インタビュー

「アイデアは毎週思いつく」。ホラーゲームの新星「BrokenLore」シリーズ手掛けるセラフィニー氏インタビュー

発売迫る最新作「UNFOLLOW」を体験。“びっくり”より心に残る恐怖へ

【BrokenLore: UNFOLLOW】
1月16日 発売
価格:
3,080円(PS5通常版)
3,500円(PS5デラックス版)

 松竹ゲームズは、プレイステーション 5/Xbox Series X|S/Steam用ホラーゲーム「BrokenLore: UNFOLLOW」を1月16日に発売した。価格は3,080円(PS5)より。本作は、ソーシャルメディアがカルチャーとして根付いた、現代社会を起点としつつ、その陰に隠された身近な社会問題にスポットを当てる一人称ホラー作品だ。作中には海外の有名インフルエンサー・Akidearestさんや、Kniteさんも登場している。

 開発元のSerafini Productionsは、これまでも「BrokenLore」シリーズとして、サイコロジカルホラーを送り出してきた。昨年は日本を舞台にした「BrokenLore: DON'T WATCH」、「BrokenLore: LOW | 霧雨村」の2作が発売されている。本作「BrokenLore: UNFOLLOW」(以下、「UNFOLLOW」)は、そんなシリーズの最新作にあたるタイトルではあるが、本作からでも楽しめる内容として開発されているという。

 今回は、ゲームの発売を直前に控えて実施された、メディア向けの試遊会の所感を交えつつ、Serafini ProductionsのCEOであり、同社のゲームデザイナーでもあるセバスチァーノ・セラフィニー氏にお話を伺った。

【BrokenLore: UNFOLLOW | OFFICIAL TRAILER 2025】
BrokenLore: UNFOLLOW

アンの視点、プレーヤーの行動選択、フォロワーの視点が交差する生々しいSNS演出

 現在、Steamでは体験版が配信されているが、今回試遊したビルドでは、配信中の体験版と異なるパートを遊ぶことができた。早速ゲームを始めると、とある一室で主人公のアンが目覚める。やや散乱した部屋の床には、ペット(?)の猫が呑気にくつろいでいて、インタラクトすることができた。猫を撫でまわしていると、突如左下にアンのSNSフォロワー数が表示されて、カウントが増えていく。

 本作は「ソーシャルメディアの暗い側面」を題材としており、作中ではアンの行動に応じてSNSフォロワー数が増減する仕組みが採用されているという。アンの視点でビビりながらプレイしているプレーヤーと、危機に見舞われるアン自身が、不特定多数の人にとってはエンタメとして映る……だいぶ生々しい演出である。

 抜け出した部屋から廊下を歩いていると、そこが海外の学校内であることが分かった。廊下の壁に沿って並ぶ無数のロッカーは、海外ドラマでも頻繁に目にする光景だ。しかし、学びの場であるはずの校舎は暗く、荒れるに荒れ果てている。辺りをぼんやり照らす蛍光灯の光のなかを進んでいくと、自分か誰かの物音なのか、もはや判別する気も起きないほどに不気味な環境音が反響していく。試遊から数分で、怖くてもうゲームを辞めたいとさえ考えていた。

 しばらく進み、何故かデッサン人形たちが着席している謎の教室を抜けた後、誰かの母親が教員と教育方針について揉めている過去のフラッシュバックを目撃することになった。記憶喪失のアンの過去なのか、それともまた別の生徒の記憶なのか……。

 本作はホラーでありながら、探索中に発生するイベントと、拾ったアイテムから状況を推察していく過程がポイントだ。物語の展開を最後まで見届けて「答え合わせ」したくなる、プレイの動機付けになっている。また、リニア式の構造を採用している点も、“お化け屋敷感覚”で進めやすい設計だろう。広いマップを行き来しながら探索するゲーム性ではなく、道なりに進んだ先でイベントごとに探索パートの区切りがある。基本的に道を引き返す必要がなく、前に歩きさえすれば確実に結末へと前進する手応えがある。

 試遊ではその後、体育館に到着する。中央にポツンと1つだけ用意されたテーブルには、学生証を入れる回収箱と、布切れで隠された大きな装置がある。回収箱の両隣には赤と緑の2つのボタンが置かれており、ボタンの配線は装置へと続いている。何とも怪しさ満載である。さらに、その奥側にはこれまた不気味な巨大な肉塊が邪魔しており、先へ進むことができない。

 体育館の奥に行くためには、この巨大な肉塊をなんとかしなければならないようだ。直後、イベントシーンが始まり、体育館に吊り下げられたモニターからは、アンのトラウマを抉るいじめっ子たちのビデオメッセージが放送される。

 このパートで鍵を握るのはやはり「学生証」。道中では、アンが受けたいじめ行為の数々を見ていきながら、3人いるいじめっ子たちの学生証を回収することを目指す。途中では怪物化したいじめっ子たちに追いかけ回されて、怖い思いをしたが、すべての学生証の回収に成功。学生証を回収箱へと入れると、筆者は彼らを「許す」か、「復讐」するかの決断を迫られることとなる。

 これ以上はさすがにネタバレになるので以降の展開について触れるつもりはないが、自分の決断でアンのSNSフォロワー数が減ったのを見て、何とも言えない複雑な気持ちに陥ったりもした。実はその後もトンデモない展開がアンを待ち受けていたりするが、ぜひ本編を遊んで確認してほしいと思う。

プレーヤーの「不安」に寄り添いたい。どこからでも入れる「BrokenLore」ユニバース

 ここからは、セラフィニー氏へのインタビューをお送りする。

Serafini Productions CEO 兼 ゲームデザイナーのセバスチァーノ・セラフィニー氏

――本日はよろしくお願いします。早速ですが「BrokenLore: UNFOLLOW」のホラーゲームとしての手応えについてお聞かせください。

セラフィニー氏:「UNFOLLOW」は、いわゆるホーンテッドハウス的な「びっくり」より、プレイ後に心に残って「あとから考えると怖い」タイプの恐怖を目指しています。それは実社会に実在する問題を考えたときの怖さや、主人公のアンと同じような経験(トラウマ)を持つ人のことを思うと、複雑な気持ちになるような、第三者からの視点で見た怖さと言えるかもしれません。

 本作では、仕掛けで直接的にプレーヤーたちを怖がらせるよりも、どちらかと言えば身近な社会が抱えている問題提起といったメッセージ性を大事にしました。また、本作のようなサイコロジカルホラーだからこそ、他のゲームジャンルよりもメッセージ性を伝えやすいのかなとも考えています。

 我々はゲームの設定を考えるというより、まずは「社会問題」というテーマから、学校だったり日本だったりと、ロケーションを決めます。登場するクリーチャーもそこに合わせてデザインしていきました。例えば、過去作の「DON'T WATCH」には、目玉がたくさん付いたクリーチャーが登場します。

 「DON'T WATCH」の主人公は「引きこもり」であり、他人から見られることを恐れています。そのため彼にとってのトラウマを引き立たせるクリーチャー造形にしよう……といった感じです。「BrokenLore」シリーズは、人生の悩みとか日常生活に潜む社会問題を、ホラーゲームのエッセンスに落とし込んでいるのが特徴的ですね。

画像は2枚とも「BrokenLore: DON'T WATCH」のもの

――メッセージ性を強調されていますが、そこにはどのような意図があるのでしょうか?

セラフィニー氏:今の状況で悩んでいる人や、不安を感じている人に向けて、「大丈夫だよ」と伝えたいと思っています。「DON'T WATCH」では、外に出るのが怖くてアパートから出られない主人公が、最後は光を目指していくような希望のある着地を目指しました。

 自分は同作で音楽を手掛けていて、エンディングテーマも歌ったりしています(笑)。そんな中、最後までゲームを遊んでくれたプレーヤーたちのフィードバックで、こちらのメッセージが届いたと感じられた反応を得られたのが当時すごく嬉しかったのです。だから、特定の状況で悩んでいる方や、不安を感じている方に対する、メッセージっていうのが一番にある感じですね。

 もちろん、ゲームに込めたメッセージ性がちゃんとプレーヤーたちに届くかどうかは、個人差があると思います。こちらの意図がプレーヤー全員に届くとは思いません。それでも、やはり一部の人に伝えることができると嬉しく感じられます。

――「Broken Lore」シリーズは作品ごとに舞台が違うようですが、「UNFOLLOW」と過去作との繋がりについて教えてください。

セラフィニー氏:現在「Broken Lore」シリーズは、「DON'T WATCH」、「LOW | 霧雨村」の2作が発売されており、今回の「UNFOLLOW」でシリーズ3作目となります。「DON'T WATCH」と「LOW | 霧雨村」は、「UNFOLLOW」に比べるとコンパクトなボリュームのゲームですね。

 さらに今後発売予定の「ASCEND」では、東京タワーを題材にしています。「DON’T WATCH」のスピンオフ作品「DON’T LIE」も発売予定で、いずれも“日本”モチーフですね。シリーズの設定は繋がっていますが、ゲームそのものはどこから遊んでも大丈夫なように開発しています。ただ、過去作の特定のエンディングを見ると、シリーズ同士の繋がりを感じさせるネタが仕込まれているので、プレイしたユーザーはニヤリとできるかもしれません。あくまで「BrokenLore」ユニバースとして世界観が繋がっているイメージです。

今後発売予定の“東京タワー”を題材にした「BrokenLore: ASCEND」

――現在は20名規模でゲーム開発を進めているとお聞きしました。その規模感で今後の新作をどんどん発表していくというのも大変そうですが……。

セラフィニー氏:はい。まあ、これからスタジオを大きくしていけるかなと思いながら(笑)。開発はグローバルなリモート体制で進めています。日本人、ヨーロッパ、アメリカのメンバーがいますが、時差があるので、24時間常に誰かがプロジェクトを動かしている状態です。

 ただ、自分の中で毎週新しいゲームのアイディアが出てくるので、ゲームデザインドキュメント(GDD)が30個ぐらい溜まっている状況です。正直、それら全てを最後まで作れるかどうかはわからないんですけども、「いろんな場所」「いろんなトラウマ」「いろんな設定」のアイディアがたくさん生まれるので……もう本当に止まらない(笑)。

 たまに僕らに宛てたメッセージがユーザーさんから届くこともあるんです。そこには「I have an idea」、ゲームのアイデアがありますって書かれているんですが、そもそも自分が作りたいものを作れていないという(笑)。

――(笑)。制作を応援してくれるパブリッシャーがいたらどんどん作れそうでしょうか?

セラフィニー氏:もちろん嬉しいですが、パブリッシャーいなくても、たくさん「BrokenLore」を作れる状態にはしたいですね。パブリッシャーといえば、我々にとって松竹ゲームズは、1番最初に決まったパブリッシャーでした。日本でこんなに歴史の長い会社が……!?って本当に驚きました。

 当初はもっと新進気鋭のパブリッシャーをイメージしていました。僕としては松竹というと「歌舞伎」などのエンターテイメントがイメージ的に強くて。でも、“イタリア人が作る社会問題のホラーゲーム”でも、滞りなくパブリッシングを担当してくれて。「DON'T WATCH」も松竹ゲームズなので、本作で2作目になります。嬉しい限りですね。

――色々な方に聞かれていると思いますが、セラフィニー氏は日本語が流暢ですよね。そこに付随して日本のホラー作品からの影響もあるのでしょうか?

セラフィニー氏:そうですね。実は自分が子供の頃、「日本」を舞台にしたホラーゲームが好きだったんです。「SIREN」や「零」とか。ホラー小説では「リング」も読んでいました。日本語が話せるようになったのはそうした影響が大きいと思います。

 ただ、最近は自分たちのゲームしかプレイできていないので、新作のホラーゲームは遊べていないんですよ(笑)。なので、影響という意味では、子供の頃に遊んだ日本のホラーゲームが一番に来るのかなと考えています。

――アイデアを毎週思いつくということですが、着想はどのように得るのでしょうか?

セラフィニー氏:「DON’T WATCH」は事故物件のサイトを見て「あ!」と来ました(笑)。「UNFOLLOW」では、インフルエンサーのAkidearestさんが友人ということもあり、彼女から聞いたインフルエンサーならではの悩みや問題が元ネタになっています。彼女とランチをしながら話を聞いていたとき、「えっこんなに成功している人でもこういう問題があるんだ」と思いましたね。

 あと、本作「UNFOLLOW」というサブタイトルの通り、自分がSNSでフォローしてても、逆にフォローを外されちゃうと「許せない」みたいな(笑)。……これは冗談ですが、そんな思いも入っています。

――(笑)。ゲーム中でもフォロワー数が増減していました。

セラフィニー氏:あの世界を基準にしてつまらない行動を取ると、ちょっとずつフォロワー数が減っていく仕掛けです。とはいえ特にゲームには影響せず、あくまでもシンボリックな演出に留めています。あることが大事かなと。主人公のアンが、常にSNSに囚われているということを表現しています。

――最後に日本のホラーゲームファンに向けてメッセージをください。

セラフィニー氏:まずは「BrokenLore: UNFOLLOW」をぜひ楽しんでいただけたらと思います。シリーズはこれからもたくさん登場しますし、僕自身が日本国内に住んでいることもあるので、「日本」という舞台設定を活かした過去作の魅力も伝わりやすいのではないかと自負しています。

 「UNFOLLOW」は日本を舞台にした作品ではありませんが、日本に住んでいるからこそ、日本のニュアンスが多少なりとも入った作品です。当初のデモ版では日本語対応もしていませんでしたが、そんな中でも日本のホラーファンたちによるゲームプレイが盛り上がったこともあって、より日本に近づけた作品づくりを考えるようになりました。ぜひ、楽しみにしていてください!

――本日はありがとうございました!