【特別企画】

VRでプレイする「謎解きイベント」がすごかった! 「Break the JINX」プレイレポート

生きているNPCとの会話に予測不能演出。VRの力で謎解き体験が強烈にアップデート

【VR謎解きDETECT】

7月~8月 開催(予約制)

参加費:無料

 突然だが、VR空間上で謎解きゲームイベントを制作する団体「DETECT」をご存知だろうか?

 VR空間上の謎解きゲームイベント、総じて「VR謎解きアトラクション」と銘打たれたこのイベントは、「cluster」などのメタバースプラットフォームで展開されている。

 要は“VRでできる謎解きゲーム”なので、一見すると、リアルイベントの「謎解きゲーム」がVR版になっただけのようにも思えるのだが、これが実際に体験してみるとまったく印象が異なっていた。

 今回体験したのは、cluster上でプレイできる「Break the JINX ~絶望の廃倉庫~」。clusterを利用できるMeta Quest 2やHTC VIVEなどのSteamVR対応デバイスのほか、VR機器がなくてもPCやスマートフォンから参加できる。プレイ人数は1~4人。7月から8月にかけて開催しているが、好評のため8月前半までの予約枠は満員。8月15日から31日分の予約については、7月31日18時より受け付けるという。参加費は無料だ。

 筆者は友人2人を加えた3人でプレイしたのだが、「Break the JINX ~絶望の廃倉庫~」はこれまで体験してきたリアルの謎解きゲームとも、PCやVRヘッドセットで体験するアドベンチャーゲームとも違う、新鮮でユニークなアトラクションとなっていた。ぜひその衝撃を共有したいので、早速、レポートをお届けしていきたい。

【【VR謎解き】Break the JINX ~絶望の廃倉庫~ PV】

流れ自体は一般的な「謎解きゲーム」と変わらない

 「Break the JINX ~絶望の廃倉庫~」は「DETECT」によるVR謎解きアトラクションの第1弾だ。本作の舞台は1925年、アメリカ合衆国 ロサンゼルスのターミナル島。プレーヤーはこの街に根付くギャング組織「Brave Pigeons」のメンバーとして、敵対組織「Ugly Phoneix」の幹部「不死身のジンクス」を捕えようとするが失敗し、廃倉庫に閉じ込められてしまう。プレーヤーたちは、この廃倉庫からの脱出を目指すことになる。

 基本的な流れは、プレーヤーはこの廃倉庫内にある様々なヒントを集め、そのヒントから謎を解き、次のアクションを導き出していくというもの。落ちているアイテムを拾って組み合わせることもあれば、廃倉庫の中に貼ってある何気ないものも重要なヒントだったりする。時には、アクターが演じる「NPC」にヒントを聞く必要があるかもしれない。廃倉庫の中を動き回って様々な情報を探すため、どんどんとゲームの世界へと没入していく。

 参加者同士はボイスチャットやテキストチャットを使ってコミュニケーションをとる。ボイスチャットの方が情報量的には有利だが、テキストチャットでも問題なくコミュニケーションできる。対応する環境の広さはVR謎解きならではだ。

 謎の答えがわかったらプレーヤーはアクションを起こしていく。それは実際にバーチャル空間の中で何かを組み合わせたり、見つけたアイテムを別の何かに使うことかもしれない。あらゆる可能性を見て、試行錯誤しながら答えにたどり着いていく。

 流れ自体は「謎解きゲーム」ではあるが、実際に体験すると“想像以上の凄さ”を強く感じた。ゲームエンジンのUnityを使って作られた空間は雰囲気たっぷりで、「廃倉庫」というロケーションにもリアリティを感じられる。

“生きている”NPCと加速的演出で未体験の領域に

 そこにいるのは、ギャングの姿をしたNPC。ただのNPCではなく、“生きている”キャラクターとして同じ空間にいるのがポイントで、まるでゲーム内のキャラクターと直接話しているような気分になれる。

 アドベンチャーゲームなどであればNPCは定型的な反応をするのが普通であり、本作の“NPC”についても筆者はそちらをイメージしていた。だが彼はそれを良い意味で裏切る存在で、話しかければちゃんと会話ができるし、敵組織のギャングらしく皮肉まじりに話してくれる。そんな彼が存在していることで、この世界のリアリティがぐっと増している。ゲームキャラクターとの生きた会話を実現していることが、このゲームの面白さの大きなポイントだと強く思った。

生きているNPCとバーチャル空間のゲーム内で会話する。全く体験したことがなく、本当にインパクトがあった

 そして最も驚いたのは、VRの特性を上手く使った予測不能の演出だ。VRなので、リアルでは難しい演出もどんどん実現できる。例えばプレーヤーの近くで大爆発が起こってもいいし、もっと現実ではありえないようなトンデモ展開(たとえば会場が宇宙空間に飛ばされる……とか)が起きても全くおかしくはない。詳細は明かせないが、「Break the JINX ~絶望の廃倉庫~」についてはまさに未体験の連続で、「とにかくすごかった!」と言わせてほしい。

 最初の謎解き部分の展開は演出もスローだったが、中盤から後半にかけて一気に展開が加速し、演出は驚くものになっていく。そして迫る制限時間の40分。果たして制限時間内に謎が解けるか、この廃倉庫から脱出できるのかという緊張感も重なり、完全に世界の中に飲み込まれてしまった。

 そのため終わった後の爽快感たるや、あらゆる謎解きゲームを越えるような快感だった。リアルな舞台で、アンリアルな演出をし、バーチャルなプレーヤーと協力しながら謎解きをする。こんな体験はほかにはない。とにかく全てが新しく夢中になる展開だった。

 脱出のためにプレーヤーに与えられる時間は40分で、この時間が絶妙だと感じた。あまり長いとプレイ自体がダレるし、逆に短いと脱出が困難になる。謎解きの難易度も含めて、コアな謎解きファンではなくても楽しくプレイできると感じた。複数人で体験を共有できる感覚もいい。

可能であればフレンドと参加して一緒に謎を解くという体験も味わって欲しい
とにかく演出を見て欲しい。バーチャル空間だからこそできる演出の連続だった

 筆者は普段からメタバースにどっぷりと浸かっており、メタバース上のバーチャル空間内で様々な体験をしてきた。そのためある意味での慣れがあり、今回のアトラクションもそれほど大きく感情を揺さぶられることはないだろうと考えていた。だが、慣れているがゆえにその考えを大きく裏切られる結果だった。

 確かにリアルな謎解きゲームには生きたNPCがいるかもしれないし、VRゲームではバーチャルならではの演出などが楽しめるだろう。だがこれらの演出が同時にあわさった体験、そしてそれを自宅からでも気軽に遊べる体験。それはメタバース上でプレイするVR謎解きアトラクションならではの唯一無二な体験だ。可能な限り、VRで体験することをオススメしたい。