【特別企画】

「Fate/Grand Order」5周年記念 メディア横断連載――潜入!「FGO」開発の舞台裏 ~概念礼装編~

哪吒と加藤段蔵の水着が眩しい「盛夏の思い出」はこうやってできていた!

【Fate/Grand Order】

7月30日 サービス開始5周年

 Android/iOS用FateRPG「Fate/Grand Order」(以下、「FGO」)が7月30日でサービス開始5周年を迎えたことを記念して、「FGO」の開発資料をお届けする連載企画“潜入!FGO開発の舞台裏”をお届け! こちらは5つのメディアによる横断連載企画で、トリを飾らせていただくGAME Watchでは、ゲームを彩る「概念礼装」編をお送りします。

 概念礼装とはサーヴァントの力を底上げするようなパッシブスキルのようなもので、今現在概念礼装だけでも1,221個もあります。レアリティの高い概念礼装は宝具を使用するのに必要なNPが多くチャージされていたり、宝具の威力や通常攻撃の威力アップが低いものと比べて強いものとなっていますが、これをつけた高レアリティサーヴァントを連れて行こうと思うとコストがあっという間に溢れてしまうため低レアリティのものも含めて編成するのが重要になってきます。

 さて、今回は概念礼装「盛夏の思い出」を例に、制作工程はもちろんのこと、こだわりのポイントや、「盛夏の思い出」が実装された時の思い出なども振り返っていければと思います。

キャラクターやシチュエーションの考案

 多くの概念礼装は、イベントで新規に追加されることが多く、必要な枚数が決まったらいざ制作が開始されます。今回取り上げるのは、2019年8月に開催された水着イベント「見参! ラスベガス御前試合~水着剣豪七色勝負!」。

 こちらは「FGO」内ではもはやおなじみの、サーヴァントの霊基変換による水着のお着換えによって、なぜか初対面になってしまった葛飾北斎(であるタコと、その娘である葛飾応為)らと北米大陸西部に発生した微小特異点へと向かい、レイシフト先のラスベガスを模した絢爛豪華な都市で、水着を着た宮本武蔵もとい宮本伊織に出会い、北斎は水着剣豪最強を目指す――というイベントでした。

2019年8月に開催された水着イベント「見参! ラスベガス御前試合~水着剣豪七色勝負!」

概念礼装ができるまで! 「盛夏の思い出」を例に制作過程を追う

 このイベントでは合計8枚の概念礼装が追加され、その中の1枚がこちらの「盛夏の思い出」でした。

【概念礼装「盛夏の思い出」】
水着姿の哪吒(左)と加藤段蔵(右)

 まずは礼装に登場するキャラクターやシチュエーション、担当するイラストレーターを、概念礼装制作チームとTYPE-MOONで、色々と打ち合わせ。

 今回の場合は、”西部絢爛賭場 ラスベガス”が舞台のイベントなので、水着、夏、ラスベガスなど、シナリオにふさわしいシチュエーションをイメージするほか、登場させるキャラクターは今までの概念礼装での登場回数なども考慮して選出するとのこと。

 「FGO」には様々なキャラクターがいますが、それぞれの魅力を引き出せるように気を付けて、イラストレーターに発注。「盛夏の思い出」の場合はディライトワークス社内のイラストレーター・西藤浩樹氏が担当しているため、制作前にシチュエーションなどを事前に社内で打ち合わせをしながら内容を固めていったそうです。

ラフの作成

 まずは、イラストの構図となるラフを描いていきます。ラフ作成後、TYPE-MOONが監修を行ないます。「盛夏の思い出」を描いた時の制作例を担当イラストレーター氏に伺うと、「構図を決めるまでに一番時間がかかってしまう」とのこと。

 「礼装での登場回数が少ないキャラクターの中から、見た目が好きでキャラ属性にシナジーのある哪吒と加藤段蔵を描くことにした」のだとも語ってくれました。 更に、「カジノ、プールというテーマで構図を決めていって、シチュエーションはプレーヤーがカメラを向ければ笑顔でピースもしてくれるのではないかと考えながら作成した」ということです。

 確かに、改めて見てみるとまさにピースしてくれそうなカメラ目線。素敵な笑顔の2人です。

【ラフ】

線画

 ラフが決定となると、輪郭となる主線を描いていきます。

 実際に線画にする段階で、衣装のデザインも更に詰めていきます。担当イラストレーター氏の場合、衣装の色やデザインは立ち絵からイメージを拾うことが多いそう。また、水着のイラストなので、柔らかい感じにするため鉛筆っぽいペンを使い、髪の流れにかなり気をつかったりもするけれど、色塗りの段階で流れを変えることが多いので、この時点での気遣いが無駄になってしまうことも多い、なんていう秘話も明かされました。

 確かにラフ画の段階では段蔵の水着にリボンがついていなかったけれど、線画ではリボンがついていたり……細かいところが変わっていっています。

【線画】

いよいよ着彩

 線画が完成すると、いよいよ色を塗っていく作業に。マスク(指定の範囲を隠し、色を塗りやすくする機能)を作ってから、描き込みをしていきます。

 最初にまずマスクを作るのは、作業効率を考えてとのこと。担当イラストレーター氏の場合は、色ごとにレイヤー分けをしてマスクを作り、まず光や影などを描き込んでいくそうですが、その際の影は全部がボケていると印象がふわっとしてしまうため、適度にエッジをたてる部分をあえて作るそうです。もう哪吒と段蔵の2人はほぼ完成しているように見えるけれど、まだ作業は続きます。

【マスク】
【着彩】

背景作画

 次に、背景を描き込んでいく作業へ入ります。今回の概念礼装では、イベントに合わせた背景として、「カジノ」、「プール」が描き込まれました。

【背景作画】

仕上げ~完成

 最後に、細かな調整を行ない、完成まで仕上げます。背景がキャラとバランスが良くなるように処理をしたり、色味の調整の他、哪吒の腹部や加藤段蔵の腕などに水滴が加筆されています。

 なお、担当イラストレーター氏によると、あくまでキャラクターがメインのため、背景はうるさくならない程度にまで潰す、ということです。この時はカラーハーフトーンを使ったため、ただぼかすより楽しげな雰囲気が出せたのでは、とも。こうして完成した背景にあわせて、キャラ側を少し鮮やかに調整。最後に、カード枠をつけて、いよいよ完成です。

 せっかく綺麗な夜景だったのにもったいない、とも思ってしまいますが、背景をボカすことで、より一層水着の2人の姿が際立っています。

【完成!】

フレーバーテキスト(ゲーム中の説明テキスト)の作成~実装

 ここで終わりかと思いますが、概念礼装の作成はまだ続きます!

 イラストが仕上がったら、フレーバーテキストの準備へ。 シナリオライターさんに執筆を依頼したり、ディライトワークスが作成した草案を、TYPE-MOONが監修する場合もあります。その後、実装された画像やテキストの確認をして、リリースを待ちます。

 ここまでの制作期間は、キャラクターやシチュエーション、担当イラストレーターの考案までで約1~2週間、実際のイラストレーターさんの制作期間は出来るだけ1.5カ月の期間を確保できるようにしているとのことです。そして完成した「盛夏の思い出」のフレーバーテキストがこちらです。

フレーバーテキスト

夏の楽しみは誰にだって訪れる。
それは人ならざる者たちにも。

その身は英霊。
世に在る時間は限られているけれど、
今この瞬間にありったけの思い出を。

哪吒と加藤段蔵

 さて、ところでこの概念礼装に登場する哪吒と、加藤段蔵についてもほんの少しだけ改めて紹介しましょう。

哪吒

 哪吒の初登場は期間限定イベント「星の三蔵ちゃん、天竺に行く」でしたが、プレイアブルキャラとなったのは1.5部「亜種特異点IV 禁忌降臨庭園 セイレム 異端なるセイレム」でした。この章では北米のセイレムという港町が、半径7キロメートルほどの闇に覆われてしまったのを解決するために、カルデアは同時代レイシフトにて潜入することになり、哪吒はそのメンバーのひとりとして同行することとなりました。

 また第2部 第3章の「Lostbelt No.3 人智統合真国 シン 紅の月下美人」ではカルデアベースで事前召喚され、現地に同行するメンバーとしても抜擢されるなど、本編でも多く登場しています。

 戦闘スタイルは数ある宝貝(パオペエ)の中から火尖槍、風火輪、乾坤圏を使用していて、通常時には乾坤圏を飛ばしたり風火輪で敵を蹴飛ばして攻撃したりしています。また宝具使用時には、風火輪で空高く上がったのち相手へと目掛けて一直線に落ちていく姿を見せ、哪吒がランサーとして火尖鎗の威力を最大限に引き出せるものとなっています。

加藤段蔵

 加藤段蔵の初登場は1.5部「亜種特異点III/亜種並行世界 屍山血河舞台 下総国 英霊剣豪七番勝負」。ストーリー内では英霊としてではなく、生前のままキャスター・リンボに仕える、からくり人形として登場しました。戦闘スタイルはからくりとしての機能をふんだんに取り込んだもので、スキル発動時にも身体から蒸気がでる演出や、関節が人形を彷彿させるものとなっています。

 史実では、初代・風魔小太郎を師とした忍者で、越後の長尾景虎(上杉謙信)に拝謁した際に危険視されてしまい、その空気を感じ取った段蔵は、からくり仕掛けの傀儡に芸をさせている隙に越後から逃げ出した、という逸話を持っていますが、「FGO」ではその伝説は「加藤段蔵が、からくり人形であった」ということから派生したものという設定になっています。

 最高の風魔の術を伝える存在であった彼女は、一時期風魔の里に身を寄せた際に、ある赤毛の幼子の育て手となり、それが後の五代目風魔小太郎です。ただ生前の加藤段蔵は自身に意思はないと定義しているため、風魔小太郎とストーリー内で再会しても初対面のようになっています。

 亜種特異点はクリアをしなくてもメインストーリーを進められるため、特に段蔵に至っては実はゲーム中で見たことがなかった……というプレーヤーは、ぜひこれを機にプレイしてみてくださいね。

メインがシリアスまっしぐらということもあり、イベントはコメディ要素の多い「FGO」。でも全部のイベントがコメディなわけでもありません。

 先日、衝撃の第2部後期オープニングムービーが公開され、ますます目が離せない、「FGO」。まだプレイしたことがない貴方や、最新のメインストーリーまで追いついていないプレーヤーも、今後の展開をわくわくして待っていましょう。

 なお、8月10日には「Fate/Grand Order カルデア放送局 5周年SP ~under the same sky~」が放送予定。ここでどんな発表があるのかも、見逃せません!