ネクソン、「メイプルストーリー」開発・運営インタビュー
生産要素を導入し、モンスターを仲間にできる「ルネッサンスアップデート」
株式会社ネクソンは、MMORPG「メイプルストーリー」において「ルネッサンスアップデート」を実施する。このアップデートは2回に分けて行なわれ、1次アップデートは7月13日、2次アップデートは夏に実施される予定だ。7月13日の1次アップデートでは、モンスターを仲間にできる「モンスターファミリア」、モンスターの魂を武器に入れる「魂の武器」という2つの日本オリジナルコンテンツと、高レベル向けのコンテンツ「未来への扉」が実装される。さらに全職業のスキルの改変が行なわれる。
夏に予定されている2次アップデートでは、「メイプルストーリー」に生産要素をもたらす「専門技術」、それに呼応する農場システム「ファーミング」が実装される。さらにプレイスタイルに合わせてボーナスが得られる「性向システム」も実装される。2つのアップデートで、「メイプルストーリー」は大きく生まれ変わりそうである。今回はNEXON Korea ライブ1本部ライブ2室長のイ・ヒヨン氏と、ライブ1本部ライブ2室日本メイプルチームチーム長のファン・ソヨン氏、日本運営のネクソン運用部ゲーム運用3チームの中西啓太氏にインタビューを行なった。
■ モンスターを仲間にできる「モンスターファミリア」、モンスターの魂を武器に入れる「魂の武器」2つの日本オリジナルコンテンツを実装
【1次アップデート(7月13日実装予定)】
・モンスターファミリア(日本オリジナル): モンスターを仲間にできる。ドロップアイテムの「ファミリア」を入手することで可能に。「ペット」の様に付いてきて、自動的に攻撃。
・魂の武器(日本オリジナル): モンスターの魂を「魂の書」を使って封じ込めることで、強力なスキルが使える。ボスモンスターの魂でさらに強力に。
・未来への扉: レベル170以上の冒険者による、3人以上18人以下の遠征隊で挑戦可能なコンテンツ。1日1回挑戦可能。
・スキルの改変: 「英雄」と「デュアルブレイド」は新スキル追加。その他の職業も、ほぼ全スキルが改変に。
NEXON Korea ライブ1本部ライブ2室長のイ・ヒヨン氏 |
ライブ1本部ライブ2室日本メイプルチームチーム長のファン・ソヨン氏 |
日本運営のネクソン運用部ゲーム運用3チームの中西啓太氏 |
――今回実装される「モンスターファミリア」は日本オリジナルコンテンツだそうですが、韓国に先がけてこの要素が実装された経緯を教えてください。
イ氏: 「メイプルストーリー」は各国でサービスされていますが、日本のユーザーはゲームに慣れていて、独自の価値観を持って要望してくると感じています。こちらもそれに答えたいと思いました。
中西氏: 日本のユーザーさんの要求は様々で特に「楓城」や「デュアルブレイド」のストーリーなど、日本オリジナルのコンテンツの人気が高く、今回新システムを先行で入れてみました。もちろん韓国のコンテンツを早く入れて欲しいという要望も多くこちらも継続して行なっていきます。今回の日本オリジナルシステムへのユーザーの反応は気になります。
――「モンスターファミリア」は、どのようにモンスターを仲間にするのでしょうか。また仲間にできるモンスターはオリジナルと同じ強さですか? 育成などはできるでしょうか。
ファン氏: モンスターを仲間にするのはモンスターを倒し「ファミリア」というアイテムを入手しなくてはなりません。仲間となったモンスターは少しバランスは調整されますが、基本はオリジナルと同じ強さです。強力なモンスターを仲間にできれば、強力な仲間にできます。育成は少しですが夏に実装される「調教師」ができるようになります。
モンスターは育成よりもコレクション性と状況に合わせて使いこなす楽しさにフォーカスしています。モンスターの属性を把握し、有効な状況で使いこなして欲しいですね。
イ氏: 仲間にできるモンスターは500種類以上で、「一部のボスモンスターをのぞくほとんどのモンスター」を仲間にできます。仲間にできるモンスターは本当に多彩です。
――モンスターは最大で何体まで所持可能ですか。
ファン氏: 1種類につき3体ですが所持制限はありません。全種類所持することも可能です。通常呼び出せるのは1体ですが調教師ならば同時に3体使役できます。
「ファミリア」には、「一般」、「特別」、「レア」、「伝説」とという等級があり使用するスキルなどが変わります。レア度が高い方が強力になります。「メイプルストーリー」のユーザーは、1~2時間くらい狩りをする人が多いですが、それで一般は手に入ると思います。伝説は本当にレアだと思いますが。
「モンスターファミリア」はトレーディングカードゲームの楽しさを「メイプルストーリー」に入れられないかと導入したシステムです。「ファミリア」は他の人と受け渡し可能なので、交換や交渉にも使ってもらいたいですね。狩りで有効だから欲しい、かわいらしいから欲しい、といった形でトレードしてもらいたいです。
――次に「魂の武器」ですがこちらも日本オリジナルということですが、この導入の経緯は?
ファン氏: プレーヤーキャラクターが高レベルになると、より強い武器が欲しくなります。「魂の武器」はその要望に応えた要素です。以前「潜在能力」という強化要素を入れましたが、今回は久しぶりの強化となります。
イ氏: 既存の武器に、「魂の書」を使ってモンスターの魂を封じ込めることで強力なスキルが使えます。ボスモンスターの魂を利用できればより強力になります。「魂の書」はモンスタードロップ、ガシャポン、イベントでの入手といった方法があります。また、後述する「錬金術師」が作ることもできます。
――次に韓国でも実装されている要素について質問します。スキルの改変を全ての職業で行なったとのことですが、この時期に何故行なったのでしょうか。
イ氏: 「メイプルストーリー」は7年以上続くコンテンツでありバランスの調整は何度か行なっています。韓国では今回のような調整は一気に行なうのではなく、何度かにわけて行なったので、大きな反響はなかったですね。やはり特定の職業が人気を集めてしまうので、不人気な職業をパワーアップするという狙いもあります。
日本のプレーヤーとの違いとしては、韓国のプレーヤーは新しく追加される職業に積極的に挑戦し次々とプレーヤーキャラクターを変える人が多いです。一方、日本のプレーヤーは初期に作ったキャラクターにこだわる印象があります。次々と遊ぶキャラクターを変える韓国のプレーヤーは、スキルバランスに関しても日本のプレーヤーほどこだわりがないのかもしれません。
中西氏: 今回は、韓国のアップデートをまとめた形での調整となります。「このスキルが弱くなった」、「これは強すぎでは?」という意見は出ると思いますが、バランスは見ていますのでご理解いただければと思います。もちろん実装後も皆さんの意見を受けた形でバランスは見ていきます。
――次に、レベル170以上のキャラクターのみ挑戦できるという高レベルコンテンツ「未来の扉(遠征隊)」ですが、こちらはどんなコンテンツですか。
ファン氏: 1日に1回だけ最大で18人で挑戦できる高レベルコンテンツです。前回「ヴァンレオン」というコンテンツが追加されたのですが、これに匹敵する歯ごたえのある敵が登場し、パーティの連携が求められます。慣れたプレーヤー達でもクリアまでは3~5時間以上はかかると思うので、気合いを入れて挑んでもらいたいですね。これまでで1番難易度の高いコンテンツです。
イ氏: 高レベルのユーザーをただ集めるだけではダメで、敵のコントロールをうまくできる人などプレーヤースキルが求められますし、有能なプレーヤーを何人も確保しログイン時間を合わせるような、現実のマネジメントスキルも求められると思います。多人数でなければ難しいコンテンツです。
モンスターを仲間にできる「モンスターファミリア」。レア度によって使うスキルが変わる | ||
倒したモンスターから魂を吸う「魂の武器」 |
■ 2次アップデートでは生産要素「専門技術」、「ファーミング」を実装。プレイスタイルの方向性を強化する「性向システム」
【2次アップデート(夏実装予定)】
・「専門技術」の導入: 生産要素。全6種で、1キャラクター2つまで習得可能。スキルは使うごとに、熟練度が上がり、スキルレベルが上昇する。
「調教師」:狩猟家の捕獲したモンスターから、ファミリアを生成・育成することができる。
「狩猟家」:モンスターを狩り、モンスターの小屋(ケージ)に閉じ込めることができる。
「錬金術師」:アイテムを合成し、新しいアイテムを作り出すことができる。
「採集家」:フィールドに散在している薬草を採取し、その薬草で各種オイルを作ることができる。
「匠人」:メイプルの全ての装備をつくることができる技術。アンドロイドを製作することができる。
「採掘師」:フィールドに散在している鉱石・宝石・クリスタルの原石が採集できる。
・釣りシステムの改善: “魚を釣り上げる感覚”を追加。釣りが可能なマップも増加予定。
・性向システム: キャラクターの行動によって「性向」指数が上がっていく。
カリスマ: ボスモンスター、マスターモンスター狩り
感性: 採集または特定クエストクリア
洞察力: 採掘、未確認アイテム鑑定、特定クエストクリア
器用さ: 製作
魅力: 人気度上昇、整形、スキンケア、追加アイテム装備
意志:グループクエストクリア
ツルハシのマークが頭に出る「採掘師」成功すると花火が上がる |
「錬金術師」はフラスコのマークだ |
金槌は「匠人」。メイプルの全ての装備をつくることができる |
――次に夏導入予定の「2次アップデート」ですが「メイプルストーリー」に生産要素を導入するというのは大きな変化ですが、なぜここで大きな変化を迎えることになったのでしょうか。
ファン氏: これまでの「メイプルストーリー」は戦闘が中心でシンプルなゲームでした。プレーヤー達は華麗な戦闘テクニックでゲームを進めていた。しかし一方で、それほど戦闘が得意じゃなかったり好きでないユーザーに向けてのコンテンツを作りたいと思っていました。もっと違う楽しさをもたらしたいと思いました。
イ氏: 「メイプルストーリー」は全世界のユーザーに向けた、より幅広い楽しさを提供するコンテンツに成長しています。本作の初期の開発者もNEXONにいますが彼等もこの変化を面白いと言ってくれましたね。
――2次アップデートの「専門技術」ですが、「調教師」や「狩猟家」など「モンスターファミリア」関連の職業も入っていますが、韓国ではどのように導入されたのでしょうか。
イ氏: 「専門技術」に関しては、韓国では「モンスターファミリア」の要素は入っていません。「モンスターファミリア」は日本での反応を見てから他の国での導入を検討していきます。「専門技術」は韓国では一部の生産職が導入されましたが、他の要素と一緒に入れました。生産要素は韓国のユーザーからも好評でした。日本ではより生産に特化させた形での導入になります。日本のユーザーさんには喜んでもらえると期待しています。
――生産要素がゲームのバランスを変えてしまうことはあるのでしょうか。
ファン氏: 最も大事なところが崩れるというのはないと思います。最上級の武器などは今すぐに作れなかったり、回数制限があったり、努力が必要だったりと限定された形になります。また「メイプルストーリー」は大きな視点での経済バランスを取れるように設計していますので、問題はないと考えています。
――次に各職業についてですが、「調教師」と「狩猟家」は「モンスターファミリア」をパワーアップする職業でしょうか。
ファン氏: 「モンスターファミリア」でモンスターを仲間にするには、これまでは「ファミリア」というアイテムを入手しなくてはいけませんでしたが、「狩猟家」がケージという捕獲アイテムを使えば捕まえられます。腕の良い狩猟家が、良いケージを使えばレアなモンスターも捕まえられます。ちなみにケージは通常のものはNPCが販売していますが、良いものは「匠人」でなくては作れません。
「調教師」は狩猟家からモンスターを受け取り仲間モンスターにできます。調教師はモンスターにエサをあげるなど世話をして、仲間モンスターのステータスをアップできます。仲間モンスターは他のプレーヤーに渡すことが可能なほか、調教師は通常は1匹しか連れ歩けない仲間モンスターを3匹まで連れ歩けます。
――錬金術師が作れる「新しいアイテム」というのはどういったものでしょうか。
ファン氏: 錬金術師はアイテムを使った「合成」が可能です。合成には決められた組み合わせの「レシピ合成」と、最大4つまでのアイテムをランダムにできる「ランダム合成」があります。完成するのはこれまでゲーム内に存在いなかった、という意味ではなく既存の物です。
――採取家の「オイル」はどんなものでしょうか。
ファン氏: 今回導入される新アイテムで錬金術師が使う材料になります。
――採掘師も1次生産職という感じですね。
ファン氏: 採取家、採掘師、あとは釣りで得られるアイテムなどは他の職業の材料になります。狩猟家も1次生産職です。専門技術は1キャラクターで2つまで習得可能で、スキルを使うことで技術を上昇させられます。
――匠人のアンドロイドはどんなものでしょうか。
ファン氏: 自分のキャラクターとは性別が異なるロボットです。戦闘力のない自分の分身で、戦場に連れて行ってもダメージは受けません。服を着せることができ、命令することで「キスをする」など、さまざまなエモーションが可能です。プレーヤーキャラクターのレベルが上げると喜んだ仕草をしたりします。
――アンドロイドも連れ歩けるとなると仲間モンスターも含めかなりたくさんのキャラクターを引き連れることができますね。
ファン氏: 匠人で調教師ならばアンドロイドに仲間モンスターを3体、そして通常のペット、騎乗ペット、さらにキャラクターがエヴァンだった場合はドラゴンまでいますから大軍団になりますね。
――性向システムについてですが指数が上がるとどうなるのですか。
ファン氏: ボスモンスターやマスターモンスターを倒すと上がる「カリスマ」は取得経験値が増加し、モンスターの物理防御力無視、デスペナルティ減少など様々な特典がもたらされます。繰り返しやることでさらに効率の良くなるシステムです。
――では、日本の運営に質問します。今回「モンスターファミリア」そして生産要素と日本の要望を受けたコンテンツが実装されますが、これに関してどう思われますか。
中西氏: 日本オリジナルコンテンツということで、ユーザーさんの反応はとても楽しみです。今回の反応が良ければ今後の開発にも影響し、日本オリジナル要素開発の流れもさらに強化されるかもしれません。そういう意味でも期待しています。
今後というところでは開発と協議しながらコンテンツは実装していくのですが、僕個人では「和風」な新マップが実現して欲しいなあと思っています。具体的なものはまだないのですが、からくりのようなギミック、ユーザーさん達が協力する要素を入れたいですね。新規のユーザーと高レベルユーザーを繋げるコンテンツも考えていきたいと思っています。「ファーミング」などにもコミュニケーション要素を強化するなど、ユーザーさん達の反応を見ながら提案していきます。
――次にハッキングなどの問題を質問します。日本独自のシステムであるネクソンポイントで売買する「メイプル・トレードスペース」をアカウントハッキングで悪用し、ネクソンポイントを抜き取る手口が横行していますがこちらの対策はどうなさっていますか。
中西氏: 今年の頭から2次パスワードを導入していますが、最初にパスワードを設定する仕様なため、パスワードを設定していないユーザーIDがハッキングされここから被害が出ている状況があります。現在この対策を検討しています。
――ハッキングされたユーザーに対して補償など公式なアナウンスの予定はありますか。
中西氏: 現段階でネクソンではユーザーから報告があれば補償することは告知しています。対策に関しても今後も告知していきます。
――日本ではハッキング被害が増加していますが、他の国ではどうでしょうか。
イ氏: 現状ですと他の国はさらに深刻ですね。日本は比較すれば少ない方だと思います。欧米の国や大陸の国では被害も大きく運営が対策に追われています。韓国では常に技術的な対策、サポートをしていますが、国ごとに手口が異なるなど状況も複雑で、専門の対策スタッフを用意して、対処するようにはしています。
――ハッキング以外で、ユーザーから要望が大きく運営が対策に取り組んでいる問題点としてはどんなものがあるでしょうか。
中西氏: BOTとマクロを使用するユーザーの問題です。こちらとしてはある程度問題は特定でき、次回のアップデートで対応できると思います。ゲーム内のユーザーに「マクロ探知機」を配布したり監視を強化しています。今後も開発と協議しながら対策プログラムの開発と不正利用者の監視を行なっていきます。
――ユーザーへのメッセージをお願いします。
イ氏: これからも、「メイプルストーリー」はユーザーさんの好み要望を反映していきたいです。決められた枠ではなくもっと広い視点から、多彩な提案をしてください。多彩なプレイスタイルを支援できるゲームにしたいです。
ファン氏: 「メイプルストーリー」は成長していくゲームです。「専門技術」などのシステムが今回はいりますが、まだ入っていないシステムもあります。より「メイプルストーリー」らしいゲーム要素は、どんなものなのか、これからも考えながら導入していきます。皆さんと一緒に考えながら、楽しいメイプルワールドを作っていきたいです。
中西氏: 現在BOT問題などの心配事も多く新コンテンツを純粋に楽しんでいただけない状況は心苦しく感じています。今後さらにユーザーさんの不満を解消しつつ、新コンテンツを導入していきたいと思っています。
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(2011年 7月 6日)