インタビュー

AVerMedia、「バリスタ GS315」開発者特別インタビュー

ゲームキャプチャの旗手がゲーミングスピーカーに参入した意図とは!?

【バリスタ GS315/310】

12月16日発売



価格:
19,980円前後(税込、GS315)
11,664円前後(税込、GS310)

 台湾AVerMediaの日本法人アバーメディア・テクノロジーズが12月16日に発売を開始したゲーミングスピーカー「バリスタ GS31x」シリーズ。同社のイメージカラーである赤と黒を基調に、中世の“弩砲(バリスタ)”をイメージしたという奇抜なデザインが特徴的なゲーミングスピーカーだ。

 “ゲーマー向けのスピーカー”、“ゲーミングモニターに最適なスピーカー”は数多く存在すれども“ゲーミングスピーカー”と銘打った製品は、Razerの「Razer Leviathan」ほかいくつかぐらいのもので、あのロジクールですら、ゲーミンググレードの「G」シリーズのスピーカーはまだ発売していないなど、ごくごく限られる存在だ。

 そうした中でAVerMediaがゲーミングスピーカーという未開拓な分野にチャレンジする意図はどこにあるのか。設計意図はどのようなものなのか、AVerMediaに直接取材することができたのでその狙いをお届けしたい。

【バリスタGS315】
電撃発表されたAVerMedia製ゲーミングスピーカー「バリスタ GS315」

 AVerMediaは1990年に設立され、今年で25年を迎える台湾では老舗のPCデバイスメーカー。創業当初はTVチューナーカードのBtoBビジネスがメインだったが、そのビジネスが斜陽化してきたあとは、BtoCに鞍替えし、ビデオキャプチャカードやビデオキャプチャユニットを主力商品として、ゲームファンをはじめ、映像、医療など様々な分野に販売するビジネスを展開して現在に到る。中でも売れ筋が、ゲームキャプチャに特化したゲームキャプチャユニットだ。とりわけ日本では、PCが不要で、それ単体でキャプチャが可能となるポータブルモデル「AVT-C875」が人気で、本拠地の台湾を上回るヒット作となっている。

【AVerMediaの代表的なゲームキャプチャーユニット】
「ウルトラストリートファイターIV」とコラボした「AVT-C875-USF4C」(左)とハイエンドモデル「Live Gamer EXTREME GC550」

「バリスタ GS315」の開発経緯を語ってくれたアバーメディア・テクノロジーズ シニアマーケティングスペシャリストの張伊文氏
「バリスタ GS315」同梱物
「GS315」の基本特性
「アサシンモード」の概念図
「GS315」、「GS310」共にアナログ端子のみ。PS4やXbox Oneに直接繋げないのは痛いところだ

 そのAVerMediaがなぜゲーミングスピーカーという新規分野に参入するのかというと、ゲームキャプチャの需要はますます増える一方で、ゲームコンソール自体、GPU自体の機能として簡易ビデオキャプチャが可能になっており、AVerMediaではさらなる付加価値を付ける形で競争力を維持しているものの、4年展開したことでブランドの認知度も上がってきているため、そろそろその他のゲーミングデバイスにも手を広げていきたいからだという。

 その最初の1手がスピーカーというのは外部から見ると奇異に映るが、もともと社名を、“より品質の良いオーディオ・ビデオ製品を作りたい人”という意味でAVerMediaと名付けていることもあり、社内的には自然な流れのようだ。オーディオデバイスの中でも、ヘッドセットやイヤフォンはすでに多くのメーカーが名作を完成させている激戦区であり、スピーカーは競合が激しくないという理由から選ばれたようだ。

 ゲーミングスピーカーの設計にあたり、台湾本社の開発チームが最初に取り組んだのは、メジャータイトルを遊び込むことだったという。「バトルフィールド4」や「コール オブ デューティ アドバンスド・ウォーフェア」、「ファイナルファンタジーXIV」、「スタークラフトII」、そして直近では「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」まで、あらゆるジャンルの人気タイトルをプレイする事で、ゲームプレイに必要とされる“音”を知り、それを際立たせることを第一義に設計を進めていくことにした。

 リサーチの結果、ゲームプレイに必要とされる“音”は、銃撃音や爆発音、足音、その他環境音など、高音域と低音域に集中している傾向があることを把握。サテライトスピーカーには、高音域まで鳴らしきるために、ミドルレンジに加えて、ツイーター、スーパーツイーターの3ウェイを採用し、さらに48Wもの出力を備えたサブウーファーを標準搭載することに決定。サブウーファーは、PC向けスピーカーに付属するものとしては桁違いの大きさで、友人に見せつけたくなるような奇抜なデザインながら、デスク上に置いて使うことは残念ながら断念せざるを得ないほどデカいものとなった。

 さらに、標準でコントロールボックスを備え、ボリューム調整のほか、高音域、低音域の調整、入力音声切り替えスイッチ、そして「バリスタ GS315」の秘密兵器となる「アサシンモード」が利用可能となっている。

 「アサシンモード」は、スピーカーの音量を小さくすると低音域と高音域が出なくなり、中音域ばかりになってしまう問題を解決するために独自設計されたモードで、基本的には小音量時の低音域と高音域を強化する機能となる。このモードをオンにすると、ボリュームに応じて自動制御で補正が掛かり、低音域と高音域が最適化される。

 「アサシンモード」の想定使用シーンは、自宅で夜中寝静まった後など、大きな音を出せない状況。「ヘッドセットやイヤフォンを使えばいいじゃん」という意見も出そうだが、やはりゲームサウンドは体全体で感じたいというゲームファンも多い。そういうユーザーには最適な機能と言えそうだ。

 さて、上記のようなゲーミングスピーカーとしての機能を盛り込んだ結果、PC向けスピーカーとしては、非常に豪華な内容となり、その分価格も高くなっている。Amazonでの実売価格は19,980円で、PCスピーカーとしては最高水準の価格設定だ。この割高感を幾分かでも軽減するための施策がエントリーモデル「GS310」の併売で、こちらは実売11,500円で、一気にお値頃となる。予算に合わせて選びたいところだ。

 今回、実際にPCに接続して「GS315」を視聴することができたが、標準設定で高音域と低音域が非常に強調された音で、射撃音やエンジン音のような定番の高音は、空気を切り裂くような鋭さでギンギンに鳴る。低音についても、リビングに設置するホームシアターシステムのようなずしりとした重量感のある音が楽しめる。その反面、中音域はやや埋もれ気味で、効果音にBGMが被り気味になるという印象。Bass(低音域)やTreble(高音域)のつまみをいじればさらにピーキーな設定も可能で、通常のスピーカーとは明らかに標準設定そのものが異なるスピーカーだ。原音の再現性を犠牲にしてまで、音素をしっかり鳴らしきることにこだわった、まさにゲーム特化型のスピーカーという感じだ。

 その上で「GS315」の唯一の弱点と言えそうなのが、デジタル端子(光デジタル/同軸デジタル)を備えていないところだ。もともとPC向けを意識して設計され、デジタル端子を搭載するとその分価格に跳ね返るため、ただでさえPCスピーカーとして高額になっていることもあり、今回は搭載を断念したということだが、その分ゲーミングスピーカーとしての汎用性は犠牲になってしまったのは否めない事実だ。

 たとえば、PS4やXbox Oneなど、現行のゲームコンソールは、デジタル端子しか備えていないため、直に接続することができない。接続しようと思ったらTVを介したり、ゲームキャプチャデバイスを経由しての接続になってしまう。これはPCにもゲームコンソールにも使いたいと考えるゲームファンにとっては大きなマイナスポイントになる。同社では、ゲーミングスピーカーとしてデジタル端子の必要性は認識しており、次回以降のモデルで搭載を検討していきたいという。

今後も様々なゲーミングデバイスを手がけていきたいと語る張氏

 今後同社では、ゲーミングスピーカーだけに留まらず、継続してゲーミングオーディオの新製品をリリースしていく方針だという。今のところ計画しているのは、スピーカーとセットで使えるゲーミングマイク、ゲーミングヘッドセットあたり。「バリスタ GS31x」シリーズで実現された、ネーミングに武器の名称を取り入れることと、赤と黒の攻撃的なデザインはすべて踏襲していく。また、多様なニーズに対応するために、PC側でコントロールボックスの設定を記憶できるようなUSB接続タイプのゲーミングスピーカーも検討しているようだ。

 日本のマーケティングを担当する張伊文氏は、「日本のゲームファンに、AVerMediaのビデオキャプチャを愛用していただいて感謝しています。新しい製品を出す度に買っていただける方もいて本当に感謝しています。AVerMediaはこれからビデオキャプチャだけでなく、ゲーミングデバイスの総合メーカーとしてやっていきますので、これからもどうぞよろしくお願いします」と語ってくれた。AVerMediaの今後の展開に引き続き注目していきたいところだ。

【設置イメージ】
AVerMediaが想定するPCデスクに設置したイメージ。サテライトスピーカーとコントロールボックスはコンパクトのため、モニターの両サイドに置くのが丁度良いが、サブウーファーがドデカいため、下置き推奨となっている

【特大ケース】
こちらも巨大なケース。説明書きはすべて日本語化されている

(中村聖司)