インタビュー

「ステラーブレイド」×「NIKKE」コラボ記念 番組レポート&インタビュー

「『NIKKE』をやるならこれくらいやらないと」。“やりたい放題にできた”コラボの裏側を聞く

【Stellar Blade × 勝利の女神:NIKKE コラボ】
6月12日 開始予定

 SHIFT UPが誇る2大タイトル「勝利の女神:NIKKE」と「Stellar Blade」(ステラーブレイド)のコラボDLC実装を記念して、都内某所の特設スタジオで対談番組の公開収録が行われた。

 対談番組では、SHIFT UP代表キム・ヒョンテ氏と「NIKKE」総括ディレクターのユ・ヒョンソク氏、そして司会として元ソニー・インタラクティブエンタテインメント-インディーズ イニシアチブ代表の吉田修平氏が出演し、今回のコラボ内容が語られていった。

 筆者はこの貴重な収録現場に足を運び、番組の様子を間近で取材。さらに、収録後にはプロデューサー陣へのインタビューも実施することができた。本記事では、番組の見どころから収録中の舞台裏、そしてコラボに込められた開発者の想いまで、余すところなくお伝えする。

「NIKKE」と「Stellar Blade」とは

 「NIKKE」は、スマートフォン・PC向けに展開されているガンシューティングRPG。“背中で魅せる”をキャッチフレーズに、美麗なアニメーションと緻密なシナリオで多くのファンを惹きつけている。

 一方「Stellar Blade」は、2024年にプレイステーション 5でリリースされたアクションアドベンチャー。美しくも過酷なポストアポカリプスの世界を舞台に、主人公イヴの戦いが描かれる。

 いずれもSHIFT UPが開発した作品であり、今回のコラボは6月12日より双方の作品で同時に実施される。どちらも人気タイトルであり、自社内ながら豪華な夢の共演と言えるだろう。

【勝利の女神:NIKKE】
【Stellar Blade】

紅蓮の新衣装も登場!ボリューム満点のコラボに注目

 番組の司会進行を担当したのは、元SIEの吉田修平氏。現在はプロデューサーや評論家として知られているが、この珍しい人選に、観客からは「えっ吉田さんが!?」と驚きの声も上がっていた。

 現場で特に印象的だったのは、吉田氏が「NIKKE」のキャラクター名の読み上げに何度もつまずいていた場面。リハーサル中、何度も「プリパティ…じゃなくて…プリバ? プリパ? あれ?」と苦戦する姿に、スタジオはほっこりとした笑いに包まれた。開発陣も笑顔でフォローしつつ、その姿に親しみを感じたという声も多かった。

吉田修平氏

 収録の冒頭では、キム氏によって今回のコラボの経緯がユーザーたちの投稿だったことが明かされた。人類が滅亡し、地下に降りてアークを作ったのが「NIKKE」、宇宙に逃げた人類が登場するのが「Stellar Blade」、ふたつの世界観は似ているという投稿を見て、「あっ、それいいかも」と思ったそう。

 一方で、ユ氏は「作ってみたらかなり後悔しました」とこぼす。自社コラボなので他社コラボよりも気楽に作れるのではないかと考えていたそうだが、実際は両IPのチーム同士が競いあったことで、今まで以上に高いクオリティを目指したそう。思いきりハードルが上がり、そこが誤算だったと苦笑いしていた。

SHIFT UP代表のキム・ヒョンテ氏
「NIKKE」総括ディレクターのユ・ヒョンソク氏

 その一例と言えるのが、「Stellar Blade」における「NIKKE」のゲームを再現したコンテンツだ。キム氏は、「中途半端にバランスを取るようなことにならないよう、しっかりと再現することに尽力しました。ある意味では『NIKKE』が3Dになったらどうなるんだろうというユーザーたちの好奇心を解消してくれる形の表現に仕上がったと思っています」と力強く語った。

【『Stellar Blade』x 『勝利の女神:NIKKE』- トレーラー】
収録スタジオには、日本円でおよそ60万円という高額にもかかわらず即完売したJNDスタジオ製「1/3 スケール “Eve & Tachy”」のフィギュアが置かれていた

 番組内では「NIKKE」に実装される「Stellar Blade」コラボの内容も紹介された。今回のイベントストーリーでは、カウンターズの3人プリバティやエレグが「Stellar Blade」に登場するイヴ、リリー、アダムと共に物語を繰り広げる。

 また、「Stellar Blade」の3名はキャラクターとして入手も可能だ。見目麗しい衣装も多数用意されているので見逃せない。概要は以下の通りだ。

NIKKE×Stellar Blade コラボレーション概要

実施期間:6月12日(木)~7月2日(水)
・ゲーム内にてStellar Bladeイベントを実装
・イヴ、レイヴン、リリー、アダムがゲーム内に登場
・専用ミニゲームの実装

・イベントストーリー

 二つの末世世界を跨ぐコラボレーションにおいて、イヴ、リリー、アダムは神秘の力により時空を越え、ラプチャー支配後の荒廃地表に墜落。四足輸送機「テトラポッド」が損傷し、彼らは見知らぬ世界に閉じ込められる。輸送ロボット「Rom」が彼らを発見し、アークから来たカウンターズと主人公に連絡する。

【イヴ】
【レイヴン】
【リリー】
【コスチューム】

まさかのヨコオタロウさん登場と「ニーア」コラボの復刻が発表!

 番組内ではサプライズゲストとして「NieR」シリーズプロデューサーの齊藤陽介氏と「NieR」シリーズのディレクターのヨコオタロウ氏が登場。それぞれの作品や制作への思いについて語り合った。

 「NIKKE」「Stellar Blade」の開発陣は、「NieR:Automata」に大きな影響を受けたことを明言。キム氏は「人生を変えたゲーム」、ユ氏は「開発者としての教科書」と表現し、以前両タイトルで実施された「NieR」とのコラボは大きな喜びだったと語った。

 対談の最後にユ氏より「勝利の女神:NIKKE」において、「NieR:Automata」コラボが7月3日から復刻されることが発表された。2023年9月1日に開催されたコラボイベントで、復刻は今回が初めてとなる。

【「勝利の女神:NIKKE」×「NieR:Automata」コラボレーション】

収録後インタビュー:SHIFT UPが描く“融合”と“感謝”

 収録後、ユ・ヒョンソク氏、キム・ヒョンテ氏、吉田修平氏に今回のコラボと「NIKKE」について直接話を伺うことができた。

吉田氏(左)、キム氏(中)、ユ氏(右)

――今回のコラボの見どころはどこでしょう?

ユ氏:まずストーリーですね。同じポストアポカリプスの世界観を共有している両作品だからこそ、違和感なく融合できたと思います。

 特に“記憶”というテーマを軸に、キャラクターたちが深く交錯していく物語になりました。「NIKKE」側の3DフィールドにはStellar Bladeのファンならニヤリとする小ネタやオマージュが多数散りばめられています。もちろんバトル面でも見どころが多く、「Stellar Blade」の「プロヴィデンス・エグゾスーツ」を相手にしたボス戦も登場します。

キム氏:注目いただきたいところとしては「Stellar Blade」側で「NIKKE」の人気キャラ「紅蓮」による“剣対剣”の戦いが実現したことです。これまで遠距離で戦っていた彼女が、今回初めて近接戦を披露するのは、ファンにとっても大きなトピックになると思います。紅蓮は「Stellar Blade」世界でも最強クラスの相手になるはずです。

 また今回のコラボでは、キャラクターの魅力に集中する内容にしました。また、自社IPによる初のクロスコラボだったので、できること、つくれるものが沢山ありすぎて困りました。

 開発には長い時間を要してしまいましたが、「NIKKE」の戦闘シーンを「Stellar Blade」で再現したり、「NIKKE」のコンテンツのひとつ「宝もの」の要素などを組み込んだりもしました。正直、私の方からチームに「そこまでする必要はあるのか」と言いたくなるぐらいの熱量で開発されました。スタッフのみんなに本当に感動していますし、感謝しています。

吉田氏:さっきちょっとこっそり見せてもらったんですけど、どっちもすごいです。


「最近『NIKKE』の戦闘シーンに似たゲーム画面をみかけることがありますが、『NIKKE』をやるならこれくらいのことはしないと」とキム氏は語る

――コラボ制作において、「NIKKE」と「Stellar Blade」のチームはどう反応してましたか?

キム氏:実は自社コラボだったこともあり、これといった制限がありませんでした。それで、「Stellar Blade」の発売日の時にコラボすることをポロっと言ってしまったんですよね。開発チームのみんなは、少し驚いたかもしれません。私が「Stellar Blade」のリリース日にあまりにも興奮(?)してしまい、「コラボやります!」と一方的に宣言してしまったような形になったので……。そのせいで「Stellar Blade」チームはPC版の開発もあるなかで、コラボ用のコンテンツも同時並行で開発するというなかなかタイトなことになってしまいました。

 そのため、私の方からこうしてほしいなど、これと言って要望はせず、自由に開発を任せました。なのですが、自由に作る中でメンバー同士の競争に火がついて、温度感がどんどん上がってました。内容についてもお互いにやりたいことをやりたい放題、自由にできたコラボでした。

ユ氏:実はキムの発言が記事になっているのを見て、私はこのコラボについて知りました。キムからはPC版「Stellar Blade」の準備と同時並行になるから、コラボ用のコンテンツはベストなものを提供できないかもしれないと聞いていたのですが、実際に開発中のビルドをみたら驚くほどクオリティの高いものがつくられていました。

 思わず「NIKKE」チームに「大変だ、あっちはすごいものを作っている」と伝えなきゃいけないと思ったほどです。それに刺激されて「NIKKE」チームの方も張り切って開発を頑張れました。

――吉田修平さんから見たSHIFT UPスタジオの印象は?

吉田氏:最初にSHIFT UPさんに伺ったのはコロナの前の2019年だったかな。実は私、その前にプレーヤーとして「デスティニーチャイルド」が好きで遊んでたんです。キムさんのキャラクターはとても可愛いし、Live2dのアニメーションが良かったのでずっと遊んでいました。その時、SIEで一緒に仕事しているメンバーが今度韓国に行くので、私にも一緒に行ってほしいと言われて、訪問したのがきっかけです。

 その時に「プロジェクトイブ」という「Stellar Blade」のプロトタイプを見せてもらって遊んだんですが、これはすごいと。実際遊んでみると、そのアクションがもうすでにすごく楽しかったですね。

 最初に訪れたオフィスは、1つのフロアがすごく綺麗になっていて、バーがあったりとおしゃれです。また、作中に登場する敵キャラクターのモデルが並んでいて魅力的でした。一方で開発者達が集まったフロアでは熱いものを感じました。

 「Stellar Blade」はキャラクターの造形、技術力、グラフィックスなど優れた点が多々ありますが、私の中ではバトルの手触り感が1番の成功の理由だと思っています。難しいけれども慣れてくると乗り越えられる、誰でも学んで遊びやすく、でも深いバトル、というところですね。そこに至るまでに多くのフィードバックを吸収して、常にゲームを改善し続ける姿勢が、SHIFT UPスタジオの魅力だと思います。

キム氏:吉田さんは「Stellar Blade」の母親のような存在です。「Stellar Blade」を発掘してくださり、世界中に届けられるきっかけを作ってくださいました。吉田さんはプレイステーションの誕生と、ゲーム全般が盛り上がっていた輝かしい活躍の時代を作られた方でもあります。ゲームを作るものとして、そしてゲームを楽しむいちゲーマーとしても、この時代を作ってくださったことについて本当に感謝しております。

――サービス2.5周年を迎えた現在、「NIKKE」で意識していることはなんですか?

キム氏:いま最も意識しているのは“安定化”です。トラブルを減らし、快適なビルド環境を保つことが、長く愛されるサービスに必要不可欠です。同時に、利便性や最適化にも継続的に取り組んでおり、今後のアップデートでさらなる進化をお見せできると考えています。

ユ氏:デベロッパーノートを書いていて、よくストーリーについてご期待くださいと記載してしまうのですが、1月に公開した前回は、4月に2.5周年が控えているにも関わらず「3周年のストーリーをご期待ください」と書いてしまいました。ですが、それだけ3周年のストーリーに対する期待が大きいんです。きっと楽しいストーリーになると思います。

□参考:2025年1月デベロッパー・ノート

――「NIKKE」の最新ストーリーではアニスの元アイドルグループメンバーなどが登場しました。彼女たちもニケである以上、戦闘は可能なのでしょうか? また、今後部隊に追加できるようになりますか?

キム氏:そうですね。ネタバレにつながるかもしれないので、部隊に追加できるかできないかというと、これは詳しくお伝えすることは難しいです。ですが、ニケである以上、彼女たちにも戦闘能力はあります。戦ったら強いかもしれないですね。

――ありがとうございました。


アニスの所属していたアイドルグループの元メンバー「プリカ」と「ミント」。本作では魅力的なニケが数多く登場する。彼女たちはもちろん、フォービーストのメンバーもぜひ実装してほしいと筆者は強く願う。