インタビュー
「FFXIV」プロデューサー吉田直樹氏「パッチ3.2」ロングインタビュー
「FFXV」とのコラボや「ドラゴンクエストビルダーズ」の話題も
(2016/2/22 00:00)
今年は新規獲得に注力、日本でのマルチメディア展開も!?
――北米で「ブレイドアンドソウル」がスタートして、「黒い砂漠」の展開も決まったり、韓国で「BLESS」が始まったりと新しいMMORPGが始まっていますが、そういった中で新しい展開などは考えておられますか?
吉田氏: 「ブレイドアンドソウル」や「黒い砂漠」はすでにリリース済みタイトルですし、プレイも調査もさせていただいたので、それに対抗して……ということは特にありません。
「FFXIV」も新生から今年で3年になり、これくらいの期間になると、プレーヤーの方は他のMMORPGとの比較ではなく、そのゲーム自体がおもしろいか、長く続けられるかどうかという比重のほうが大きくなります。ですので、自分たちの足元を見つめ直しながら、「FFXIV」として新しい遊びや展開を提示し続けることの方が、重要かなという認識です。
――あまり脅威は感じられていないということですか?
吉田氏: MMORPGの総数自体は増えて欲しいのです。そうでなければ市場における全体のプレイ人口が増えません。だからあまり敵視しているわけでもなく、意識しすぎているわけでも、大上段に構えて相手にしていないというわけでもなく、普通にしています。
――欧米での特別なプロモーションなどは考えていないということですか。
吉田氏: はい、他のMMORPGのローンチによって、何か特別なことを? と聞かれると、その予定はありません。欧米にはゲームメディアさんがすごく多様に存在していて、MMORPGに特化しているメディアさんも少なくありません。また、各メディアさんは、毎年しっかりと審査をするアワードを持っています。日本ではあまり注目されませんが、昨年2015年も非常に多くのアワードをいただきました。非常にシビアな観点で評価されますので、アワードを取れれば、それがきっかけになって、沢山のプレーヤーの方が新たに「FFXIV」をプレイしてくださいます。評価をいただくことは、開発チームのモチベーションにもなりますし、それがきっかけで古くならずに、しっかりとPRできますので、地道にアップデートを続けて、おもしろいものを作って行くことが一番かなと思っています。どちらかというと、日本の新規層をどうやって獲得するか、という方が大きな課題ですね。
――初心者の館も入りますが、日本での新規層獲得のためにキャンペーン的なものを考えていますか?
吉田氏: 今年はこの点を集中的にやっていこうと思っています。日本は“流行っている”、“流行っていない”、“新しい”、“新しくない”ということにものすごく過敏な市場です。ソーシャルゲームで育ってきたプレーヤーの方が増えていますので、その方たちを上手く本格的なオンラインゲームに誘導したいというのと、フリートライアルで入ってきている方たちが毎日・毎週一定数以上いるので、その定着率を上げていくことを課題に考えています。また、新規で始めた方が孤立しないよう、ベテランになった冒険者の皆さんと、上手く繋がりを作って行くことも、次に向けての大きなテーマだと考えています。
――具体的な予定はありますか?
吉田氏:施策としては今回の「3.2」でいろいろと準備は入っているので、後はやはりメディアや協業戦略かなと思います。日本の場合は大きなポイントになってきます。広告もすべてではなく、その1つだと思います。今は常時どこをどうスマホで見ていても、ソーシャルゲームのバナーが出ない日はないわけで、それを見かけることがある意味「当たり前」の状態になっています。つまり、バナーを見かけないこと、イコールそれが「古い」とか、「あまり宣伝する余裕はないのかな?」と思われる可能性もあると思うのです。つまり「絶好調でやっているよ!」という雰囲気ですね。チキンレースみたいなところも見え始めていますが、日本の現在の市場を見ると、致し方ないのかなとも思います。
――メディアミックス展開についてはどうですか?
吉田氏: 色々な会社さんとお話ししている最中ですが、現時点ではまだ何も言えないです。何かお話しできるようになれば、そのときは是非(笑)。
――グッズ系は結構出していますよね。
吉田氏: はい。グッズもじっくり時間をかけ、品質と内容、展開を準備して進めてきたことが、今に繋がっています。
――実は監修に苦労したりしていますか?
吉田氏: 監修やグッズアイデアは、数名で構成されているチームが、マーチャンダイジング部と一緒に作り上げてきました。仮想ラインナップが出たら僕が確認し、デザインが上がったら再度確認。この辺りは皆が熱意を持って実行してくれるので、あまり苦労はないです。どちらかと言えば、旧「FFXIV」の失敗があり、展開に慎重なところを説き伏せることや、しっかり結果を出していくことに時間が掛かりました。結果を出すことがすべてなので、プライズでもゲームセンターに「FFXIV」の「モーグリ」や「でぶチョコボ」が入荷すれば、あっという間になくなる、というような状態を地道に作って行くことで、ブランドを定着させて認知度を上げる、ということが可能になります。
――ゲームセンターのプライズはタイトーさんと共同でやっている感じなのですか? それともタイトーさんの持ち込みなのですか?
吉田氏: 共同です。監修は全部「FFXIV」チームで行ないますし、商品のラインナップについてもタイトーさん側から提案を出していただき、それを慎重に協議するという感じです。ゲームセンターを運営されている方は個人事業なので、すぐはけるものでなければ受注数がどんどん減ります。受注数が減ると、そもそもプライズとして成立しなくなりますし、人気のないものはゲームセンターのバックヤードに積みっぱなしということになってしまいます。ですので、どうしても「確実に人気の出るものを!」となりがちです。それは理解した上で、人気キャラの色替えなどを乱発したり、同種のものを何度も出すのではなく、確実に皆さんに喜んで取って貰えるものを、キチンと企画して行くことが大切だと思っています。売上ばかり見ると、どうしてもブランドの消費を加速させるので、そうならないようにしていくことが重要だと考えています。
――漫画やアニメについてはいかがですか?
吉田氏: きちんとしたものが作れれば……という話は出ます。
――まだ具体的な話が進んでいるわけではない?
吉田氏: アニメはちょっと慎重です。ありだとは思うのですが、餅は餅屋じゃないとアニメは面白くならないと思うのです。「FFXIV」をプレイしてくださっているコアな方が満足するものと、純粋なアニメファンが満足するものは、微妙に違うと思うので、この両者を満たせないと逆効果なのかな?と。僕はアニメ業界の人間ではないので、やるのならしっかりとしたプロの方たちにお任せしたいと思いますし、その方たちが「FFXIV」を理解していただければ、可能性はあるかなと考えています。
――ここ数年、増えてきたものにフィギュアがありますが、そちらはいかがですか?
吉田氏: フィギュアは企画が進行していますので、時期がくればお話できると思います。海外も見据えての企画です。発表を楽しみにお待ち下さい。
――ファンフェスの日程が年末に発表されましたよね。けっこう早いなと思ったのですが、あのタイミングで発表した理由はなにかあるのですか?
吉田氏: 1万人規模の会場を押さえるのが、世界的に見てもすごく大変なのです。早めに決めなければ、どんどんできる場所や日程が減っていきます。会場と契約させていただく条件なども細かくあり、ホテルの押さえもありますので、早めに告知することにしました。また、前回開催したファンフェスティバル2014のチケット争奪戦がすごかったので、それも早めに告知することになった要因のひとつです。さらに、日本の日程が2016年のクリスマスに完全に貸さなかったので、アナウンスは早い方が、沢山の方にご検討いただけるだろう、とも考えました。
――今回のファンフェスではどういったことをするのですか?
吉田氏: 基本的にはファンフェスなので、「『FFXIV』プレーヤーが2日間、僕らを含めてみんなで楽しめるものを!」というのが変わらないコンセプトです。
――前回のファンフェスでは「蒼天のイシュガルド」の新情報を伝える吉田さんの基調講演が1つの柱になっていましたが、今回も同じですか?
吉田氏: 登壇してご挨拶して、何も無し、とはいかないのかなと(笑)。
――タイミング的にもそのあたりで発表してもおかしくないですよね。
吉田氏: 前回のファンフェスの前例もありますし、しっかりとまた「FFXIV」の未来について、何かしらお届けできるように頑張ります。
「FFXV」とのコラボや「ドラゴンクエストビルダーズ」の話題も
――今年いよいよ「FFXV」が出そうですが、コラボの予定はありますか?
吉田氏: 何かやろうという話はしているのですが、お互いに忙しくてディレクターの田畑になかなか会えないのです(笑)。年明けくらいから、ずっと「飯食いにいって何をやるか決めよう!」と言っているのですが、会えなくて。仲良くやっていますので、何かしらはあるのかな?
――それでは、3月末にロサンゼルスで「FFXV」の発表会が予定されていますが、そこで何かコラボが発表されることはない?
吉田氏: 「FFXV」のことなので、僕が言えることはありません(笑)。
――話は変わりますが、「FFXIV」のコアメンバーだった新納一哉さんが「ドラゴンクエスト ビルダーズ」で久々に大きく注目を集めましたが、新納さんとはいろいろなコミュニケーションをとっていたり、あるいは「ドラゴンクエスト ビルダーズ」に関して吉田さんからアドバイスをしたりはしたのですか?
吉田氏: 「ドラゴンクエストビルダーズ」は、ゲーム自体の企画発案も開発も、僕が統括している第5ビジネス・ディビジョンの管轄です。部門として「新生FFXIV」以降、初のオリジナルタイトルということになります。部門のポリシーは自分たちが遊んで面白いと思えるものを作ること、そして必ず利益を出す、というシンプルなものです。「FF」の開発をしているから「ドラゴンクエスト」の制作はしないなどはなく、企画次第ということになっています。
――では、吉田さんはプロジェクトの立ち上げから全部見ているのですか?
吉田氏: 僕には「FFXIV」という大きな責任があるので、ビルダーズでは、初期の企画相談でかなり話をしたことと、新納が悩んでいたら相談に乗ったこと、堀井さんにタイトルを提案させていただいたこと、部門長として開発進捗を見ていたこと、マスターアップ前に各種判断をしたこと、くらいでしょうか。ご好評頂いているのは、新納をはじめとするビルダーズ開発チームの奮闘と、プロデューサーをやってくれた藤本の情熱、堀井さんの的確なご指示のおかげです。
――オンラインを得意とする第5のプロジェクトなのに、マルチプレイが搭載されていないのは、あえて割り切ったのですか?
吉田氏: 開発の難易度が高すぎると判断したためです。サンドボックス型のゲームにストーリーをのせて、“自由度”と“指示されて物をクラフトすること”のバランスを取りながら、「ドラゴンクエスト」らしさを再現するのは非常に難易度が高いので、まずはスタンドアローンに集中して貰いました。
――私も現在プレイしていますが、革命的に面白いですね。サンドボックスと「ドラゴンクエスト」がこれほど相性が良いとは思いませんでした。
吉田氏: ありがとうございます。新納と開発チームが喜ぶと思います。これからも「FFXIV」はもちろんのこと、部門としてもおもしろいゲームをお届けできるように頑張ります。
――貴重な話ありがとうございました。最後に「パッチ3.2」についてユーザーに向けてコメントをお願いします。
吉田氏: MMORPGは“アップデートによって変わっていくからおもしろい”という部分と、“変えてしまうと壊れてしまう部分”と、敢えて“変わらなくちゃいけない部分”とがあると思っています。パッチ「3.1」までは変わらないものを大事にしてきたのですが、変わってはいけないものとのバランスが崩れていたことがあり、そこはきっちりと元の状態に戻して軌道修正したいと思います。
軌道修正しつつも、変えていかなくてはいけない部分は、また徐々に挑戦を続けていきます。その変化を今回の「運命の歯車」というタイトルにも託していますので、守っていくことと、変わっていくものの、両方が体験できるパッチになっていますので、それらを感じながら楽しんでいただけると幸いです。
特に今回はいつものPvEアップデート量を保ちつつ、大規模なPvPコンテンツも新たに始まります。難易度の高いコンテンツもありますし、自分の腕試しができる遊び、これから「FFXIV」を始める方のためのシステムもご用意しました。全方位パッチになったかなと思います。
まずはパッチリリースまで首を長くしてお待ちいただいている冒険者の皆さんに、徹底的に楽しんでいただきたいと思います。また、現在はプレイをお休みされている方も、再開に最適なパッチになっていますし、これから冒険を始めようかな? という方にとっても非常に良いタイミングです。ぜひ、多くの皆さんに楽しんでいただき、これから先の展開にもご期待いただけるよう頑張ります! 最後になりましたが、本年もよろしくお願いいたします!
――ありがとうございました!
(C) 2010-2016 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.