
見事優勝を果たしトロフィーを掲げる「Haven Liberty」の選手
ベストフェアプレー賞を獲得した「Queimar」Florence選手

 試合後の優勝チームインタビューでは、ibu選手が「2試合目で負けてヒヤヒヤしましたが、今までの練習の成果を出せて2連覇、3年生最後の大会で勝ててよかったです」とコメント。3試合目に行く前にどうメンタルをどう立て直したかについては「声を出してメンタルリセットをしました」と語った。声出しはibu選手が中心となって行なったとのことだ。最後に応援してくれた人たちへのメッセージとして「このメンバーで出るのは今回が最後ですが、2連覇を勝ちとることができました。応援してくれた皆様、ありがとうございました」と締めた。

 また、大会後の会見では、2連覇の喜びをそれぞれの選手が話してくれたほか、また、本大会ではコーチが来れなかったことを明かし、「結果勝てたので良かったです」と話した。また、日々の練習については、「練習中に1つでもいいからチャレンジをした」と取り組みについて語った。最後に、コーチ不在でのマップの選択についてibu選手は「相手のチームはコーチがいるので、こちらの弱点を見出してきていると思い、マップ『』バインドを選択不可にしてイーブンな状態で挑みました」「最後のヘイブンでは、僕たちのチームはリテイクが得意で、前の試合負けていてメンタルにきていたので(じゃんけんで勝って)防御側を先に選択できてよかったです」と語った。

優勝したルネサンス大阪高等学校 梅田eスポーツキャンパス「Haven Liberty」の選手達
準優勝のルネサンス高等学校 池袋キャンパス「Queimar」の選手達

 NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権は来年の開催も決定しており、「VALORANT」も引き続き種目となっている。年々レベルの上がる「VALORANT」高校生シーンだけに、今後もプロ顔負けのプレイを見ることができそうだ。また、今回出場した選手達の多くが、プロを目指しているとのことなので、卒業生の今後の活躍にも期待したい。