【特別企画】
君は米津玄師ライブを目撃したか! ゲームファン以外も巻き込む「フォートナイト」無料ライブのインパクト
今後のオンラインイベントのトレンドになるか? 最大限に盛り上がったその理由とは
2020年8月8日 08:03
- 8月7日、8日実施
「フォートナイト」において、8月7日20時から開催されたバーチャルライブ「米津玄師 スペシャルイベント」。この盛り上がりを目撃した方はどれほどいるだろうか。
ものすごくシンプルに出来事のみをお伝えするなら、「『フォートナイト』の中で米津玄師さんが音楽ライブを開催した」とそれだけなのだが、もともとがオンラインゲームの「フォートナイト」だからこそ、ネットによって簡単に体験を共有できる今だからこそ、他にはない“ライブ感”が醸成されてとにかく盛り上がった。
では、「米津玄師 スペシャルイベント」で一体何が起こっていたのか。今後のトレンドになりそうな「ゲーム×ライブイベント」という新たなエンタメの形を踏まえて、振り返っておきたい。
“フェスへの参加感”が「パーティロイヤル」最大の魅力
そもそも「フォートナイト」で音楽ライブを開催するとはどういうことか。これを説明するためには、「フォートナイト」にあるゲームモード「パーティロイヤル」を紹介する必要がある。
もともと最大100人が参加して、最後の1人(1チーム)を決めるバトルロイヤルをメインとする「フォートナイト」だが、「パーティロイヤル」は対戦要素がない。ゲームに参加して、島に降り立つところまでは一緒だが、そこから先は「遊んで過ごす」ことが目的となる。ちなみに「フォートナイト」は基本無料であり、「パーティロイヤル」への参加ももちろん無料だ。
そして、この「パーティロイヤル」を利用してときおり実施されているのが今回のようなスペシャルイベントだ。米津玄師さんのライブ以前にも同様の取り組みは行なわれていて、最近ではDJイベントの開催や映画「インセプション」の上映などがあった。
こうしたスペシャルイベントのポイントは、あくまで「パーティロイヤル」をプレイする1人の参加者となること。「米津玄師 スペシャルイベント」では島の浜辺に巨大スクリーンが設置されていたが、この「メインステージ」にはキャラクターを操作して浜辺へ移動しなくてはならない。
ある意味手間とも言えるのだが、参加してみると少し感想は違う。移動していると遠くにやけに明るい場所が見えて、どうやらそこにワラワラと人が集まっているとわかってくる。実際に行ってみると、巨大スクリーンの周りには極彩色のライトがビカビカ光る足場が組まれていて、同時に音量高めのBMGがガンガン場を盛り上げている。集まった人たちは座ってライブ開催を待っていたり、ピョンピョン跳ねたりしてライブの楽しさや待ちきれない感じを全身で表現している。
つまり、紛れもないフェスの空間が「パーティロイヤル」の中に再現されているわけだ。「これからライブだー!」というワクワク感もあるし、自ら足を運んで「フェスに参加しに行く感じ」も、とても上手く再現されている。
もともとが三人称視点のシューターなので、アクション性や操作性に優れているのもいい。単に「アバターがいて動けます」みたいなバーチャルライブではなく、ペイント弾が用意されていたり、ジャンプ台が床に仕込まれていたりと遊びも多いし、エモーションやダンスも自己表現として使える。みんなでワチャワチャとじゃれ合いながらライブを過ごす時間がとても心地良いのである。
ゲームファン以外も巻き込んでいく音楽ライブの求心力
その上で「米津玄師 スペシャルイベント」が過去のイベントと何が違ったかというと、やはり米津玄師さんの人気ぶりであり、米津さんが日本のアーティストとして初めて出演したことだと思う。特に普段ゲームに触れていなくても、米津さんのライブと聞きつけるや速攻で「フォートナイト」をインストールした、という方も多かったのではないだろうか。
「フォートナイト」はPC、プレイステーション 4、Xbox One、Nintendo Switch、Android、iOSと、いわばプラットフォームは全方向で対応していて、ゲーム機がなくても手元のスマートフォンでも参加できる。Twitterを眺めていると「『フォートナイト』をやっている子どもからライブのことを聞いた」という方もいて、その巻き込み方は凄まじいものがあるなと感じた。
そして実際のイベントでは、以下の5曲が披露された。
迷える羊
感電
砂の惑星
パプリカ
Lemon
スクリーンには最新アルバム「STRAY SHEEP」を思わせる羊の被り物をした米津さん(3DCGのように見える)が映し出され、公開されているMVとは違う特別な演出で楽曲が披露されていく。「感電」のサビでは会場から雷が見えるなど、スクリーン外の演出が行き届いていたのも印象的。高速で流れていくTwitterのタイムラインも同時に見ていれば、「米津玄師の音楽ライブを多くの人と体験した」という実感が強く残るものとなっていた。
イベントの最中には米津さんのMCも入り、「新型コロナウイルスの影響でライブができない中で、新たな形を模索した」といった内容が語られた。コストを考えれば巨大スクリーンで既存のMVを流す選択肢もあったはずだが、この点はまったく妥協せずに、スペシャルイベントならではの体験を作り出していたのが何より良かったと思う。無料でこれほどの体験ができるのなら、「米津さん、Epicさん、ありがとうございます」としか言いようがない。
「フォートナイト」では「パーティロイヤル」を利用したスペシャルイベントは恒例となっていて、今後もどんどん開催されるはずである。今回、日本のシンガーとして米津さんが初登場となったが、次はどんな音楽アーティストが出演するのだろうか。さらには、「フォートナイト」が“音楽ライブの開催場所”としてゲームファン以外の知名度を急速に伸ばしているのも興味深い。今後の展開に注目だ。