【特別企画】

なんなんだ「勇気爆発バーンブレイバーン」! 監督・大張正己氏と、声優・鈴村健一さんが奏でる、リアルロボットとヒーローロボットの不協和音の面白さ

【勇気爆発バーンブレイバーン】

毎週木曜23:56からTBS系で放映

 1月11日より毎週木曜23:56からTBS系で放映されている「勇気爆発バーンブレイバーン(以下、バーンブレイバーン)」が話題を集めている。

 「バーンブレイバーン」は注目するところが多いアニメではあるが、話題を集めているのは本作が「ちょっと変」だからである。王道のロボットアニメのように見せかけ、大張氏と、主役ロボ・ブレイバーンを演じる鈴村健一さんによって「王道を突き進むからこそ生まれる違和感」がとてもおかしいアニメとなっているのである。

 そこで本稿ではあえて1話のネタバレをしつつ、この作品の面白さを紹介していきたい。「前知識なしで見たい」という方は、まず作品を視聴してから本文を読んで欲しい。

1話放映後に公開されたキービジュアル、このノリは放映前はあえて隠されていたのだ

人の話を聞かず突っ走るロボが生む、王道とリアルロボット路線が奏でる不協和音

 まず放映前に配信された第1弾PVを見て欲しい。このPVでは主役ロボ・ブレイバーンの姿は全く隠され、現用兵器の延長にある"リアルロボ"が活躍する世界のように描かれている。

【オリジナルTVアニメ「勇気爆発バーンブレイバーン」第1弾PV】

 実際、アニメの前半はこのイメージで進む。しかし中盤から突如宇宙から謎の存在が飛来、人類に対して攻撃を加えてくる。訓練のためハワイ オアフ島に集結していた各国軍もまたその襲撃目標に選ばれていた。突然の敵にパニックを起こしながらも迎撃していく軍。その中に主人公である陸上自衛隊所属 イサミ・アオとアメリカ海兵隊所属 ルイス・スミスのふたりの姿もあった。

放映前のキービジュアル。放映後のキービジュアルと比較して欲しい

 各国の最新武器は謎の敵に全くダメージを与えられなかった。円盤のような敵の機体は不可解なシールドでこちらの攻撃をすべて無効化、そして強大なレーザーを放つ支柱のような巨大な攻撃兵器が軍隊に絶望を与える。そしてすべてが終わったと思った瞬間、空から現れた存在がイサミの命を救うのだ。その存在はイサミに手を差し伸べて、言う。「待たせたな、イサミ」。

【オリジナルTVアニメ「勇気爆発バーンブレイバーン」第2弾PV】

 そしてイサミが"彼"、ブレイバーンに乗り込むことでこの作品の本当の姿が明らかになる。第2弾PVはこの作風が一変した本作の本来の姿を表現している。イサミが乗り込むことでブレイバーンの体色がド派手な白と赤に変わり、顔のカバーが消失し唇のある端正なマスクが現れる。「とうっ!」という叫びと共に空を飛び、拳一発で敵兵器を破壊するのだ。

 大音響で響き渡る主題歌「ババーンと推参!バーンブレイバーン」。剣を構え「ズバババーン!」という叫び声の勢いのまま敵を一気に殲滅していくブレイバーン。そのコクピットの中でイサミは叫ぶ。「さっきからなんなんだ、この歌はーっ!?」。……そう、このノリこそが「バーンブレイバーン」なのだ。

リアルロボットアニメの世界に突然飛来しすべてをぶち壊すヒーローロボ・ブレイバーン。しかも彼がとてもかっこよく強いのが面白い
2人の主人公の1人イサミ・アオ。運命は彼に過酷な試練を与えるが仲間のために、世界のために戦う。やるときはやる男だ

 イサミは陸上自衛隊の最新兵器のパイロット、コテコテの軍人であり、生真面目な性格、「リアルロボットアニメの主人公」タイプのキャラクターだ。その彼がなぜか乗り込まなくてはいけなくなってしまったブレイバーンの言動はスーパーロボットそのまま。見得を切るポーズの時に背中に浮かび上がるエンブレムは実際に空間に投射しているし、「迎撃兵器はないのか?」というイサミの声に応えて出したのは「バーンブレイド」である。

 そして主題歌は朗々とコクピットに響き渡っているのだ。「勇者ロボ」をはじめとしたスーパーロボットアニメの演出がすべて現実で起きている世界、それこそが「バーンブレイバーン」の世界である。宇宙人に侵略され始まる戦争はリアルそのままなのだが、その戦いの鍵を握るのは、全くノリが異なるヒーローロボなのである。

 このノリを大きく加速させるのが監督の大張氏とブレイバーンを演じる鈴村氏だ。大張氏は「バリってる」ネットミームで知られる絵と演出に特徴のあるアニメーターで、シャープでケレン味の強い画風でロボを演出したり、「勇者パース」と呼ばれる剣を大きく強調した極端なパースで見得を切らせるのが得意だ。

大張氏を象徴する「勇者パース」。極端すぎる剣の描写、なぜか月面、これこそが大張氏の世界なのだ

 昨今ではその作風をギャグ方面でも活用し、アニメ「ポプテピピック」では、女子高生であるピピ美がロボになって戦う世界を描いた。またアニメ「ガンダムビルドファイターズトライ」ではまるで勇者ロボのように改造された「最強機動 ガンダムトライオン3」をデザインした。リアルロボット風の世界でスーパーロボットを描くことでも知られたクリエーターだ。

 そして大張氏と共にスーパーロボット路線を突っ走るのが鈴村健一さん。彼は特撮マニアとして知られているが勇者ロボはもちろん、1980~70年代のロボットアニメにも詳しくそのこだわりを大張氏にぶつけ本作の世界観に大きく貢献している。ブレイバーンのしゃべり方も「勇者ロボらしいカクっとしたしゃべり」だという。そして彼の思いが詰まっているのが主題歌「ババーンと推参!バーンブレイバーン」である。

「ババーンと推参!バーンブレイバーン」のイラスト。鈴村氏のこだわりが詰まった歌声はぜひ聞いて欲しい

 鈴村さんは「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」のシン・アスカなど線の細いナイーブなキャラクターを演じることも多い声優だが、この主題歌は往年のロボットアニメらしい朗々と声を響かせた歌となっている。要所要所にささきいさおさんを思わせる低音の響く声が入っているのも聞き所で、鈴村さんがノリノリで歌っているのがわかる歌である。大張氏の「もっとここは『○○(ロボットアニメの名前)』っぽく」というディレクションを受けて、ブレイバーンを演じているという。

【オリジナルTVアニメ「勇気爆発バーンブレイバーン」OPノンテロップ映像】

 この2人のタッグにより、リアルロボットの世界がきしんだ音を立て、不協和音を奏でるところが「バーンブレイバーン」だ。ロボットアニメのストーリーとしては王道であり、作画も素晴らしく、見ていて熱い気持ちがこみ上げて来るロボットアニメなのだが、どこかがおかしい。そしてそのきしみの影響をもろに受けるのがイサミである。第2話放映時、Xのトレンドに上がったのが「#イサミかわいそう」なのだ。彼にどんな運命が待ち受けているか、ぜひ1話、2話を視聴して確かめて欲しい。

 「勇気爆発バーンブレイバーン」は毎週木曜23:56からTBS系で放映だ。配信されている2話を見て、3話を心待ちにして欲しい。

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