【特別企画】

こだわりと新しさ、進化していく食玩「Gフレーム」、「FW GUNDAM CONVERGE」開発者インタビュー

「機動戦士ガンダム Gフレーム09」

3月発売予定

価格:500円(税別)

 12月に掲載した特集「2019年最高のホビーアイテムを手に入れろ!」はお楽しみいただけただろうか? この特集で人気を集めた記事の1つが、“総額1,000円でゲットできる超絶可動! 食玩「機動戦士ガンダム Gフレーム」”だった。

 記事で取り上げた「機動戦士ガンダム Gフレーム」はフレームとアーマーの2つを購入することで優秀なアクションフィギュアになるという商品だ。この商品の魅力に加え、“食玩”というのが人気を集めたのではないだろうか? 食玩はコンビニで気軽に買えるホビーアイテムと言える。記事を読んですぐ買いに行ける、手に入る。食玩は独自の魅力があるアイテムだと改めて実感した。

 そこで今回、バンダイキャンディ事業部に取材し、「機動戦士ガンダム Gフレーム」と、「FW GUNDAM CONVERGE」を担当する戸谷光平氏に、今後のシリーズの展開や各アイテムへの想いを聞いた。

「機動戦士ガンダム Gフレーム」と、「FW GUNDAM CONVERGE」を担当するバンダイキャンディ事業部の戸谷光平氏

ディテールと可動を追求! ユニークなアレンジも楽しい「Gフレーム」

 「機動戦士ガンダム Gフレーム」はスタートしたのが2018年2月、今年で2年目となる。3月に第9弾である「機動戦士ガンダム Gフレーム09」が発売となる。ラインナップは「ガンダムTR-1[ヘイズル改]」、「シナンジュ」、「ジム」だ。1回に3体のMS(モビルスーツ)が立体化されるので、今回で合計27体、さらにプレミアムバンダイ等で特別な機体なども商品化されている。

 「機動戦士ガンダム Gフレーム(以下、「Gフレーム」)」は、人気を集め長く続いている「FW GUNDAM CONVERGE」とは全く違う魅力を持ったフィギュアを、というところから企画がスタートしたという。「FW GUNDAM CONVERGE」は頭が大きく手足の小さいデフォルメ体型だが、ディテールは非常に細かく、MSの魅力をしっかり伝える事でユーザーから評価された。

 「機動戦士ガンダム Gフレーム」は頭身を通常のMSに近い描写にし、フレームを組み込むことでアクションフィギュアやプラモデルにも匹敵する可動を実現しようと企画されたシリーズだ。「可動と造形を重視したリアル頭身のフィギュア」がコンセプトだ。そして「Gフレーム」は耐久性も考えている。食玩として手軽に入手でき、たっぷり、ガシガシ遊んでもらいたい、という想いが込められているという。「Gフレーム」の魅力はやはり可動だ。特に膝は2重関節を採用し非常に深く曲がる。膝立ちなどもできるように股関節とアーマーも調整したものもある。

「機動戦士ガンダム Gフレーム09」、3月発売予定で価格は各500円(税別)。「ガンダムTR-1[ヘイズル改]」、「シナンジュ」、「ジム」のアーマーセットとフレームセットで全6種
アーマーセットとフレームセットを揃える事でアクションフィギュアとして楽しめる

 「Gフレーム」を販売するにあたり問題となったのがコストとパッケージの大きさだ。単価を上げてしまうとスーパーやコンビニのお菓子を置く棚に置いてもらえなくなる。またパッケージの大きさそのものもお菓子の棚の規格に合わせることが望まれる。決められたペースで他の商品ときちんと並ぶことが求められ、大型の商品はそれだけで選ばれない。こういった事情もあり、アーマーとフレームに分けた商品展開を行なうことになった。ユーザーからはとても好評で寄せられる要望も他の商品以上に多いという。

 最新である「ガンダムTR-1[ヘイズル改]」、「シナンジュ」、「ジム」の中で、ジムは特に大胆なアレンジが加わっている。腰の前アーマーは複雑な分割がされている。こういった強めのアレンジは「機動戦士ガンダム」シリーズの様々な立体物が出ている中、差別化を図るという意味合いも込めて行なっているとのこと。今回のジムは特にマッシブにアレンジされており、ヒーローロボット風の雰囲気がある。戸谷氏は前弾に当たる「機動戦士ガンダム Gフレーム08」の「ガンダムEZ8」のアレンジもお気に入りとのこと。

アニメでは“やられメカ”として描写されることも多いジムだが、本商品のジムはマッシブで力強い。情報量の多さも魅力だ。特に膝関節は大きく曲がり、フレームの可動範囲の広さを印象づける

 「Gフレーム」は彩色箇所にシールを一切使っていないのが特徴だ。成型色と一部の塗装でMSのデザインを表現している。シナンジュの胸の部分などは力が入っている。シナンジュに関してはバックパックが大きいため単体のコストがかかる。こちらはシナンジュとジムの彩色箇所を塗装ではなく成型色を活かしたことで、コストのバランスがとれたという。

 ジムの赤い部分と、シナンジュの全身の赤いアーマーを同じ成型色にしていたり、ジムの全身とシナンジュのプロペラントの成型色を合わせているのは、パーツとして同じ金型から成型しているためだ。このように厳しいコストの中で最大限の表現をするための工夫も食玩の難しさであり、面白さだと戸谷氏は語った。

ディテール表現に力が入っているシナンジュ。バックパックもボリュームたっぷりだ

 ジムにはちゃんと「ガンダムのビームライフル」を持たせてあるところも楽しい。ジムが初登場し、シャアのズゴックに腹部を貫かれるシーンでは、一瞬ジムがビームスプレーガンではなく、ビームライフルを持っている。このシーンを再現するためだけのボーナスパーツなのだ。こういった遊び心とこだわりがファンの心を掴むのだろう。

 「ガンダムTR-1[ヘイズル改]」は単体のボリューム、造形の細かさだけでなく、プレミアムバンダイで「機動戦士ガンダム Gフレーム ガンダムTR-1[ヘイズル改] オプションパーツセット」を販売し、組み合わせることで「TR-1[ヘイズル・ラー]第2形態」にさせることができる。[ヘイズル・ラー]第2形態にするためには[フルドド]が2つ必要だが、今回は2機がきちんとセットとなっており、こちらを購入するだけで[ヘイズル・ラー]第2形態が再現できる。プレミアムバンダイと連動させることで机の上に置けるコンパクトさで、大ボリュームである[ヘイズル・ラー]第2形態を組み立てられるとのことだ。

足の太さが印象的な「ガンダムTR-1[ヘイズル改]」
プレミアムバンダイで販売されていた「機動戦士ガンダム Gフレーム ガンダムTR-1[ヘイズル改] オプションパーツセット」。残念ながら受注は締めきられている

ストライクガンダム登場! 第10弾はさらに発展

 そして第10弾である。今回は光造形の試作品を見せてもらった。戸谷氏は2019年9月から「Gフレーム」を担当している。第9弾までは前任者から引き継いで進行してきたものになり、10弾が戸谷氏自身が1から企画したものとなる。10弾はシリーズの句切りであり新しい展開を見せることとなる。

 それが「アナザーガンダムへの挑戦」だ。10弾には「エールストライクガンダム」が登場する。ストライクガンダムにストライカーパックの「エールストライカー」がセットになっている。この大ボリュームはこれまでの「Gフレーム」ではなかったものとのこと。

これまで以上の大ボリュームになるというエールストライクガンダム。翼を折りたためる機構も搭載されている

 「エールストライクガンダム」はやはりそのパックが大きな特徴、羽を曲げることで駐機状態も表現できる。Gフレームによる本体だけではなく、バックパックの構造も凝ったものになるという。この圧倒的なバックパックのボリュームはこれまでの「Gフレーム」にはなかったものだ。戸谷氏は「アナザーガンダムの機体はボリュームがあるものが多くこれまで挑戦してこなかったが、今回を皮切りに色々な機体を出していきたい」と語った。

 武器としてはアーマーシュナイダーがついているのが戸谷氏のこだわりとのこと。第10弾は「ガンダムMk-II(ティターン仕様)」、「高機動ザクII(ジョニー・ライデン専用機)」となる。ガンダムMk-IIは、エールストライクガンダムとバックパックを交換する互換性を持っており、一緒に購入するとより楽しめるギミック付きだ。

 高機動ザクII(ジョニー・ライデン専用機)は、以前発売されたザクIIの各部の形状を変更したものが商品となる。今回の試作品は変更点が光造形で作られているためわかりやすく、面白い。

 さらに「Gフレーム 10」ではこれまで3種だったラインナップがもう1つ増え全4種となる。最後の1枠はこれまでのシリーズの商品を再販売する“再録”の枠となり、今回は第5弾の「ザクII/ザクII(指揮官機)」となる。これからは再録枠を定期的に設け、買い逃してしまった既存ユーザーや新規ユーザーが、人気MSを入手しやすくしたいとのこと。

ザクIIをベースに新規パーツにより再現される高機動ザクII(ジョニー・ライデン専用機)。ザクIIも再録されることでアタッチメントに武器をつけたフル装備が可能に

 もう1つ、ガンダムMk-IIに関してはエゥーゴ仕様と、支援機であるGディフェンサーが同梱され、「スーパーガンダム」としてセット販売される「Gフレーム EX」という新しい販売形態も用意される。こちらもシリーズ第10弾としての新たな取り組みだ。今後はこのフォーマットでの大型商品の展開も期待できそうだ。今後の展開として「Gフレーム」は大きな変化を迎えようとしているのである。

 変化、という意味では実は「機動戦士ガンダム Gフレーム09」からフレームそのものに改良が加わっている。「Gフレーム」ではこれまで動かして遊んでいると保持力が弱くなる“ヘタリ”の問題があったのだが、これを改善すべく肩部分と股関節にあったフレームの肉抜き穴をなくすことで、関節への圧力を分散し肩部分の耐久性を増すことができるようになったとのこと。ユーザーからの声と研究により改良が施されたとのことだ。

ガンダムMk-IIは、通常ラインナップのティターンズ仕様に加え、エゥーゴ仕様とGディフェンサーがセットの「スーパーガンダム」としても商品化される。こちらも一般流通となる

攻めたモチーフで勝負するこれからの「FW GUNDAM CONVERGE」

 そして「FW GUNDAM CONVERGE」だ。こちらは今年の11月に10周年を迎える非常に息の長いシリーズで、キャンディ事業部の「ガンダム食玩」の“柱”とも言えるシリーズである。

 「FW GUNDAM CONVERGE」はやはりそのアレンジが素晴らしい。複雑なMSの造形をデフォルメ表現をしながら、単純に線を減らすだけでなく、例えば頭部などは通常の商品以上に情報量を増やしたり、目元を鋭くしたり、強い印象を残すものとなっている。肩や足先、コクピット周りなど、手足は短いのにそのディテール表現の緻密さは驚かされる。それでもディテールがくどすぎたりする場合は調整するなど企画者としてのバランスも考えて調整しているとのことだ。

「FW GUNDAM CONVERGE ♯19」は5月発売予定で、価格は各500円(税別)。ファントムガンダム、ザンスパインなどエッジの効いたラインナップだ

 最新作である「FW GUNDAM CONVERGE ♯19」は非常に“攻めた”ラインナップと言える。「ヴィクトリーガンダム」、「Vダッシュガンダム」は人気のあるモチーフと言えるが、長谷川祐一氏のコミック「機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト」の主役機「ファントムガンダム」、さらにシミュレーションゲーム「SDガンダム GGENERATION」シリーズのオリジナルMS「ザンスパイン」、アニメ「新機動戦記ガンダムW」の外伝作品「新機動戦記ガンダムW デュアルストーリー G-UNIT」の「ガンダムジェミナス02」である。アニメの枠を越えて、様々なガンダム作品のMSを立体化しているのだ。

 この攻めたラインナップも戸谷氏のこだわりとのこと。その中でも戸谷氏はザンスパインとファントムガンダムがお気に入りとのこと。ザンスパインはゲームでは強い機体で戸谷氏自身も使うことが多いが、立体化されることが少なく、今回発売できてうれしいとのことだ。企画を通すとき緊張したという。

戸谷氏お気に入りのザンスパイン。ゲームオリジナルMSだ

 今回のシリーズではプレイバリューとして「武器の切り替え」を意識していると戸谷氏は語った。ヴィクトリーガンダムと、Vダッシュガンダムは手持ち武器を交換することで遊びの幅を広げている。今後のラインナップでも揃える事で広がる楽しさは意識していく。立体化に関しては今回のような攻めの姿勢は強めていきたいとのことで、企画会議では他のメンバーを驚かせるようなモチーフを提案したとのこと。「今後のラインナップはぜひ期待して欲しいです」と戸谷氏は語った。

 戸谷氏は「満遍なくガンダム作品が好き」だという。これまでの作品はもちろん、ゲーム、外伝作品、ガンプラなどの立体物、偏りなく様々なガンダム作品に触れており、知識も広い。だからこそこれまで立体化の少ないMSに対しては想いがあり、立体物を欲するファンの気持ちもわかる。「FW GUNDAM CONVERGE」の魅力は1つのラインナップに6体ものMSを選べるところ。もちろん多くのユーザーに応えつつ、これまであまり立体化されなかったモチーフを提案していきたいとのことだ。

「FW GUNDAM CONVERGE」はそのディテール表現に加え彩色の細かさもセールスポイント

 「FW GUNDAM CONVERGE」は“全塗装”というところが大きな魅力だ。このため色数の多い派手なモチーフはコストが上がる。ラインナップではこのバランスも考える点だ。全塗装だからこそ、戸谷氏はラインナップの“色合い”にもこだわっている。箱を並べたとき同じような機体が並ばないように、ちゃんとバリエーションが豊かであると言うことがわかるように心がけているという。

 さらに、「Gフレーム」と、「FW GUNDAM CONVERGE」2つの担当だからこそ、こちらの連携も考えている。次の「FW GUNDAM CONVERGE ♯20」では「Gフレーム」と同じエールストライクガンダムが登場するとのことだ。「同じエールストライクというモチーフですが、頭身も違うし商品の特性も全く違います。それぞれのアレンジも違う。同じモチーフだからこそシリーズとしての表現の違いも比べて楽しんで欲しいと思います」と戸谷氏は語った。

 食玩はコストとフォーマットが厳密に決まっている。ガンプラやアクションフィギュアではモチーフごとにまちまちの価格設定、パッケージの形態も選べるが食玩は異なる。シリーズで厳密にコストが決まり、大きさも決まっている。様々なボリュームを持つガンダム作品のMSの場合、表現できないモチーフもある。

 その枠を越えたのがプレミアムバンダイによる受注販売だ。プレミアムバンダイでオプションパーツやエフェクトパーツを販売することもあれば、大型アイテムを販売することも可能となった。受注販売の枠ができ、シリーズ展開にも幅が持たせられ、今までできなかった企画も可能になったという。「“夢”として何かやりたいものは?」という質問をぶつけてみたが、戸谷氏は「ムチャクチャ大きいGフレームを使ったサイコガンダムとか面白そうですよね(笑)」と答えた。

戸谷氏はユニークなモチーフを今後どんどん企画していくという

 ユーザーへのメッセージとして戸谷氏は「『Gフレーム』でアナザーガンダムが始まりますし、『FW GUNDAM CONVERGE』は10周年となります。この10周年を記念するラインナップは鋭意企画中です。皆様に驚いていただけるものになっています。ぜひご期待下さい」と語りかけた。

 改めて食玩というものの魅力、コスト管理の面白さなども聞くことができたと思う。今後どんな動きがあるか注目したいところだ。