【特別企画】
「アルトネリコ 世界の終わりで詩い続ける少女」発売17周年! 尖った世界観と際どい描写が話題となった本作の魅力を振り返る
2023年1月26日 00:00
- 【アルトネリコ 世界の終わりで詩い続ける少女】
- 2006年1月26日 発売
バンプレスト(当時)×ガスト共同開発のムスメ調合RPG「アルトネリコ 世界の終わりで詩い続ける少女」が発売されたのは、今から17年前の2006年1月26日のこと。本作は、ディレクター土屋暁氏が生み出した、細部にまで凝った世界観、“詩(ウタ)う”ことによって発動する魔法、言葉での際どい描写が反響を呼んだ。
「サモンナイト」シリーズのバンプレストと「アトリエ」シリーズのガストという2社が協力して1本の作品をつくるということに驚いたものだが、ジャンルとして書かれていた“ムスメ調合RPG”という謎単語に、発売前は色んな意味での怪しさを感じたものだ。
ゲームは、ワールドマップが3DCGで、ダンジョンが斜め上から見下ろした2DCGで描いたRPGとなっている。筆者が某雑誌にて担当していた作品だが、最初に話を聞いた時は、ありふれたタイトルかなと思っていた。しかし、情報がどんどん開示されていくにつれて非常に壮大な内容なのがわかり、まとめきれるのだろうかと怖くなったものだ。そのプロローグを、簡単に紹介しよう。
ゲームの舞台となる異世界ソル・シエールには、天まで届く高さを誇る1本の塔アル・トネリコと、そこを囲むようにして存在している浮遊大陸ホルスの翼以外、何もない閉鎖空間。足元は死の雲海に覆われ、天はブラストラインと呼ばれるプラズマの海で遮られる孤独な世界は、過去に起きた最初の厄災で空と大地を失い、2度目の厄災で高度文明を失い、今は古代文明の遺産といわれる塔アル・トネリコの恩恵によって支えられていた。
そんなある日、かつてソル・シエールに厄災をもたらした魔神ミュールの封印を担う少女ミシャが誘拐され、塔からウイルス生命体と呼ばれるモンスターがあふれ出す。塔上層部にある都市プラティナに住む騎士のライナーは、塔の管理者であるシュレリアから特別なアイテムを探し出すよう命じられ、飛空挺に乗り下界であるホルスの翼へと赴く。プレーヤーは主人公のライナーとして、シュレリアからの特命を果たすべく冒険を進めていくことになる。
1本の塔と浮遊大陸という世界設定もさることながら、本作を特徴付けているのが詩魔法と呼ばれる特殊能力が使える、“レーヴァテイル”という女性だけの種族だった。彼女たちは本作の根本に関わってくる非常に重要な存在で、さまざまな葛藤と戦いながら仲間たちと成長していく。
そんなレーヴァテイルは音を力に変える能力を持ち、後衛で詩を奏でることで戦いに参加してくれる。ゲーム中では最初は2人、後に1人増え3人が登場し、彼女たちと本物のパートナーシップを築いていく“ムスメ調合”が、当時は大いに話題となったものだ。
なかでもインターネット界隈で有名になったと記憶しているのが、レーヴァテイルにとっては毒となるグラスの結晶を体内に挿入することで詩魔法がパワーアップするという、インストールのイベント。
レーヴァテイルという種族は、身体のどこかに必ずインストールポイントと呼ばれる紋章が存在する。ここにグラスノ結晶を入れるのだが、そこは生存に関わる場所であるため、基本的には肉親などの信頼した相手にしか見せることはない。プライベートな間柄の相手にインストールポイントを晒してグラスノ結晶を入れさせるというのは、初体験にも等しい重大な出来事。ゲームをプレイしながら見ていけば違和感ない流れなのだが、このイベントを音声のみで体験すると、非常にセクシャルな内容として受け止めることもできてしまうようになっていたのだ。
SNSが発達した今ならば、きっとトレンド入りして(色々な意味で)大騒ぎになったであろう内容だと思うのだが、そうではない時代だったのは、今思うと幸だったのか不幸だったのか(笑)。
また、主人公がレーヴァテイルの精神世界“コスモスフィア”へと入るダイブというシステムもある。条件を満たすことで新たな詩魔法を紡いでもらったり、新規コスチュームを入手することができるようになっていた。
コスモスフィアではレーヴァテイルの内面が反映されるため、そのキャラクターが抱える悩みや葛藤といったものが映像として表現される。そのため、ダイブもインストールと同様に強い信頼関係で結ばれたパートナーにしか許さないという設定があった。
ダイブ自体はアドベンチャーゲーム形式で進んでいくので、そう難しいものではないが、メインヒロインの裏の一面を見せることによってプレーヤーにも彼女たちを思いやる気持ちが生まれてくる(というか、確かに生まれてきた)というのは、さすがの一言。
入手したコスチュームは飾りではなく、着せ替えることでレーヴァテイルのステータスが変化したり、詩魔法のパワーアップの仕方が変わるなど、戦闘時により効率的に戦えるようになるというシステムも用意されている。
そんなレーヴァテイルが一緒に戦ってくれる戦闘シーンも、さまざまな工夫が凝らされていた。
彼女たちは詩魔法と呼ばれる魔法を使うのだが、使う(歌い始める)と、時間の経過と共にMPが徐々に減少していく代わりに、詩魔法の威力がドンドンとパワーアップしていく。アイテムなどでMPを回復するなど工夫すれば、5,000%や10,000%などというとんでもない威力で発動させることも可能だ。そこまでいけば、ありえないくらいの大ダメージを一気に与えることができるので、アニメなどでよくある“我慢して溜めまくり、発動させて大ダメージ”という爽快感MAXの戦いを堪能できた。敵が弱かったり数が少ないとあまり恩恵にあずかれないが、それなりの強敵を相手にしたときには最終的な決め手ともなることがあり、気分爽快!
レーヴァテイルは後衛に配置されるので、通常は攻撃を受けることはないのだが、一部の敵は前衛メンバーを通り越して直接狙ってくることもあるのだ。万が一喰らってしまうと、それまで詠唱していた詩魔法のパーセンテージは0になってしまうだけでなく、元々HPが低い彼女たちは、その一撃で倒されてしまうことも。
そういう事態を防ぐために、前衛には“守る”というコマンドが用意されている。これを実行することで、敵からの攻撃を代わりに喰らうのだ。もちろんダメージは受けてしまうが、それでHPが0にならなければ、反撃としてカウンター攻撃が可能に。しかも、彼女たちを守ったということで心が通じ合い、その影響を受けて前衛の攻撃がパワーアップするというメリットもあった。
戦闘は、フィールドを歩いているとランダムでエンカウントするシステムだったが、画面右下に表示されたゲージが赤に近づくほど敵と遭遇する確率が上がるようになっていたので、見た目にもわかりやすい。
しかも、当該エリアで一定回数戦うと敵が出現しなくなり、自由に歩き回れるようになっていたのがありがたかった。オーソドックスなRPGでは、目的地へとスムーズに移動したくても敵に出会って戦闘が発生してしまい、イライラするということがよくあるが、本作はそのような部分にも配慮がなされていたので“親切なシステムだな”と感心したモノ。
ガストの作品と言えば、BGMが個人的な趣味にマッチしているということで、プレイステーション参入第1弾となった作品「ファルカタ」から長らく注目している部分だった。
筆者は昔からニューエイジと呼ばれるジャンルの楽曲が好みで、特にNARADAやCUSCOといったアーティストの曲をよく聴いていたのだが、その路線と同社タイトルで採用していたBGMの雰囲気が似通っていたこともあったため、どの作品も“耳から入った”感じだ。「アルトネリコ」でも、その流れが健在だったのが非常に嬉しかったのを覚えており、一度クリアしたあとは仕事中のBGMとして何度もループさせていたほど。
他にも、イベントバトル中では敵味方関係なくレーヴァテイルがゲーム内言語のヒュムノスを奏でたり、イベントで詩を披露してくれるなど歌を聞く機会が複数あるのだが、それもまた筆者の心に響いたもの。
ちなみに、各レーヴァテイルを演じる声優さんとは別に詩の担当者が存在しており、オリカは霜月はるかさん、ミシャを志方あきこさん、シュレリアがみとせのりこさん、そしてクレアが石橋優子さんだった。
ガストが開発しているということで、「アトリエ」シリーズの調合のようなシステムである“グラスメルク”が用意され、やり込み要素に一役買っていたのも魅力の1つ。
これは、戦闘報酬などで得られる素材同士を掛け合わせることで、新たなアイテムを産み出すというモノ。回復薬などは序盤から作ることができるほか、工夫次第では非常に役に立つアイテムを作ることもできたので、本編そっちのけでハマる人もいたほど。
本作はシリーズ作品となり、2007年10月25日に2作目の「アルトネリコ2 世界に響く少女たちの創造詩」と、2010年1月28日には完結編となる3作目「アルトネリコ3 世界終焉の引鉄は少女の詩が弾く」がリリースされている。今回、執筆に際して改めてプレイしてみたのだが、一度始めると止めどころがなかなか見つからず、現代に遊んでも非常に面白い作品だと再認識した。
当時のメモリーカードも発掘されたので残っていたセーブデータをロードしてみたが、これだけ期間が空くとゲームを再開しても何をすればよいのかを忘れているため、結局何もせずに電源オフということが多い。しかし本作の場合、セーブポイントで“今の目的は?”という選択肢を選べば次の目的を教えてくれるので、今回のように17年が経過していたとしてもまったく問題なく進めることができた。当時の記事で似たようなことを書いた記憶があるが、まさかこんな形で証明する日が来るとは……。
現在プレイするには中古ショップで購入するしか手段がないと思われるが、見た目はPS2時代を感じさせるもののストーリー展開や胸打つ詩、BGMなどに古臭さは一切感じられない名作なので、PS2や初代PS3が現役だという人は、機会を見つけてぜひ遊んでほしい。
©BANPRESTO 2006
©GUST CO., LTD.2006