インタビュー

ゲーミングチェアブランド「AKRacing」代表李峰氏特別インタビュー

トップシェア企業が提案する、レーシングチェアとは似て非なる快適性のデザイン

【AKRacing Pro-X】

12月19日発売予定



想定売価:52,800円(税込)

 今年8月、筆者は「AKRacing Nitro Gaming Chair」をレビューする機会を得た(参考記事)。ゲーミングチェアというカテゴリがまだ新鮮で、椅子を組み立てるという体験も含めて初経験満載の手探りな試用だったが、「ゲーム用に考えられた椅子は素晴らしい」という認識を得るのに十分なインパクトがある素晴らしい製品だった。

 12月19日には、その新製品としてハイエンドモデル「AKRacing Pro-X」が登場する。今回、発売に先立ち、AKRacingブランドを立ち上げた代表の李峰氏にインタビューする機会が得られた。製品についての注目点を聞くのはもちろん、AKRacingがどんな会社なのか、ゲーミングチェアにどういう思いで取り組んでいるのかなど、様々なお話しを伺った。

【AKRacing Pro-X】

レーシングチェアからオフィスチェア、ゲーミングチェアへ展開

AKRacing代表取締役社長の李峰氏

――まずはAKRacingというブランドの成り立ちから教えてください。

李氏:会社の設立は十数年前です。最初はレーシング車用のシートを生産していました。海外では様々なレーシングチェアの製品があったのですが、中国にはありませんでしたので、中国でレーシングチェアを作るために会社を立ち上げました。

――それがなぜゲーミングチェアを作ることになったのですか?

李氏:最初からオフィスチェアも作りたいと思っていたので、そちらも手掛けていました。するとゲームをプレイしている方々から、ゲーム用の椅子を作ってもらえないかという声を聞きました。当時のオフィスチェアは黒など地味な色のものが多かったのですが、若者からするとスタイリッシュ感が足りませんでした。そういう声を聞き入れ、ゲーマー専用の椅子を作ろうと考えました。

――ではゲーミングチェアも最初は中国で展開されていたわけですか。

李氏:最初は中国国内で売り込んだのですが、あまり売れませんでした。当時の中国市場はゲーム市場が小さく、ゲーマーも少なかったのです。そこで海外、主に欧米市場に売り込んでみると、とても大きな反響を得ました。ここ数年は中国でもゲーマーが増えてきましたので、中国での販売も好調になっています。その後もゲーミングチェアをデザインし続け、ゲーミングチェアの分野において、中国のみならず世界市場でもトップの地位を獲得しました。現在もレーシングチェアは生産していますが、売り上げはゲーミングチェアが大半を占めています。

――AKRacingシリーズの直近の販売数はどのくらいですか?

李氏:2015年は11月下旬までに、中国以外の市場で10万台以上、中国では5万台以上を売り上げました。来年は中国国内だけで20万台の売り上げを見込んでいます。私は現在、AKDING電子経済文化会社の社長も務めています。この会社では来年、様々な大手企業と連携し、ゲームの映画制作やゲーム大会を主催するべく企画を進めています。AKGALSというコスプレを中心にしたゲーム文化の展開も企画しています。さらに電子経済産業協会の会長も務めていまして、他の企業や省庁とも連携しています。来年は中国の電子産業がブームを迎えるだろうと見込んでいます。

――欧米、中国に続いての日本展開となりますが、8月の販売開始以降、日本での手ごたえはいかがですか?

李氏:テックウインドとの連携のおかげで、販売状況は好調です。日本のゲーマーにアピールするため、いろんな手を尽くしてくださいました。とても感謝しています。

見た目はレーシングシートでも、設計はゲーマーのためのオリジナル

「AKRacing Nitro Gaming Chair」

――ゲームには家庭用ゲーム機もあればPCもあるわけですが、このゲーミングチェアはどういったゲーマーをターゲットに考えていますか?

李氏:特定のタイプのゲーマーをターゲットにしてデザインしたわけではありませんが、PCでゲームをしていても、携帯端末でゲームをしていても、長時間のデスク作業をする方にも、体の安定性をもたらすことに専念しています。

――購入された者から評判が良かったのはどういった部分ですか?

李氏:やはり座り心地のよさですね。長時間座ることによって、首周りをサポートしてくれることも評価されました。普通の椅子は、肩や首の周りをサポートしてくれません。中国ではプロのゲーマーがトレーニングを受けるとき、平均12時間から14時間もゲームをプレイしますので、相当の疲労感があります。AKRacingを使用することで、疲労感を軽減する役割を持っています。

――ゲーミングチェアのデザインを考えた時に、なぜオフィスチェアではなくレーシングシートをベースにしたのですか?

李氏:それは個人的な好みです(笑)。オフィスチェアもいろいろなデザインがありますが、私がデザインする製品は私の好みで選んでいます。もちろん個人の使い心地を含め、今のユーザーの要求を聞き入れました。しかしデザインする時には自分の好みを最も優先しています。自分でいろいろな形をデザインしましたが、市場の需要も合わせて考えて、生産販売にかけることになります。いまデザイナー達が手掛けたデザインは200~300種類になりましたが、その中から生産に至るものはごく僅かです。

――でも今見せていただいたものの中には格好いいものもありました。生産されないのは惜しいですね。

李氏:こういうゲームの内容から要素を取り入れてデザインしたものなのですが、一部のゲーマー、そのゲームに夢中になっている人達なら好きになってくれるかもしれません。しかし今は大量生産するものを考えています。日本市場にAKRacingをアピールして、もし好調であればテックウインドを通して新しいモデルを展開していきたいと思っています。

――AKRacingのセールスポイントはどの辺りでしょうか?

李氏:人間工学に基づき、人間の背骨の形状をかたどってデザインしたものなので、とてもしっかりとしたサポートが得られます。腰から頭までを包み込むサポート感はとても快適なものです。

――私も実際に使わせていただいて、背中のホールド感がとてもいいと感じました。レーシングシートに座る感覚とは別物です。AKRacingにはレーシングシートとは違うゲーマー向けの設計がなされているのですか?

李氏:おっしゃるとおりです。レーシングチェアで最も大切なのは、安定性、人を包み込むという機能です。レーシングカーを運転するレーサーがレーシングシートに座り、踏ん張らなくても変わり続ける横Gに対応できるよう、そして自由に操作できるような機能を重視しています。しかしPCで作業する時には、背中を伸ばせるような、人間工学に基づいた曲線的なデザインにしていますので、全く違う設計をしています。

筆者が気に入った、ほぼ真横にできる背もたれ

――背もたれをほぼ真横まで倒せるのには驚きました。

李氏:AKRacingのリクライニング機能は、人は長時間デスクワークをしている時、前傾姿勢になっています。しかしそれは体に負担をかけます。理想の姿勢は、リクライニングできて、PCまでの距離は近く、自分の好みの角度まで調整できることです。大きくリクライニングして、アームレストにマウスパッドを取り付けたら最高の環境になりますよ(笑)。

――私は肩こりが酷いのですが、このシートを使っている時は確かに楽でしたね。

李氏:そういう方にもきっと役に立つと思います。

日本にはより座り心地のいい製品を投入。LED内蔵で光るチェアなども開発

笑顔で答えてくれた李氏。ここには掲載できなかったが、発売予定や企画中のゲーミングチェアのデザインも多数見せてくれた

――レーシングシートではないということでしたが、この見た目だと必ず、レーシングホイールをつけたいという声が出るはずです。今後そういったオプションはあり得ますか?

李氏:弊社でレーシングシミュレーション用のシートとレーシングホイールをセットで販売したことはあります。AKRacingシリーズに取り付けるものは製品としては用意していませんが、デザイン的には可能です。今後考えさせていただきます。

――今後の製品について教えていただけますか。

李氏:ゲーマーの多くは若者ですので、クールでスタイリッシュなデザインを考えています。今考えているのは、LEDを内蔵し、光るラインが入ったゲーミングチェアです。

――面白い製品ですね。ゲーミングデバイスはLED内蔵で光るものが多いので、マッチしそうです。

李氏:ゲーマーが好む、光るスタイリッシュな環境を作ってあげたいと思っています。ただマウスやキーボードがLEDで光るものは役に立つと思いますが、椅子が光っても役には立たないかもしれません(笑)。こちらは中国で生産・販売することは決まっていますが、どのくらいの数量になるかはまだ未定です。

――日本では次に発売されるモデルは「AKRacing Pro-X」シリーズと伺いました。こちらは現行のAKRacingとどんな違いがあるのでしょうか。

李氏:よりよい座り心地を実現した、全く違う製品です。人間工学に基づいて、より厳密にデザインしました。実際に店頭で座っていただければ、違いとすごさを体験していただけるはずです。

――最後に、日本のゲームユーザーに向けてメッセージをお願いします。

李氏:ゲーマーの方々がこの製品を気に入っていただければ何よりです。これからも座り心地を含めて、製品に対するご意見、ご要望を気楽にいただければ幸いです。今後の製品に取り入れ、より快適性を向上させる製品を作ってまいります。

――ありがとうございました。

(石田賀津男)