インタビュー
中国でPS4は普及するのか!? SCESHプレジデント添田武人氏インタビュー
並行品はどうなる? 正式ローンチ後のゲームショップとのビジネスについて
(2015/8/4 18:00)
並行品はどうなる? 正式ローンチ後のゲームショップとのビジネスについて
――さて、中国で正規のビジネスがスタートしましたが、今後、並行品の扱いはどうなりますか?
添田氏: 購入する側にしてみれば、並行品か正規品かというのはさほど区別していないと思うんです。PSを購入してゲームを遊んでいる以上、彼らはユーザーであることに変わりはないんです。もちろん、国内でビジネスを始めた以上、すべてのお客さんに正規品を買っていただくのが目標になります。そのためにはユーザーさんの「楽しいゲームを遊びたい」、「新しい体験をしたい」、「他のプラットフォームと違うことをやりたい」、「中国でしかできないような、中国発のゲームを遊びたい」という声に応えて、独自の付加価値を付けて届けていくことが重要だと思います。
――現在、正規品はどのような形で中国に流通していますか?
添田氏: オンラインとオフラインがあり、オンラインは最大手のTMALL、JD、オフラインでは、ITモールに入居しているショップで少しずつ扱う量を増やしています。あとはソニーの直営店Sony Storeが北京、上海、広州、成都の4カ所にあります。そのほかにもゲーム以外のビデオカメラやデジカメなどを扱うお店でも希望があれば、宣材を提供して販売ができるようにしています。
――今回、上海でいくつかのITモールを視察してきましたが、BUYNOWやMetrocityなどに密集している小さなゲームショップは、依然として並行品を扱っているところのほうが多いように感じましたが、正規品の取り扱いはまだオフラインよりオンラインの方が多いんでしょうか?
添田氏: そのお店が何をどこからどう仕入れるかは、最終的にお店の判断ですが、我々も働きかけをしながら、正規品を入れたいという希望があればもちろんそれに応えていきます。
――台湾や香港では、Aランク、Bランクとお店をランク付けして、高いランクのお店には、優遇的にPOPや試遊台を提供するなどの優遇措置をとっていましたが、同じ事を中国でも行なっているのでしょうか?
添田氏: はい。POPだけ、展示台も入れるなど、ショップの取引の規模、コミットメント、レスポンスビリティに比例して行なっています。
――数年前に、広州に行った際、ゲームショップを取材する機会がありました。改造からコピーからひととおりやってしまっているお店でしたが、今後、中国で正規ビジネスが始まったらどうするつもりなのか尋ねたところ、「我々ショップ側にメリットがあれば乗り換えてもいい」というんですね。正否ではなく儲かるかどうかが判断基準で凄いなと思ったのですが、こうした彼らに対してどのように働きかけをしているのですか?
添田氏: 1番大事なのはエンドユーザーです。我々の判断基準で1番大事なのはエンドユーザーにとってメリットがあるかどうか。たとえば、並行品を売っているショップは、本体が故障した際に本当に直せるんですかと、どうサポートするのかということなんです。安心して楽しむという側面で考えた場合、我々の正規品の方が大きなメリットがありますよね。我々の向いている先はあくまでエンドユーザーです。同じ方向を向いてビジネスをしていただけるようなら、そういう人たちとは一緒に組んでやっていきたいです。
――実際に、改造業者が、正規品を扱う業者へ鞍替えした例はありますか?
添田氏: ありますよ。現在進行形ですが、並行品と正規品の両方を扱う業者、正規品のみを扱う業者もいます。
――SCE上海は、中国全土に向けてPSを提供していますが、実際どこまで届いていますか?
添田氏: オンライン、オフラインありますが、オンラインサービスが届くところは、中国全土津々浦々まで提供できています。ただ、これはあくまで理論上の話であって、まだ都市によってはかなり濃淡の違いがあります。たとえばチベットにもユーザーがいますけど、その途中の都市にはあまりいないとかはあります。基本は大都市、沿岸部が多いですね。やはりそれらの都市はゲームに対する感度が高いですし、リアル店舗も展開されていますので。ただ、いまはまだ都市に1つしかショップがないということがありますので、それをいかに広げていけるかが今後の課題ではあります。
――添田さんとしてはまだまだ足りないと?
添田氏: 足りませんね。北京、上海、広州、成都といった大都市にはそれなりのオフライン店舗があり、実際に触る機会も提供できていますが、それ以外の都市では体験設備どころか売っているところがないというところもまだまだ沢山あります。そのへんはまさにやり始めたところでして、まだまだ全然足りないです。
――それでは現在の主なプロモーションの場はオンラインということですか?
添田氏: いえ、両方やっています。オフラインですと、新規タイトルが出るたびに体験会を実施したり、ローンチから1カ月記念、100日記念といった具合に、ユーザーエンゲージメントを高めるオフラインイベントを実施しています。が、先ほどもお話ししたように、そもそもコントローラーを触ったことがないという人もいて、我々の活動はぜんぜん足りていないんだなということを痛感しているところです。
――中国の正規版は、2年間無償保証というのが大きなウリですが、修理センターは全土にいくつぐらいあるんですか?
添田氏: 88です。主要都市はすべてカバーしています。
――これは並行品は対象外となってしまうわけですか?
添田氏: シリアルナンバーを見て並行品か正規品かを見て対応しています。ただ、並行業者が販売するだけでなく、今は日本に旅行して帰りにPS4を買って帰るという中国のお客さんも増えていますので、そういう姿を見るたびに、どこで購入されたとはいえPSのユーザーであることには違いがないので、有償にはなってしまいますが、中国でもサービスが受けられるようにしていきたいですね。
――今年に入ってついにコンソールゲームビジネスが、中国で全面開放されましたが、SCE上海はこの決定による影響は何かありますか?
添田氏: 中国では、十数年にわたってゲームコンソールのビジネスを禁止していたものが、2013年9月に上海自由貿易実験区限定で許され、以降SCEも正式にビジネスを開始していました、今回の発表では、限定していたものがなくなり、全国でやっていいということになったというものです。中国では色んな経済政策がありますが、最初は禁止、地域特定で実験して成功できそうなので全国に広げる、というパターンは中国では一般的なもので、何もゲームに限った話ではありません。
全体として見ると、マクロな環境が改善されたという言い方はできると思います。たとえば、上海以外の地域でもゲームビジネスをはじめようとすればできるわけです。ただ、我々はすでに上海でビジネスを始めていますから、我々が何か変わるわけではありません。ちなみに今回の発表は、ハードウェアに限った話で、ソフトウェアのセンサーシップに関しては何も触れられておらず、この部分に関しては変わりません。従って、我々のもうひとつの軸足であるソフトウェアに関してはまったく変わるところはありません。
――今後、コンペティターは増えると考えていますか?
添田氏: 海外に限らず、中国国内でも今後コンソールビジネスをやろうと考える人が増えてくるのではないかと思います。昨年のChinaJoyでも、隣のブースで、独自のコンソールを展示していて、そういうのを数えた限りでも4つほどありました。コンソールの全面解禁を通じて、新規参入が増えて、切磋琢磨していくのは業界の活性化にも繋がりますので、我々としてはプレイステーションの強みをより良くしていくことに注力していきたいですね。
――直接的なコンペティターであるMicrosoft Chinaの取り組みについてはどのように見ていますか?
添田氏: 他社さんのお取り組みについてコメントする立場にはありませんが、同じコンソールメーカーとして一緒に市場を盛り上げていきたいですね。ゲームはPCやモバイルゲームだけでなく、コンソールもあって、こんなに楽しいんだよということを伝えてマーケットを作る、ということに関しては同じ方向を向いていると思います。
――先日の発表会では、様々な新作タイトルが発表されましたが、「FREESTYLE」は添田さん自身が発表しましたね。この意味を教えて下さい。
添田氏: 「FREESTYLE」は3対3で遊ぶオンラインゲームです。バスケのようなスポーツゲームは中国では大きな市場で、しかももともとPCのオンラインゲームをコンソールで展開していくというのは、我々にとっても初めての取り組みになります。ゲームの出来も凄く良くて、中国市場で大いに期待できると思います。
――その出来映えを発表会で見てみたかったですね。
添田氏: 一気に全部やると見せるものがなくなってしまいますから(笑)。今後、出来上がってきたものを少しずつお見せしたいと思います。リリース時期は2016年の上半期です。
――開発は、PC版と同じ韓国のJoycityですか? ゲーム内容は基本的にPC版の移植と考えていいのですか?
添田氏: はい、そうです。
――もうひとつ気になったのは、中国風の「アサシンクリード」みたいなタイトルがありましたよね。あれはなんでしょう?
添田氏: あれはUbisoftさんがセンサーシップなど中国向けに色んな要素を考慮して現在準備しているタイトルです。「アサシンクリード」の要素プラス中国の要素を組み合わせたタイトルです。Ubisoftさんのタイトルですので、中国限定なのか、グローバル向けにリリースするのかはわかりません。こちらの発売時期もまだ決まっていません。