【特別企画】

「ドリフターズ」のコミックス第7巻がついに発売! 大きく動き出した漂流者たち。源義経は果たしてどちらにつくのか!

待ちに待ったファン待望の約5年ぶりの最新巻

【「ドリフターズ」コミックス7巻】

8月10日 発売

価格:759円

 ヤングキングコミックス「ドリフターズ」(平野耕太氏作)の最新巻となる第7巻が8月10日についに発売された。

 「ドリフターズ」は平野耕太氏による古今東西あらゆる歴史上の英雄達が登場するアクション系歴史ファンタジー漫画で、2009年より少年画報社のマンガ雑誌「ヤングキングアワーズ」にて連載を開始。今も尚連載が続く人気作品で、2018年11月に発売された第6巻からは、なんと約5年ぶりの新刊となる。

 第7巻の発売告知から首を長くして待ち侘びていたファン達のツイートにより一気にTwitter(現:X)のトレンドにも浮上していた。

 もちろん筆者も最新刊の発売を待ち望んでいたファンの一人だ。告知が出た日は夏の楽しみが増えた喜びを噛み締め、暑い夏にクーラーでキンキンに冷えた部屋でお菓子とジュースを片手に好きな漫画を読むという筆者なりの贅沢を絶対にやってやるんだと固く誓った日でもある。

 そしてこの記事を打ち込んでいる今、まさにその余韻に浸っている時だが、結果的に待ちきれず深夜0時発売開始と共にベッドの上で読んでしまい、夏の楽しみが一つ終わってしまった。さて! 早速最新第7巻の話をしよう!

 なお、以下は「ドリフターズ」第6巻までの内容を振り返った上で、最新刊について言及していく。そのため、コミックス7巻のネタバレがあるため注意してほしい。

第1巻から第6巻までの大まかなあらすじ

「ドリフターズ」第6巻までのあらすじ

 西暦1600年関ヶ原の戦いの末、退路を断たれた島津豊久。

 突如謎の男「紫」により、瀕死状態のまま異世界へ飛ばされた豊久は、とある村で倒れていたところ二人のエルフに助けられる。その様子を見ていた那須与一はエルフから豊久を引き取り織田信長の元へと連れ帰る。

 豊久は助けてくれたお礼にと同じく戦慣れした信長・与一と共にエルフをオルテ帝国の弾圧下から救う。そして同時に十月機関のオルミーヌにより、自分たちが人の世界を人ならざる者のための世 界へと塗り替えようとしている黒王軍率いる「廃棄物(エンズ)」達に対抗すべく集められたことも知る。

 戦力の拡大が必要だと悟った信長は豊久を総大将とし、後にエルフ族に加え、オルテ帝国の占領 下にあったドワーフ族も解放した。各地で反乱が起きていることを知ったオルテ帝国領土の3分の1を保有していたサンジェルミ伯はオルテ帝国に見切りをつけ、 豊久達ドリフターズ側に付き、帝国へのクーデターを手引きした。

 こうして順調に黒王軍への対抗勢力を広げていたところだったが、帝国へのクーデターの最中に黒王軍がオルテ帝都を襲撃してくる。十月機関と協力し、黒王軍を迎え撃つが、豊久・信長・与ーを脅威と判断した黒王により黒王軍 (エンズ)は強制的に一時退却、廃棄物側である漂流者、土方歳三と激戦を繰り広げていた豊久は一命を取り留める。

 しかし、このクーデターと黒王軍の襲撃により大帝国であったオルテ帝国の首都機能が壊滅的となったことで次第に群雄割拠と化していく中、黒王軍により追い立てられた難民が「漂流者に対抗できるのは漂流者しかいない」とオルテ帝国に助けを求めて集まってくる。豊久は難民達に対し「共に行かんもんはいらん。いらんからここで死ね。」と鼓舞し、兵士として彼らを引き連れてさらに進軍してきた黒王軍を迎え討つ。

 「人ならざる者」達と「人」の戦力差に絶対絶命の状況の中、豊久はドワーフと共にしんがりとなり、信長・与一と兵を退却させる。そして満身創痍でほぼ瀕死の状態の豊久の前に再び廃棄物の土方歳三が現われるが――

 特に6巻では物語が大きく動いており、胸が熱くなるようなシーンも随所に盛り込まれていた。

「ドリフターズ」第6巻

 土方歳三は一度目の豊久との戦いで豊久に「武士」と言われ、その言葉に震えるほどの爽快さを感じていた。そして二度目の進軍で再び豊久と邂逅した土方は、自分が異世界でエンズとして存在していることに違和感を覚え始めていたのだ。

 やがて満身創痍で刀を失った豊久の目の前に現われた土方歳三は果たしてそんな状態の豊久をそのまま討ち取ってしまうのか、絶対絶命の最中、漂流者側である菅野直がゼロ戦に乗って突撃してくるという展開で7巻へと続いていた。

 筆者は黒王軍を迎え撃つ地形を見た時に既に勘付いていたであろう豊久の「運命(さだめ)がおいに、もう一度“あれ”をやれと言うておる」というセリフにグッときた。「あれ」とは豊久が生死を分けた関ヶ原の戦いの最中での「捨て奸(すてがまり)」である。豊久と共に敵陣を駆け抜けていくドワーフ達の決死の体当たりも、戦でテンションがハイになっている様子がまるで豊久達「侍」の生き様そのもので、その異常なメンタルに慄きつつも心意気のかっこよさに目が潤み感情が迷子になるようなインパクトがあった。

最新刊7巻の表紙は「源義経」(※以下7巻のネタバレあり)

 今回最新第7巻の表紙には源義経が登場している。第6巻まで義経は漂流者(ドリフターズ)と廃棄物(エンズ)の「面白い方につく」と発言しており、那須与一の心を揺るがす人物として描かれているシーンが多く今後の動向が気になるキャラの一人だったが、7巻でようやく義経の立ち位置が「一旦」は明らかになったと言えるだろう。

 黒王軍の猛攻撃により敗退し、廃城へ向けて退却途中の与一・信長をはじめとする漂流者軍の前に突如として現れた黒い人影。与一は誰よりも早くその影の人物に気づく。 「これ程の好餌 あの人が……あいつが見逃すはずがありません」 (第7巻 P74)そこに現われたのは与一の予想通り「源義経」だった。

 傷を負いながら雨の中の退却中の漂流者軍を狙うという悪役らしいタイミングで登場してくる清々しいヴィランぷり。ここで筆者の推し(与一)VS推し(義経)の源氏対決がつくかと思いきや、与一は義経に土下座し、命乞いをするのだ。

 しかし、命乞いをする与一の頭を踏みつけ頭突きをする義経。 「俺が命乞いなんぞをされて目こぼしする様な男だったか? そういう男だったか? 俺は!?」 (第7巻 P93)と与一の命乞いを一蹴してしまう。

 信長はその与一と義経のやり取りを見て頭の中で思考を張り巡らせ義経に揺さぶりをかけていくが、与一もそれに便乗する形で義経に対し、変わった方が面白い、あなた(義経)が奥州藤原なんかで死ぬわけない、と煽り義経を黒王軍から寝返らせることに成功しピンチから脱却した。

 義経は引き連れていた黒王軍の手下を自軍のものにしようと説得するも当たり前だが失敗。義経一人を残して黒王軍は撤退した。そこで一連の流れを見ていたハンニバルは 「わしと悪いことせんか?」 (第7巻 P112)と義経をスカウトする。ハンニバルは自身をブレーンとし、義経と共に国を作り、黒王軍を背後から攻めていこうと目論む。

 今回の7巻では結果的に「漂流者」側に加わった形となった源義経だが、覚醒した「木いちごじいちゃん」ことハンニバルと共にどのような動きをするのか、今後も引き続き義経の動向に注目が集まることは間違いないだろう。

 寝返った後の与一やハンニバルとの会話では抜け感のある発言も見られ、義経のフラットな雰囲気が出ていてとても良かった。今後さらに女性ファンが増えそうなキャラクターだ。きっと「沼」はこういうところにあるのだろう。源氏万歳。

最新第7巻の見どころ!

・黒王軍から寝返るエンズ側のドリフターズたち(土方歳三・源義経)
 前述した源義経に加えて、黒王軍としてエンズに染まり闇堕ちしていた土方歳三もまた黒王軍から寝返ったドリフターズの一人。豊久と菅野直の登場により見事新撰組としての本来の自分の心を取り戻した。

 豊久に「行くか!?」と聞かれて「行くわけが無ぇだろ」と答える土方。黒王軍を裏切った土方だが、豊久らには合流しないスタイルのようだ。今後土方は単身でどう動くのか気になるところ。豊久と土方が挨拶をして別れたシーンは戦友のようで胸が熱くなる。

・菅野直の破天荒っぷり
 7巻ではいよいよ本格的に物語の中枢へと入り込んでくる菅野直。

 豊久らが絶対絶命のピンチの中、「ワンニャン軍団」(犬族猫族)を引き連れて零戦で突撃して来るシーンや、新撰組である土方歳三に対し「なんかすごい強くてかっこいい無敵剣士です」などと土方歳三本人とは知らずにベタ褒めしてエンズに染まった土方の目を覚まさせたり、豊久の死生観に腹を立て踵落としをお見舞いしたりと、とにかくその破天荒さが良いスパイスになっている。豊久ともどことなく破天荒さが似ていて、二人の会話がずっとうるさくて面白いのでそこも注目のポイントだ。

・与一の土下座シーン
 やはり7巻表紙である源義経と与一の一連のストーリーは見どころの一つだ。

 殺意満々の目つきの与一がゾクゾクするほど美しくてかっこいい。普段おちゃらけ気味のキャラクターなだけにこういう本気を見れるシーンが来ると「やっときた!」と思うが、まさかの土下座!

 しかし、平野耕太氏の見せ方が本当に素晴らしい。殺るのか……? という緊迫感を数ページに渡って見事に表現している。漫画を読んでいてこのジリジリ感を久しぶりに体感できて良かったので必見だ。

・覚醒したハンニバルと漂流者となった源義経
 行動を共にすることとなったハンニバルと義経は黒王軍を背後から攻めるべく国を建てようと動き出す。道中黒王軍のオークに襲われている民を助けるヴィランフェイスが得意な義経。「世界滅ぼすガワの奴の顔じゃそれ!」(P210) とハンニバルの演技指導により「綺麗な義経」が爆誕しているので注目だ。

 しかもここで「クロウ様」というやたらそれっぽい別の呼び名をハンニバルにつけられる義経。あの顔で「クロウ様」はズルい!

・黒王の正体の手がかり?流れ着いた漂流者が持っていた「欽定訳聖書」
 山口多聞の乗る飛龍にやってきた「グ=ビンネン通商ギルド連合」のシャイロックが肌身離さず持っているという古い書物。それはまだグ=ビンネンが商人国になる前に流れ着いた漂流者が持っていたと言われている「欽定訳聖書」だった。

 そこには今黒王が行っていることと同じようなことが記されており、もし黒王がこの聖書の内容と同じことができるとしたら、海も壁も海軍も何の意味もなくなるというシャイロック。いよいよ黒王の正体は界隈で噂されている「キリスト」説が濃厚になってくるのではないだろうか。

コミックス第6巻の発売に合わせて1巻~6巻をまとめた上巻および下巻も発売された

今後の「ドリフターズ」の展開は一体どうなる?第8巻への期待

 信長・与一達率いる漂流者軍がもうすぐ廃城に辿り着く手前のところで7巻は終了している。最後のページには怪しい人影が複数描かれており、これが敵か味方なのか気になるところだ。各々がそれぞれのポジションで動き始めた7巻だったが、きっと物語の終盤戦は絶対熱い戦いになるだろうな……。という顔ぶれになってきている。今後登場する新しい漂流者や廃棄物も非常に楽しみだ。

 廃城は無事なのか、豊久と信長・与一は再び合流できるのか、ハンニバルと義経の建国計画はどうなるのか、土方歳三の今後の動向など数々の伏線の回収も含めて次回第8巻にも期待したい。